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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ホレス・シルヴァー/ファーザー・エクスプロレーションズ

2025-07-04 18:25:29 | ジャズ(ハードバップ)

ブルーノートきっての人気グループであるホレス・シルヴァー・クインテットですが、メンバーは時代とともに変わっています。まず、ジャズ・メッセンジャーズから独立後の最初のアルバムである「6ピーシズ・オヴ・シルヴァー」のメンバーはドナルド・バード、ハンク・モブレー&ダグ・ワトキンスと言った元ジャズ・メッセンジャーズの面々に加え、ドラムがルイス・ヘイズと言う布陣でした。続く1957年5月録音の「ザ・スタイリングス・オヴ・シルヴァー」ではバードの代わりにアート・ファーマーがトランペットで入り、ベースもダグ・ワトキンスから白人のテディ・コティックに交代しています。

今日ご紹介する「ファーザー・エクスプロレイションズ」はそれに続く1958年1月録音で、テナーがモブレーからクリフ・ジョーダンに交代。シルヴァー(ピアノ)、ファーマー(トランペット)、ジョーダン(テナー)、コティック(ベース)、ヘイズ(ドラム)と言うラインナップです。ただ、この組み合わせもこの1枚のみで、翌1959年からはフロントラインを一新し、ブルー・ミッチェル&ジュニア・クックを起用。その後5年間にわたってミッチェル&クックのコンビでファンキー・ジャズ路線を強力に推し進めます。

全6曲。1曲を除いて全てシルヴァーのオリジナルです。アルバムタイトルの「ファーザー・エクスプロレーションズ」は、fatherではなくfurtherで"さらなる探求"と言う意味。言われてみればどことなく新たなスタイルを探るような感じの演奏です。オープニングトラックの"The Outlaw"は出だしこそいかにもシルヴァー・クインテットらしい痛快ハードバップですが、それに続くメロディラインは意外と複雑。ジョーダン→ファーマー→シルヴァーと続くソロもあえて少しメロディを外したような感じです。続く"Melancholy Mood"はホーン抜きのバラードで、シルヴァーのピアノソロをフィーチャーしたトリオ演奏ですが、この曲もややミステリアスな雰囲気を持っています。3曲目"Pyramid"もやや哀調を帯びたエキゾチックなメロディです。

4曲目は本作のハイライトである"Moon Rays"。まずホーンがたゆたうような美しいメロディを奏でた後、ジョーダン→ファーマー→シルヴァーと歌心あるソロをリレーし、後半のホーンアンサンブルにより力強いリフへと繋げます。11分近い曲ですが魅力的なメロディが次々と現れ、長さを感じさせません。ズバリ名曲です。5曲目"Safari"は本作で唯一いつものシルヴァー節が聴ける曲。それもそのはず、ブルーノートの初リーダー作「ホレス・シルヴァー&アート・ブレイキー、サブー」のオープニングトラックの再演です。疾走感溢れるハードバップで、ジョーダン→ファーマー→シルヴァー→ヘイズと力強いソロを取ります。ラストの"Ill Wind"は唯一の歌モノスタンダード。原曲はバラードですが、ここではミディアムテンポのハードバップに料理されています。ブルーノートのシルヴァーの傑作群の中では少し毛色の違う作品ですが、"Moon Rays"1曲だけでも聴く価値はあると思います。

 

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