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[配信ドラマ] 沈黙の艦隊

2024-02-14 | ドラマ

■7~8話感想追記あり

 

「沈黙の艦隊・シーズン1」をアマゾンプライムにて視聴しました

シーズン1を全て見てから(全8話の残り2話分は2/16より配信予定)感想を書こうかなと思ってたんですが、イロイロと思いがあふれてしまってw


「沈黙の艦隊」はかわぐちかいじによって1988~1996でモーニング誌にて連載されていたマンガが原作です

かつて社会現象とまで言われるくらいに大ヒットした作品でして、内容がリアルな現代社会を舞台にした政治劇、外交劇といった側面を持っていた為に、国会質疑で野党から同作に付随する質問が出たという嘘のような本当の逸話があったりする程です

今「沈黙の艦隊 国会質問」で検索してみたら、現公明党代表の山口那津男が一年生議員の時に当時の防衛庁長官に質問してたのか…

オレが強く印象に残っている当時の現象としては「たけしのTVタックル」にて、”やまとが東京湾に入港しましたが、海江田艦長の目的は何だと思いますか?” と、いきなり何の説明もなく報道的な街頭インタビューを実施して、「沈黙の艦隊」のことを知ってる人はノリ良く ”艦長は一体何を考えてるのか”、”海江田さんの真の目的が気になります” みたいに回答し、知らない人は ”政治のこととか詳しくないので…” とか曖昧に逃げる、みたいなやり取りに笑いました(…スタジオでたけしが、”楽屋に何冊か置いてあったけど今時のマンガは凄いよな” と読んだのか読んでないのかいまいちわからないコメントだったのを思い出しますw)

それと単行本が公称3200万部とされてますが、(Wikiにも載ってない情報として)これ実質的にはもっと多くの部数が出ているハズです

どういうことかというと、単行本は週刊連載で約3ヶ月に一冊のペースで刊行されていたんですが、余りにも大ヒットしていた為にあこぎな商売といいますかw、通常の単行本より一ヶ月くらい早く、雑誌サイズでまとめた総集編を別冊として発売していたんですね

普通にどこのコンビニでも平積みされるくらいに売られていて、内容を政治的や軍事的に補足する記事なんかもあって別に詐欺とかではないんですが、マンガ部分は連載時のままで、大ハマりしていた当時のオレは単行本の発売が待ち遠し過ぎて(そしてマニア心理によって)結局その総集編も単行本の方も両方買ってしまっていたというアホな話ですw

また連載の中盤の展開にて政治的な要素が一層深まり、作中で実施される国会解散からの ”総選挙” に合わせて、モーニング誌上にてどの立候補者に投票したいかと、読者投票を実施していたりしたんですが、オレ自身が ”現実” の政治や外交、そして軍事に興味を抱くきっかけとなった作品となりました(ちなみに読者投票の結果は、作中と同じで竹上新民自党の勝利だったかと)

 

「沈黙の艦隊」は ”日米が極秘裏に建造していた原子力潜水艦が反乱逃亡、独立国家を宣言し、全世界を巻き込んだ国際問題に切り込んでいく” という実に壮大なスケールのアクション大作な故、これまで一部がビデオアニメ化されていたのみだったんですが、昨今の配信サービスの拡充によるコンテンツ不足の折に、90年代の名作を映像化する流れみたいなのに乗っかってまさかのドラマ化となったわけです

で、昨年9月に劇場版というのが公開されてまして…


これは見ておかねばとオレも劇場に足を運んでたんですが、要所要所に見所みたいなのはしっかりとありつつも、さすがに一本の映画にまとめるのは無理がありすぎるカンジだったので、どうにも感想をアップする気にはなれなかったんですが、Amazonが出資してるだけあっていずれは配信で行うつもりではあっても、劇場での評判が良ければおそらく第二部も劇場で公開するつもりだったのではないかなあ…σ(^_^;)

 

■■■前置きが異様に長くなりましたが、ここから(ようやく)本編の感想となります

 

痛ましい事件があったばかりで、”原作モノ作品” について語るのに気が重かったりもするんですが、幸いにも今作は多大な原作へのリスペクトと愛があると感じられる映像化だったと個人的には思いました


30年も前の作品で、最新の軍事兵器や世相がテーマに直結しているので現代にそぐわない部分は当然の改変が必要なのは理解出来ますし、劇場公開版を見たときには正直、疑問符がついていたアレンジ要素についてもかなり印象が緩和されたカンジです

逆に、シーバット計画の目的が日本の核軍備という、連載当時の方が戦中派老人の妄言や陰謀論的な荒唐無稽さが強くて、むしろ2024年の現代の方がリアリティがある世界情勢になってしまってる ”現実” が感慨深かったりもしました(-_-;)


シーズン1はやまとの独立宣言からモルッカ海や沖縄沖での米軍との衝突、海江田艦長と日本政府の同盟会談、東京湾海戦、と続くのが主な流れですが、原作から改変された一番大きな要素としてはロシア(ソ連)艦との絡みの全面カットでしょうか

実際に戦争の真っ最中のロシアを登場させることにはリスクしかありませんし、時代背景的に、原作が連載中だった約8年の間にソ連の崩壊に象徴される ”現実” の大変動を反映させることは実質的に不可能で、そもそもからして原作の完全再現は無理な作品であると

また潜水艦を中心とした海戦描写については連載当時からその荒唐無稽さが批判されてたりもしてて、まあそこら辺のエンタメ要素ならではの ”虚実” のバランス感覚は(知識の深さ次第で)人それぞれなので、余り深くはツッコまないのが楽しむためのコツなんだと思います(^_^;

”独立国家やまと” の異常事態に対する、日本や米国という国家の陥るパニック的な積み重ねの描写が薄味になってしまっているのは純粋に尺の都合ということなんでしょうが、”東京湾だとぉ!” と大騒ぎになるシーンが大好きだったので見てみたかったなあ……国会シーンが一切なかったのはホント残念です


基本的にアメリカが主敵となる今作が、よりにもよってアメリカの企業資本で制作されている現状にちょっと複雑な感覚を抱いてしまいますがw、今作の企画が通ったのには「シン・ゴジラ」の影響が強かったのではないかと思えてなりません

「シン・ゴジラ」では ”有事” の際の日本政府や官僚のシミュレーション要素に特化していた意外性が大いにウケましたからねえ……この内容でおそらく20億円以上?の予算をゲットした、今作の企画書を是非とも読んでみたいものですが、”やまと=ゴジラ” を制御不能な対象として状況を次々に推移させ、周囲で対応に追われる側の行動の矛盾やご都合主義っぽさを否応なく ”勢い” で押し切った演出は大正解だったと思います

ギリギリ、たつなみ乗組員の心情描写を ”実写映像化” することによる生身の人間の存在感に付随する ”重み” を最低限必要な描写として差し込んでるという印象でしたが、そういえばたつなみといえば、速水副長の性別が女性になってることについてはある意味原作通りというか、原作を超えた ”正解” といいますか(既読者には伝わるかとw)

水測長が軽やかに演じられてるのも、実写だと(日本人にとって)余りに重すぎる題材と展開へのカウンター・ウェイトなんだろうなと思えば全く気になりませんでした


実写ならではの ”重み” でいえば問題はやまと艦内の方が大きくて、原作でも ”乗員76名に身分も祖国も捨てさせる決断をさせ、意志を統一する強固な動機が” 的なセリフがありましたが、行動がどうにも無茶すぎるんですよね……海江田の真意を聞かされていたから、というだけでは余りにも説得力が足りなくて、その辺りをオリジナルの登場人物で補完しているのは上手いアレンジだと思いました(まだどう転ぶか何とも言えませんが)


日本人視聴者としては自然と、日本人であるやまと側に肩入れしてしまいますが、ハリウッドで散々映画化、映像化が為されてきた ”核テロリストとの戦い” を、完全に核テロリスト側からの視点で見ていると考えると愕然とする状況の作品ですよね(゚д゚;)……ライアン大佐の立場が恐ろしすぎるなと改めて思わされましたw

 

映像面については防衛省、海上自衛隊が全面協力してる部分については素晴らしかったの一言ですヽ( ̄▽ ̄)ノ

艦内での軍事用語なんかにしてもこれまでのどんなミリタリー系作品でも聞いたことのないレベルで専門用語が飛び交ってる感がたまらなかったですが、やはり実際の潜水艦を撮影してるシーンは最高でしたね(たつなみの出航シーン何度も見返してしまうw)……米艦隊など、洋上の特撮シーンは「ゴジラ・マイナスワン」と比べてしまうとどうしても見劣りしてしまったんですが(白組も参加してるみたいですが…うーむ)、それでもこのスケール感だけでも十分に見応えありましたし、ハッタリの効きまくったというか、日本映画ではもちろん、ハリウッドなんかを含めてもこんなのが見てみたかったという新鮮な ”絵” がふんだんに見られたので総合的な満足度は高かったです


直接的な関係はなくとも、明白に「沈黙の艦隊」の影響下にあったと言える「亡国のイージス」や「空母いぶき」で哀しいアレンジが施され続けてきた実写映像化の負の歴史を、一気に全てとは言わんまでも、かなりの部分で救われた気分でもあります


公開されてるメイキング映像によると、艦橋のセットは実際に傾くように(さすが大予算!)作られていたみたいで、もしかしたらどこかで ”アップトリム90度” のシーンも実際にやってくれちゃうんでしょうか(^_^;

 

■7~8話感想追記:

第一シーズン終了までが配信されました

結構な改変されようでしたが、原作の全32巻を通した要素に配慮した改変が基本だと感じられたので、個人的には全然 ”アリ” でした

もちろん全く不満がないというわけではありませんでしたが、原作再現がどうしても難しい要素(規模的、予算的、技術的と要因は様々でしょうが)、原作の時点でリアリティ的に破綻していた要素を思えば、相当頑張って(誠実に)制作されていたんじゃないかと思います


「沈黙の艦隊」という作品のどの部分がウケていたのかを考えると、潜水艦を中心とした海戦描写が非常に珍しかったこと、アメリカら超大国に対しても物怖じしない日本政府の政治外交要素、そして海江田の真の目的は一体何なのかというミステリー要素が挙げられます

その海江田の目的というか、作品の根幹のテーマが ”世界平和” だったというのがオレにとって衝撃的で、これは今に至るもオレの中で「沈黙の艦隊」という作品を他のどのエンタメ作品とも違った立ち位置でオレの中に存在させている気がしてなりません

だって、”世界平和” を真正面から目指す作品なんてまずないんですよ……かつては当たり前だった ”正義の味方” や ”世界征服を企む悪の組織” みたいな存在がフィクション上でも存在が許されなくなり、この地球上で人種や民族や東西や南北に分かたれ、理想も信心も利権も思惑も絡みまくる複雑怪奇な現実世界で ”世界平和” なんて概念は実現不可能に決まってると、そんなの ”常識” じゃないですか

言葉だけなら何とでも言えるんですよ、対話でとか人類皆平等とか愛さえあればとか…

でもそんないわゆる ”お花畑” な理想論に逃げたりせず、様々な社会問題からも目を背けずに本気で世界平和を実現する為に、哲学的・思想的なアプローチも含めて思索を深めた上で、”一つの解決策の提示” にまで到達させた所がホントに凄かったと思います(現実に実現可能かと言えばそれはまた別問題ですが)


実写版では時代背景や海戦描写に止まらず、登場人物たちの関係性なんかもかなり変わってますが、「沈黙の艦隊」が到達した ”ゴール” には確実に向かっていると感じられるアレンジだと思いますので、是非ともシーズン2以降も楽しみにしたいです

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