日常と考えるヒント < By Taki Katayama >

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不平等と格差

2015-02-10 | 論及
21世紀は、国境を越えた新しい開けた時代と言われているが、本当にそうであろうか、私の中で大きな疑問が湧いている。トマ・ピケテイ教授は、「21世紀の資本」の中で「この数十年間、不平等が拡大している」と警鐘を鳴らしているものの「不平等の構造を、私は悲観していない。」とも言うが、本当にそうであろうか。

格差、不平等から、貧困、文明の衝突が生じており、リスクが大きくなっている。特に、格差から社会の不満世代の若者が国際テロ組織に参加すると言う事態が起こっており、大きな社会問題、社会への恐怖をもたらしている。また、「自由、人権、民主主義への抑圧からの自由」を求める若者への弾圧等による国家権力との対峙、誤ったナシヨナリズムによる愛国主義による不安定な時代に突入している。

特に、アルカイーダに端を発したイスラム過激派の横暴、アルジェリア、リビアの過激派、エジプトのエルサレムのアンサール団、ナイジェリアのボコ・ハラム、パキスタンのパキスタン・タリバン運動等の過激派は、グローバル・ジハードを起こし世界を混乱に巻き込んでいる。また、ウクライナへのロシアの介入は、欧米とロシアの対立を生み、多くの犠牲者を生んでいる。
この状況下でも、トマ・ピケテイ教授の言うように、制度改革による所得の再分配を行うことで解決するのであろうか。いや、そうは、思わない。

最近、どの雑誌を見ても、トマ・ピケテイ教授の書いた「21世紀の資本」と言う本が話題になっている。私も話題について行くべく読んでみた。分厚い本で、内容を細かく読んでいないが、結局、彼の言いたかったことは、「資本主義の中心的な矛盾として、r>g、即ち、資産からの収益率が国民所得(労働による付加価値)の成長率を上回ることで中心的な矛盾を生じさせている。」と言う。そのことにより、「資産家は、世襲財産を引き継ぎ増大し続け格差を生じさせており、軽い累進課税を国際統一課税として提案し、これによって一方的への富の増加を抑え格差を解消して行こう。」と言う提案をしている様だ。

噂によれば、この本は、アメリカの保守派に大きな反響を呼んでいるらしい。それはそうであろう。世界富裕層1%が所有する資産が2014年で全世界の48%を占め、来年には、50%を超えると言う報告があり、トマ・ピケテイ教授は、この格差を解消して行かないと民主主義の崩壊が起こることを示唆している。富裕層に取って大変な提案であり、いやな内容の本である。ビル・ゲイツが資産への課税は困ると言ったとか言わなかったとかの噂が立っているが定かでない。
(資本論と言うが、これは資産=財産であって経済学的な意味をなさない。単なる累進課税による格差解消提案と言う人もいるが、ここでは、その議論には踏み込まない。)

確かに、全ての混乱の起源を遡ると、貧困、格差、自由の抑圧、独裁、ナショナリズムから問題が生じていることは分かるが、トマ・ピケテイ教授の言う所得の再分配でそんな世界の実現は不可能であろう。人間には、理性、感性、価値観と言ったそれぞれの社会的環境の中で育った判断基準が存在しており、必ずしも一方的な「経済価格差」解消の提案だけでは、問題の解決はできないであろう。

計量することも、論じること難しい知識や感性、価値観などの「格差」を如何に解消し、理性と自制を求め育成して行くかもまた同時に語られる必要があろう。計量不可能な現代の相対的な世界観、価値観、政治観に対する考える力、判断力を含めた格差の是正も正面から論じることが必要ではなかろうか。それは現実に存在する問題であり、また経済格差以上に現実を大きく動かしているからである。その為には、経済格差も含め政治が正しい方向に導く必要があり、政治家は、常に批判に浴びながら試されているのであろう。



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