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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ロイ・エアーズ/ウェスト・コースト・ヴァイブス

2025-08-19 18:33:49 | ジャズ(モード~新主流派)

本日はロイ・エアーズです。この人はどちらかと言うとジャズと言うよりレア・グルーヴ界隈で有名ですよね。私も最初に彼の名を知ったのはFREE SOULシリーズと言うクラブ系ソウルミュージックのコンピでした。youtubeでロイ・エアーズを検索すると"Everybody Loves The Sunshine"や”Searching”等の70年代の彼の曲が真っ先にヒットしますが、それらの曲を聴くといかにもダンスフロア映えしそうな都会風ソウルミュージックではあるものの、ジャズ要素はほぼありません。

ただ、そんなエアーズもデビューしたての頃は正統派ジャズ・ヴィブラフォン奏者でした。1940にロサンゼルスで生まれた彼はライオネル・ハンプトンの影響を受けてジャズの道を志し、1962年に西海岸の黒人テナー、カーティス・エイミーの作品でデビューを果たします。今日ご紹介する「ウェスト・コースト・ヴァイブス」はその翌年の1963年にユナイテッド・アーティスツに吹き込まれた初リーダー作です。

録音は2回に分けて行われ、まず6月14日のセッションが上述のカーティス・エイミーを加えたクインテット編成でリズムセクションはジャック・ウィルソン(ピアノ)、ビル・プラマー(ベース)、トニー・バズリー(ドラム)と言う布陣。6月18日のセッションはカルテット編成で、ウィルソンはそのままでヴィクター・ガスキン(ベース)、ケニー・デニス(ドラム)と言うメンツです。うちビル・プラマーだけが白人で、それ以外は全員が西海岸でプレイしていた黒人です。特にジャック・ウィルソンとエアーズは盟友的存在で、この4カ月前にウィルソンのリーダー作でも共演しています。

全10曲。曲順とは一致しませんが、セッションごとに解説します。まずは6月14日のクインテット・セッションから。オープニングトラックはエアーズの自作曲"Sound And Sense"で、カーティス・エイミーのソウルフルなテナーをフィーチャーしたオーソドックスなバップチューンです。ソロはエアーズ→エイミー→ウィルソンの順でビル・プラマーのベースソロも挟まれます。なかなか良い出だしと思います。続いて3曲目"Reggie Of Chester"はベニー・ゴルソン作の痛快ハードバップで、「リー・モーガン・インディード!」に収録されていた曲です。この2曲はかなりハードバピッシュな仕上がりですが、6曲目のエアーズ作"Ricardo's Dilemma"は60年代という時代を反映してかモーダルな曲です。カーティス・エイミーもソプラノサックスを吹いて幻想的な雰囲気を醸し出しています。8曲目"Out Of Sight"も典型的モードジャズでこちらはジャック・ウィルソンの作曲。この曲もエイミーがソプラノサックスでソロを取り、次いでエアーズのソロを挟んで、ウィルソンがゴージャスなピアノソロを取ります。何となく浮遊感のようなものが漂うドラマチックな名曲です。9曲目"Young And Foolish"はスタンダードのバラード曲で、この曲はエイミー抜きのカルテットです。ビル・エヴァンスも演奏していた美しい曲をヴァイブとピアノでしっとり聴かせます。

次いで6月18日のセッション。こちらの方は全体的に軽めの演奏が多く、エアーズとウィルソンが鮮やかなタッチで各曲を料理します。2曲目"Days Of Wine And Roses"は前年に公開された映画「酒とバラの日々」のためにヘンリー・マンシーニが書いた曲。多くのジャズマンにカバーされてスタンダード化する名曲ですが、ここでは当時流行りのボサノバ風の軽快なタッチで料理されています。4曲目"It Could Happen To You"も有名スタンダードですが、ここでは珍しくアップテンポの演奏。5曲目"Donna Lee"はご存知チャーリー・パーカーの名曲。7曲目"Romeo"は有名な評論家で本作のプロデューサーでもあるレナード・フェザーが書いた美しいバラード。この人、意外と良い曲を書くんですよね。ラストトラックはセロニアス・モンクの"Well, You Needn't"を軽快に演奏して締めくくり。以上、どちらかと言うとクインテット・セッションの方にオリジナルの力作が多いですが、カルテットの方もクオリティの高い演奏揃いで、実に良くまとまった名盤だと思います。


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