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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ディジー・リース/ブルース・イン・トリニティ

2025-07-03 18:36:03 | ジャズ(ハードバップ)

本日はジャマイカ出身のトランぺッター、ディジー・リースです。彼については以前にブルーノート3作目の「サウンディン・オフ」を取り上げましたが、今日ご紹介するのは彼のブルーノートデビューに当たる1958年8月録音の「ブルース・イン・トリニティ」です。この作品、ブルーノートにしては珍しくロンドンのデッカ・スタジオで録音されています。当時のリースはロンドンを中心にヨーロッパで演奏活動を行っており、その評判を聞きつけたアルフレッド・ライオンがわざわざ録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーを当地に派遣してレコーディングを行ったようです。

メンバーは地元イギリスのミュージシャンと本場アメリカの混合チーム。地元組がタビー・ヘイズ(テナー)、テリー・シャノン(ピアノ)、ロイド・トンプソン(ベース)、そしてアメリカ組がドナルド・バード(トランペット)とアート・テイラー(ドラム)です。ただし、バードが参加したのは6曲中2曲のみです。おそらくですがバードはこのセッションのためにわざわざロンドンに行ったわけではなく、当時ヨーロッパをツアー中でドラムのテイラーと一緒にゲスト参加したものと思われます。(この2ヶ月後にバードとテイラーはフランスで「バード・イン・パリ」を吹き込んでいます。)メンバーの中で注目なのはタビー・ヘイズですね。ハードバップ期のイギリスを代表するテナー奏者で、本ブログでもたびたび取り上げています(「ダウン・イン・ザ・ヴィレッジ」は名盤!)。

全6曲、リースのオリジナルが4曲、スタンダードが2曲です。オープニングの”Blues In Trinity"はオリジナル曲で、アート・テイラーのやたらと前のめりなドラミングに乗せられてリース→ヘイズ→シャノンがソロを取ります。テリー・シャノンのソロがどことなくモンク風ですね。2曲目”I Had The Craziest Dream”はハリー・ウォーレン作曲の唯一の歌モノスタンダード。美しいバラードでリースがワンホーンで高らかに歌い上げます。ヘイズは休みです。3曲目”Close Up”と続く"Shepherd's Serenade"の2曲はドナルド・バードが参加。当時本場アメリカのジャズシーンでも超売れっ子だったバードが格の違いを見せつける、と言いたいところですがディジー・リースも全く引けを取りません。どちらの曲も先発がリース→バードだと思うのですが、聴いただけでは明確な差は感じられませんね。2人のブリリアントなトランペットにタビー・ヘイズの力強いテナーも素晴らしいですね。5曲目”Color Blind”はバードが抜け再びリースのみ。曲は痛快ハードバップと言う感じで個人的には本作の中で一番好きです。ラストの”’Round About Midnight”はお馴染みセロニアス・モンク作の定番曲ですが、この曲はリースがお休みでタビー・ヘイズが哀愁あふれるテナーソロを聴かせてくれます。リースのリーダー作にはなっていますが、実質は彼も双頭リーダーだったのでしょうね。

リースはこの直後にアメリカに渡り、名盤「スター・ブライト」そして上述「サウンディン・オフ」をブルーノートに残しますが、ちょうどその頃のジャズシーンはハードバップからモードジャズへの移行期にあたりました。その後流行したモードジャズにリースはうまく対応できず、結局大きな成功を収めることができませんでしたが、本作を聴けば彼が確かな実力の持ち主だったことがよくわかります。

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