今、「トランプ元大統領の不倫口止め料の不正支払い」に係わる問題での起訴が連日テレビや新聞で話題を賑わしている。米国の元大統領が起訴されるとは、驚きである。
米大統領経験者で初めて刑事事件の被告となったトランプ前大統領の起訴内容が明らかになった。2016年の大統領選を有利に進めるためにスキャンダルのもみ消しを図ったと見立てる検察側と、支持者を巻き込み事件を政治利用しようとするトランプ氏。歴史的な司法闘争が本格的に始まった。
同氏は、任期最後の米議会占拠事件の扇動した人物であり、米国の民主主義を崩壊させようとした人物への浄化作用の一環としては、先進国の痛んだ民主主義を蘇生させるには、良かったのでなないかと思われる。米国は、民主主義国家のお手本国家として、今迄、機能してきたが、元大統領が起訴される程の変化があり、一体、どうなっているのか、その原因が何かひも解いて考えてみよう。
1.トランプ氏とは、どんな人物か:
トランプ元大統領は、1946年ニューヨークで生まれ。不動産業を営む父親の事業を手伝い、大学卒業後、「トランプ・タワー」をニューヨークの五番街に建設、推定資産が約25億ドル(約2600億円)と言われている米国で名の知れた大金持ちである。公職経験はなかったが、2016年の大統領選で「反ワシントン」を掲げ共和党から出馬し、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官を破って当選、大統領まで登り就いた。
就任後も米国内での評価は二分されてきた。現在の妻のメラニアさん(50)はスロベニア出身の元モデル。離婚した2人の前妻との子供を含め、3人の息子と2人の娘がいる。大統領就任後のトランプ氏は、ホワイトハウスでも家族を重用し、娘であるイバンカ氏は大統領補佐官、夫のジャレッド・クシュナー氏も大統領上級顧問に任命したり家族を優先に要職に起用して政治を私物化していた。
トランプ氏は、2020年の大統領選挙で結果次第では、「暴動や内乱になるかもしれない」と自ら言いながら、アメリカ大統領選挙をかつてない緊張感に包ませる発言を繰り返していた。僅差で民主党のバイデン現大統領に敗れたトランプ氏は、「郵便投票は不正」と主張し選挙結果を受け入れないと明言した一方、米国のトランプ元大統領の支持者を扇動し、結果として議会に乱入するきっかけを作った。
2. 米国史:
1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見、
① 17世紀~18世紀、植民地時代(1607年~1776年):
ピュリタニズムから啓蒙思想へ
1598年、米国への入植始まる
1620年、プリマス、マサチューセッツに植民地を造った。
1630年、メイフラワー号が米国に到着、その後、ボストン経由西部開拓が始まる
各地を買収、割譲を受けてアメリカを形成、
② 18世紀後半~19世紀、独立期から南北戦争(1776年~1865年):
ロマンチズムとアメリカ・ルネッサンス
1776年、独立宣言、トーマス・ジェファーソン(1743-1826)
1783年、13州で独立(6州が中心、NH,M,NY,CNN,RI,V)
1789年、ジョージ・ワシントン初代大統領、
<19世紀、西部開拓時代>
1802-1853年、フランス、メキシコ、スぺイン他よりの土地割譲、買収、
1849年、カリフォルニアに金鉱発見、→西に移動
1860年、リンカーン第16代大統領に就任、
1861年、南北戦争(1861-1865.4)
<拡張時代の終焉と資本主義の発達>
③ 南北戦争から第一次世界大戦(1865~1917):
リアリズムの時代とナチュラリズムへ、
1865年、リンカーン奴隷解放宣言、
1890年、フロンテアの消滅、
1896年、黒人差別、
ファーガソン地方裁判所、差別に関する判決=Separate But Equal
④ 大戦から第二次大戦(1917-1945)、バブルの終焉
モダニズムとロストジェネレーシヨン(夢の消失)
1918年、第一次世界大戦終結、(1920年代、JAZZ AGE)
1929年、株の大暴落→大恐慌、失業率:25%(15百万人)、
⑤ 第二次大戦後から冷戦終結まで(1945-1990):
ポストモダニズムとマイノリテイ文学時代
1945年、第二次世界大戦終結、
1952年、人種隔離教育は違憲の訴えを起こす、
1954年、人種隔離教育は違憲の判決、
1964年、公民権運動が盛りあがる(大統領はケネデー、キング牧師暗殺)
1989年、マルタ会談(ブッシュ&ゴルバチョフ)で冷戦終結、
1990年、戦略兵器削減交渉合意、
⑥ 現代(1991年以降):
ポスト冷戦期と自由主義による貧富の格差拡大
1991年、ソ連崩壊、
1993年、クリントン大統領就任、エリート層中心の政治、
2001年、ブッシュ大都横領就任とイラク戦争(2003年)、
2008年、リーマンショックと貧富の格差拡大、
2009年、オバマ氏が初めての黒人大統領として就任、エリート層への富の集中、
3.トランプ氏と米国史からの起訴の背景:
米国では、元々人種や宗教、貧富の格差による分断が進んでいた。ただ、トランプ氏は、現職の大統領だった時代に意識的に分断を扇動したり、選挙では、自身に不利になると暴動を扇動しなりふり構わず、自身の利益の為だけに行動した。この行動は、自身の利益を追求する利己的な行動と国民の無知を利用した非合理性な行動であり、許されるものではない。
更に、米国内での貧富の格差が進むと共に米国内でのエスタブリシュメント層とそれ以外の層とのお互いの受け入れられない意識の醸成が米国内での不寛容な社会を創り上げていったものと思われる。その結果、米国は、少しずつ不寛容な分断社会と変貌して来たのである。
アメリカ人が誇ってきた民主主義や正義は、今や一周回って途上国のものに近づいているようにも映って来ている。この状況は、トランプ氏が国内の分断を深める行動を取ったからだけでなく、恐らく以前から醸成、存在して来たものと思われ、トランプ大統領の登場そのものが、アメリカの分断の現実を表しているように思えて仕方が無い。
4.米国の分断が何故起こっているのか:
a. 米国の分断は、識者の見解では、「二つのイデオロギーで分かれていった」という見方が一般的である。いわゆる二つのアメリカ化現象、即ち、国民世論が保守とリベラルと言う政治的分極化していったことにより、極端な保守化の共和党と極端なリベラル化の民主党に変化していったことが原因の一旦との見方である。
b. 確かに、この見方は、誤ってはおらず、米国では、これらの保守、リベラルの二分化と極右左化とともに、米国の2大政党を動かしてきたエスタブリッシュメントへの反発、即ち民主党バーニー・サンダース氏の躍進、ブッシュファミリーをはじめとする主流派に対する抵抗(米国第一主義のトランプ旋風)である。
c. その結果、貧富の差による一般米国民の疲弊と不満、人種問題が絡み、更には、ベトナム戦争・イラク戦争以降の国際社会での米国のプレゼンスの低下が複雑に絡み合い、米国の分断が起こっているものと考えている。
5. 米国の未来のシナリオ:
(ア) 現在6割を占める白人人口は、2045年までに5割を切る。この白人の数の低下は、白人低所得者層の白人が有色人種に対する不満のはけ口となり、更なる右翼化傾向が現れる危険性が否めない。また、AIやロボットによる情報革新が進み、生産性が高い社会が現出するなかで、情報革新から取り残された人の不満や被害者意識が強大化し、トランプ大統領よりも過激な発言をするリーダーを待望する可能性もあり、この場合は、更に米国の世界でのプレゼンスが低下して行く可能性がある。
(イ) 但し、米国の救いは、ミレニアル(現在24~39歳)・Z世代(8~22歳)は社会正義に対する意識が高く、リベラル層の人間が多い。この層が増えていけば、共和党もデモグラフィー(人口統計)に合わせ、白人・中高年・キリスト教中心から変化していく可能性もある。また、企業としても、若い世代を逃すと顧客や優秀な人材を失いかねないことから、彼らに合わせた市場開拓に取り組むことが予想され、社会全体の価値観が変わり、対立がトーンダウンするかも知れない。
(ウ) ただ、民主主義国家では、世界的に貧富の差が拡大していることにより、この問題は米国にとどまらず世界の民主主義国家にとっても相当根深く、改善させることが難しい現状では、上記②が進んだとしても、対立を解消することは困難であると見るのが妥当であろう。
さて、今迄見て来た米国の状況は、米国の混沌を表しているものであり、民主主義国家のお手本であった米国が示すこの事件は、米国が民主主義を引き続きリードして行けるのか、行けないのかを決める分岐点の様な気がしている。この起訴自体は、米国の民主主義が試されている事態であり、寧ろ歓迎するものと見るべきであろうが、この種自体が起こっている米国の現状を見ると嘆かわしい限りである。
かって、私にとって全て眩しく輝いていた米国は、今となっては、どうなるのだろうとしか考えられなく、衰退するのではと言う無意識の意識が私を悲しくさせる。米国の未来のシナリオの如く、若いリベラル層が育ち、米国の対立関係が低下し、新しい夢のあるアメリカが生まれることを期待する限りである。
その意味では、新しい米国にすべく、米大統領経験者が初めて刑事事件の被告となった事件を契機に、民主主義の立て直しと、支持者を巻き込み米国の分断を政治利用しようとするトランプ氏の行動を阻止し、何かおかしい方向に向いている劣化した米国を立て直す契機として欲しい。その意味では、今回の検察の行動に期待している。
以上、
米大統領経験者で初めて刑事事件の被告となったトランプ前大統領の起訴内容が明らかになった。2016年の大統領選を有利に進めるためにスキャンダルのもみ消しを図ったと見立てる検察側と、支持者を巻き込み事件を政治利用しようとするトランプ氏。歴史的な司法闘争が本格的に始まった。
同氏は、任期最後の米議会占拠事件の扇動した人物であり、米国の民主主義を崩壊させようとした人物への浄化作用の一環としては、先進国の痛んだ民主主義を蘇生させるには、良かったのでなないかと思われる。米国は、民主主義国家のお手本国家として、今迄、機能してきたが、元大統領が起訴される程の変化があり、一体、どうなっているのか、その原因が何かひも解いて考えてみよう。
1.トランプ氏とは、どんな人物か:
トランプ元大統領は、1946年ニューヨークで生まれ。不動産業を営む父親の事業を手伝い、大学卒業後、「トランプ・タワー」をニューヨークの五番街に建設、推定資産が約25億ドル(約2600億円)と言われている米国で名の知れた大金持ちである。公職経験はなかったが、2016年の大統領選で「反ワシントン」を掲げ共和党から出馬し、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官を破って当選、大統領まで登り就いた。
就任後も米国内での評価は二分されてきた。現在の妻のメラニアさん(50)はスロベニア出身の元モデル。離婚した2人の前妻との子供を含め、3人の息子と2人の娘がいる。大統領就任後のトランプ氏は、ホワイトハウスでも家族を重用し、娘であるイバンカ氏は大統領補佐官、夫のジャレッド・クシュナー氏も大統領上級顧問に任命したり家族を優先に要職に起用して政治を私物化していた。
トランプ氏は、2020年の大統領選挙で結果次第では、「暴動や内乱になるかもしれない」と自ら言いながら、アメリカ大統領選挙をかつてない緊張感に包ませる発言を繰り返していた。僅差で民主党のバイデン現大統領に敗れたトランプ氏は、「郵便投票は不正」と主張し選挙結果を受け入れないと明言した一方、米国のトランプ元大統領の支持者を扇動し、結果として議会に乱入するきっかけを作った。
2. 米国史:
1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見、
① 17世紀~18世紀、植民地時代(1607年~1776年):
ピュリタニズムから啓蒙思想へ
1598年、米国への入植始まる
1620年、プリマス、マサチューセッツに植民地を造った。
1630年、メイフラワー号が米国に到着、その後、ボストン経由西部開拓が始まる
各地を買収、割譲を受けてアメリカを形成、
② 18世紀後半~19世紀、独立期から南北戦争(1776年~1865年):
ロマンチズムとアメリカ・ルネッサンス
1776年、独立宣言、トーマス・ジェファーソン(1743-1826)
1783年、13州で独立(6州が中心、NH,M,NY,CNN,RI,V)
1789年、ジョージ・ワシントン初代大統領、
<19世紀、西部開拓時代>
1802-1853年、フランス、メキシコ、スぺイン他よりの土地割譲、買収、
1849年、カリフォルニアに金鉱発見、→西に移動
1860年、リンカーン第16代大統領に就任、
1861年、南北戦争(1861-1865.4)
<拡張時代の終焉と資本主義の発達>
③ 南北戦争から第一次世界大戦(1865~1917):
リアリズムの時代とナチュラリズムへ、
1865年、リンカーン奴隷解放宣言、
1890年、フロンテアの消滅、
1896年、黒人差別、
ファーガソン地方裁判所、差別に関する判決=Separate But Equal
④ 大戦から第二次大戦(1917-1945)、バブルの終焉
モダニズムとロストジェネレーシヨン(夢の消失)
1918年、第一次世界大戦終結、(1920年代、JAZZ AGE)
1929年、株の大暴落→大恐慌、失業率:25%(15百万人)、
⑤ 第二次大戦後から冷戦終結まで(1945-1990):
ポストモダニズムとマイノリテイ文学時代
1945年、第二次世界大戦終結、
1952年、人種隔離教育は違憲の訴えを起こす、
1954年、人種隔離教育は違憲の判決、
1964年、公民権運動が盛りあがる(大統領はケネデー、キング牧師暗殺)
1989年、マルタ会談(ブッシュ&ゴルバチョフ)で冷戦終結、
1990年、戦略兵器削減交渉合意、
⑥ 現代(1991年以降):
ポスト冷戦期と自由主義による貧富の格差拡大
1991年、ソ連崩壊、
1993年、クリントン大統領就任、エリート層中心の政治、
2001年、ブッシュ大都横領就任とイラク戦争(2003年)、
2008年、リーマンショックと貧富の格差拡大、
2009年、オバマ氏が初めての黒人大統領として就任、エリート層への富の集中、
3.トランプ氏と米国史からの起訴の背景:
米国では、元々人種や宗教、貧富の格差による分断が進んでいた。ただ、トランプ氏は、現職の大統領だった時代に意識的に分断を扇動したり、選挙では、自身に不利になると暴動を扇動しなりふり構わず、自身の利益の為だけに行動した。この行動は、自身の利益を追求する利己的な行動と国民の無知を利用した非合理性な行動であり、許されるものではない。
更に、米国内での貧富の格差が進むと共に米国内でのエスタブリシュメント層とそれ以外の層とのお互いの受け入れられない意識の醸成が米国内での不寛容な社会を創り上げていったものと思われる。その結果、米国は、少しずつ不寛容な分断社会と変貌して来たのである。
アメリカ人が誇ってきた民主主義や正義は、今や一周回って途上国のものに近づいているようにも映って来ている。この状況は、トランプ氏が国内の分断を深める行動を取ったからだけでなく、恐らく以前から醸成、存在して来たものと思われ、トランプ大統領の登場そのものが、アメリカの分断の現実を表しているように思えて仕方が無い。
4.米国の分断が何故起こっているのか:
a. 米国の分断は、識者の見解では、「二つのイデオロギーで分かれていった」という見方が一般的である。いわゆる二つのアメリカ化現象、即ち、国民世論が保守とリベラルと言う政治的分極化していったことにより、極端な保守化の共和党と極端なリベラル化の民主党に変化していったことが原因の一旦との見方である。
b. 確かに、この見方は、誤ってはおらず、米国では、これらの保守、リベラルの二分化と極右左化とともに、米国の2大政党を動かしてきたエスタブリッシュメントへの反発、即ち民主党バーニー・サンダース氏の躍進、ブッシュファミリーをはじめとする主流派に対する抵抗(米国第一主義のトランプ旋風)である。
c. その結果、貧富の差による一般米国民の疲弊と不満、人種問題が絡み、更には、ベトナム戦争・イラク戦争以降の国際社会での米国のプレゼンスの低下が複雑に絡み合い、米国の分断が起こっているものと考えている。
5. 米国の未来のシナリオ:
(ア) 現在6割を占める白人人口は、2045年までに5割を切る。この白人の数の低下は、白人低所得者層の白人が有色人種に対する不満のはけ口となり、更なる右翼化傾向が現れる危険性が否めない。また、AIやロボットによる情報革新が進み、生産性が高い社会が現出するなかで、情報革新から取り残された人の不満や被害者意識が強大化し、トランプ大統領よりも過激な発言をするリーダーを待望する可能性もあり、この場合は、更に米国の世界でのプレゼンスが低下して行く可能性がある。
(イ) 但し、米国の救いは、ミレニアル(現在24~39歳)・Z世代(8~22歳)は社会正義に対する意識が高く、リベラル層の人間が多い。この層が増えていけば、共和党もデモグラフィー(人口統計)に合わせ、白人・中高年・キリスト教中心から変化していく可能性もある。また、企業としても、若い世代を逃すと顧客や優秀な人材を失いかねないことから、彼らに合わせた市場開拓に取り組むことが予想され、社会全体の価値観が変わり、対立がトーンダウンするかも知れない。
(ウ) ただ、民主主義国家では、世界的に貧富の差が拡大していることにより、この問題は米国にとどまらず世界の民主主義国家にとっても相当根深く、改善させることが難しい現状では、上記②が進んだとしても、対立を解消することは困難であると見るのが妥当であろう。
さて、今迄見て来た米国の状況は、米国の混沌を表しているものであり、民主主義国家のお手本であった米国が示すこの事件は、米国が民主主義を引き続きリードして行けるのか、行けないのかを決める分岐点の様な気がしている。この起訴自体は、米国の民主主義が試されている事態であり、寧ろ歓迎するものと見るべきであろうが、この種自体が起こっている米国の現状を見ると嘆かわしい限りである。
かって、私にとって全て眩しく輝いていた米国は、今となっては、どうなるのだろうとしか考えられなく、衰退するのではと言う無意識の意識が私を悲しくさせる。米国の未来のシナリオの如く、若いリベラル層が育ち、米国の対立関係が低下し、新しい夢のあるアメリカが生まれることを期待する限りである。
その意味では、新しい米国にすべく、米大統領経験者が初めて刑事事件の被告となった事件を契機に、民主主義の立て直しと、支持者を巻き込み米国の分断を政治利用しようとするトランプ氏の行動を阻止し、何かおかしい方向に向いている劣化した米国を立て直す契機として欲しい。その意味では、今回の検察の行動に期待している。
以上、
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます