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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ズート・シムズ/ズート!

2024-03-26 21:36:40 | ジャズ(スイング~中間派)

本日はズート・シムズの1956年のリヴァーサイド盤「ズート!」をご紹介します。ズートは同時期にアーゴにもワンホーンの「ズート」という作品を残しており、違いは!マークがあるかないかだけで紛らわしいですね。ズートはスイングジャズをベースにしながら作品によってはバップ寄りのアプローチを見せたりもしますが、本作は内容の面でもかなりオールドスタイルで中間派っぽいサウンドです。リヴァーサイドは後にビル・エヴァンスがレーベルの顔となりますが、50年代は基本的に黒人ハードバップ中心でしたので、本作は異色の内容とも言えます。メンバーはニック・トラヴィス(トランペット)、ジョージ・ハンディ(ピアノ)、ウィルバー・ウェア(ベース)、オシー・ジョンソン(ドラム)と言った顔ぶれ。ベースとドラムはともかく、他はなじみが薄いですね。特にジョージ・ハンディはほぼ聞いたことがありませんが、調べてみるとチャーリー・パーカーのダイヤル・セッションに”Diggin' Diz”の1曲だけ参加しているらしいです。ほぼ印象にないですが・・・

全7曲。うち2曲がスタンダードで、5曲がオリジナルです。オリジナルのうち4曲はフローレンス・ハンディと言う人の作曲で、CD解説書ではピアノのジョージ・ハンディが作曲したことになっていますが、それにしては名前が微妙に違います。ググってみたところ、フローレンス・ハンディはジョージ・ハンディの奥さんだそうです。しかもこの人は歌手としてレコードも出しており、後にテナーのアル・コーンと再婚したとあります。コーンと言えばアル&ズートの片割れ。何だか人間関係がややこしそうですね・・・

余談はさておき、彼女の作った曲はどれもオールドファッションなスイングナンバーばかりです。オススメは1曲目”Why Cry?”と2曲目”Echoes Of You”。前者は典型的なスイングナンバー、後者はほのぼのとした味わいのバラードです。オリジナルの残り1曲はドラムのオシー・ジョンソン作の”Osmosis”。この曲はオシー自身のリーダー作やデイヴ・ベイリー「バッシュ」でも演奏された名曲で、この曲だけやや雰囲気が違いハードバピッシュです。何だかんだ言って私はこの曲が一番好きですね。スタンダードの”Fools Rush In”と"Taking A Chance On Love"はまずまずと言ったところ。演奏面では何と言ってもズートのよく歌うテナーが最大の聴きどころ。トラヴィスとハンディのプレイは正直パンチがないですが、もともとそんなつもりで人選してなさそうです。あくまでズートが気持ちよくスイングするのを盛り立てています。

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ジョー・ニューマン&ズート・シムズ/ロッキング・ホーンズ

2016-07-21 23:05:30 | ジャズ(スイング~中間派)
本日もJAZZ MASTERS COLLECTIONシリーズから、ジョー・ニューマンとズート・シムズの共演盤をご紹介します。このアルバム、もともとはラマ(Rama)という超マイナーレーベルから発売されたそうですが、その後レーベルごとルーレット・レコードに買い取られたそうです。とは言え、ルーレット自体もお世辞にもメジャーなレーベルとは言えないので、これまではCD化もされておらず、知る人ぞ知る作品でした。でも、内容はなかなか充実していますよ。白人テナー奏者の最高峰であるズートとカウント・ベイシー楽団でサド・ジョーンズとともに看板トランぺッターだったニューマン。白人と黒人の違いはあれど、スタイル的には直球ハードバップというより、どちらかと言うとスイング~中間派の流れを組む路線。サポートメンバーもジョニー・エイシア(ピアノ)、オスカー・ペティフォード(ベース)、オシー・ジョンソン(ドラム)とややシブめの顔ぶれで、ややオールドスタイルながら味わい深い演奏を聴かせてくれます。



全10曲、スタンダードは含まれておらず、1曲を除いて全てメンバーの自作というなかなか野心的な構成。中でもピアノのエイシアが5曲を作曲しており、リーダー2人に劣らない重要な役割を果たしています。このエイシアというピアニスト、グラント・グリーンの「ラテン・ビット」等で名前を見たことはありますが、地味な存在なため注目していませんでしたが、なかなか良い曲を書きますね。ラテン調の楽しい“Mambo For Joe”、スタンダード曲のような美しいメロディを持つバラード“Midnight Fantasy”、ズートとニューマンが全編に渡ってスリリングなアドリブ合戦を繰り広げる“’Tater Pie”、メンバー全員が快調にソロを取った後オシーのドラムソロで締める“Oh Shaye”、ほんわかした曲調“Susette”とどれも佳曲揃いです。他の曲ではオープニングトラックの“Corky”がニューマンの作曲で力強いリフ・チューン、ラストの“Similar Souls”がオシー・ジョンソンの作曲で快適なミディアム・チューンでそれぞれお薦めです。演奏面で言うとやはりズートのアーシーでコクのあるテナーと、ニューマンの乾いた音色のトランペットが聴きモノです。原題の“Locking Horns”は「(角突き合わせて)格闘する」と言う意味らしいですが、内容はリーダー2人の激しいバトルというより、全編リラックスしたムードの共演と言った趣きです。全曲オリジナルというのも好感が持てますし、なかなかの隠れ名盤ではないでしょうか?
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ザ・ハッピー・ジャズ・オヴ・オシー・ジョンソン

2014-04-20 11:49:50 | ジャズ(スイング~中間派)

本日はいぶし銀の名ドラマー、オシー・ジョンソンをご紹介します。同時代に活躍したブレイキー、ローチ、フィリー・ジョーらに比べると格落ちの印象は否めませんが、それでも50年代から60年代にかけて多くのセッションに顔を出し、モダンジャズの屋台骨を支えた名手です。見ての通り黒人ではありますが、アル・コーン、ズート・シムズなど白人ジャズメンとの共演が多く、他にもクリス・コナーら歌手の伴奏、あるいはビッグバンドでの演奏が多く、いわゆるハードバップとはやや距離を置いていたようです。1955年、ベツレヘム録音の本作もバップ色よりスイング色の強い内容です。



全11曲、セッションは3つに分かれており、クインテット4曲、セクステット4曲、そしてオクテット3曲という構成。メンバーは入れ替わりが多いので全員列挙しませんが、全曲に登場するのがフランク・ウェス(テナー&フルート)、その他セクステットとオクテットにサド・ジョーンズ(トランペット)が加わります。トロンボーンは各セッションごとにベニー・パウエル、ビル・ヒューズ、ヘンリー・コーカーと入れ替わります。勘の良い方は既におわかりと思いますが、これは当時のカウント・ベイシー楽団のメンバーですね。オシー自身はベイシー楽団に所属したことはありませんが、ホーン陣との呼吸もピッタリで、スモールコンボ版ベイシーサウンドとでも言うべき魅力的な内容になっています。なお、ピアノは御大ベイシーではなく、白人ピアニストのディック・カッツが務めています。曲はオリジナル中心で特にオシーが6曲を作曲していますが、どれも魅力的な内容で“Cat Walk”“Jumpin' At The Waterhole”“Osie's Oasis”等はベイシー楽団のレパートリーになっていてもおかしくない仕上がり。唯一“Osmosis”だけがハードバップ調で、これは後にズート・シムズやデイヴ・ベイリーにもカバーされたオシーの代表曲です。他ではオシーの意外とシブいボーカルが堪能できる“Don't Bug Me, Hug Me”もユニークです。地味なのでスルーしてしまうかもしれませんが、タイトル通りハッピーな楽曲がいっぱい詰まった隠れ名盤と言えるでしょう。

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ベニー・カーター/ジャズ・ジャイアント

2013-02-02 23:10:00 | ジャズ(スイング~中間派)

ジャズメンには昔から早死にする人が多く、25歳で事故死したクリフォード・ブラウンを筆頭に、パッと思い出すだけでリー・モーガン、チャーリー・パーカー、エリック・ドルフィー、ポール・チェンバース、ソニー・クラークと30歳代で死んだ人がゴロゴロいます。それにひきかえ、ベニー・カーターはジャズ草創期の1920年代に活動を始め、その後2003年に95歳の人生を全うしたジャズ界きってのご長寿です。しかもただ単に長生きしたというだけでなく、90歳過ぎまで実際に演奏活動を行っていたのですから驚きです。私も90年代の末頃だったか来日したカーターが当時のニュースステーションで生演奏を披露したのを鮮明に覚えています。



本作「ジャズ・ジャイアント」は1957年に録音された作品ですが、この時点で既に御年50歳、芸歴30年と言うから凄いですね。メンバーはテナーのベン・ウェブスターだけがカーターと同世代ですが、後は当時全盛だったウェストコーストジャズの俊英達でフランク・ロソリーノ(トロンボーン)、バーニー・ケッセル(ギター)、アンドレ・プレヴィン(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)、シェリー・マン(ドラム)と言った面々が名を連ねています。全員大物ばかりですが、スイング時代から一線を張るカーターからしたら若僧扱いだったでしょうね。曲目はカーターとベン・ウェブスターの両巨頭に合わせたのかオールドファッションなジャズですが、名手揃いとあって演奏のクオリティはさすがです。お薦めはその名もピッタリな楽しいスイングジャズ“Old Fashioned Love”に“Ain't She Sweet”、疾走感あふれる“Blue Lou”あたりでしょうか?なお、カーターはアルトだけでなくトランペットも吹く変わり種で“I'm Coming Virginia”“How Can You Lose”ではディキシー風のトランペットも聴かせてくれます。

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イリノイ・ジャケー/スウィングズ・ザ・シング

2012-12-14 23:20:19 | ジャズ(スイング~中間派)

ジャズファンなら“テキサス・テナー”という言葉をどこかで聞いたことがあると思います。アーネット・コブ、バディ・テイト、そして今日取り上げるイリノイ・ジャケーあたりが代表格で、いずれも大音量でブリブリ吹きまくる激しいブロウが持ち味です。同じテナーサックスでも前回取り上げたスタン・ゲッツの対極に位置するようなスタイルで、王道ジャズファンからは「ジャズというよりR&Bじゃないの?」とワンランク下に見られがちです。正直私もその傾向はなきにしもあらずです。この「スウィングズ・ザ・シング」も1100円の廉価でなければたぶんスルーしてたでしょう。ただ、いざ聴いてみるとこれはこれでなかなか捨て難い。特にバラードにおける男性的で雄大さを感じさせるプレイは、コルトレーンやゲッツの繊細なバラードとは一味違った魅力を放っています。

本作は1956年、ヴァーヴに残されたジャケーの代表作です。サポートメンバーはロイ・エルドリッジ(トランペット)、ジミー・ジョーンズ(ピアノ)、ハーブ・エリス(ギター)、レイ・ブラウン(ベース)、ジョー・ジョーンズ(ドラム)。いずれも当時全盛だったハードバップより一世代前のメンバーが集まっています。演奏される曲もジャンプナンバーっぽいブルースやスイング調のスタンダードが中心で、最初の感想は「何か古臭いジャズやなあ」でした。ただ、何度も聴くうちにジャケーのテナーの音色にだんだん魅了されてきます。特にミディアム~バラード調の曲が素晴らしく、下世話なまでにムードたっぷりのバラード“Harlem Nocturne”、ジミー・ジョーンズの華麗なピアノソロで始まる意外と端整な“Can't We Be Friends”、シンプルながら心温まるメロディの“Have You Met Miss Jones?”といずれも出色の出来栄え。残るアップテンポ3曲はジャケーとエルドリッジがスピーカーが壊れんばかりの大音量で激烈なソロを繰り広げますが、こちらは正直好き嫌いが分かれるかも。私はジャケーのブロウはともかく、エルドリッジの甲高いラッパがちょっと苦手です。

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