玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

日本自然保護協会との意見交換会の記録(抄)

2021-03-05 18:23:47 | 最近の動き

日本自然保護協会との意見交換会の記録(抄)

* 内容については日本自然保護協会から公表の了解をもらっています。

2021年3月5日13:30より日本自然保護協会において、本会と協会の亀山章理事長と高川氏との意見交換会が行われた。当会の参加者は以下の12名であった。

足達千恵子、大石征夫、大塚惠子、小口治男、加藤嘉六、漢人明子、高槻成紀、田中利秋、橋本承子、松山景二、横須賀雪枝、リー智子

 

 自己紹介の後、高川氏から協会と玉川上水との関係について説明があった。この10年ほどの間、ラムサール条約関係、ユネスコ関係で支援するなど玉川上水を評価する活動をしてきたとのことであった。その後、指名があったので高槻から以下の内容を資料を用いながら伝えた。

「当会が重視しているのは、玉川上水全体の今後がより良いものであってほしいということです。そのためにはNACS-Jが玉川上水を東京都に残された貴重な自然であるとの価値観を共有することが不可欠です。NACS-Jの定款中の目的には<生物多様性の保全に努める」そして「現代及び後代にわたる自然環境の保全に貢献する>と明記されています。このことはまさに我々の目的と軌を一にするものです。この点を確認させてください」

 これに対して理事長から「もちろんそのつもりです」との返答があった。

また、玉川上水の回廊としての連続性、雑木林的な豊かな自然があることなどを説明し、これについては会員からも鳥類(大塚氏、田中氏)、蝶類(リー氏)などの豊富さが説明されたほか、環境教育の場としての利点(松山)も説明された。

また、玉川上水についてシンポジウムを企画したいとの提案についても協力するとの回答を得た。

 

 小金井桜について当会は次のように説明した。

「小金井桜を文化遺産として残すべきという考え方は理解しますが、それを拡大する動きは玉川上水の生物調整保全のために阻止すべきと考えます」として、玉川上水の新旧の写真、小金井市議候補者へのアンケート調査とその結果を紹介し、多様性保全の意見がかなり多かったことを報告した。続けて「しかし、現状では年間1000本もの樹木が伐採されており、このペースで伐採が続けば玉川上水全体の樹木が大幅に減少することが憂慮されます」として水道局の資料をグラフ化し、予算や伐採本数の推移を示した。「小金井地区の問題とは別に、玉川上水全体でのこの強度伐採を阻止するためのアドバイスをいただきたい」と発言した。

 橋本氏から小金井市で伐採が行われたために、生物にとってだけでなく人の住環境としても劣化したこと、大塚氏から小金井市での強い伐採、コブシが切られたことが悲しかったこと、横須賀氏が、今回の強い伐採に小金井市民は衝撃を受け、悲しんでいることが伝えられたら、亀山理事長からは農工大教授として名勝復活に関わってきたが、このような伐採に対する批判的な意見はこれまで聞いたことがないとの返答があった。これに対して橋本氏と加藤氏から玉川上水ネットワークや小金井玉川上水の自然を守る会は10年ほど前からこれまで何度も伐採に対する批判を小金井市に訴え続けてきたと発言があった。

 これらについて亀山理事長からは、小金井市の計画はすでに終わり、小平市よりの部分だけが残っているが、小平市や武蔵野市は積極的ではないと発言があった。

 高川氏からは、文化財保護法は現状維持を基本とし、これまでも変更がないため、桜保存が必要となればそれを変更することはできないという説明があった。

 亀山理事長から準備した資料説明について以下の補足発言があった。「雑木林」という発言があったが、これは小平市にはあるが小金井市にはなく、ケヤキばかりである。ケヤキ林は生茂ると暗くなってニリンソウはなくなるから、適度な伐採が必要である。玉川上水は史跡であり、史跡を守るのであれば、植物が生い茂るに任せると、落葉落枝で玉川上水が潰れてしまうら小金井市ではケヤキを切って玉川上水を残した。そして、委員会では江戸時代の浮世絵に見るような桜の状態に戻すことを目指した、今の伐採跡は殺伐としているが、時間がたてば桜の下に野草も戻ってくる。

 

 高槻は、直接理事長と面談ができて、当方の考えや主張が伝えられ、また協力を得られることが確認できて有意義であったとお礼を言った。

 最後に高川氏から、日本自然保護協会は自然も守るが文化財も守るという発言があり、散会した。

 

まとめ

  • 玉川上水みどりといきもの会議と日本自然保護協会は玉川上水をより良く保全して次世代に引き継ぐために多様性を重視するという共通の見解を持つことを確認した。
  • 近い将来玉川上水についてシンポジウムを開催することに協力いただけることを確認した。
  • 本会は小金井市に典型的に見られる強度伐採が続くことを懸念するが、日本自然保護協会は小金井桜は文化財として保護する必要があると考えると表明された。

 

(文責:高槻成紀)