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えつこのマンマダイアリー

♪東京の田舎でのスローライフ...病気とも仲良く...
ありのままに、ユーモラスに......♪

第1章 ある日突然… 19.

2007年04月05日 | 乳がん闘病記
19.
 せっかく4人が揃っているというのに、私はぐったりしていて、食事を作る元気もなかった。何日か前に入学式用に買って裾上げ待ちをしている息子のスーツを、紳士服量販店に取りに行かねばならないこともあって、外食することにした。

 よく利用する和食のファミリーレストランでのその日の食事は、何とも表現しがたい雰囲気と味わいだった。砂を噛むようだというのは、こういうことだったか…。
 息子の合格はめでたいことだが、半月前に起こった夫の海外赴任話は宙に浮いたままだったし、何より、私の乳がん宣告が皆の心を曇らせていたのは、火を見るより明らかだった。いつものように息子がひょうきんなことを言って笑いが起こっても、その笑いは長くは続かず、すぐにそれはそれぞれの当惑を隠しきれない、気まずい沈黙へと変わった。
 ―みんな、ごめんね…せっかくH之が合格したのに…ほんとにごめんね…― 心の中で何度も繰り返した。でも、やはり涙は見せなかった。

 帰途の車窓に飛び込んでくる夜の光の洪水は、かつてないほどまぶしくうとましく感じられた。私の中でも、その日の出来事やこれからのことなど、支離滅裂に思考が飛び交い、渦巻き、氾濫した。洪水に溺れ、押し流されそうだった。ときどき景色が涙で曇りそうになる。でも、隣に座る娘に悟られてはならない。

 その洪水の中で、ふと、乳がんの手術をした友人が地元にいることを、私は思い出した。何年か前に手術をして大変だったと、人づてに聞いていたのだ。彼女とはある会に所属する仲間同士という関係だが、その会の活動がここ何年か休眠状態になっていることから、彼女とは久しく会ってもいないし、連絡もとっていない。
 
 彼女から直接病気のことを聞いたわけでもないのに、突然病気のことを訊いたりしたら、気を悪くするだろうか…? そんなことを思わないでもなかったが、藁にもすがりたい思いの私は、やはり思いきって電話することにした。彼女なら、きっと喜んで力になってくれるに違いない。そう思える何かがあった。

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