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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ルー・ドナルドソン/ヒア・ティス

2025-06-26 18:00:09 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日はルー・ドナルドソンです。ドナルドソンについては当ブログでもたびたび取り上げていますが、50年代はチャーリー・パーカー直系のアルト奏者としてブルーノートを中心に多くのハードバップ名盤を残しています。特に「ウィリング・ウィズ・ルー」「スイング・アンド・ソウル」あたりが最高ですね。ただ、60年代に入ってハードバップが下火になると、新たな路線への転換を余儀なくされます。この頃のジャズシーンはマイルス、コルトレーン、ジャズ・メッセンジャーズらがモードジャズ路線で次々と意欲的な作品を発表していましたが、ドナルドソンはモードジャズが根本的に合わなかったか、そちらの路線には見向きもせず、より黒人らしいソウルフルなジャズを追求していくようになります。

今日ご紹介する1961年1月23日録音の「ヒア・ティス」はそんなドナルドソンの”ソウルジャズ宣言”とでも呼ぶべき作品です。それまでのドナルドソンは盲目のピアニストとして知られるハーマン・フォスターと組むことが多かったですが、本作で初めてオルガン奏者をサイドマンに起用。以降はギターとドラムを加えたオルガン・トリオをバックに従えた作品を次々と発表して行きます。メンバーはベビーフェイス・ウィレット(オルガン)、グラント・グリーン(ギター)、デイヴ・ベイリー(ドラム)。ベビーフェイス・ウィレットについては以前のブログでも紹介しましたが、シカゴでプレイしていたオルガン奏者でこれが録音デビュー。後にブルーノートの看板スターとなるグラント・グリーンもジミー・フォレストのデルマーク盤「オール・ザ・ジン・イズ・ゴーン」で既にデビューは果たしていますが、ブルーノートではこれが初録音です。なお、この5日後の1月28日にグリーンは初リーダー作「グランツ・ファースト・スタンド」を、さらにその2日後の1月30日にはベビーフェイス・ウィレットも「フェイス・トゥ・フェイス」を吹き込んでいます(ちなみにグリーンの作品にはウィレット、ウィレットの作品にはグリーンがそれぞれサイドマンとして参加)。ちなみにジャケットでドナルドソン(右側)がお札(?)のようなものを渡しているのは、グリーンでもウィレットでもベイリーでもありません。このおっちゃん一体誰なんでしょうか?

全5曲。スタンダードが1曲、パーカーの曲が1曲、残りはドナルドソンのオリジナルです。普段はオリジナル曲の方を好む私ですが、本作に関してはカバー曲の方が断然良いですね。特に素晴らしいのがオープニングトラックの"A Foggy Day"。ガーシュウィン作曲の定番スタンダードで、ヴォーカルorインストゥルメンタルを問わず多くの名唱・名演が残されていますが、ソウルジャズで料理された本作のバージョンも歴代でも上位にランクされる出来だと思います。まず、オルガンとアルトでメロディを吹いた後、ソロ1番手で飛び出すのがグラント・グリーン。この後彼のトレードマークとなるホーンライクなギターソロを聴かせます。続くベビーフェイス・ウィレットもゴスペルやR&Bで鍛えたソウルフルなオルガンを響かせ、満を持してドナルドソンが歌心たっぷりのアルトで歌い上げます。3曲目チャーリー・パーカーの”Cool Blues”では、かつてパーカーの後継者と目されたドナルドソンが面目躍如と言ったソロを披露しますが、続くグラント・グリーン→ベビーフェイス・ウィレットのソロはソウルジャズそのものです。

一方、オリジナル曲の方は2曲目のタイトルトラック”Here 'Tis”がまずまずの出来。曲はコテコテのブルースで、特にウィレットの糸を引くような粘っこいオルガンソロが印象的です。4曲目”Watusi Jump”はワトゥーシとか言うダンス(映画「ブルース・ブラザーズ」でも踊っていた)にインスパイアされたノリノリの曲。ラストの”Walk Wid Me”は再びコテコテのブルースで、このあたりは正直可も不可もなくと言ったところです。以上、全体的にはまあまあの出来ですが、1曲目"A Foggy Day"を聴くだけでも価値のあるアルバムだと思います。


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