goo blog サービス終了のお知らせ 

ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

チェット・ベイカー・イン・ミラノ

2017-08-01 13:00:21 | ジャズ(ヨーロッパ)
本日はチェット・ベイカーがイタリアのミラノで録音したジャズランド盤をご紹介します。チェットのイタリア録音と言えば以前に本ブログで「チェット・イズ・バック!」を取り上げましたが、あちらは1962年1月のローマ録音。イタリア滞在中に麻薬所持で捕まったチェットの釈放後の演奏を記録したものです。本作は1959年10月の録音でまだ前科がつく前の作品です。(とは言え、この頃のチェットは既に麻薬にどっぷりハマっていたようですが・・・)。共演メンバーは全て地元イタリアのミュージシャンで、ジャンニ・バッソ(テナー)、グラウコ・マゼッティ(アルト)、レナト・セッラーニ(ピアノ)、フランコ・チェッリ(ベース)、ジーン・ヴィクトリー(ドラム)から成るセクステット編成です。うちバッソとセッラーニの2人は、以前にも取り上げたバッソ=ヴァルダンブリーニ・クインテットの一員としても活躍していました。



曲は全8曲。うち2曲はボーナストラックで、チェットがスタンダードの“Indian Summer”と“My Old Flame”をワンホーンで演奏したもので、特筆すべき内容ではありません。聴き所はそれ以外の6曲で、タッド・ダメロン“Lady Bird”、チャーリー・パーカー“Cheryl Blues”、マイルス・デイヴィス“Tune Up”、ジェリー・マリガン“Line For Lyons”、ソニー・ロリンズ“Pent Up House”と言ったビバップ~ハードバップの名曲を軽快に演奏していきます。1曲だけジェローム・カーン作のミュージカル曲“Look For The Silver Lining”も入っていますが、こちらもなかなか秀逸です。チェットはこの時期ボーカリストとしても活躍し、アイドル的人気を博していましたが、本作ではトランペット1本で勝負。バッソ、マゼッティ、セッラーニらイタリアのジャズメン達を交えて、実にストレートアヘッドな演奏を聴かせてくれます。とりわけ力強い“Tune Up”や“Pent Up House”が最高です!
コメント

ドン・バイアス&バド・パウエル/キャノンボールに捧ぐ

2015-12-23 22:52:17 | ジャズ(ヨーロッパ)
本ブログでは「ジャズ(ヨーロッパ)」というカテゴリーを設けて、50~60年代の欧州ジャズの名盤をたくさん取り上げてきました。当時のヨーロッパには多くの優れたジャズメンがいたわけですが、一方でアメリカから移住してきたいわゆる“亡命組”がシーンに与えた影響を忘れるわけにはいきません。特に黒人ジャズメン達は当時のアメリカでまだまだ根強く残っていた人種差別を嫌って、かなりの数がヨーロッパに移住しました。今日取り上げるアルバムも1961年にパリで録音されたものですが、それら亡命組が作り上げた作品です。まず、ジャケ写のリーダー、ドン・バイアスはスイング時代からビバップ黎明期に名を馳せたテナー奏者だそうですが、早くも1946年にパリに移住しています。キャリアが長い割にあまり録音を耳にする機会がないのも早々にアメリカのシーンから姿を消したためでしょう。コ・リーダーを務めるバド・パウエルについては今さら語る必要もないですよね。ビバップ期を代表する超大物ピアニストですが、彼も1959年にパリに活動の拠点を移しました。その他、ドラムのケニー・クラークも1956年からパリ住まい。ちょうどベルギー人のフランシー・ボランとクラーク=ボラン・ビッグバンドを結成したばかりです。後半の4曲のみに参加するイドリース・スリーマンもハードバップ初期にそれなりに活躍したトランペッターですが(プレスティッジ盤「ルーツ」「スリー・トランペッツ」参照)、1959年から北欧に居を定めました。5人中ベースのピエール・ミシュロだけがフランス人という構成です。



さて、そんなメンバーによるアルバムのタイトルがなぜ「キャノンボールに捧ぐ」なのかと言うと、ちょうどパリにいたキャノンボール・アダレイがこのセッションをプロデュースしたからだそうな。いっそのこと一緒に演奏に加わってくれたらもっと盛り上がったのにと思いますが、ボーナストラックの“Cherokee”でちょろっと参加するだけで後は監修に徹しています。肝心の演奏ですが、バイアスのテナーはコールマン・ホーキンスを彷彿とさせるややオールドファッションなスタイルです。パウエル、クラーク、スリーマンも年齢高めとあって、落ち着いた内容かと思いきや、演奏の方は意外とエネルギッシュです。“Just One Of Those Things”“Cherokee”等古くからのスタンダード曲も取り上げていますが、前年に発表されたばかりのデューク・ピアソン作“Jeannine”を取り上げるなど進取の気性も感じられます。定番スタンダード“All The Things You Are”もハードバピッシュな熱い演奏ですね。2曲あるオリジナルは唯一のフランス人ミシュロが書いたものですが、渋めのバラード“Jackie My Little Cat”、熱きバップチューン“Myth”とどちらもなかなかの佳曲です。ヨーロッパに移住したからと言って決して楽隠居してるわけではないんだぞ!とメンバー達が主張してるかのような拾いモノの好盤でした。
コメント

バルネ・ウィラン/ティルト

2015-11-27 22:50:19 | ジャズ(ヨーロッパ)

本日もヨーロッパもので、フランスを代表するサックス奏者であるバルネ・ウィランのアルバムです。バルネについては以前に本ブログでも代表作「バルネ」を取り上げましたね。今日ご紹介する「ティルト」はその2年前の1957年1月にフランスのスウィングというレーベルに吹き込まれた彼のデビュー作で、録音当時まだ19歳というから早熟ぶりに驚きです。前年にジョン・ルイスの「アフタヌーン・イン・パリ」でも素晴らしいプレイを披露していますが、自身のリーダー作ではワンホーンカルテットで思う存分にテナーを吹きまくっています。アドリブではやや一本調子なところもなきにしもあらずですが、それでも若々しくエネルギッシュなプレイは一聴の価値アリです。



録音は2つのセッションに分かれており、前半の5曲がモーリス・ヴァンデール(ピアノ)、ビビ・ロヴェール(ベース)、アル・レヴィット(ドラム)のリズムセクションをバックにスタンダード曲とビバップの名曲を、後半4曲はベースはそのままでピアノがジャック・ヌーデ、ドラムがシャルル・ソードレに交代し全てセロニアス・モンクのナンバーを演奏しています。ヌーデというピアニストのことはまるで知りませんが、モンクを彷彿とさせるパーカッシブなピアノタッチで、独特のモンクワールドを再現しようとしているのが分かります。ただ、どうせモンクを聴くなら本家を聴いた方が良い、というのが感想です。と言うわけでお薦めは前半部分。ナット・キング・コールの“Nature Boy”だけはややくどいですが、それ以外はすべて素晴らしい。特にディジー・ガレスピーの2曲“Blue N' Boogie”と“A Night In Tunisia”でのパワフルなテナープレイは圧巻です。古いスタンダード曲“Melancholy Baby”“The Way You Look Tonight”も原曲の美しいメロディを活かしつつ、見事にハードバピッシュな演奏に料理しています。バルネの陰に隠れてはいますが、フランス屈指の名ピアニストであるヴァンデールのキラリと光るピアノソロも見逃せません。

バルネの若き天才ぶりはすぐにアメリカのジャズメンに知れ渡ることになり、同年12月にはマイルス・デイヴィスの有名な「死刑台のエレベーター」に参加、さらに2年後にジャズ・メッセンジャーズの「危険な関係」「パリ・ジャム・セッション」等でも名を馳せます。60年代以降はロックに走ったり、フリージャズに走ったりした時期もあったようですが、今聴いても魅力的なのはやはり50年代のバルネですね。

コメント

バッソ=ヴァルダンブリーニ・クインテット/ウォーキング・イン・ザ・ナイト

2015-11-22 23:39:17 | ジャズ(ヨーロッパ)
本日は久々にヨーロッパもので、イタリアのバッソ=ヴァルダンブリーニ・クインテットというグループの作品をご紹介します。テナーサックスのジャンニ・バッソとトランペットのオスカル・ヴァルダンブリーニの双頭グループで、50年代には“イタリアのブラウン=ローチ・クインテット”と称されたとか。さすがにそれは言い過ぎだろうとは思いますが、リーダー2人を中心に軽快なハードバップを聴かせてくれます。本作「ウォーキング・イン・ザ・ナイト」は1960年にRCAに残した録音で、彼らの代表作と言うだけでなくヨーロッパジャズ屈指の名盤として昔から知られており、今回「ジャズ・コレクション1000」シリーズでも再発となりました。



この作品の特徴は12曲全てがオリジナルで占められていること。この時期のヨーロッパのジャズメンの作品の多くは、本場アメリカのビバップ、ハードバップへの強い憧れから、有名バップ曲のカバーが必ずと言っていいほど含まれていますが、本盤は全てメンバーまたは他のイタリア人ジャズメン達が書き下ろした意欲作です。とは言え、どれもどこかで聴いたことのあるような曲調で、バップの影響をもろに受けていることに変わりはないですが・・・どの曲も平均以上ですがオープニングのファンキーな“Lotar”、ドライブ感抜群の“Estroverso”、ヴァルダンブリーニのミュート演奏が印象的な“Softly”、マイナー調のバラード“Dialogo”、ウェストコースト風の爽やかな“Ricordando Lester”などが特にお薦めです。演奏ですが、力強いバッソのテナー、小気味よいラッパを聴かせてくれるヴァルダンブリーニとリーダー2人が目立っているのはもちろんですが、レナト・セッラーニ(ピアノ)、ジョルジョ・アッゾリーニ(ベース)、ジャンニ・カルツォラ(ドラム)から成るリズムセクションもカッチリしたサポートぶりを見せています。私も聴く前は知らないメンバーの知らない曲ばかりで正直不安でしたが、聴き込むほどに味が出る傑作だと思います。
コメント

チェット・ベイカー/チェット・イズ・バック!

2014-03-15 11:00:45 | ジャズ(ヨーロッパ)
前回のバルネ・ウィランに引き続き、ヨーロッパ産のジャズをご紹介します。リーダーのチェット・ベイカーはもちろんアメリカ人ですが、他のメンバーは全員ヨーロッパ人で、録音も1962年1月ローマで行われたものです。サックスとギターを加えたセクステット編成で、ベルギー人のボビー・ジャスパー(テナー&フルート)、ルネ・トマ(ギター)、ブノワ・ケルサン(ベース)、スイス人のダニエル・ユメール(ドラム)、そしてイタリア人のアメデオ・トンマージ(ピアノ)という組み合わせです。50年代にウェストコーストジャズのスーパースターとして君臨していたチェットがなぜイタリアで、しかも“チェット復帰”を意味するタイトルの作品を発表したのか?その経緯は解説に書かれていますが、何でもチェットは重度の麻薬中毒に陥っており、60年8月にイタリアの演奏旅行中に不法所持で逮捕。そのまま1年以上をイタリアの刑務所で過ごしたそうです。本作は久々にシャバに出たチェットがヨーロッパのジャズメンに囲まれて思う存分吹きまくったセッションと言うことになります。



以上、いろいろ曰く付きの作品ですが、演奏内容自体はとても素晴らしいです。チェットのトランペットはブランクを感じさせない力強さで、むしろアイドル的人気を誇っていたウェストコースト時代に比べ、よりストイックで研ぎ澄まされたような印象すらあります。共演者もボビー・ジャスパーは過去エントリーでも取り上げたように、超一流のマルチリード奏者ですし、ルネ・トマもソニー・ロリンズのアルバムにも参加するなど当時ヨーロッパ最高のギタリストと呼ばれていたそうです。ピアノのトンマージは全く知りませんでしたが、無難なサポートぶりを見せています。全8曲、うち4曲がバップチューンで、セロニアス・モンク“Well You Needn't”、チャーリー・パーカー“Barbados”、ソニー・ロリンズ“Pent-Up House”、オスカー・ペティフォード“Blues In The Closet”と名演揃い。歌モノスタンダード3曲はうち2曲がバラード“These Foolish Things”“Over The Rainbow”ですが、それよりミディアムテンポの“Star Eyes”が素晴らしいですね。残りの1曲はアメデオ・トンマージが作曲したブルース“Ballata In Forma Di Blues”です。なお、今回発売されたCDには他にボーナスが4曲あり、チェットがエンニオ・モリコーネ指揮のストリングスをバックに、例の中性的な甘いボーカルでイタリア語の歌を歌うという企画ですが、個人的には全く無視!ハードバップトランペッター、チェットの真髄を味わうには前半8曲で十分です。
コメント