最近、労働力不足により、外国人労働者受け入れ問題が国会で議論され始めたが、外国人労働者受け入れは、日本社会に多様性をもたらす反面、問題も抱えることにもなる事案であることを考える必要がある。
まず、実情を考え、その上で、どんな方法を取るのが良いかを考えてみたい。(この問題に関しては、以前のブログでも書いたが、日本の将来の姿の根幹に係わる問題であり、この機会に、再考してみたい。)
1. 背景:
少子高齢化が進み、あらゆる分野(雇用・医療・福祉・教育)で人口減少による弊害を生み出しつつある。国としては、出生率の向上、生産性の向上、女性の活用、高齢者の活用等の施策に取り組み始めているが、明確な見解を打ち出せていないのが実情だったが、ここに来て、労働力不足が顕著化している。総務省によると、15~64歳までの「生産年齢人口」は、2015年は7592万人だったのに対し、2030年は6773万人(マイナス819万人)、2050年には5001万人(マイナス2,591万人)まで減少するとの推計値が出ている。
この様な状況の中で外国人労働者受け入れ問題がクローズアップされ議論されているが、この問題は、単に少子高齢化、市場の縮小、労働力の代替と言う観点からだけでなく、基本的な問題、即ち、文化、人権と言った側面からも考える必要があると思われる。
2. 実情:
a)2017年の労働2007年12月に公表された厚生労働省の雇用政策研究会の報告書:
ア)「高齢者と女性の労働市場への参加が進まないケース 」 → 2006年と比べ440万人減少
イ)「高齢者と女性の労働市場への参加が進むケース 」 → 2006年と比べ101万人減少
ウ)急速な減少に歯止めをかけることが課題 → 労働人口の確保(外国人労働者受け入れ、女性と高齢者の活用)
b)結果:
実際の労働力人口は、厚生労働省の予想を大きく上回り、2016年には6673万人と2006年の6664万人から9万人の増加となった。
その2016年の労働力人口は、「労働市場への参加が進まないケース」の見通しと比較すると400万人以上も多くなっており、「労働市場への参加が進むケース」の見通しと比べても100万人程度上回っている 。
従い、予測は、あくまで予測にしか過ぎず、この問題は、拙速な判断をせず、もう少し慎重に考える必要があろう。
3. 考えるべき視点:
結論として、以下理由で、私は、制限付き、労働人口の推移を見ながら段階的に受け入れを実施するなら、外国人労働者の受け入れに賛成である。
a)そもそも国家は、慣習、文化、人種、価値観を線引きした結果であり、日本も、日本人、日本文化、日本国領土を線引きしたものに過ぎない。国は、Inter-national、Trans-nationalなグローバル(=国境を越えた相互関係)の中で存在している。自国の繁栄と発展は、世界との繋がりの中でしか考えられない。
b)自分のアイデンティティは、自己意識に文化、価値観、風習、国境、国籍と言った潜在意識が加わり形成されているだけであり、外国人、日本人と言う線引きは、誤ったナシヨナリズムを形成する危険性を孕んでいる。国際人としてのアイデンティティを持ち行動する必要がある。
c)但し、現在の世界は、国民国家体制下に形成されており、国家を無視して考えることはできない。従い、結果として国益を無視した受け入れは考えられず、規制なく誰でも自由に受け入れることは出来ないのも事実である。
d)外国人労働者を経済的な自己都合だけで受け入れると、不況期には外国人排除問題を引き起こし、人権問題、自国民の不満等に繋がる大きな社会問題、政治問題になる危険性をはらんでいる。現状では、各国とも国際競争力強化の為、世界中の優秀な専門技術者を受け入れているが、実際には労働力不足を補う為に限定的に非熟練労働者を受け入れているケースが多い。
(注)日本の平成24年度の在留外国人2百万人/人口割合1.7%-就労資格外国人20万人。
米国21.3百万人/人口割合6.9%、
ドイツ6.7百万人/人口割合8.2%、
イギリス4.3百万人/人口割合7.0%
e)外国人労働者の受け入れは、異なる文化や生活スタイルを受容と理解、社会コストの増加も同時に受け入れることが必要であり、自国民の失業、文化的摩擦、治安問題を解決しながら、制限付き、段階的に受け入れを緩和して行くしか方法は無いと考える。
4.どんな方法を取るのが良いか:
(高度人材は、社会構造を変える要素とならないので、ここでは制度検討から外す。)
a)現在の技能実習生制度とは:
b)業界別労働人口の実情:
労働人口の推移を見ながら、段階的受け入れ策をどうするかだが、各産業界の実情を見ると以下の様になっている。
日本建築業連合会 技能者330万人、1/4=60才以上、若年労働者必要
日本造船工業会 日本人確保は、困難な状況
全国農業会議所 5年後には、13万人の従事者不足
全国老人福祉施設協議会・2016年:190万人、
全国老人保険施設協会 2025年までに+55万人(年間+6万人の確保必要)
日本旅館協会 外国人雇用ニーズ:今後5年間で更に2万1千人
日本フードサービス協会 人で不足による閉店、出店の断念が起こっている
日本鋳造協会 人で不足により、顧客需要に応えていない
注)毎日新聞データ
上記の様に業界によって実情も様々であり、矢張り、一律に考えること出来ない。政府より出された法案を見ると以下の内容になっている。
1. どのようにして各業種ごとに「特別な技術」を持っているか否かを判断するのか、基本的なことが全く明らかになっていない。
2. 業種ごとの受け入れ人数等の具体的検討数値も無く、上限規定も無い。
3. 自民党内部にも政府が目指している来年4月施行はどう考えても無理があるのではないかと考えている議員も多い。
4. 案としては、以下の通り、現在の研修制度を特定技能1号と2号に分け、労働力人口を増やそうと言うもの。政府は、移民政策は、取らないとしているが、これは、労働力確保の名目での新たな移民政策を取っていることに等しい。
確かに、将来、労働力不足に陥る可能性は、否定しないが、文化の異なる民族を急激に増やすと、多くの軋轢が生じ、現在の日本文化が変わり、多様性のある新しい日本文化を創造するメリットはあるものの、軋轢、治安悪化をもたらすだけの結果にしかならない危険性がある。
従い、自国民の失業、文化的摩擦、治安問題を解決しながら、制限付き、段階的に受け入れを緩和して行く方法の具体的検討をする為の挙党体制での委員会を立ち上げ、慎重に具体策を検討してゆく必要があろう。政府は、この法案を今期国会で拙速に通過させることを考えている様だが、将来の日本のあるべき姿、この制度の問題点等々を充分検討した上で対応して行って欲しい。
そして、日本での更なる世界のグローバル化が進み、異なる文化への受容と理解が順次進んだ段階で、自由に外国人を受け入れ、新たな日本文化を作り上げて行くのが寛容と考える。
以上
まず、実情を考え、その上で、どんな方法を取るのが良いかを考えてみたい。(この問題に関しては、以前のブログでも書いたが、日本の将来の姿の根幹に係わる問題であり、この機会に、再考してみたい。)
1. 背景:
少子高齢化が進み、あらゆる分野(雇用・医療・福祉・教育)で人口減少による弊害を生み出しつつある。国としては、出生率の向上、生産性の向上、女性の活用、高齢者の活用等の施策に取り組み始めているが、明確な見解を打ち出せていないのが実情だったが、ここに来て、労働力不足が顕著化している。総務省によると、15~64歳までの「生産年齢人口」は、2015年は7592万人だったのに対し、2030年は6773万人(マイナス819万人)、2050年には5001万人(マイナス2,591万人)まで減少するとの推計値が出ている。
この様な状況の中で外国人労働者受け入れ問題がクローズアップされ議論されているが、この問題は、単に少子高齢化、市場の縮小、労働力の代替と言う観点からだけでなく、基本的な問題、即ち、文化、人権と言った側面からも考える必要があると思われる。
2. 実情:
a)2017年の労働2007年12月に公表された厚生労働省の雇用政策研究会の報告書:
ア)「高齢者と女性の労働市場への参加が進まないケース 」 → 2006年と比べ440万人減少
イ)「高齢者と女性の労働市場への参加が進むケース 」 → 2006年と比べ101万人減少
ウ)急速な減少に歯止めをかけることが課題 → 労働人口の確保(外国人労働者受け入れ、女性と高齢者の活用)
b)結果:
実際の労働力人口は、厚生労働省の予想を大きく上回り、2016年には6673万人と2006年の6664万人から9万人の増加となった。
その2016年の労働力人口は、「労働市場への参加が進まないケース」の見通しと比較すると400万人以上も多くなっており、「労働市場への参加が進むケース」の見通しと比べても100万人程度上回っている 。
従い、予測は、あくまで予測にしか過ぎず、この問題は、拙速な判断をせず、もう少し慎重に考える必要があろう。
3. 考えるべき視点:
結論として、以下理由で、私は、制限付き、労働人口の推移を見ながら段階的に受け入れを実施するなら、外国人労働者の受け入れに賛成である。
a)そもそも国家は、慣習、文化、人種、価値観を線引きした結果であり、日本も、日本人、日本文化、日本国領土を線引きしたものに過ぎない。国は、Inter-national、Trans-nationalなグローバル(=国境を越えた相互関係)の中で存在している。自国の繁栄と発展は、世界との繋がりの中でしか考えられない。
b)自分のアイデンティティは、自己意識に文化、価値観、風習、国境、国籍と言った潜在意識が加わり形成されているだけであり、外国人、日本人と言う線引きは、誤ったナシヨナリズムを形成する危険性を孕んでいる。国際人としてのアイデンティティを持ち行動する必要がある。
c)但し、現在の世界は、国民国家体制下に形成されており、国家を無視して考えることはできない。従い、結果として国益を無視した受け入れは考えられず、規制なく誰でも自由に受け入れることは出来ないのも事実である。
d)外国人労働者を経済的な自己都合だけで受け入れると、不況期には外国人排除問題を引き起こし、人権問題、自国民の不満等に繋がる大きな社会問題、政治問題になる危険性をはらんでいる。現状では、各国とも国際競争力強化の為、世界中の優秀な専門技術者を受け入れているが、実際には労働力不足を補う為に限定的に非熟練労働者を受け入れているケースが多い。
(注)日本の平成24年度の在留外国人2百万人/人口割合1.7%-就労資格外国人20万人。
米国21.3百万人/人口割合6.9%、
ドイツ6.7百万人/人口割合8.2%、
イギリス4.3百万人/人口割合7.0%
e)外国人労働者の受け入れは、異なる文化や生活スタイルを受容と理解、社会コストの増加も同時に受け入れることが必要であり、自国民の失業、文化的摩擦、治安問題を解決しながら、制限付き、段階的に受け入れを緩和して行くしか方法は無いと考える。
4.どんな方法を取るのが良いか:
(高度人材は、社会構造を変える要素とならないので、ここでは制度検討から外す。)
a)現在の技能実習生制度とは:
b)業界別労働人口の実情:
労働人口の推移を見ながら、段階的受け入れ策をどうするかだが、各産業界の実情を見ると以下の様になっている。
日本建築業連合会 技能者330万人、1/4=60才以上、若年労働者必要
日本造船工業会 日本人確保は、困難な状況
全国農業会議所 5年後には、13万人の従事者不足
全国老人福祉施設協議会・2016年:190万人、
全国老人保険施設協会 2025年までに+55万人(年間+6万人の確保必要)
日本旅館協会 外国人雇用ニーズ:今後5年間で更に2万1千人
日本フードサービス協会 人で不足による閉店、出店の断念が起こっている
日本鋳造協会 人で不足により、顧客需要に応えていない
注)毎日新聞データ
上記の様に業界によって実情も様々であり、矢張り、一律に考えること出来ない。政府より出された法案を見ると以下の内容になっている。
1. どのようにして各業種ごとに「特別な技術」を持っているか否かを判断するのか、基本的なことが全く明らかになっていない。
2. 業種ごとの受け入れ人数等の具体的検討数値も無く、上限規定も無い。
3. 自民党内部にも政府が目指している来年4月施行はどう考えても無理があるのではないかと考えている議員も多い。
4. 案としては、以下の通り、現在の研修制度を特定技能1号と2号に分け、労働力人口を増やそうと言うもの。政府は、移民政策は、取らないとしているが、これは、労働力確保の名目での新たな移民政策を取っていることに等しい。
確かに、将来、労働力不足に陥る可能性は、否定しないが、文化の異なる民族を急激に増やすと、多くの軋轢が生じ、現在の日本文化が変わり、多様性のある新しい日本文化を創造するメリットはあるものの、軋轢、治安悪化をもたらすだけの結果にしかならない危険性がある。
従い、自国民の失業、文化的摩擦、治安問題を解決しながら、制限付き、段階的に受け入れを緩和して行く方法の具体的検討をする為の挙党体制での委員会を立ち上げ、慎重に具体策を検討してゆく必要があろう。政府は、この法案を今期国会で拙速に通過させることを考えている様だが、将来の日本のあるべき姿、この制度の問題点等々を充分検討した上で対応して行って欲しい。
そして、日本での更なる世界のグローバル化が進み、異なる文化への受容と理解が順次進んだ段階で、自由に外国人を受け入れ、新たな日本文化を作り上げて行くのが寛容と考える。
以上