私は真っ直ぐ行かずに自転車・歩行者専用道路の方に迂回した。もしや、人と出会えるかも、と思ったからである。予想は見事に的中した。厚着をした爺さんが自転車に乗って向こうからやって来た。
両手を上げて左右に大きく振ると年寄りは止まってくれた。私は次の訪問先に何分で付くのかを知りたくて土地勘のある彼に訊いた。
「あそこまで走っていくんか。んー、30分くらいかのー」
「えー。そんなにかかりますか。ショックだ。もうええ加減脚が疲れてきたんでね」
「まーそう言わんと頑張り。もう少しの辛抱よ」
爺さんは意味ありげな笑みを浮かべ東の方角へ消えた。運良く追加情報を得た私はバイパスの下を潜り牛野谷町(うしのやまち)3丁目に入った。