「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の第七章を川崎チネチッタにて観て来ました
2017年2月28日に公開された第一章からちょうど丸二年、オレはネタバレ回避の為に最新の予告PVやら冒頭10分なんかも見ずに劇場に足を運んだんですが、いやー、これはとんでもない最終章でした(゚д゚;)
有史以来、人類が飽くことなく繰り返してきた ”戦争” という行為において、1914年に勃発した第一次世界大戦を契機に国家が非戦闘員を含む国民を動員し、経済力や最新の科学技術の粋をつぎ込んだ ”総力戦” の体を為した流れが生まれましたが、その流れの行き着く先には果たして何があるのか…?
まさかヤマトファンにこんなデカい荷物を背負わせるラストになるとは…
以下ネタバレ感想:
■第23話……最終決戦に赴くヤマトの前に立ち塞がるデスラーだったが…
ガイレーン→ズォーダー→ミルの三人がタイプ・ズォーダーの系譜だったワケですが、なるほどゴーランド父子での描写がこう活きてくるんですな
他を滅するだけのガトランティスを率いる存在として記憶を継承し続け、千年の果てに遂に ”平和” を受け入れる境地に到達したのに、名も無き(顔すら見せない)兵士の銃弾で千載一遇のチャンスを喪ってしまうというのは、人類初の世界大戦がたった一発の凶弾から引き起こされてしまったという歴史の故事を思い起こさずにはおれませんでしたな…
波動砲に象徴される大量殺戮兵器の引き金も、名も無き兵士の持つたった一丁の小銃の引き金もその本質というか ”重み” に全く違いが無いというのを如実に表していた実に秀逸なエピソードだったと思います
取り返しの付かない過ちを犯した自らを罰したい、死にたいと願ったデスラーは同じデスラーの名を持つ若者に赦され、ガミラスの運命を改めて託されましたが、
”愛するべきだった…”
というファーストの古代の名セリフをここでデスラーに言わせたのは震えました(ノД`)
1974年、ファーストを制作した当時のスタッフたちや日本の社会にはまだまだ ”戦前・戦中派” の方々が多く、あのセリフこそが「宇宙戦艦ヤマト」という作品を象徴する ”魂の叫び” だったのだと思いますが、クールな作風に徹した「2199」が拾いきれなかった(とオレは感じました)部分をも回収してみせた福井晴敏の筆致に改めて敬意を表したいと思います
それにデスラーは幼少時代からの振り返りもあったりして、旧シリーズでデスラーと地球人たちの間に生まれた(友情などの)関係性からは程遠かった(「2199」で賛否が別れてた)分をよくぞここまでキレイに昇華させたもんです……”坊や” 呼びから、”古代” とちゃんと呼ばせるに至る過程をキッチリ描写してみせました
斉藤がガトランティスの傀儡になっていた顛末ですが、テレビ放送で見直してるとちゃんと斉藤がいるタイミングでだけ、大帝の ”視点” がカットインする演出が入ってるんですな……(この後の展開も含めて)永倉は結構好きなキャラだったのでいい ”恋女房” ぶりの見せ場をありがとうございました(-人-)
■第24話……ガミラスの支援を受けヤマトは彗星都市帝国との最終決戦へ
さしもの時間断層の生産能力とはいえ、敵の進撃スピードには抗えずに遂に地球へと到達してしまう彗星帝国ですが、この無限に広がる大宇宙の中で ”何故地球が狙われる?” という、ヤマトシリーズに限らず、これまでオレが見てきた大規模侵略系SFの全ての作品の中で最も納得のいく ”動機” を示してくれたことに興奮を禁じ得ませんでした
”銀河” の存在が象徴的ですが、時間断層は未来の技術を先取り出来るという ”ドラえもん” に匹敵する究極のチート存在ですからねえw……旧作の大帝は ”見れば見るほど美しい星だ” とその景観だけで満足していらっしゃいましたが(宇宙の帝王の動機としては矮小すぎますがw)、確かにあのタコ足の内側にキャプチャーする星の一つとしての見栄えも抜群でしょう(←何だその感想w)
トランジット波動砲ってただでさえ想定外の撃ち方なのに、そんなにとんでもない威力なら使った時点でヤマトの船体がもたなくね?という疑問をデスラー艦の犠牲で上手くかわしつつ、(壊滅した地球防衛軍艦隊に代って)ガミラス艦隊が共闘してくれる展開ですが、ドリルミサイルや次元潜航艇をここで持ってくるのが激燃えでした( ゚∀゚)o彡゚……デスラー直轄の特務部隊が来てることでデスラーが裏でイロイロと尽力してくれてることを示唆しつつ、バーガーだけじゃなくてドメルだって ”縁” の一部だったんや!忘れてへんで!(←何故関西弁?w)と涙腺の大決壊(T∀T)
チラッと懐かしのヤーブこと藪の元気な姿も見せてくれた(すっかり逞しく海賊風キャラになっちゃってw)ことで泣き笑いとなりw、ヤマトが単艦で行動する不自然さみたいなのも消してくれてましたね
桂木サーベラーを自動航法装置に入れ、対空艤装もハリネズミのごとく強化されて都市帝国内部へと侵入したヤマトの戦いは「2199」では描写されなかった ”ガミラス本土決戦” を改めて描写しようというスタッフの気概を感じられる戦いになっていて、まさに ”壮絶” の一言に尽きるんですが、正直言って、時間が足りなすぎ!!!ヾ(`Д´)ノ"
”縁” の導きによるオールスター最終決戦にオレは「うしおととら」を思い出したりしてたんですが、土方艦長以下、次々と命を落としていくヤマト乗組員の扱いが雑過ぎて、「さらば」と同様のシチュエーションを見せるのがやっとで感動もへったくれもなかったのは勿体なさすぎです…(-_-;)
ボロボロになっていくヤマトの絵的なクオリティが凄まじいことになってたのも更に勿体なさに拍車をかけてて…
あれ?もうズォーダーの玉座に到着しちゃったの?ああ、ここまでの戦いでもっとじっくり時間を使って欲しかった……とか思ったのもつかの間、まさかの展開に…
■第25話……自らゴレムを発動したズォーダーは ”人間” としてただ一人生き延びる…
■第26話……
為す術もなく機能停止していくガトランティス人たちを憐れに思う間もなく、まさかの ”ズォーダー自身の巨大化” という昭和の特撮戦隊モノみたいなボス変化の展開に唖然呆然w
どのみち死を目前にしている斉藤はともかく、キーマンをここで死なせる必要は別になかったんじゃねとは思いつつも、なんだかんだで思い入れが出来てるキャラだったので、旧作の山本と真田さんの自爆ポジションを併せ持った演出は感動してしまいましたね…(ノД`)
しかしキーマンたちの犠牲にも関わらず、超巨大戦艦…じゃなくて、超巨大ズォーダーの進撃は止まずに、満身創痍のヤマトに残された最後の手段は…って…ええっ?
待て待て!「さらば」でも「ヤマト2」でも無いラストじゃなかったの?完全に「さらば」じゃん!
最終章は全体的にちょっと劇画タッチ入ってるけど、ここの古代とユキの作画すげえな……うわ、みんなの幻も出てきちゃった…
沖田艦長も古代守もいる……”縁の導き” がなければテレサもこの時この場所には出て来れなかったとか言ってる理屈は納得するとして、マジで特攻しちゃうの…?
さすがにここから「ヤマト2」のテレサだけ生け贄にするみたいな展開には持って行けないよなあ…
ああ…(T△T)
(遠くでの爆発の閃光とよく知ってる破壊音)
そして半年後…
まさかの特攻後のエピローグが長々と続いたワケですが、ここの尺をじっくりと使って都市帝国との最終決戦を描写した方がよかったんじゃね?という想いもオレの中にはあって、正直、どっちが正解だったのか今のオレには判断できない部分があります…
ガトランティスという ”人類の業” を純粋培養して煮詰めてをひたすら繰り返したような存在によって、”戦争” という行為の不毛さ、救いの無さを剥き出しの状態で見せつけられましたが、ベトナム帰還兵や湾岸戦争症候群といったPTSDの症例の究極と言っていい状態にSFアニメの主人公が陥ってしまうという凄まじい展開でした
それでも…
福井晴敏が敬愛する富野由悠季監督の代表作「機動戦士ガンダム」の正統シリーズである「ガンダムUC」でもこのセリフは印象的に繰り返されました
「ガンダム」でも(生きたまま)”彼岸” へと行ってしまったキャラクターというのは存在していましたが、基本的には ”死” と同様の不可逆的な現象で、行こうとしていたのを寸前で引き留められたのが「ガンダムUC」のバナージで、(「2202」は)「逆襲のシャア」にて(おそらく)行ってしまったアムロやシャアを現世に引き戻そうとする展開なのだと考えると「ガンダム」世界ではとても出来そうにないので(汗)、ファンタジー要素も強い「ヤマト」ならではの決着だったのかもしれません
テレザートでの真田さんの、”あの世とこの世の境界” みたいな表現がちょっと宗教じみてたのが微妙に気になってたんですが、人それぞれの ”死生観” を真正面から描写しようとするとどうしても ”精神” や ”魂” について踏み込まないとなりませんからねえ…
科学的な理屈はよくわかりませんが、”争いの絶えない現世に未練はない” と悟ってしまった古代を引き返させたのは(愛する)ユキという ”肉体の安らぎ” でした
いや決して下ネタとかの冗談ではなくてw、バナージ君も同様の動機で現世に踏みとどまりましたし、最も身近に感じられる存在どころか、(一時的な)”一体化” までが可能な他者の存在が(”究極の縁” として)生きる ”希望” であり ”理由” であるというのは、”正義” なんて存在しない人類世界において至極納得のいく ”真理” だと思いました
ヤマトを高次元に送り届ける為に時間断層を犠牲にする事は是か非か?~についてを国民投票で選ばせるという設定も巧妙でしたね
戦後、山南が危惧していた様に時間断層がある限り地球の ”軍事超大国化” を食い止める術は存在しないでしょう……地球人が望むと望まざるに関わらず、ガミラスの軍事産業も密接に関わってますし、大いなる(武)力を持つ者は自動的にそれに比する責任からも逃れ得ません
ここの流れでオレはかわぐちかいじの「沈黙の艦隊」というマンガを思い出していたんですが、今ちょうど50歳の福井晴敏前後の年代の人たちにとって、非現実的な性善説にも性悪説にも依らずに、”世界平和” の実現を真剣に考える思想的基盤としての「沈黙の艦隊」は非常に大きいというのがオレの個人的な印象です
「沈黙の艦隊」の終盤、一隻の原子力潜水艦を独立国に見立てて米ソという二大軍事超大国を相手に戦ってきた主人公は国連総会の壇上にて、
(多数決の原則に則り)”戦争に賛成か反対か?” の二択を全人類に投票させたとしたら間違いなく反対の方が優勢になるだろうことは誰もが想像出来て実感も伴うのではないか
という持論をぶち上げます
現実的に考えて、決して ”平和憲法” 的なお花畑的な思考から ”古代とユキの救出=時間断層の放棄” という意志が投票で勝利したのではなく、おそらくは上記したような ”大いなる責任” から逃れたいというような意志も強く働いたんじゃないかなと思うんですよね、現代日本人の一人としては…(^0^;)
まあそれでも結果として、”時間断層の放棄” はオレも納得の行く投票結果でありましたし、”それなら現世にも希望はあるかもしれないな” 的に古代もユキも救われてくれたのはとてもいいハッピーエンドだったと思います
…ただ ”5億年ボタン” ではないですが、壮大なスケールの ”臨死体験” を経た古代の精神性はどういう状態になってるのかはちょっと心配σ(^◇^;)
それにしてもちゃんと元通りと言いますか、デスラーなんかも含めた主要メンバーたちもヤマトも健在、時間断層などというチート設備もキレイさっぱり消して、この後に続く ”戦い” の物語をいくらでも作れる構図に(ヤマト世界の)”現状回復” を成し遂げたラストではあるんですが…
”(続編を)作れるものなら作ってみろ” という福井晴敏からの挑発に思えてなりませんw
イスカンダルやガミラス側の「2199」のその後が気にならないっちゃ嘘になりますが、見たいモノはたっぷり見せてくれましたし、”ヤマトの戦い” の本質的な部分をここまでまとめ上げてくれたので、長年のヤマトファンであるオレの心はもうかなり満足してしまった気がします
もうこれ以上どんな ”敵” が出てきたとしても、ねえ…
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