1958年に発表した「モーニン」のヒットにより、ファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こしたジャズ・メッセンジャーズは、その勢いに乗って世界各地でツアーを行いました。日本でも大ブームを巻き起こし、例の”蕎麦屋の出前持ちが"Moanin'"を口ずさんだ”と言う都市伝説を生み出したのは皆さんご承知のとおりです(単にその出前持ちがジャズ好きだっただけだろ!というツッコミはさておき)。その現象はヨーロッパも一緒で、「モーニン」を引っ提げたジャズ・メッセンジャーズはヨーロッパ各地でライブを行い、熱狂的な歓迎を受けました。その模様はいくつかのライブ・アルバムに記録されており、有名な「サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ」「パリ・オランピア・コンサート」がそれに当たります。
今日ご紹介する「パリ・ジャム・セッション」もそれらと同じくヨーロッパ・ツアー中のジャズ・メッセンジャーズのライブをオランダのフィリップス系列のフォンタナ・レコードが記録したものです。ただ、上記の2枚が「モーニン」発売直後でベニー・ゴルソンやボビー・ティモンズを含めたメンバーだったのに対し、本作はその1年後の1959年12月にシャンゼリゼ劇場で行われたコンサートの模様を収録しており、メンバーも若干違います。この頃のジャズ・メッセンジャーズはブレイキー、リー・モーガン(トランペット)、ジミー・メリット(ベース)の3人は「モーニン」と一緒ですが、テナーは新たに加入したウェイン・ショーター、ピアノもキャノンボール・アダレイのバンドに加入するため一時的に脱退していたボビー・ティモンズ(翌60年に復帰)ではなくウォルター・デイヴィス・ジュニアが務めています。さらに加えてA面の2曲にはスペシャル・ゲストとして同年にパリに移住していたバド・パウエル、そして地元フランスが誇る若きサックス奏者(当時22歳)バルネ・ウィランが加わっており、ただでさえ豪華メンバーのジャズ・メッセンジャーズをさらにパワーアップさせています。
収録曲は全4曲。曲数は少ないですが、ライブと言うこともあって演奏時間も長く42分超です。うちA面2曲はスペシャルゲストとして参加したバド・パウエルに敬意を表して彼の代表曲である"Dance Of The Infidels"と"Bouncin' With Bud"を取り上げています。まずはオープニングトラックの"Dance Of The Infidels"。ソロ1番手はバルネ・ウィランです。彼は普段テナーを吹いていますが、ウェイン・ショーターに気兼ね(?)をしたのかここではアルトを吹いています。彼については過去に「ティルト」「バルネ」を紹介していますが、フランス生まれの若き天才として注目を浴びていた頃でここでも素晴らしいプレイを聴かせてくれます。続いてはリー・モーガンでいつもながらの暴れん坊っぷりを見せつけます。次いで新加入のショーターが溌剌としたテナーソロを披露した後、バド・パウエルか登場。いつものようにハミングをしながら4分間近くにわたってたっぷりソロを取ります。一般的にパウエルの全盛期は40年代後半のビバップ期で渡欧後はイマイチ、みたいな論評を聞きますが、普通に見事なプレイだと思いますけどね。最後はブレイキー御大が各楽器とド派手なドラムソロ交換を行い、ヤンヤの大喝采で終わります。オープニングを飾るにふさわしい充実の名演だと思います。続く"Bouncin' With The Bud"も同じような感じで、ここではショーター→モーガン→バルネ→パウエルの順で熱いソロをリレーしますが、ここでもパウエルは4分を超えるノリノリのピアノソロを披露するなど絶好調。集まった観衆はもちろんのこと、ステージ上のメンバー達も伝説のジャズ・ジャイアントのプレイに興奮したであろうことは想像に難くありません。
後半(B面)はバルネ・ウィランも抜け、ピアノも本来のメンバーであるウォルター・デイヴィス・ジュニアに交代しています。3曲目”The Midget”はリー・モーガンのオリジナル曲。モーガンがお得意の跳ねて回るようなトランペットソロを吹いた後、ショーター→デイヴィス→ブレイキーとややモード・ジャズを感じさせるようなソロを披露します。4曲目”A Night In Tunisia”はご存じディジー・ガレスピーの名曲でブレイキーはたびたび取り上げています(1954年「バードランドの夜」、1957年のヴィック盤「チュニジアの夜」、翌1960年のブルーノート盤「チュニジアの夜」)が、ここでの演奏はかなりの高速バージョン。ショーター→モーガン→ブレイキーと異常なまでにテンションの高いソロを繰り広げます。ちなみにドラムだけでなくパーカッションも聴こえますが、ソロを吹いてない時にモーガンとショーターがシャカポコやってるそうです。以上、当時のパリの聴衆の熱狂がダイレクトに伝わってくるような白熱のライブ名盤です。バド・パウエルとジャズ・メッセンジャーズの一期一会の共演も必聴です!
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