2月にコクレア社(人工内耳メーカー)から、新FMシステムカタログが送られてきました。
この新FMシステムは、昨年、秋の電波法改正により補聴器専用周波数帯として169MHz帯が新たに加わったことへの対応として提案されたものでした。
この新補聴器専用周波数帯のメリットは、雑音が入りにくいこと、使用距離が30メートルと飛躍的に広がったことが大きな特徴としてあります。
タクの場合の最大のデメリット、高価なことです。
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ところで、この対応型の機種としてコクレア社が提案したのがフォナック社の送信機「キャンパスSX」でした。
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これで、国内で取り扱われている人工内耳メーカー全て(コクレア社・メドエル社・バイオニックス社)が、フォナック社のFMシステム機器で対応をすることになりました。
フォナック社は、ご存じのように補聴器のメーカーです。
小型のFM受信装置を世界で最初に取り扱ったのもフォナック社でした。
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人工内耳装用者や補聴器使用者にとって、会議、講演、講義、教室などのような比較的広い会場で、多人数いる中で司会者や講師の話しを聴くことは困難です。
そういった会場に行き、苦い思いをした経験はあるのではないでしょうか?
もちろん、そのために磁気ループや手話通訳者、要約筆記記者の情報保障に係る設備や手配があれば、何とか参加できると思います。
しかし、この様な情報保障の配慮がされている講義や講演は残念ながらありません。
つまり、聴こえている方たちのための講義や講演になっているのが現状です。
知りたい情報やタイムリーな話題が、なかなか難聴者まで届いてこないのはこのようなことも原因の一つとしてあると考えます。
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また、一見、主催者が配慮していると思いこんでそれでよしとしているケースもあります。
例えば、昨日(3/8)、タクは弁護士会主催の裁判員制度の講演に参加してきました。
そこでは、入場口で手話通訳者を必要とする方は申し出てくださいと書かれてありました。
講演が始まるとなるほど手話通訳者が司会者の隣にいて通訳をされていましたが、要約筆記については皆無ですし、もちろん磁気ループも設置されてはいません。
つまり、弁護士会であっても、聴覚障害者=手話という図式を超えたイメージを持てないということになります。
実際には、難聴者のかなりの方が手話はできませんし、聾者と難聴者の手話も表現方法に違いがあります。ましてや中途失聴者に限っていえば、ドラマと違い、聴こえなくなったからと言ってあくる日から手話が使えるようになるなんてことはあり得ないのです。ましてや、聴こえなくなってからの手話取得の学習は思った以上に困難です。(年齢的なこと、それまでの聴者としての経験が逆にネックになるなど・・・・色々な条件が重なっているのです。)
このようなことを一般の方に理解していただくのには、かなりの労力がまだまだ必要なようです。
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FMシステムは、難聴者個人がそれらを補う手段のひとつとして捉えても良いでしょう。
言い換えれば、難聴者が行える個人的な情報保障に関する自己防衛とでもいえるものかもしれません。
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コクレア社から届いた新FMシステムのカタログを開いて、やはり最初に見たのはタクの場合は価格でした。(つまり機能も大切だが購買できるだろうかということです。補助申請については地方自治体によってまちまちです。)
セット組(送信機・受信機等)価格であっても189,000円~226,800円と非常に高価な価格帯になっています。
もっと手軽な価格帯であれば、飛びつくことができるかもしれませんが、こういった価格帯の場合、本当にこのFMシステムを必要とする機会がどれくらいあるのだろうかと考えてしまいます。
つまり、まとめると次のようなことになるのではないでしょうか?
①どのような場面で聴くことになるのだろうか?
②その頻度はどれくらいあるのだろうか?
③知人にもお貸しできるような汎用性があるのだろうか?
④人工内耳や補聴器が新しいタイプになっても使用可能なものなのだろうか?
⑤コクレア社がセット組しているものでしか使用できないのだろうか?
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そこで、これらの疑問を少しでも解決するためにタクは、次のようなことをして確かめることにしました。
1.コクレア社ではなく、補聴器メーカーであるフォナック社にカタログを請求
2.「めだかの学校」(愛知県蒲郡市のグループ・・・カインド福祉ネットのソラシリーズの普及等、難聴者のための情報保障機器の普及など独自の活動を行っているグループ)が主催したFMシステムの試聴会に参加
3.フォナック社FMシステムを取り扱っている補聴器販売店で疑問点を確認
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これらは、3月1日午後から3月8日午前中までに行ったことですので、まだまだ情報がたりないこともあるかと思います。
したがって、FMシステムをすでにご使用されている方、あるいは試聴された方からみれば、解決済みのことだと思いますし、あえてこのブログに載せる必要はないのかもしれません。
ただ、学校が始まる時期、参考になることがあれば良いなぁと思い・・・・いや、ただ単なるタク自身の好奇心(笑)だと思います。調べたことを掲載することにいたしました。
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まず、試聴ですが、
じつは、愛知県蒲郡市に行くのは少し遠いこともあり、その日の午前中に用事を済ませ、設定された時間に着くことはできないだろうなと思いながら向いました。
その関係で30分程度の試聴で終わってしまいました。(会場を設営して頂いた「めだかの学校」の方達にろくな挨拶もできず大変失礼いたしました。)
<送信機>
この試聴に使われたのが、フォナック社の送信機が「イージー・リンク」というマイク内蔵型で送信側(つまり学校で言えば先生)の首にぶら下げて使用するタイプのものでした。
このひとつバージョンを上げた送信機に「ズーム・リンク」があります。
違いは「イージー・リンク」が指向性マイクのみであり「ズーム・リンク」が高指向性・指向性・無指向性の3タイプのマイクに切り替えることができるということくらいです。いずれも、外部入力端子(TV、CDプレーヤーとの接続)を持っています。
<受信機>
Tコイル対応タイプの「マイ・リンク」という受信機でした。
この特徴は、マイクで拾った音声を、首でぶら下げた(ネックレス部分がTコイルになっています。)受信機で聴くということです。
・・・・・つまり、Tマイク切り替えができる人工内耳スピーチプロセッサや補聴器であれば、機種に関わらず、例え、新しいタイプの人工内耳(3Gからフリーダムとか)・補聴器になっても使用可能ということになります。
<試聴した感想>
1.大教室形式での試聴でしたが、充分、聞き取りができました。これであれば、講義や講演も聴き取れるという感じがしました。
2.会場の音を拾いたかったのでTスイッチよりMTに切り替えてみましたが大丈夫でした。
3.送信機が「キャンパスSX」と違い、マイク内蔵ということで少し大きめですし、受信機も首にぶら下げるタイプですので、小さな子供には負担が大きいかもしれませんが、大人であれば携帯電話をぶら下げているようなものであって大丈夫という印象でした。
4.会議を想定し、送信機を司会者にぶら下げるのではなく、デスクに置いて3人程度で会話しましたが、これも可能でした。(但し、人工内耳装用者や補聴器使用者の聞き取り能力の差があります。)
これは、逆に言えば、会議などで送信機を発言者に持たせて使用するということができ、何も送信機を固定して(先生など)考える必要はないことになり、かなりの汎用性が期待できると感じました。(一般のマイクのように使えば良いのです)
これは、学校などでFMシステムを聴くという機会が頻繁にない、成人者にとっては便利な機能です。
講演会においても、司会者と講演者が違う場合、ピンマイクを取り外すのではなくマイク内蔵型の送信機を手渡せば良いことになります。
5.送信側も受信側もセッティングが簡単です。これは、どちらも首にぶら下げれば済みます。
<価格について>
フォナック社のカタログ資料をみると、
送信機側「イージー・リンク」・受信機側「マイ・リンク」が障害者自立支援法対応価格として設定され、一番、安価な組合せでした。
「イージー・リンク」が税込69,615円、「マイ・リンク」が68,250円で、合計137,865円になります。
<別の使用方法>
テレビなどを観る場合、「イージー・リンク」をスピーカーの前に置いておけば、遠くにいても聞き取ることが可能です。
つまり、家族が使用するボリュウムとほぼ一致したボリュウムで一緒に楽しむことが可能かもしれません。
また、雑踏などでお話ししながら歩くには、送信機を首にぶら下げていただければ快適に聴こえるかもしれません。
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もちろん欠点もあります。この答えはカタログの中にヒントがありました。
カタログを見ると
「マルチチャンネル」とか「簡単チャンネル切り替え」とか「マイ・リンクの説明文の中で・・・誘導コイルの特性のため、言語習得前のお子様向けにはお勧めしておりません」というようなことが書かれています。
また、送信機と受信機の組み合わせが自由に選択できるのか?つまり送信機を「キャンパスSX」にしなければ、本来のFM受信はできないのかということについて、FMシステムを取り扱っている補聴器専門店にお尋ねしましたので、後半はそれらの事柄を中心に掲載していきます。