「そうだ、この家って父さんがローンで買ったんだよな。確か6年前だ。いくらで買ったんだろう?
住宅メーカーと当時の路線価を調べれば、だいたいの金額がわかる! 土地と家でざっと3,500万円。頭金を10%として、残りを固定金利の住宅ローンで買っていれば、合計は… えっ! こんなに! 他にもあるぞ… 仲介手数料に所有権移転登記料、不動産所得税や印紙税がかかる。さらに毎年、固定資産税、都市計画税、家の修繕費もある。それらを全部足すと… ウソだろ!? 父さん、バカじゃないの? 土地と建物合わせて3,500万円の家に支払う額は、ほぼ6,000万円! 倍近くになるじゃないか! やっと完済して家はボロボロで、価値はほぼゼロ… 何か虚しくなってきた…」
「父さん、今の家を買ったときの、決め手は何だったの?」
「何だよ急に?」
「その… 何となく」
「家族も増えるし、そろそろ一戸建ても、そんな流れだったかな?」
「でも… ローンとか大変、って思わなかった?」
「うん、支払額が倍近くになるってのは、ちょっと驚いたけどな。ま、でも、それは大した問題じゃないんだ」
「え?」
「うん、うちの家系はな、昔金のことで色々あってな。父さんは普通がいいと思ったんだ。小さな一戸建てで家族そろって笑顔で暮らす。思い出の場所がそこにある。それが一番だ」
「思い出の場所かぁ。確かにそうだねぇ」
「素敵なお父さんねぇ」
「ちょっと感動したよ」
「麻雀しながらする話じゃないと思うんだけどね~」
「俺から言わせれば、凡庸だな」
「え?」
「35年も借金に縛られるなんて、考えただけでぞっとする。未来は予測不能なのに、ローンで人生設計を固定化するなんて、まともな人間がすることとは思えない」
「あの、神代さん、言いすぎじゃないですか? 僕の親の話ですよ!」
「家を持てば一国一城の主とか、家を建てて一人前とか、そんな常識に縛られて自分の頭で何も考えない奴はクズだ!!」
「だから、僕の親ですよ!!」
「日本人は確かに、常識の同調圧力に弱いからねぇ」
「常識は商売の餌とも知らずにな。もっと先を読めば、その常識をばらまいた奴がいる。国や企業だ。一国一城の主といったキャッチコピーは、国や企業が国民に植え付けた常識。商売の餌ってことだ」
「麻雀してる場合じゃないな…」
「手分けして調べましょう!」
「なるほど… そもそも戦前まで、日本人のほとんどは借家暮らしだった。だが敗戦で焼け野原になった後、官僚たちは思った」
官僚「あ~あ、全部焼かれて何も残ってないな」「どうするよこれ?」「どうするって、何とかしないとまずいって」
「日本が高度成長期に入って工業化が進むに伴い、国は大都市に集中する人口を定住させるために住宅問題を解決しなければならなかったのね」
「そのとき、ある人物が現れた」
「阪急・阪神・東宝グループの創始者、小林一三氏だ。彼の住宅戦略は、安く仕入れた土地に付加価値を付け、高く売ること。まず山林を買い、鉄道を敷く。終着駅には娯楽施設やデパートを建てる。その間に駅を作り、周辺の土地を宅地造成する」
「でもやっぱり、身一つで出てきた労働者には、高い買い物だったでしょうね」
「そこで住宅ローンだ。これは誰でも家が買えると同時に、ローンの貸し手にも金利が入る。土木・建設・住宅企業も潤う。それにより、鉄道を中心とした金融と住宅流通パッケージが完成する」
「その頃からなのね、『夢のマイホーム』なんていうコピーが登場したのは」
「家を買うことが庶民の目標になったんだなぁ」
「こうして見ると、日本人が家を持つようになったのはごく最近…」
テレビドラマ「インベスターZ」第9話
住宅メーカーと当時の路線価を調べれば、だいたいの金額がわかる! 土地と家でざっと3,500万円。頭金を10%として、残りを固定金利の住宅ローンで買っていれば、合計は… えっ! こんなに! 他にもあるぞ… 仲介手数料に所有権移転登記料、不動産所得税や印紙税がかかる。さらに毎年、固定資産税、都市計画税、家の修繕費もある。それらを全部足すと… ウソだろ!? 父さん、バカじゃないの? 土地と建物合わせて3,500万円の家に支払う額は、ほぼ6,000万円! 倍近くになるじゃないか! やっと完済して家はボロボロで、価値はほぼゼロ… 何か虚しくなってきた…」
「父さん、今の家を買ったときの、決め手は何だったの?」
「何だよ急に?」
「その… 何となく」
「家族も増えるし、そろそろ一戸建ても、そんな流れだったかな?」
「でも… ローンとか大変、って思わなかった?」
「うん、支払額が倍近くになるってのは、ちょっと驚いたけどな。ま、でも、それは大した問題じゃないんだ」
「え?」
「うん、うちの家系はな、昔金のことで色々あってな。父さんは普通がいいと思ったんだ。小さな一戸建てで家族そろって笑顔で暮らす。思い出の場所がそこにある。それが一番だ」
「思い出の場所かぁ。確かにそうだねぇ」
「素敵なお父さんねぇ」
「ちょっと感動したよ」
「麻雀しながらする話じゃないと思うんだけどね~」
「俺から言わせれば、凡庸だな」
「え?」
「35年も借金に縛られるなんて、考えただけでぞっとする。未来は予測不能なのに、ローンで人生設計を固定化するなんて、まともな人間がすることとは思えない」
「あの、神代さん、言いすぎじゃないですか? 僕の親の話ですよ!」
「家を持てば一国一城の主とか、家を建てて一人前とか、そんな常識に縛られて自分の頭で何も考えない奴はクズだ!!」
「だから、僕の親ですよ!!」
「日本人は確かに、常識の同調圧力に弱いからねぇ」
「常識は商売の餌とも知らずにな。もっと先を読めば、その常識をばらまいた奴がいる。国や企業だ。一国一城の主といったキャッチコピーは、国や企業が国民に植え付けた常識。商売の餌ってことだ」
「麻雀してる場合じゃないな…」
「手分けして調べましょう!」
「なるほど… そもそも戦前まで、日本人のほとんどは借家暮らしだった。だが敗戦で焼け野原になった後、官僚たちは思った」
官僚「あ~あ、全部焼かれて何も残ってないな」「どうするよこれ?」「どうするって、何とかしないとまずいって」
「日本が高度成長期に入って工業化が進むに伴い、国は大都市に集中する人口を定住させるために住宅問題を解決しなければならなかったのね」
「そのとき、ある人物が現れた」
「阪急・阪神・東宝グループの創始者、小林一三氏だ。彼の住宅戦略は、安く仕入れた土地に付加価値を付け、高く売ること。まず山林を買い、鉄道を敷く。終着駅には娯楽施設やデパートを建てる。その間に駅を作り、周辺の土地を宅地造成する」
「でもやっぱり、身一つで出てきた労働者には、高い買い物だったでしょうね」
「そこで住宅ローンだ。これは誰でも家が買えると同時に、ローンの貸し手にも金利が入る。土木・建設・住宅企業も潤う。それにより、鉄道を中心とした金融と住宅流通パッケージが完成する」
「その頃からなのね、『夢のマイホーム』なんていうコピーが登場したのは」
「家を買うことが庶民の目標になったんだなぁ」
「こうして見ると、日本人が家を持つようになったのはごく最近…」
テレビドラマ「インベスターZ」第9話
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