振出し 難聴、そして人工内耳へ

2007年2月17日から始めたブログ人のブログを継承しています。
gooブログは2014年11月3日よりスタート・・・

シンポ:人工内耳装用者による体験的聴能論その2

2011-02-28 23:47:26 | 聴こえ

横道にそれますが、自分の職場環境について、最初に書きます。

職場(部署)は、狭いフロアに80名近くの人が働いています。

一人一人にPCが与えられていますが、仕切りというものがなく、雑多な音に満ち溢れています。

話し声、電話の受発信音、コピーの音、カーソルを打つ音、プリンターの音・・・人工内耳のマイクはそれらの音を区分せず、拾っていき、健聴者が苦も無く話ができる環境で、話声よりも機械音が聞こえ被さり、総体として雑音として捉える自分がおり、結果として騒音下の中で仕事をしている。

したがって、この職場では、人工内耳の聞こえの機能は半減してしまうことになります。

さすがに、このような環境の中では電話応対は無理ですので、机には電話機が置いてありますが、内線番号を表示していませんし、電話はできないことになっています。

自分の他には、障害等級で言うと6級程度の聴覚に障害を持った方が勤めていますが、席が離れており、仕事内容も違いますので、ほとんど交流はありません。

ですから、健聴者の中に一人ポツンといるという感覚で仕事をしています。

イントラネットやインターネットがなければ、仕事が成り立たないのではないかと思っています。

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このような職場ばかりではありませんが、人工内耳装用児や補聴器装用児が大人になり、健聴者の中で仕事をするということは、特別な技術や能力、自らが事業を行っているとかということでない限り、雑多な音が行き交う中で働いていくのではないかと思います。

これから、書いていく内容の中で、「聴能」がもたらす思考の変化、行動の変化を知ることが、社会の中での人工内耳装用者の在り方を考えるヒントになれば良いと考えます。

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さて、「人工内耳装用者による体験的聴能論」シンポジウムの報告の続きを書いていきます。

4人の成人の人工内耳装用者は、仕事内容や置かれている状況、年齢にも違いがあり、主催者である大沼先生の意図するところが深いものがあると感じました。

男性3人に女性1人のパネラー達は、次のような発言をされていました。(あまり、メモを取っていませんですし、記憶が薄れていますので誤って聞いているかもしれませんので、失礼がありましたらご容赦ください。)

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<体験1>

1934年に生まれ、17歳の時(1951年)に補聴器(日本で発売されて2年後くらい)を装用し、以来52年間補聴器をしてきた東海大学名誉教授の鈴木さんが友人の薦めもあり人工内耳と出会ったのは2003年だったということです。

「人工内耳を装用した当初はあまり聞こえが芳しくなかったが、医師から聞き取り練習を20分間(本当は10分という指示だったそうだが・・・)しなさいと言われ、盲人用に録音したテープを毎日聴いていった。その繰り返しの中で、しばらくすると聞こえてくるようになった」とお話しされていました。

「自分の周りの音が聞こえるようになって気付いたことは・・・それまでの自分の聞こえに周りの者が気を使っていたことがわかったことだった。」

「また、今まで聞こえていなかった音が聴こえびっくりしたこともある。ある日、何処かで音声が聞こえてきたが、人はいない。探ってみると風呂が沸いたことをお知らせする湯沸かし器の音声であった。」

「人工内耳で聞こえるようになると、人との話の対応が早くなった」

「但し、人工内耳では音の大小の区分ができないので、朝、起きて家内と話すと、大きな声だと言われる。そこから自分で声の調整をしている。」

「スピーチプロセッサのバージョンアップにより聞こえが向上している」

との、興味深い発言をされていました。

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<体験2>

高岡さんの場合は、講演する機会が多いのか、次の発言が印象に残りました。

「もっとも大きなことは、自分の声がちゃんと聞こえることだ。それがうれしかった」

「補聴器だけのときは、あらかじめ頭の中で原稿を思い浮かべ、それにそった話をしていた。また質問等についても一端、頭の中で原稿に置き換え対応していた。ところが人工内耳で聞こえてくるにしたがって、原稿を思い浮かべる必要がなくなり、話しながら、別の思考をしている自分がいる。それは受け答えも同様だ」

「思考が解放され自分の話しをしている内容が頭の中で駆け巡り、頭の中で考えてから話せるようになった」

「立体的に聞こえている」

「小さいころからの難聴で、母と話をする機会があまりなかったが、人工内耳を装用してから母と話をすることがあった。話しをしていると外がやかましいので何の音なのか聞いてみると『蝉の鳴声』だと母が教えてくれた。そこで『蝉の鳴声』を知った・・・この音は実は自分が通勤路でも良く聞こえていたものだった・・・人工内耳をして初めて知る音がある・・・」

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<体験3>

関東労災病院の佐藤さんの場合は、人工内耳を装用するに至ったことについて次のことがあったとまず話をしていました。

「聞きながら考えることが困難になっていき、スピードについていけない自分がおり、行動範囲が狭くなっていった・・・これではいけないと思った」

次いで、人工内耳をしてからの変化について語っています。

「音が立体的に聞こえる」

「聴こえなかったときは、スケジュールを取り決め、それに沿って行動していた。そのため時計を見ることが多かった。○○分になったから、後片付け。○○時になったから、洗濯・・・掃除とか、決められた時間で動いていた。時計が一日の行動の裏付けであった。ところが、今は時計を気にしなくなった。テレビから聞こえてくる音で、もうそろそろ○○をしなければとか・・・・」

「同時思考が働くようになった・・・考えながら行動できるようになった」

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<体験4>

 神田E・T・N医院の神田さんの場合は、

「日本の人工内耳装用基準になる前にドイツの恩師や同僚から、人工内耳を薦められた。自分の聞こえは(デシベル)、欧州では人工内耳をするに値するものであった。実際にドイツの同僚に人工内耳装用手術をしてもらった」

「自分を治療してくれていた日本の医師やドイツでの同僚、恩師、日本での恩師や同僚達に感謝の気持ちでいる」

「今の聞こえは騒音下の中でも、あるいは複数会話にも対応できる(片耳補聴器、片耳人工内耳)。人工内耳は高音域まで落ちない。現在の自分は20~30?くらい」

「人工内耳の聞こえは、A+B+Cではなく、A×B×Cである。逆に言えばどれか一つがゼロだと全てゼロになる」

・・・・・・・

 これに、大沼先生が、パネラーに的確に質問をしています。

 例えば、鈴木さんに対しては、「高齢者で難聴になっていっている方がいる中で、人工内耳で聞こえを取り戻しているが、そういったことに対して何か意見は?」

とか、高岡さんに対しては、「難聴者の代表である高岡さんが人工内耳を装用したことに対して、難聴者や聾者からの反応はどうであったのか?」とか・・・・

 これに対してパネラー達は、前向きな対応を話しています。

 また、大沼先生が指摘したことには「レスポンスの速さ」のことがありました。これに対して神田さんが意見を述べています。

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 自分がパネラーの発言のどこに注目したのかということ、大沼先生の質問にパネラーが切り替えした前向きな発言はどのようなものであったのか、また「レスポンス対応の速さ」とはどういったことであるのかについては、次回の更新時に書いていきます。

 きっと参考になることがあると思います。少なくとも自分は色々とこのシンポジウムの帰路、「のぞみ」の車内でパネラーの皆様の発言について考えていました。

※パネラーさんの発言については、自分がそのような発言であったと解釈したものですので、誤った解釈をしていることもあることをご承知おきください。聞き間違いもあると思います。

 更新をお待ちください。

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シンポ:人工内耳装用者による体験的聴能論その1

2011-02-20 23:23:50 | 聴こえ

先日と言っても、2月6日ですが、東京大学先端科学技術研究センターで開催された「聞こえのバリアフリー:人工内耳装用者による体験的聴能論」というテーマのシンポジウムに参加しました。

 午前中に羽田空港国際線ターミナルに寄っていましたので、会場についたのは開始時間ギリギリでした。

 もっとも、「代々木上原駅」から東京大学のキャンパスまでの道に少し迷ったこともあります。

 例によって地図らしい地図を持たずに、自分の勘に頼って歩いていることが大きな原因だと思います。

 この企画を立てた進行役の大沼先生(前筑波技術大学学長で現在は東大先端研の客員教授)によると、120名の方が事前にメールで申し込みをし、当日に飛び入りで参加した方が60名程度いたそうですから、100名の定員の講堂に180名集まったことになります。

 自分のような人工内耳装用者や人工内耳装用児の親はもちろん医師や言語聴覚士、教師、メーカーの方達、要約筆記者や手話通訳者、情報保障支援者と広範囲にわたって参加されたようです。

 それだけこのテーマに皆が興味を持ったということだと思います。

いずれにしても、なかなかこれだけのメンバーが一堂に会することはないのではないかと思います。

 本音を言えば、この機会に参加者とお話しできれば良かったと思いましたが、これは無理があります。

 自分が知りたいことに携わっている方が多くいたのではないかと思い、良い機会を逃してしまったという思いは残りました。

 ただ、この小さなブログを知っている方は少ないと思いますし、東京を活動のベースにしていませんので面識ある方も少なく、広く意見をお聞きすることができないので、このブログでの自分の捉え方が偏っている部分があるのではないかと危惧しています。

 さて、テーマに掲げていますように体験的な部分で人工内耳成人装用者の4人の方がパネラーとしてお話しされました。

順に東海大学名誉教授の鈴木さん、全難聴の高岡さん(個人として参加と表明していました)、関東労災病院言語聴覚士の佐藤さん、神田E・T・N医院の神田さんがお話をし、大沼先生が質問をするという形式で進み、その後パネラー全員と質疑応答するという形式でした。また、最後に東京医療センター・臨床(感覚器)センターの加我先生の講演がありました。

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 今回は、ほとんどメモらしいメモを取っていないので(それでもリポート用紙に15頁くらい書いていますが、ほとんど解読不明な乱筆で記憶も定かではありません)、心に残ったことだけを報告いたします。

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 冒頭に大沼先生が、自分も加齢による難聴を経験し、補聴器を使用することで初めて分かったことがあり、それは聴覚の専門家だと自負していた自分にとって貴重な体験であったことが「体験的聴能論」とした理由のひとつであり、あるいは、「聞こえのバリアフリー」というタイトルでこの一年間企画してきた経緯(「人工内耳・補聴器の選択と非選択」「補聴器の聞こえのバリアフリー」)があり、今回、「人工内耳をめぐるバリアフリー」をテーマに取り上げたことをお話されました。

 ・・・・大沼先生ご自身が補聴器をしてみて気付いたことについては、このブログで2008年10月13日に取り上げた「秋の文化祭2-その1」の中で東工大学の上羽教授のお話を思い出していました。

上羽教授は、補聴器と磁気ループ受信機を実装してみて理解できたことお話されていました。

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さて「聴能」とはいったいどういったことでしょう。

「聴力」・「聴覚」そして「聴能」、この「聴能」という定義をしっかり持っていないと4人のパネラーのお話も見えてこないのではないかと思いました。

「聴力」とは、音を聞き取る能力、識別する能力のことを一般的に言っていると思います。つまり、音の大きさとか高低とか音色などを聞き取り、識別する能力。「聴覚」とは、音を感じる感覚、音を感知する機能のことを指すのに対し、「聴能」とは、単に音として聞こえるだけでなく、それを言葉として、あるいは環境音として、知覚し認知する能力のことを言っていると思います。

何か音がしているのだけれど、それが何であるのかわからない。何かしゃべっているようだけれど、なんて言っているのかわからない。単音は聞こえるのだけれど、言葉として理解できない。などを知覚し認知し環境音であったり、言葉であったりとして認知していく能力が「聴能」ではないかと思います。

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人工内耳装用者の「リハビリテーション」について、あるいは「ハビリテーション」について、何故それが必要なのか、あるいはどのような方法があるのか、コクレア社でドナ・ソーキンさん(米国コクレア社副社長)の話をお聞きしたことがありますし、また、日本コクレア社の杉崎さんがACITA東海の昨年の勉強会でリハビリの話をお聞きしたことがあります。(東海については勉強会に遅刻しましたので、杉崎さんにお願いしてPC内のパワーポイント文書を見せていただきました。ついては正確には勉強会の話しは直接聞いていません。)

・・・・コクレア社の講習・・・・

「私たちは、耳をトレーニングしているのではない。耳から聞こえたことを理解できるよう、脳をトレーニングしているのである。」

そして、リハビリテーションの利点として次のようなことを述べています。

「リハビリテーションの利点は①進行性難聴の場合、装用者は会話音域全体の音声が何年間も聞こえていなかった可能性がある。②進行性難聴の場合は音声や環境音を認識する学習が必要な場合がある。③以前の聞こえ方を忘れて、新しい音声に慣れる。④言語発達前に失聴した装用者の場合、人工内耳装用によって、今まで聴いたことのない音声が多く聞こえる可能性がある。⑤両耳で聴いている場合は、装用効果を最大限にし、各耳からの聞こえを統合させる。⑥難聴の経歴に関わらず、リハビリテーションを行った方がよい。」としています。

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少し、脱線しましたが、4人の体験的聴能論に自分が期待したのは、どのように音を認知していったのか、あるいはトレーニングがあるのならばどういった方法があるのか、言葉や環境音を理解したと感じたのはどういったことであったのか、という基本的なことを知りたいということにありました。

そのことは、中途失聴人工内耳装用者であっても言語習得前の人工内耳装用児であっても変わらないヒントがあるように思えたからです。

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少し、長くなりそうなので、一端ここで終了し、続きは次回更新のときに書いていきます。

そこで主として「聴能」についてパネラーが感じた「聴能感覚」についての発言や大沼先生の質問、加我先生のお話で気になったことを書いていきます。

更新をお待ちください。

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個人的な思い

2011-02-17 23:17:14 | 一服

2月17日はブログを始めた日です。2007年1月12日に人工内耳装用手術をし、25日に音入れ、そして2月17日からブログを開始しました。

ざっとこんな流れです。

したがって、まる4年過ぎたことになります。

昨日(2月16日)でアクセス数118035件、記事数235話、コメント数878件・・・これが4年間のこのブログの数字から見た歩みになります。

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1998年3月30日に入院し、2007年1月12日に人工内耳を装用しました。

じつは、あさって2月19日に産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの更新の研修会があります。

無事に更新できるかは、定かではありませんが参加してみようと考えております。

この資格は、仕事をするうえで必要でしたので、産業カウンセラーを2004年1月、キャリアコンサルタントを同年9月に取得しました。

しかし2003年に資格取得のため通っていた講座は、秋に聴力の悪化で入院をするなど欠席がちになり、最後は土曜日に入院先から抜け出して出席するなど、途中からは進行性の難聴との競争的な部分がありました。

自分としては、この時点で資格を取得しなければ間に合わなくなるという気持ちが強くなり、「耳で聞こえていた(補聴器を通じて・・・)証」として資格を取得するという意味合いが大きくなっていきました。

結局、この資格を活かす仕事は、難聴の進行とともに続けることはできませんでしたが、あの当時、確かに人の話を聞いていた自分がいたという思いだけは残りました。

更新を諦めていたのですが、コミュニケーション障害である難聴を経験したことが、いつの日かこの資格を活かすことができるようになるかもしれないという思いもあり、参加可能であれば研修に出てみようと思ったわけです。

・・・・どうなることやら、駄目もとですね。

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このブログもそうですが、もし難聴になっていなければ、人工内耳を装用していなければ、たぶん、めぐり合わなかったことも多くあるという思いがあります。

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字幕付与技術 1-3

2011-02-13 19:11:03 | 聴こえ

東京で風邪をもらい、まだ喉が痛い状態が続いています。

 皆さんはいかがですか?

情報が東京に集中しているのは、致し方ないのですが、往復をしている自分にとっては時間的にも金銭的にも・・・体力的にも厳しいものがあります。

東京に住みたいとは思いませんが、情報を得るため居たいとは思います。

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さて、先日行われた東京大学 先進科学技術研究センター「聞こえのバリアフリー:人工内耳装用者による体験的聴能論」というテーマのシンポジウムについては、感想などを後日、掲載していきたいと考えていますが、すでに他のブログで取りあげられていますので、ご覧になられたら良いと思います。

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本日は、昨年11月27日に京都大学 学術情報メディアセンター南館で行われた「『聴覚障害者のための字幕付与技術』シンポジウム」の報告の続きを掲載していくことにいたします。

なお、本日の話しは、4月24日(土)ACITA東海、勉強会にて、紹介する話の中にも取り入れていこうと考えています。

内容については、残念ながら文書で紹介するよりも、体験した方が分かりやすいのでどこまでお伝えすることができるのかは疑問ですし、そういったことを自分なりの解釈で勉強会にて報告することは、ずいぶん無茶だなと思っています。

しかし、ACITA東海では比較的に装用児の親の会が充実しており、勉強会に熱心に参加されていますので、京都大学の試みは知っていただいたほうが良いのではと思いました。

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 4月24日の件については、原稿の進行とともにこのブログでも一部を取り上げていきたいと考えていますが、2時間という枠組みでは全部公開することは無理があります。

本音を言えば、学校の先生でも講師でもなく人前で話す機会がない自分にとっては、逃げ出したい気分でもあり、話す自信はありません。

 したがって、逃げ出さないようにするためにも当ブログにて表明しておくことにします。

 【テーマ】「音声会話と文字会話の支援機器の紹介」

  <内容>

   音声会話の支援機器

   1.「聴こえ」支援プロジェクト の紹介・・・東京工業大学の試み

   2.大学講義の実践・・・筑波技術大学FMシステムの活用紹介

   3.健聴の家族と一緒にテレビを楽しむ方法の紹介

   4.FMチームティーチング機能の実演

   文字会話の支援機器

   1.ポータブル字幕機対応の演劇を見た感想

   2.音声認識技術を用いた講演・講義の字幕配信システムの紹介

      ・・・衆議院速記技術に採用 京都大学学術メディアセンターの試み

   3.ゲーム機「DS」を使用した文字会話の参加型実験

※尚、あくまで個人的な見聞による紹介です。見聞するだけで何もしていない自分としては、研究者や開発者、あるいは実践されている方達の意志をひとつでも伝えることができたらよいと願っています。

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 人工内耳や補聴器で、健聴者と同じような聞こえになることは残念ながらないと認識しています。

 騒がしい場所での会話、離れた場所での会話、反響音が多い部屋での会話・・・このようなところでは、少なくとも自分の場合は、会話は難しい状態です。

 したがって、そのような限界を知ったうえで、聞こえの支援機器を求めることが必要だと思っています。

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1月12日の中日新聞夕刊の一面で、「4元中継で遠隔講義」という見出しの記事が掲載されました。

これは愛知県下の大学の試みで、愛知学院大学の心身科学部と薬学部、歯学部と愛知県立大学の看護学部の4学部で「予防医学」の分野を合同して遠隔操作にて講義を行うというシステムです。

映像を4元中継して講義を行うもので、今後はさらに輪を広げ愛知医科大医学部を加えた5元中継にすると紹介しています。

モニター8台を設備し、画面を4分割するなどで4学部の講義風景が映し出され、講義を見聞し、モニター越しに教授と質疑応答していくもので、専門性のある分野で時間的にも人的にも有効に活用していこうという試みです。

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 じつは、11月27日のシンポジウムで京都大学学術情報メディアセンター河原先生の講義で、映像だけでなく字幕を付与し配信することによって、大学の講演や講義を配信していくシステムの実演を拝見したばかりでしたので、愛知県下の大学の試みの記事を興味深く読むことができました。

 これより先、11月24日に日経で「KDDI研究所と京都大学、最新の話し言葉音声認識技術を応用した字幕生成・配信システムを開発」-字幕付与の熟練技術がなくとも、同期した映像と字幕の提供が可能-というプレス記事が、KDDI研究所と京都大学の共同として掲載されていました。

 この記事では、この技術により最小限の人員で字幕付与までの時間が最小限に抑えることが可能になったという内容です。

 具体的には映像と字幕を同期させるアルゴリズムの導入により可能になったということが書かれています。

 これらの技術によりブロードバンドの普及に伴い、講演や講義などのイベントを遠隔地で音声及び字幕を付与した映像を提供することが可能になったとしています。

 このアルゴリズムのことについて、京都大学でのシンポジウムのなかで河原先生は次のように説明しています。

 「音声認識の入力処理の大半は計算機で行うが、講演や講義のような自然な話しをする場合、言葉を音声認識することは困難であった。私たちは初対面の人と話をすると最初は聞き取りにくいことがありますが、話しているうちにその人の話し方に慣れてきます。また、パソコン要約筆記を行っている方も事前に講演や講義の内容を入手して、単語を登録したりします。このようなことを音声認識システムにも行う必要があります・・・・」

   ●

 国会審議(衆議院)の会議録作成で、京都大学で研究開発されてきた音声認識システムが導入されることになり、音声認識精度は文字単位で85%(講義では87%)程度になっており、これを現行の速記者の方が修正と編集作業を行うことになっています。

 この音声認識システムを構築するのに必要なのがコーパスです。これは国会審議で使われる言葉を集積したもので、音声で300時間、テキストで360万語におよびます。

 ※つまり、「話し言葉(審議)の辞書」と解釈しました。

 これとは別に講演の音声認識には、学会での講演やスピーチを大規模に集積した「日本語話し言葉コーパス」があり、音声で600時間、テキストで700万単語になります。

 このような講演では80%程度単語認識をしており、あとを修正することになるようです。→これが「必要最小限の人力」なのかもしれません。

 また、あらかじめ読み上げ原稿を用意している場合は90%の認識率になるとのことです。

 この音声認識ソフトは「Julius」と呼ばれ開発を進めており、「IPtalk」と連携することで字幕配信ができることになります。

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 実際に河原先生が講義した映像及び音声、字幕をデモとしてその場で拝見しましたが、おおよそ30分前の講義が、そのまま音声言語と変わらない字幕付きで見ることができました。

 それをもとにリアルタイムに説明している河原先生の講義に何か不思議な感じを受けました。

 欠点としては、生で質問ができないということがあります。

リアルタイムとは言えませんが、30分程度の遅れで講義を受けることが可能でタイム差は解消されると感じました。

 このようなシステムを使用すれば、講演や講義を全国の聴覚障害者も共有することができるものと確信しましたので、開発とともに実践していただきたいと思いました。

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・・・・わかりづらい説明になりましたが、理解できましたでしょうか?

 筑波技術大学の小林先生がお話された、自動付加してリアルタイムに字幕にルビを付与するシステムとともに、京都大学の音声認識システムを知り、学校や研修などで、早く活用していただけるようにならないものかと感じました。

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 尚、同じシンポジウムで県立広島大学の長谷川先生が講義をされた『「失語症」を視野に入れた「ポイント筆記」』について、強く感じるところがありましたので、別の機会に紹介させていただきたいと思っています。

また、自身が記者だったこともある関西サイエンス・フォーラムの兼子先生の話しは、要約筆記者に参考になる話だと思いました。

 ありがとうございました。

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難聴・・・羽田空港国際線ロビーで感じたこと

2011-02-07 00:26:51 | 聴こえ

5日・6日と東京で行われた耳関係のイベントに参加し、帰りが遅くなりましたので、予定していた更新記事については、後日掲載する事にいたします。

 大変申し訳ございません。

 5日は東京の池袋にある東京芸術劇場「小ホール1」で行われた『チェーホフ?!』という劇をイヤホンガイド社の「G・マーク」というポータブル字幕機を使用して観劇しました。

 この感想等については、後日掲載いたします。

 また。6日は、午前中は羽田空港国際線のユニバーサルデザインにそった聴覚障害者向けのTループ設置等を一人で見て回りました。

 午後からは、東京大学 先進科学技術研究センターで行われた「聞こえのバリアフリー:人工内耳装用者による体験的聴能論」というテーマのシンポジウムに参加しました。

 こちらについても、後日、感想等を掲載したいと考えています。

 本日は、一服したところですでに11時をこえていますので、羽田空港国際線で感じたことを書き留めることにします。

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 ご存じのように羽田空港国際線を再開するにあたって、ユニバーサルデザインで実施することにより、開かれた空港として位置づけをしようとしているようです、

 聴覚障害者には、1階~3階のインフォメーションコーナーに簡易筆談器を置いており、さらに3階のインフォメーションコーナーには磁気ループを設置しています。

 また、トイレには、アナウンスが聞こえづらいあるいは聞こえない方のため、緊急時には黄色のランプが点滅するようになっています。

 トイレ・エレベーターなどでは操作方法などできるだけ文字で説明したシールが張っています。

 ただ、おしいことに黄色ランプについて、どこにも説明がされていなく、本当に聴覚障害者が認知できているのか、不安を感じました。

 この黄色ランプは聞くところによると中部国際空港でも採用されているようですが、緊急時に黄色ランプが点滅し動揺しないように一般のかたや聴覚障害者自身が分かるような説明文書があると助かります。

 トイレ(個室)は広く、他の部位の障害を持っている方にとって、使いやすいのではないかと思いました。

 さて、羽田空港国際線ロビー3階インフォメーションに磁気ループを設置していますが、係りの方に聞くと、この2~3か月間でほとんど使用されていないということでした。

一度、磁気ループでの聞こえを試したいとお願いすると案内係の方は快く引き受けてくれ印象がとてもよかったです。

 羽田空港国際線ロビーの磁気ループは、スタンド式有線マイクとタイピン型ワイヤレスマイクを使用し、ワイヤレスタイピンマイクは、案内担当者が使用し、スタンド式有線マイクは、Tマイクを使用できる補聴器装用者・人工内耳装用者が使用するというセッティングのようでした。

 これは、案内係ひとりに対して、難聴者が複数人いる場合は、質問する難聴者の声もマイクを通じて理解でき、案内係りの説明もTマイクに切り替えた難聴者に聞こえるのに便利だという考え方での設定のようです。

 しかし、実際に試用してみるとワイヤレスタイピンマイクは、送信機に電池が入っていないのか(充電されてないのか・・?)聞こえなかったのは残念でした。

 自分の急な申し出に慌てていたのかもしれません。

 そこで、スタンド有線マイクを使用して話すことにしました。

 ところが、マイクをこちらに向けたままにして話しかけるので、当然聞くことはできません。

たぶん、マニュアルでは、ワイヤレスタイピンマイクと同時使用になっているので、対応できなかったものと判断しました。

そこで、この場合は、Tマイクは補聴器及び人工内耳側にあるので、マイクを案内係の方が使用しないと、聞こえないことを説明しました。

 難聴者一人の場合は、このセッティングの方が使いやすいし、スピーディーに確実に案内係の説明を聞くことができるのではないかと思いました。

 実際に聞いてみましたが、とても良く聞こえました。

 ただし、人工内耳側はTMで聞くよりも、Tマイク専用で人工内耳側も聞いたほうがざわめきの多いロビーでは良いのではと感じました。

 逆に係りの方からマイク真っ正面で聞いてもらったほうが良く聞こえるのかという質問がありましたので、磁気ループを張った範囲内は聞こえるものだと説明し、試しに2メートル程度離れて聴いてみると聞こえが小さくなりましたので、その旨伝えておきました。

 結果的に、マイク真っ正面で難聴者が聞くということが無難だろうと説明して置きました。

 ところで2~3か月間にわたってほとんど磁気ループを使用していなかったといことは、難聴者がこの磁気ループの設置場所を知らなかったのか、磁気ループや簡易筆談器の場所表示が小さすぎるのかなのだろうと思いました。

 もちろん、磁気ループを使用せずとも他の文字による表示で分かったのかもしれないし、Tマイク使用者が少ないのかもしれません。

 実際にタイピンワイヤレスマイクが使用できない状況や、有線マイクの使用方法が理解できていない状態でしたので、タイピンワイヤレスマイクの送信器の電池容量があるかないかを確認する意味でも、健聴者や軽度難聴者にも使用できる受信機をチェック用に備え付けて置き、使用してみることがスムーズに理解できるのではないかと感じました。

 せっかく聞こえの良い設備ですし、案内係の対応も親切でしたのでもったいなく思いました。

 余談ですが、午後から参加したシンポジウムで、羽田空港国際線に磁気ループを設置したソナール(磁気ループメーカー)の方とお話しをする機会がありましたので、使用方法について再度きちんと説明された方が良いのではと提案しておきました。

 ※インフォメーションコーナーに置かれていた「どこ?」「緊急」などを図で示し、指を差せば伝えることができるペーパーは良いアイデアだなと感心しました。

・・・・・・・

 本日は、少々疲れていますので、これにて記事といたします。

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