本日はジャズの“帝王”マイルス・デイヴィスを取り上げます。このブログでは初ですね。私はいわゆるマイルス至上主義者ではなく、トランペッターとしてはむしろリー・モーガンやドナルド・バードを好んで聴く方ですが、それでも50年代のマイルスのアルバムはほとんど所有しております。特に一連の“マラソン・セッション”や「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」はモダンジャズの頂点を示すものと高く評価しています。今日紹介する「コレクターズ・アイテムズ」はそんな全盛期のマイルスの演奏の中から1953年と1956年のセッションをカップリングしたもので、もともと一つのアルバムとして企画されたものではありませんが、演奏の質は高いですし、何より豪華メンバーの参加が目を引きます。
まず、1953年のセッションはチャーリー・パーカー(テナー)、ソニー・ロリンズ(テナー)、ウォルター・ビショップ・ジュニア(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)から成るセクステット。何と言ってもモダンジャズの開祖であるパーカーの参加が貴重です。この頃のパーカーは既に麻薬で健康を害していて、全盛期のプレーではなかったようですが(結局この2年後に34歳で死去)、それでもマイルス、パーカー、ロリンズが一堂に会したというだけで歴史的価値があるのではないでしょうか?演奏の方ももちろん素晴らしいですよ。典型的なビバップ“The Serpent's Tooth”、マイルスの十八番“'Round Midnight”も良いですが、何より3巨頭のゴージャスなアンサンブルで始まる“Compulsion”が圧巻です。
一方、1956年のセッションはソニー・ロリンズ(テナー)、トミー・フラナガン(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)から成るクインテット。当時のマイルスと言えば、コルトレーン、レッド・ガーランドらと黄金のクインテットを結成し、次々と傑作を発表していた頃ですが、この録音だけ即席のメンバーだったのでしょうか?ただ、おかげで我々はフラナガンとマイルスの貴重な組み合わせを耳にすることができます。“No Line”での軽快にスイングするピアノソロはフラナガンならではでしょう。続く“Vierd Blues”はレイジーな雰囲気の中マイルス、ロリンズ、フラナガンが次々とブルージーなフレーズを紡ぎ出していきます。マイルスの他の名盤よりはワンランク落ちるかもしれませんが、タイトル通りコレクターなら持っていて損はない1枚ではないでしょうか?