特定のたんぱく質をリボ核酸(RNA)に結合させることで、細胞の生死を制御する技術を京都大の井上丹教授らの研究グループが開発し、18日付の英オンライン版科学雑誌「Nature Communications」に掲載した。特定細胞のみを死滅させることができる点を利用し、副作用のないがん治療などへの応用が期待される。
グループは、RNAに遺伝子の発現を抑制する「RNA干渉」という働きがあることに着目。ある特定たんぱく質をRNAに結合させると、干渉が抑えられることを突き止め、別のたんぱく質の合成を活性化させる「オンスイッチ」という技術を開発した。
また、同じ特定たんぱく質が、細胞内のたんぱく質合成小器官リボソームの機能を阻害することを解明。この特定たんぱく質を細胞に加えることで、別のたんぱく質の生成を抑える「オフスイッチ」という技術も昨年開発した。
二つのスイッチを、細胞死をつかさどるたんぱく質に対して作用させることで、特定たんぱく質を持つ細胞の生死を任意に制御することができるようになった。
この技術を利用すれば、正常な細胞には影響を及ぼさずに、薬をがん細胞や特定の臓器だけに効かせることも可能だといい、副作用のない薬の製造に応用できるという。また、特定の細胞だけを効率よく選択して培養する技術に応用することにより、再生医療分野での貢献も期待できるという。
>癌を死滅させる時代まで、もう少しか!