本日は、メドエル社の人工内耳装用者が中心となって開催している勉強会(自分自身はコクレア社の人工内耳を装用しています)、「第5回きこえを学ぶ会」(4月28日)での講演「わかりやすい日本語の話し方」(NHK日本語センター専門委員の榊寿之氏)で気になったことをとりあげていきたいと思っています。<o:p></o:p>
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ところで、講演及び昔話の朗読終了後、メーカーから、汗をかく季節になりスピーチプロセッサのお手入れ等について説明がありました。<o:p></o:p>
補聴器と同じように人工内耳も汗(水)に弱いです。<o:p></o:p>
人工内耳の外部装置(スピーチプロセッサ)を耳に掛け装着しますので、電源ダウンが伴う汗対策は切実な問題です。そのためか汗に関わることについて、人工内耳装用者からもいくつか追加質問が出ました。<o:p></o:p>
そう言えば、メドエル社EAS(ハイブリット型)人工内耳を装用されている方から、汗対策として傘などに使われる特殊防水布で人工内耳カバーを製作し、スポーツを楽しんでいるというお知らせを先日いただいたところです。<o:p></o:p>
補聴器や人工内耳で汗対策にお困りの方、一度、試されたらいかがでしょうか。ネットで検索すると、「特殊防水布」は結構種類があってお手頃に購入できそうです。<o:p></o:p>
※余談ですが、自分は運動不足を自覚したときやストレスがたまったときに山道(「一万歩コース」)を歩いていますが、N5スピーチプロセッサに変えてから汗を気にしなくなりました。それまではコースの途中で汗をタオルでこまめに拭き取ることや、汗の量が多い時は外したりするなど、かなり気にして使用していましたので、今はホッとしています。<o:p></o:p>
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さて、今回の講演のテーマは「わかりやすい日本語の話し方」でしたが、自分が求めているのは「聞きやすい話し方」のヒントでした。<o:p></o:p>
「会話」という行為は、「口語言語による会話」だけではありません。<o:p></o:p>
「手話」もありますし、「読話」を介しての会話もあります。あるいは「メモ」を利用して行うこともあります。<o:p></o:p>
難聴になって嫌というほど感じたことは、「話す」という方法や「聞く」という方法が当事者間で成り立ってこそ「会話」ができるということでした。<o:p></o:p>
つまり、口語であろうが、手話であろうが、文書であろうが、「話す」方法や「聞く」方法が一方通行になってしまえば、「会話」は成立しないことになります。<o:p></o:p>
進行性の難聴になって2度目の入院生活が余儀なくなったとき、同室には、人工内耳装用手術をするために入院した方、咽頭がん治療で放射線治療を行っている方、声帯を含む咽頭を切り取り体力の回復のため療養している方と同室になりました。<o:p></o:p>
全く聞こえない者、聞き取りづらくなっている者、声が嗄れている者、発声ができない者が、共同生活をすることになりました。この4人が同室になったのも、一時的な偶然で、治療が一通り終了すれば順次退院していきます。<o:p></o:p>
「耳鼻咽喉科」という入院病棟は、「聞くことが困難な人」、「話すことが困難な人」が入り混じった病棟です。また、鼻の悪い方もいますので生花は禁止です。<o:p></o:p>
病室内は、患者にとって、ある種休息の場であり、戦いの場でもあります。患者たちは色々な思い(不安や期待、絶望・・・)を秘めて入院しています。<o:p></o:p>
聴覚に障害を持っている相手への呼びかけは、声枯れしている者が行い、言葉をしゃべることができなくなった者が伝える筆談器の言葉を、聞くことが困難な者達が目で追い、声枯れしている者やしゃべれなくなった者に話すことになります。<o:p></o:p>
加えて人工内耳装用手術のために入院した者は、失聴期間が長く、しゃべり声が大きくないかを気にしており、自分では聞こえない声をしきりに確認しながらの口語です。<o:p></o:p>
「筆談器」と「口語」を使った会話は、初めのうちは混乱してしまい、話せる失聴者や難聴者も「筆談器」を使用してしまい、そのたびに、聞こえるけれど話せない者から「自分は聞こえている、話せないだけだ。あなたたちとは逆だ」とクレームがつくことで気が付き、大笑いしてしまうことがたびたびありました。<o:p></o:p>
短い共同生活でしたが、慣れるのも早く、違った会話方法を持つ者達の会話はしだいにスムーズなっていき和気あいあいになり、他の病室からうるさいとクレームがつけられるほどでした。<o:p></o:p>
ここでの会話は、お互いの状況を受け入れ、尊重しあっての会話の成立です。<o:p></o:p>
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脱線ばかりで申し訳ないのですが、脱線ついでにもう一つ・・・、5月11日に名古屋高裁で自分が気にしていた裁判の判決がありました。<o:p></o:p>
「好きだった歌が歌えない、得意の口笛も吹けない、声を出して笑えない・・・。それよりも 何よりも 自分の言葉で思うように伝えられない・・・」<o:p></o:p>
これは、2007年6月18日に放映された「声の壁~発言できない議員」(日本テレビ系全国放送)での岐阜県中津川市の元市会議員のコメントです。<o:p></o:p>
これに対し、市議会側が「自己責任」とか「努力」・「常識」等、とても当たりの良い言葉でコメントをしていました。<o:p></o:p>
当ブログでは、2007年6月21日「思うように伝えられない」、一審判決後の2010年9月26日「思うように伝えられない2」で取りあげています。<o:p></o:p>
この裁判は、任期の途中で市会議員が咽頭がんにより声帯を切除し、声を出せなくなったことが発端となった訴訟で、「代読訴訟」と呼ばれてきました。<o:p></o:p>
元市会議員は、声を失った自分の代わりに、自分が指名した者に自筆のメモを代読することで意見表明や質問をすることを求めてきましたが、1年半もの間、発言方法について審議されずにいました<o:p></o:p>
その後、市議会では元議員がパソコンを使用できないことを承知の上で、パソコン入力による音声変換にて発言するように決定し、それが1年3カ月間にわたって続くことになり、事実上、発言ができない状態になりました。<o:p></o:p>
この異常事態の中で、一部質問での他の議員がパソコンを打ち込むことや代読を市議会は認めていきます。ただ、あいかわらず代読は、元市議会議員が指名した者ではありませんでした。<o:p></o:p>
この元市会議員の場合、市議会でのやりとりは良く聞こえていたと思います。だからこそ、余計、即座に感情を込めた自分の言葉として発言したかったのに違いないと思いました。<o:p></o:p>
言葉には感情があり、そのことが出来るのは、本人または、本人の指名する信頼できる代理人による代読だったのだろうと思います。パソコンの音声変換や議会が指名した者による代読では、「気持ち」を伝えることができないと本人が判断したのではないかと推察いたします。<o:p></o:p>
これは聴覚に障害を持つ私自身の問題でもあります。同じ聴覚に障害を持っていても、コミュニケーション方法は個々によって違います。そういった意味で、障害者自身が情報収集手段を選択できることが大切であると考えています。<o:p></o:p>
一審も今回の二審も「議場での発言方法を決めるのは議会と議長の裁量」であるとして、本人が発言方法を選択することではないと裁決しています。<o:p></o:p>
一審では、パソコンを打ち込むことを強制した1年3カ月間について、参政権の侵害があったとしており、10万円の損害賠償を命じる判決でした。<o:p></o:p>
今回の二審では、これより前の1年半もほかの発言方法が審議されず、事実上発言できない状態であったとして、参政権の侵害を認め、この期間も加え300万円の損害賠償を命じました。<o:p></o:p>
判決後、元市会議員の長女による代読で「裁判所は、自分の発言方法を自分で決められないことをおかしいとは思わないのか」と訴えています。<o:p></o:p>
今後、控訴するのかどうかは知りませんが、とてもやるせない気持ちになった判決でした。<o:p></o:p>
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4月28日の勉強会「わかりやすい日本語の話し方」講演の講師、榊寿之氏は、NHKで「趣味の園芸」の司会等を担当し、現在はNHKのEテレ(旧NHK教育)「にほんごであそぼ」で「今日の名分」などのナレーションや、ラジオ第一「ラジオ文芸館」の朗読、NHK日本語センターで、朗読の講師を務めているとのことでした。<o:p></o:p>
今回は、4月にNHKに入社し6月にデビューする新人研修でのことを交えて、指導する立場としてお話されました。<o:p></o:p>
新入社員研修では「声の出し方」「聞こえ方」をテーマとした研修を担当し、プロの声の出し方、日本語の発声の特徴を指導しているということです。<o:p></o:p>
用意されたレジュメの項目は次のようなものでした。<o:p></o:p>
1.距離感を適切に<o:p></o:p>
2.発声と息<o:p></o:p>
3.息を出すためのポイント<o:p></o:p>
4.発音と口の動き<o:p></o:p>
5.単語のうねりを防ぐ<o:p></o:p>
いずれも、アナウンサーとして気をつけなければならない話し方をもとにした話しでしたので、参考になる部分とそうでない部分が混在した内容でした。<o:p></o:p>
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テレビ中継でのアナウンスを意識しての話しだと思いますが・・・・<o:p></o:p>
声は大きすぎても小さすぎても、言い換えれば張り上げた声でもひそめ声でも、伝わりにくいと指摘していました。<o:p></o:p>
10メートル以上先に伝えることをイメージし話をすると、1つの文章であればまだ良いのですが、怒鳴っているように聴こえてしまい、逆に近すぎるとひそめ声、ささやき声になってしまい、暗く重たくなってしまう。つまり、距離感を適切にする必要があり、4~5メートル先の人に向けて話すようにすることが基本だそうです。この距離間であれば、とても柔らかく聞こえ感じが良くなるということです。<o:p></o:p>
会話でも参考になると思いますが....
また、自分の声の音の高さを知ることも大切で、意外と自覚していない場合が多いと述べています。例えば録音した声が、自分がイメージした声と違うように聞こえます。<o:p></o:p>
原因は色々あると思いますが、自分の声は、耳の内側で聞いているので、録音した声に違和感を持ったとしても、他人が聞こえる自分の声と同じ、したがって自分の声として掴んでおくことが必要だということです。<o:p></o:p>
1番自然な声の高さは、概ね自分のフルネームを伝える声だということで、自己紹介時にフルネームを伝えるときの音の高さを認知しておくと良いと指摘していました。<o:p></o:p>
榊講師の場合、体調によってもトーンが変わってしまうので認知したフルネームを読む自声をベースに調整しているということでした。<o:p></o:p>
話しをするポイントは「名詞」が大事で、ニュースのような情報を伝える場合は、「名詞」をゆっくり話すと相手が受け取りやすくなるとのことでした。<o:p></o:p>
日本語は音の高い低い(アクセント)で一つの言葉が違ってくると指摘していました。この説明の中で所謂、「同音異義語」について事例を示していましたが、新鮮だったのは、「助詞」のアクセントの違いで単語が異なることについて、触れていたことでした。<o:p></o:p>
「葉が」と「歯が」・・・同じ「ハ」という単語を受けていても「ガ」という助詞の高さによって単語が違ってくるということです。<o:p></o:p>
加えて、同じ言葉であっても地域によってアクセントが違っているので、NHKの場合は「共通語」(※標準語ではなく共通語)によるアクセントで対応しているということでした。<o:p></o:p>
しかし、時代によって言葉のアクセントが変化していくこともあるとし、代表的な事例として「ワカメ」を取り上げて説明をしました。<o:p></o:p>
現在では「ワカメ」の「カ」のアクセントを高くする方が72.3%程度と多数になっていますが、元々は「ワ」のアクセントが高かったということで、20年位前のNHKの「共通語」では、後者で学んでおり指導官より「カ」が高く発声すると「バカメ」と怒られたということでした。<o:p></o:p>
10年位前からアクセントが逆転したようで、その原因も幾つかあると思いますが、テレビアニメの「サザエさん」で「ワカメ」という人の名前の呼び方が大きな影響をもたらし、その呼び方に慣れてしまい、海藻の「ワカメ」と一体化していったのではないかと推測しているとのことでした。(サザエさん現象)<o:p></o:p>
「すみません」が言葉として正しいと思うが、「すいません」とNHKや民放で字幕に表記されるが、それはどうしてなのか?という質問に対して、「すみません」が正しいがマ行は口をはっきり開けなければならず、続けて発音するよりも「すいません」の方が言いやすく、「すいません」と話す方が多くなったことが要因としてあるのではないか、多数の方が使うようになったことで「すいません」を字幕にしているのではないかという話しでした。<o:p></o:p>
つまり、時代により読み方が定着していけば「共通語」も変化していくことになると言うことのようです。<o:p></o:p>
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榊講師の話しは、レジュメにある「2.発声と息」以降については、昼休憩以後に要点のみ説明して終了しましたが、本当は、この部分のほうが、「聞きやすい話し方」のヒントを多く語っていたかもしれません。・・・少し残念でした。<o:p></o:p>
<発声と息>では、相手に言葉を届けるため、発声に息を使うことが必要とあり、息を使った声は、音の質が柔らかい、ふくらみを感じる。音に厚みがあり、単なる発音ではないリアリティを感じる。言葉の1音目の音が起き上がりやすい。それにより言葉の輪郭が明確になり、情報が伝わりやすい。発声する側も、声帯の負担が軽い。と説明書きがあり、具体的な発声の仕方に興味がありました。<o:p></o:p>
<息を出すためのポイント>としては、①喉を開くこと ②口の中を広くすること だということです。<o:p></o:p>
①はアクビをしたときの喉の形(喉の突き当りが上下左右に広がった感じのことを「喉が開いた」状態だとし、この状態で、息とともに声を出すということ(訓練・・?)<o:p></o:p>
②は喉が開いていても口を狭くしてしまえば、息を止めてしまうので、口に力を入れないようにすることだそうです。<o:p></o:p>
<発音と口の動き>ということについては、発音の良さを生み出すのは、口よりも、「舌」の動きだとしてそのためには、①口をオーバーに動かさない ②声を出す方向 が大切だということです。<o:p></o:p>
①口をオーバーに動かすと、次の音に移るのに時間がかかるので、却って滑舌は悪くなると指摘しています。<o:p></o:p>
②前かがみでは腹筋が使えず、息を使うことが困難、身体をお越し、顔を少し上に向けて声を出す。<o:p></o:p>
※ここで気になったのは、目で追う口の動きで言葉を知ろうとした場合、ゆっくりとはっきりと口を開けることで対処することがあり、このことと発音の良さと相反しているのかということでした。<o:p></o:p>
<単語のうねりを防ぐ>には、①力まずに声を出す ②オノマトペに注意 することだそうです。<o:p></o:p>
①力だけ入れて言葉を発すると、言葉の1音目の音が出ずに、2音目以降の音が強調される→これがうねりの原因→言葉は「普通に」言われたときが、もっとも伝わりやすい<o:p></o:p>
②オノマトペ(擬声語・擬態語)に注意とは、例えば「どんどん」とか繰り返しの言葉はフシがついたようになるので、聞きにくい。1音目に息を出すのがポイントで「普通に」言うことが良い<o:p></o:p>
関連してプロミネンス(卓立)によって文章の意味が違ってくるので何を伝えたいのかを考えて表現することが大切だと説明しておりました。<o:p></o:p>
※プロミネンス・・大辞林より「文中にある語句を強調すること」
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途中からレジュメ文書の引用ばかりになり申し訳なかったです。「わかりやすい日本語の話し方」という題目の講義でしたので、実際にお話されたことにレジュメの説明を加えなければ逆に分かり辛いような気がしました。悪しからずご了承ください。<o:p></o:p>
加えてほしかった内容としては、聞き言葉で苦労している「助詞」をはっきり話すことや「パラ言語」のことでした。<o:p></o:p>
これは、自分の聞こえ方で足りない部分であって、一般的な話し方の指導ではないのかもしれません。<o:p></o:p>
次回に期待を込め、報告といたします。<o:p></o:p>
また、脱線ばかりの話しになりました。話しが少し散漫になったかもしれません。<o:p></o:p>
・・・・よろしければ、更新をお待ちください。<o:p></o:p>