関係する企業の株価動向も要チェックですね。
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衆院選:「業界の乱拡大」自民と距離…医師会、農業団体
衆院選(18日公示、30日投票)が近づく中、各地の医師会を中心に業界団体の「自民党離れ」が広がっている。医師会といえば強力な自民党の支持団体だが、小泉政権以降の社会保障費削減や後期高齢者医療制度に反発し、民主党候補支援に転じたり、自主投票で中立のスタンスをとるケースが目立つ。農業団体の一部にもそうした動きが表面化。政権交代が現実味を増し、自民党長期政権のもとで補助金や選挙支援を媒介に結ばれた「政・官・業」のトライアングルが揺らいでいる。
茨城県では県医師会の政治団体・県医師連盟が全7選挙区で民主党候補を推薦した。自民党厚労族の大物、丹羽雄哉元厚相の茨城6区も含まれ、党籍を持つ医師や家族の大量離党にまで発展した。
「医師の乱」は全国にも波及。栃木県や奈良県でも県医師連盟が初めて民主党候補を自民党候補とともに推薦した。県医師連盟が自民党候補の推薦を決めても傘下の市医師連盟などが民主党候補を推薦したり、自主投票とする動きも拡大。新潟市医師連盟は10日の常任執行委員会で「自民は一度野党にならないと地域医療を真剣に考えない」などの意見が出て自主投票を決めた。
07年参院選では民主党の掲げた戸別所得補償制度に期待する農村票が同党の圧勝を後押ししたが、今回は自民党を強く支援してきた農業団体にも変化がみられる。青森県農業者政治連盟は96年の小選挙区制導入後、初めて自主投票を決めた。松本淳司幹事長は「この選択が政権を代える引き金になったら、自民には目を覚ましてもらいたい。民主への期待もある」と語る。
山形県農協政治連盟も3選挙区中1選挙区で自主投票とし、長野県農政同友会は5選挙区のうち3選挙区で自民、民主の候補を同列に推薦・支持する。北海道農協政治連盟は11選挙区で自民党候補を推薦したが、JA5団体が民主党マニフェストに盛り込まれたFTA(自由貿易協定)推進の方針に抗議した際、「自民党農政にも大きな不満を持っている」と発言した。
ほかの業界にも政権交代をにらんだ動きが広がる。秋田、愛媛両県では県トラック協会が民主党候補にも推薦を出すことを決めた。ただ、業界団体がまとめられる組織票の限界も指摘され、愛媛県トラック協会の関係者は「下にも満遍なく(指示が)行き届く時代ではない」と漏らした。
◇「大切なのは政策と人」 財界も距離?
自民党を全面支援した企業の多かった05年衆院選(郵政選挙)から4年。今回は自民党と財界の間に微妙な距離感が広がる。自民党一辺倒だった経団連も献金判断のもととなる政策評価を例年の9月から2カ月先送りし政権の行方を注視。「顔は自民党を向いているけど目は泳いでいる」(財界関係者)との声も聞かれ、自民党を支えてきた企業ぐるみ選挙もぐらついている。
8月2日昼。愛知県を遊説で訪れた麻生太郎首相は、名古屋市のホテルで中部財界の重鎮らと昼食をともにした。「産業界のことを考えているのは自民党だ」と訴えた首相はその後、別室でトヨタ自動車の渡辺捷昭(かつあき)副会長と面会。衆院選での支援を要請した。
トヨタは05年衆院選で、小泉純一郎首相(当時)と奥田碩(ひろし)会長(同)の個人的な関係もあり、表立って自民党を支援。自民党候補者の選挙事務所にはトヨタ役員の為書(ためが)きが張られ、小泉氏が愛知県入りした際には張富士夫副会長(同)が鉢巻きをして演壇に立った。
しかし、今回の対応ははっきりしない。渡辺氏は8月4日、愛知県豊田市のトヨタ本社を訪れた民主党の岡田克也幹事長とも面会している。トヨタ幹部は「大切なのは政策。それと人」と話し、選挙区によって対応に濃淡が出る可能性も示唆する。
前回は積極的に自民党を支援した経団連も今回は態度を保留。3日に開いた自民党のマニフェスト説明会で、渡文明副会長(新日本石油会長)が「(投開票日の)8月30日に向けてのご健闘を心から祈念する」とエールを送ったものの、目立った支援の動きはみられない。ある会員企業は「今さら手のひら返しもできない」と社員に働きかける程度だ。
一方、民主党の掲げる公共事業削減や地球温暖化対策への不安も根強い。日本土木工業協会(土工協)は93年衆院選で故・柴田平会長(当時、西松建設社長)が選挙応援中止を宣言したが、今回、中村満義会長(鹿島社長)は公共事業削減への危機感から自民支援を明確にした。【高塚保、後藤逸郎、鈴木泰広】