由緒ある妓楼を見つけて足をとめた。他の建物とは明らかに造りが違い、風格と歴史を感じた。入口内壁の仕事には職人の「遊び心」すら見える。 続いて小さなスナックが建ち並ぶ界隈に移動した。やはり女性の名前をつけた飲み屋が多いが、「水曜日の朝」とか「客恋坊」のような洒落たネーミングもある。 スナック「公爵」の前にあった立て看板の太字を読んでほくそ笑んだ。車は通れなくても人は‥‥‥。私は口の中でぼそぼそと「玉の井」の有名なフレーズを唱えていたのである。