実力差は、わかっている。J1で首位を争うチームと富山県1部リーグの対戦である。富山新庄クラブの選択は2つだった。あくまで勝利することを目指し守りを固める。あるいは、自らの実力を試すべく真っ向勝負する。選択は、後者だった。4人のディフェンスラインを常に高く保つ戦術は、裏を取られたときのリスクと背中合わせだ。それにもかかわらず、一貫して変わりなかった。実際、裏を取られての失点は、後半のアドリアーノの独走だけだったのだから、「攻撃的ディフェンス」はある程度、成功したと言えるのかもしれない。それでも、ボランチがディフェンスラインに吸収される場面が多くなったあたりから、攻撃への連動性が難しくなった。マルチネスに狙いを絞り、高い位置でボールを奪うことに成功しても、数的優位な状況を作り出すまでには至らなかった。無理もあるまい。天皇杯1回戦からわずか中1日で、Jでも屈指の流動的なオフェンスを実行するセレッソが相手である。疲労は明らかだった。
試合序盤、小気味よいダイレクトプレーで、セレッソのプレスをかわしたことでもわかるように、富山新庄は目指すべきものにブレが無い。相手がJであっても、だ。苦し紛れのロングボールやクリアが少なかったことからも、ボールを丁寧に繋いでいくスタイルが見て取れる。技術的なディテールはプロにはかなわない。それでも、怯まずひたむきに向かう姿が、キンチョウスタジアムの観客にはストレートに伝わったのだろう。この日、一番の歓声が、試合終了後だったのだから。セレッソのゴール裏へ挨拶に向かう偉大なチャレンジャーに対するコールは、決して大量失点となったチームへの哀れみではないだろう。ベストメンバーを揃えたセレッソに真っ向勝負を挑んだ富山新庄クラブに対する、心からのリスペクトからに他ならない。
天皇杯サッカー町田が東京V破る G大阪など順当勝ち(共同通信) - goo ニュース