日常と考えるヒント < By Taki Katayama >

< 論及、述懐、日常/旅/グルメ >

日産 ゴーン会長の逮捕

2018-11-22 | 論及
この問題に関しては、新聞、テレビで専門家が色々な角度から報道しているが、私は、1.ゴーン元日産会長の近年の過度な独善的な行動と日産の私的利用 2.フランス・マクロン大統領が支持率回復の為の動き(日産をルノー子会社にする)に出たことで、日産が自身で日産を守る行動に動いた結果、逮捕劇に至ったものと思っている。



もし、ゴーン氏が日産の独立性を担保する動きをしていたら、恐らく逮捕という方法でなく、他の方法で不正を正すことを模索したのではなかろうか。勿論、その場合でもゴーン氏の不正と言う問題と日産のガバナンス問題は残るが、他の着地点を見出しながら軟着陸をしていったものと思われる。大手企業のコーポレートガバナンスは、比較的厳密で、ゴーン氏とて不正を続けて行くことは出来ず、また、それ程簡単にすり抜られるもので無い。今回の様な数々の不正は、遅かれ早かれ発覚したものと思われ、発覚した内容は、ゴーン氏との話合いで改善、解決したのではなかろうか。

フランスのルメール仏財務相は20日、仏メディアに「ゴーン氏はもはやルノーを率いることができる立場ではない。ルノーはできることを早行うべきだ」と述べたことでもあり、近々、新トップを選出する手続きへと進むとおもわれるが、フランス・メデアは、以下の如く論評をしており、フィガロ紙を除き、大方、日本のメデイアと同じ様な捉え方をしている。


ルノーの大株主であるフランス・マクロン大統領は、ゴーン氏に日産をルノー傘下に組み入れる条件でゴーン氏のルノートップの座を2022年まで保障したと言われている。そこから、従来、日産の利益を守っていたゴーン氏が、自分の立場を担保する為に、日産をルノーの子会社化する動きに出た結果、日産側も天下の宝刀を抜いたものではないかと思われる。

日本の検察が確たる証拠をもとに、ゴーン氏の不正を暴こうと動いており、フランス側に取っては、大きな痛手となっている。日産がルノーの支配を和らげる等の不利益を被る結果となれば、今回のマクロン大統領の動きが、更なる支持率の低下にも繋がるものと思われる。フランス政府としては、ルノーとその関連企業の雇用を守り、マクロン大統領が次期大統領選を有利に戦う為にも、恐らくゴーン氏を切り捨て、日産とルノーの現在の関係を維持させる方向に舵を取ってくるものと思われる。



日産、ルノー連合が成功した秘訣(ひけつ)は両社の対等な関係であり、ゴーン氏はその守護神だった。ルノーは日産に43・4%出資し、資本の論理では強い立場にあるが、ゴーン氏の強力なリーダーシップで両社は独立性を維持。そこに三菱自も加わり、17年度のシナジー効果はコスト削減などで、前年度比14%増の57億ユーロ(約7300億円)と過去最高に達していた。

以前は、フランス政府の圧力に対し、ゴーン氏は、日産保有のルノー株の比率を15%から25%以上に引き上げれば、ルノーが持つ日産への議決権が消滅する日本の会社法をちらつかせ、フランス政府を退けていた。



しかしながら、本年2月、仏政府は、ルノーのCEO続投を餌に、ルノー・日産の提携を後戻りできない「不可逆な関係」にすることを求め、これにゴーン容疑者が同意したことで状況は様変わりした。

経営統合の動きが表面化すると、日産経営陣は、激しく反発した。

99年の資本提携当時はルノーが日産を救済したが、2017年の世界販売台数は日産の581万台に対し、ルノーは376万台に留まる。日産は米中など成長市場で足場を築いた上、電気自動車(EV)技術にもたけており、実力としては上にいる。日産としては、不利益を被りかねないフランス政府主導の経営統合など到底飲めないと反発する経営トップが、過去のゴーン氏のコンプライアンス違反を洗い出し、覚悟を持って、西川社長が、今回の行動に出たものと思われる。

恐らく、西川社長としても、ルノーとの提携を解消する意図は無いと思われる。既に、日産、ルノーは研究開発や生産技術・物流、購買といった機能統合を実施しており、そこに三菱自も加わり、3社連合の結びつきは強くなっている。「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」と呼ぶ新潮流への対応で研究開発費が急増する中、自動車業界での生き残りをかけ、ルノー、日産、三菱の三社連合は、維持したいと考えているものと思われる。

その際、当然の結果ながら、日産は、今後、これまでルノーへの利益貢献度が高かった日産のルノーとの資本関係見直しを要求してくものと思われる。




ただ、今回の問題発覚により、日産も法人としての金融商品取引法違反とコンプライアンス問題を問われ、大きな打撃があることは間違いない。
また、今回の騒動で、既に、ルノーにも問題が波及しており、ルノーの信用力指標が悪化している。企業や国の信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、指標となる信用保証料率が約1.5%まで急上昇している。




今回、日産としては、コンプライアンス違反を排除出来た反面、フランス・マクロン大統領の思惑から日産を支えたゴーン氏を排除する結果となった。日産は、日産とルノーの企業価値を低下させ、社員への不信感・不安感と将来への不透明感を醸成し市場への混乱を与えた。ゴーン氏なき後の日産の稼ぐ力が、今後どう推移するのか見守りたいが、この不安定な結果を招いたマクロン大統領の責任は、非常に大きいと私は、個人的に考えている。

なを、余り言われていないが、今回の西川社長の行動は、日産と言う企業と社員、株主の利益を守ると言う行動であり、称賛に値するものと思っている。今後の西川社長の動きを見守りたい。
以上、



2018-12-6の追伸:
日産ゴーン元会長に関するBBCの記事(2018-11-25付)、比較的冷静かつ客観的に書かれている。興味ある方は、是非、この記事もお読み願いたい。
https://www.bbc.com/news/business-46321097

コメント
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