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遠山を望むが如く

しんちゃんの雑録

酒米の系譜

2025-04-27 08:49:33 | 酒食
なじみの酒店で,私の好きな銘柄の一つ「松の司」を買おうと思って聞いたところ,使用する酒米が変わっていた。
店主いわく,近年の気候変動で山田錦の品質が安定しないようで,昔からある雄町や渡船の方が強いから少しずつ変えて造っているそうな。

山田錦は病害に弱いと聞いたことがあったが,高温にも弱いのか。
いや待てよ,山田錦ってそんなに新しい酒米ではなかったはずだが・・・と思って,酒米の系譜を調べてみた。

系図を示したサイトはいくつかあるが,どれが信憑性が高いか分からなかったので,副島顕子氏の「酒米ハンドブック 改訂版」を参考にした。
本書は酒米ごとに系譜が示されているので,私がこれまで主に飲んだことのある酒に使用された酒米の系譜をつなぎ合わせて作図してみた。
(破線はエクセルのセル間で繋がらずに見えるのであって,意味はありません)



こうして見ると,三大酒米と言われる「山田錦」「五百万石」「美山錦」のほか,ほとんどの酒米は「雄町」「亀の尾」の子孫であることが分かる。
「雄町」は西日本,「亀の尾」は東日本の,古くからある在来品種であるが,それらの子孫どうしを交配させて,こんなにも品種が広がっているのだと,改めて栽培者の情熱に敬意を表する。

意外にも,広島の酒でよく使用される「八反錦」は異なる系譜であった。
「八反錦」と三大酒米を交配させると,どのような酒米になるのだろうか。
そのような試験をやっていないとは思えないが,聞いたことはないので期待したい。

温暖化は今後ますます進むであろうから,さらなる改良品種が生まれることだろう。
それで醸した酒はどんな味になるのか,想像する楽しみが尽きない。

甲府の酒店

2019-03-20 23:39:25 | 酒食
甲府で酒店めぐりをしたのでレポートします。
なので,今回のタイトルは「酒」ではなく「酒店」です。

1.日本酒・焼酎・山梨県産ワインの専門店,依田酒店

「美味しんぼ」82巻に掲載の「"旨い"という顔」では甲府が舞台になっており,店主(社長)の依田浩毅さんが主役という設定。
「美味しんぼ」では大吟醸とやさしい食中酒としてお燗酒が紹介されており,機会があれば行ってお話を伺ってみたいな,とずっと思っていた。

甲府滞在中にで空き時間を見つけてバスで訪れた。
依田酒店は,ちょうど徳行バス停の真ん前にあった。
専門店にありがちな洒落た外観を勝手に想像していたら,ふつうの酒屋さんといった佇まいで,バスを降りてすぐには気づかなかった。

店内に入ると,いろんな酒類が所狭しと並んでいた。
ワインは何と一升瓶で売られていた。
店員さんに聞いてみると,山梨ではこれが普通だそうな。
山梨の20歳以上人口1人あたりワイン消費量は,東京についで第2位で,この2都県が断トツに多いらしい*。

社長さんはいらっしゃらなかったので,女将さんにいろいろとお酒のことを聞いてみた。
「美味しんぼ」に載っていた大冠酒造の「甲州利右衛門」は一升瓶しか売られておらず,値段も高かったのでやめておいた。
萬屋醸造の「春鶯囀 鷹座巣」(しゅんのうてん たかざす)は4合瓶でも売られていたので,購入した。
4合瓶を2種類買おうと思っていたので,もう1本オススメは何か尋ねてみたら,武の井酒造の「青煌」(せいこう)は甲府ではここにしかないからどうですか,と勧められた。
「青煌」には4種類あり,美山錦と五百万石のどちらにしようか迷ったが,一番オーソドックスと言われた美山錦の方を購入した。

帰宅後に早速開けてみた。

「春鶯囀 鷹座巣」は冷やで飲んでみたら,とても味のバランスがよく飲みやすい。
どんな料理にも合う感じ。
そして,冷蔵庫で冷やしてから飲んでみると,とてもすっきりして淡麗な感じ。
気がつくと4合瓶も残りわずかになってしまい,最後の1杯を「美味しんぼ」に載っていたようにぬる燗にして飲んでみたら,ふうわりと味にふくらみが出た。
温度でこんなに味の変わる酒に出会ったことがないと思えるくらい,おいしく楽しくいただけた。

「青煌」の方は,吟醸酒かと思えるほど香りがよい。
仕込みにつるばら酵母を使用していると書かれていたが,こんなに華やかな香りが立つのかと驚いた。
五百万石の特別純米は,さくら酵母だったか,別の花酵母が使用されていて,そっちも買っておけばよかったと後悔したが,またの機会にしよう。

なお,「美味しんぼ」で舞台になっていた「おはじき」というお店は何と東京に移転しており,新宿で営業しているらしい。

2.山梨のワイン,地酒専門店,リカーショップながさわ

こちらは店舗を訪れたわけではないが,会合の一角でワインの試飲会があり,こちらの店長さんが振る舞っていた。
店長さんはソムリエの資格をお持ちで,山梨の白赤ワインを何種類も開けてくれた。
甲州(ぶどうの品種)で作ったワインでも値段(作り方)の違いで味は全く異なるよ,と好みの味のワインを惜しみなく試飲させてくれた。
中でも「アルガーノ ボシケ」という甲州ワインは,酸味と甘みのバランスがよく,香りも華やかで絶品だった。

多種類飲ませていただき,また甲州についてもご教授いただいたので,お店を紹介することでお礼としたい。(上記店名にリンクを張ってある)

なお,一方だけリンクを張るのは不公平なので,依田酒店の方もリンクを張らせていただく。
甲府へ行かれた方は,ぜひこれらのお店で自分に合ったお酒を探してみてください。

─────
*都道府県別統計とランキングで見る県民性,https://todo-ran.com/t/kiji/14535

越前大野 ハーフマラソンと酒(2)

2018-06-05 07:38:53 | 酒食
先月末,1年ぶりに越前大野へ行ってきた。
目的は,第54回越前大野名水マラソンと,その後の奥越前酒買い漁り。

今春は花粉症対策として3月,4月は走るのは控え,ゴールデンウィーク明けから練習を再開した。
昨年よりはコンディションはよいと思い,目標設定は昨年同様に1時間半として臨んだ。
スピード練習をしていなかったので,スタートからやや飛ばしてどこまでいけるか試してみた。
それが失敗だった。

いきなりキロ4分ペースは無謀で,スタートから3kmでもう息が上がり始めた。
ペースダウンするも,キロ4分半近くまで落とさないと息が整わなかった。
そうこうしている内に中間地点に差しかかり,容赦なく照りつける太陽の下,再びペースを上げることができずに1時間33分でゴールした。

今年の大会当日は暑かった。というか,日射しが強かった。
いつもはスロースターターなのだが,久しぶりのハーフだったので,ペース配分を甘く考えてしまった。
おっさんランナーは決して無理をしてはならない,ということを悟った大会であった。

さて,今回対象の奥越前酒は,昨年気に入った「花垣」のほかに,買いそびれた「一乃谷」,そして「真名鶴」も飲み比べのため購入した。

「花垣」の南部酒造場は,大野市中心部にあり,観光拠点「結ステーション」から徒歩5分ほど。
今年は蔵元へ買いに行った。
道中,七間通りを歩いたが,なかなか面構えのよい店(建物)が並んでいる。
もう朝ではなかったし,日曜でもあったからか,朝市は行われていなかったが,よい雰囲気の町並みだ。
11時過ぎだったが,蕎麦屋さんでは行列ができていた。

「花垣」には今年は「美郷錦」という酒米で造った酒が新たに並んでいた。
それは「山田錦」と「美山錦」を掛け合わせた酒米で,何とも香り高く,旨みもありそうな印象をもち,迷わず買いだ。
もう1本,「山廃純米無濾過生原酒」も買った。
山廃の方が手がかかるはずなのに,なぜか速醸の「純米無濾過生原酒」よりも安かった。
おかみさんに理由を尋ねても,「さあ,以前からその値段で売っていますから」というお返事。
何とものんびりした雰囲気の蔵だなぁと,ほのぼのした。

南部酒造場をあとにして,「結ステーション」へ戻り,他銘柄の酒を物色。
「真名鶴」では「氷点囲い 純米」,「一乃谷」では「純米酒 天空の城 越前大野城」を買ってみた。

そして,恒例の飲み比べ。

まずは「花垣 山廃純米無濾過生原酒」。
香り・味のバランスがよい。
無濾過生原酒なのに,意外と後味がすっきりして残らない。
アルコール分が18度なのに,そのままくいくい飲める。

次に「花垣 美郷錦 純米」。
山田錦と美山錦の相乗効果か,芳香はすばらしいが,意外と後味が辛かった。

昨年も感じたが,「花垣」は辛口を造るのが上手いと思う。
ピリピリする辛さではなく,すっきりした辛さ。
それでいて,お米の旨みも感じられる。
どちらの「花垣」も黄みが強く,あまり炭入れされてないと思われたが,全くくどくなく,丁寧に造られている印象を受けた。

「真名鶴」は,お米の旨みがふうわりと感じられ,「花垣」に近い印象を受けた。
しかし,「花垣」より軽く感じたのは,単にアルコール分が14度と低かったからだろうか。

一方,「一乃谷」は米よりも麹の風味が若干強く感じられ,昨年飲んだ「源平」に近い印象を受けた。
「花垣」と同様に黄みが強く,五百万石を55%に磨いた,米の味がしっかりと感じられる酒だ。

越前大野では,町中には水が流れる音が心地よく響き,山に囲まれた盆地の牧歌的な風景が印象的だ。
新しさは感じられないが,地方の小都市にありがちな寂れた感じはそんなに受けなかった。
伝統的というか,文化的な雰囲気が漂うところが,「北陸の小京都」と呼ばれる所以なのかもしれない。
そのような町だからこそ,市民マラソンが半世紀以上も続き,丁寧に造られる酒も多いのではないかと思った。

限定プレミアムビール

2018-05-19 14:30:10 | 酒食
知人から,「アサヒビール株主様限定プレミアムビール」をいただいた。

私はビールも好きである。
マラソンや剣道で汗をかいた後は,プシュっと一杯やりたくなる。
食事では基本的に最初から日本酒を嗜むが,暑い日や揚げ物(フライ)に合わせるときは,ビールを嗜む。

私はキリン党だが,キリンが続くとサントリーやサッポロも飲みたくなる。
しかし,アサヒを選ぶことは稀だ。
アサヒはどれも「スーパードライ」のような味で,要はキレはあるがコクが弱い。
飲んだ後の爽快感は強いが,味わいが他社に比べて劣ると感じている。
日本酒ではコメの旨みを感じられる酒を好んでいるが,ビールでは麦(麦芽)の旨みが感じられないと物足りないのである。

現在,各社ともプレミアムビールを出しているが,アサヒのそれは,やはり「スーパードライ」がベースであり,それより多少味が濃い程度だと思っている。
「グランドキリン」「プレミアムモルツ」「エビス」には及ばない,というのが私の感想だ。

さて,冒頭の「株主様限定プレミアム」を飲んでみた。

おおっ!何と芳醇な味わいだ!
全く「スーパードライ」っぽくない。
香りよし,麦芽の風味もよし,デュンケルタイプで味も濃いが,ローストの具合が程よく,一般の黒ビールほどくどくない。
後味のさっぱり感はアサヒの得意とするところだろうか。
アサヒもやるじゃないか。

ビール大手4社は,近年は発泡酒や,いわゆる「第三のビール」の開発に勤しんでいるようだが,ビール本来の旨さをもっと追求してもらいたいものである。
かつて,キリンは明治,大正,昭和初期の「ラガービール」を復刻したことがあった。
サッポロは毎年「頒布会」を行って,当時としては特殊なビールを醸造していた。
サントリーは“I.P.A”でも紹介したように,クラフトビールを時々造っている。
日本酒同様に,良いビールは国内の需要が小さくても,海外で高い評価を受けることだろう。

国内でも一定量は売れると思うが,私なら買う。絶対買って飲む。
「株主様限定プレミアム」を,ぜひとも一般販売してほしいものだ。

「生酒」の良さ

2018-05-11 23:59:12 | 酒食
日本酒の人気が,数年来海外で高まっていることは知っているが,「生酒」の受けがいいことをテレビのニュースで知った。

「生酒」は加熱処理を行っていないため,酵母が生きたまま瓶詰めされており,わずかに発泡して爽やかに感じることと,風味の良い甘みを感じる(ベタベタした甘ったるさとは異なる)ことで,私は結構好んで飲んでいる。
ここ最近でも,「明鏡止水」甕口生原酒(長野県),「久保田」生原酒(新潟県),「天寶一」Type P 純米吟醸 生(広島県),「不老泉」無濾過生原酒(滋賀県),「真澄」純米生酒(長野県),「一博」うすにごり生酒(滋賀県)を買って飲んだ。

ただ,開栓するとその風味は失われ,気も抜けるので,翌日ならまだよいが,冷蔵庫に入れておいても2~3日経つと味が落ちるので,早めに飲み尽くしてしまわなければならない。

ニュースでは,生ビールやワインなどの輸送で広く使用されているオランダ製の鮮度輸送容器に生酒が詰められ,それは二重容器になっており,生酒の入ったPET素材の外側に空気を入れて,その圧力で空気に触れることなくPET内の酒を押し出すという方法が紹介されていた。
なるほど,よく考えられた容器だし,それを見つけて日本酒にも適用した酒蔵の視点にも恐れ入った。

海外人気とは裏腹に,日本国内では日本酒の消費が落ち込んでいると言われている。
良い酒が海外に流出するのはもったいない。

生酒は冷やしてそのまま飲んでも良いが,味わいが豊かなので,味が強く感じるかもしれない。
私はロックにしたり,生原酒(アルコール度数が高い)では炭酸割りにしたりして飲むこともある。
それは邪道と思われるかもしれない。
しかし,飲み方は自由であってよいと思う。
炭酸割りでは,そのまま飲むよりずっと香りが立つ(ただし味が薄くなるので,私は1:1までしか希釈しない)。

近年の日本酒ブームで,農業試験場等は新たな酒米を開発したり,酒蔵は新たな醸し方に挑戦したりしている。
消費者も様々な飲み方で楽しむことにより,日本酒ブームを国内でも下支えしたいと思う。