剣道は,とりわけ「礼」を重視する競技である。
剣道は「礼に始まり礼に終わる」とも言われ,「礼法」についても厳しく指導される。
しかし,「礼」とは何か,私は教わった記憶もないし,具体的に教えたこともない。
ただ,「礼」を大切にしろ,と言う(言われる)だけで,それにどんな意味があるのか深く考えたことはなかった。
それで,少し調べてみた。
「礼」とは,広辞苑(第五版)によれば,次のように説明されている。
①社会の秩序を保つための生活規範の総称。儀式・作法・制度・文物などを含み,儒教では最も重要な道徳的観念として「礼記」などに説く。
②規範・作法にのっとっていること。
③敬意を表すこと。その動作,おじぎ。
④謝意を表すこと。また,そのために贈る金品。
種々の中国古典を調べてみると,「礼」とは社会秩序を維持するための「決まりごと」であり,上の①②が原意であるようだ。
つまり,形式的な要素が本来の意味であり,③④のような観念的な意味合いは,「仁」や「義」などとの関連でのちに付加されたのではないかと思われるが,私は中国史や中国文学の専門家ではないので,これについては後日改めて考察したい。
ともかく,「礼」には形式的な要素と,観念的な要素が含まれている。
剣道で「礼儀を大切にする理由」については,次のように記されている*。(下線は筆者による)
剣道は闘争の術に淵源を有し,「剣の理法の修練による人間形成の道である」という考え方にまで発展した我が国の伝統文化である。剣道は対人的格闘技であるので,ややもすると闘争本能をむき出しにしてしまう場合がある。こうした闘争本能を人間として統御するところに,剣道における礼の意義がある。それ故に,古来「剣道は礼に始まって礼に終わる」と厳しく教えられ,実践されてきた。
剣道を修錬する上で,互いに心を錬り,身体を鍛え,技を磨くためのよき協力者として,内には相手の人格を尊重して常に感謝の念を持ち,外には端正な姿勢で礼義正しくすることが,剣道にとって極めて大切なことである。稽古や試合の前後の礼法を立派に行うことはもちろんのこと,終始,正しい心,慎みの心,敬う心といった礼の本体を離れることなく,素晴らしい剣道を創造していくうえで,礼は大切な要素である。
つまり,まず観念的要素が重視されており,それを体現するための形式的要素も重要である,ということである。
種々のコミュニティサイトでも,剣道の「礼」についてのQ&Aが多く掲載されているが,Yahoo!知恵袋にあるburannku88さんの回答がなかなか秀逸で,私の思っていたイメージを明快に文章化されていたので,リンクを張って紹介させていただく。
しかし,子どもや初心者に対してこれを教えるのは難しい。
形式的な作法から教えるしかないが,その意味を問われたら,
「それが剣道におけるボディランゲージのようなものであり,相手や周囲への尊敬・感謝の気持ちを表すものだから,正しくやらないと伝わらないのだよ」
「そのように行うことが,体だけでなく,心の成長にもつながるのだよ」
と返すのはどうだろうか。
子どもや初心者でも,正しい作法で行われる剣道は,見ていて清々しく,見ている方も襟を正さねばと思う。
そして,観念的な意味合いまで理解できるようになったら,立派な剣士の誕生である。
<参考資料>
*全日本剣道連盟:剣道学科審査の問題例と解答例,2005年
剣道は「礼に始まり礼に終わる」とも言われ,「礼法」についても厳しく指導される。
しかし,「礼」とは何か,私は教わった記憶もないし,具体的に教えたこともない。
ただ,「礼」を大切にしろ,と言う(言われる)だけで,それにどんな意味があるのか深く考えたことはなかった。
それで,少し調べてみた。
「礼」とは,広辞苑(第五版)によれば,次のように説明されている。
①社会の秩序を保つための生活規範の総称。儀式・作法・制度・文物などを含み,儒教では最も重要な道徳的観念として「礼記」などに説く。
②規範・作法にのっとっていること。
③敬意を表すこと。その動作,おじぎ。
④謝意を表すこと。また,そのために贈る金品。
種々の中国古典を調べてみると,「礼」とは社会秩序を維持するための「決まりごと」であり,上の①②が原意であるようだ。
つまり,形式的な要素が本来の意味であり,③④のような観念的な意味合いは,「仁」や「義」などとの関連でのちに付加されたのではないかと思われるが,私は中国史や中国文学の専門家ではないので,これについては後日改めて考察したい。
ともかく,「礼」には形式的な要素と,観念的な要素が含まれている。
剣道で「礼儀を大切にする理由」については,次のように記されている*。(下線は筆者による)
剣道は闘争の術に淵源を有し,「剣の理法の修練による人間形成の道である」という考え方にまで発展した我が国の伝統文化である。剣道は対人的格闘技であるので,ややもすると闘争本能をむき出しにしてしまう場合がある。こうした闘争本能を人間として統御するところに,剣道における礼の意義がある。それ故に,古来「剣道は礼に始まって礼に終わる」と厳しく教えられ,実践されてきた。
剣道を修錬する上で,互いに心を錬り,身体を鍛え,技を磨くためのよき協力者として,内には相手の人格を尊重して常に感謝の念を持ち,外には端正な姿勢で礼義正しくすることが,剣道にとって極めて大切なことである。稽古や試合の前後の礼法を立派に行うことはもちろんのこと,終始,正しい心,慎みの心,敬う心といった礼の本体を離れることなく,素晴らしい剣道を創造していくうえで,礼は大切な要素である。
つまり,まず観念的要素が重視されており,それを体現するための形式的要素も重要である,ということである。
種々のコミュニティサイトでも,剣道の「礼」についてのQ&Aが多く掲載されているが,Yahoo!知恵袋にあるburannku88さんの回答がなかなか秀逸で,私の思っていたイメージを明快に文章化されていたので,リンクを張って紹介させていただく。
しかし,子どもや初心者に対してこれを教えるのは難しい。
形式的な作法から教えるしかないが,その意味を問われたら,
「それが剣道におけるボディランゲージのようなものであり,相手や周囲への尊敬・感謝の気持ちを表すものだから,正しくやらないと伝わらないのだよ」
「そのように行うことが,体だけでなく,心の成長にもつながるのだよ」
と返すのはどうだろうか。
子どもや初心者でも,正しい作法で行われる剣道は,見ていて清々しく,見ている方も襟を正さねばと思う。
そして,観念的な意味合いまで理解できるようになったら,立派な剣士の誕生である。
<参考資料>
*全日本剣道連盟:剣道学科審査の問題例と解答例,2005年
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます