玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

玉川上水における野鳥群集と樹林管理

2021-11-29 19:22:11 | 調査報告

 これまでにも「玉川上水の林が伐採されると生物多様性に悪影響がある」と言われてきました。それは端的に樹木が減れば生育する樹木の種類が減るという意味であるのが普通でした。しかし、花マップネットワークが調べた結果、林の下に咲く野草には、上木がなくなると生きていけないものがあるという、伐採の間接的な影響があることがわかりました。いきもの会議には野鳥に詳しい人もいるので、次の段階として野鳥に及ぼす伐採の影響を調べることにしました。同時に樹木の調査もしました。それらのデータを解析したところ、樹林の伐採が野鳥にも決定的ともいえるマイナスの影響を与えることがわかりました。以下はその要旨です。これこそが伐採が及ぼす生物多様性への悪影響の代表的な事例だと思います。(高槻)

玉川上水における野鳥群集と樹林管理(詳細は こちら

高槻成紀・鈴木浩克・大塚惠子・大出水幹男・大石征夫・尾川直子

 

 玉川上水は東京を東西に流れる運河であり、現在は細長い樹林地となっており、野鳥の生息地ともなっている。ここでは場所ごとに異なる樹林管理がされているので、小平、小金井、三鷹、杉並の4カ所で鳥類群集を調べたところ、違いが認められた。小平では樹林幅が広く、コナラなどの大径木が多く、鳥類群集も森林性の種が多く、多様性も高かった。三鷹ではシラカシなどの常緑樹が多く、周辺に井の頭公園の樹林が連続的に広がっているため、鳥類群集が最も多様であった。杉並はサクラ類の大径木が多く、樹木組成は比較的良好であったが、上水の両側に交通量の多い道路があるため、上記2カ所よりも鳥類群集がやや貧弱であった。小金井ではサクラ類以外の樹木を皆伐したために樹林は多様性に極めて乏しく、鳥類群集も非常に貧弱であった。季節変化もこのことを反映していたが、9月には多様度の高い場所でも減少して、違いがなくなったが、秋には再びそれ以前の状態に戻った。これはヒヨドリなどが漂鳥として移動するためだと考えられた。本調査により、東京に残された貴重な緑地である玉川上水が野鳥の生息地としても貴重であること、しかし過度の伐採をすると鳥類の生息地として劣悪になることが示された。

主要3種の個体数の季節変化

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調査には以下の方の協力をいただきました。これらの方々にお礼申し上げます。菊地香帆、黒木由里子、高橋 健、田中 操、永添景子、松井尚子、水口和恵、リー智子

 


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