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阪神間で暮らす-2

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

政治学者・白井聡が語る〈安倍政権の支持率が下がらない理由とその背景〉

2018-05-20 | いろいろ

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政治学者・白井聡が語る〈安倍政権の支持率が下がらない理由とその背景〉


 森友・加計問題で次々と新事実が明らかになり、安倍晋三首相をはじめ、担当大臣や官僚が野党やメディアから徹底的に追及を受けている。だが、メディア各社の世論調査では、安倍内閣の支持率は38.9%(共同通信、5月14、15日調べ)で、倒閣運動が始まる「危険水域」の前で安定している。

 文書改ざんや国会での「記憶がない」「メモがない」発言など、国民への説明をかたくなに拒否する安倍政権が、なぜ支持を集めているのか。

 そういった問いに、正面から切り込んだ著書が話題を集めている。政治学者・白井聡氏の『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)だ。発売から約1カ月で、政治の本としては異例の5万部を突破するベストセラーになっている。

 白井氏によると、今の日本人は「戦後の国体」に支配されているという。それは一体、どういう意味なのか。インタビュー前編。

* * *

──安倍政権とは、戦後日本の歴史でどのような存在なのでしょうか。

(白井聡氏、以下回答部分は同じ)
 これだけの腐敗と無能をさらけ出しているにもかかわらず、安倍政権が長期本格政権になってしまった。日本はすでに破局を迎えているのではないでしょうか。

 政権の常軌を逸したひどさが日々刻々と証明されてきたにもかかわらず、支持率の動きは底堅い。これが示しているのは、自分たちの社会が破綻しているということからも、劣悪な支配が進んでいるということからも目を背けている人々が数多くいる、ということです。

 新著『国体論 菊と星条旗』で論じたことですが、現代は戦前のレジームの崩壊期を反復している時代です。あの時代を今から振り返ると、「この時期の日本人て、何やってんだ? バカじゃないのか?」と私たちは感じるわけですが、崩壊期というのはそういうものなのでしょう。安倍政権もそれを支持してきた日本社会も、こうした時代にふさわしい状態にある。


──そのことと、「国体」とはどう関係するのでしょうか。

 端的に言うと、「国体」のなかで育てられた人間は、自由を知らず、民主制における政治的主体になり得ないのです。

 一般に国体と言えば、「万世一系」の天皇を家長とし、その子である臣民で構成された共同体という物語です。こうした家族国家観は、家族の間に支配はない、と「支配の否認」という心の構造を日本人に埋め込んでしまった。

 もちろん、戦前の国体は、敗戦を契機に粉砕されたことになっていますが、実際にはそれは戦後も途切れていないと私は考えています。

 では、「戦後の国体」とは何か。それは、敗戦後に米国が天皇に変わって頂点を占めるようになった支配構造です。よく知られているように、GHQは日本を円滑に統治し、親米国へと作り変えるためには天皇制を残すべきと決めました。それは、熱心な研究の末に彼らが得た結論でした。その結果、「米国に支配されている」という事実が曖昧なものになっていきました。

 やがてそれは、長い時間を経て「自発的に米国に従属し、かつ、そうしていることを否認する」という日本人を生み出しました。日本が世界に類をみない対米従属の国であるのは、被支配の事実を今の日本人がちゃんと認識していないことです。

 支配されていること、つまり不自由を自覚するところから自由への希求と知性の発展が始まりますが、そもそも支配されているとの自覚がなければ、何も始まらず、奴隷根性だけがはびこります。「支配の否認」を続けている限りは、日本はこの閉塞感から抜け出すことも、さらなる破局を逃れることもできないでしょう。

──安倍政権は米国との協調姿勢をアピールしています。

 安倍首相は、皇居にいる今上天皇よりも、米大統領を天皇のように扱っています。ゴルフ場で安倍氏がバンカーに転げ落ちた後、必死にトランプ氏に追いすがる姿は象徴的でしたね。こんな国辱的外交を「外交の安倍」などとメディアは評している。

 こういう具合に、対米従属レジームの親分である安倍首相が米大統領を権威として崇めることが当然視されている一方で、同じその親分は今上天皇の譲位の意思表明に対してどういう態度をとったか。

 退位をめぐる有識者会議では、日本会議系の専門家から「天皇は祈っているだけでよい」との発言があり、天皇が「批判をされたことがショックだった」と話していたことが、毎日新聞の記事で明らかになりました(宮内庁は発言を否定)。宮内庁筋からは「陛下の生き方を全否定するものだ」という最高度の非難の言葉も出てきた。

 さきほど言ったように、戦後国体はGHQが天皇制を利用することで形作られた、つまりは天皇と米国が一体化したような国体が生まれたわけですが、ついに日本の保守派にとって、天皇制の頂点を占めるものは明白に米国になったということです。

 だとすると、東京に居る天皇は何なのだということになる。存在意義がなくなってしまう。そうした文脈から昭恵夫人の言動を見ると、興味深いですよ。

 昭恵さんの「私は天皇陛下からホームレスまで誰とでも話しができる」という発言を知って、私は驚愕したわけです。これって、「私は日本国民の一番上から一番下までつながれる、上から下までみんな私を通してつながる」という話で、それはつまり「私は国民の統合をつくり出せる」と言っているわけです。首相が天皇(米国)の代官をやっているうちに、首相夫人は自分が皇后陛下だみたいな気分になってきたようですね。
 
 こういう具合に、末期的症状はここかしこに見えてきています。しかし、だからといって、国体が自然消滅したりはしないでしょう。「戦前の国体」の最期がどういうものだったか、想い起すべきです。

 1945年の敗戦の時、国家指導層は「国体護持」のみをひたすら目指したために、犠牲を増やし続けました。明治維新から1945年の敗戦までが77年。そして、2022年には、戦後も同じ77年目を数えることになります。いよいよこれから「戦後の国体」の断末魔の時期に差し掛かって来るのではないでしょうか。

(後編に続く)

(構成/AERA dot.編集部・西岡千史)
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自民党内からも出始めた「そろそろ安倍さん以外でよくない?」の声

2018-05-19 | いろいろ

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自民党内からも出始めた「そろそろ安倍さん以外でよくない?」の声

GWを挟んで、潮目は変わった  週刊現代

 昭恵がまた「小学校」訪問

 日中の気温は最高37度に達するとはいえ、風も涼しく過ごしやすい。

 4月30日午前11時、安倍晋三の妻・昭恵は、UAEのアブダビ日本人学校を訪れた。同国皇太子との会談に臨む夫とは別行動だ。学校といっても、幼稚園から中学校まで、在籍生徒数はわずか94人。


 昭恵は、自分が導火線となった森友問題などすっかり忘れ、外遊を楽しんでいた。イランやサウジアラビアへの訪問をトランプに封じられた以上、GWの中東訪問は、安倍夫妻にとって、つかの間のバカンスとしての意味しかなかったのだ。

 安倍本人は、同じ日の朝、ホテルで嬉しそうに語っている。

 「日経(新聞)の支持率、上がってるじゃないか」

 42%から43%、たしかに1%だけ上がっていた。

 時間稼ぎは功を奏した。安倍はそう思った。だがこの連休は、総理として最後の休息となりそうだ。見えない駆け引きが、すでに始まっている。

 時計を2週間ほど巻き戻す。4月17日、訪米中の安倍にあてつけるように、東京・憲政記念館で、人知れず開かれた会合がある。参議院議員・吉田博美が、東京で初めて開いた政治資金パーティだ。

 自民党の参院議員たちが午後4時から直立不動で出迎えたのは、吉田の地元・長野県の支持者たち700人。

 だがその後、続々と現れたのは、普段は政治家のパーティに出席しないと公言する官房長官の菅義偉をはじめ、麻生太郎、岸田文雄、石破茂、二階俊博ら、「オールスター」とでもいうべき各派のボスたちだった。

 吉田といっても、一般にはそう知名度はあるまい。しかし、額賀福志郎を党内第3派閥の会長から引きずり下ろし、竹下亘を竹下派会長に「指名」した吉田は、独自の地位を持つ「自民党参議院」の新たなドンである。

 吉田が師と仰ぐ男がいる。永田町・砂防会館別館2階の事務所に、男が現れるのは週にただ1度、水曜日だけだ。

 青木幹雄。政界引退からは8年が経とうとしているが、吉田に「参院のドン」の座を譲り渡した今も、隠然たる力を持つ。

 水曜日午後、麻雀をしながら青木の指示を受けるのが吉田の役割だ。

 吉田のパーティに、安倍以外の「主要登場人物」が集結したことが、安倍の心を波立たせた。

 「派閥会長の竹下亘に、『今は誰を支持するなどとは言うな』と吉田さんが釘を刺している。最後の最後まで旗幟鮮明にしないことが作戦だと信じている」(竹下派幹部)

 毎週水曜日、青木の事務所には訪問者が引きも切らない。今週は誰が青木と会っているのか、安倍の憂鬱は止まらない。


 もうひとつの動き

 吉田のパーティから10日後の27日、もう一つ、知られざる動きがあった。

 「党政調会のあり方等に関するプロジェクトチーム」と題した勉強会の旗揚げ会合である。事務局長は、小泉進次郎。わずか20人程度の議員の勉強会だが、座長を務めるのが、元防衛相・浜田靖一であった点が、安倍周辺の疑心暗鬼を誘った。

 '12年の総裁選で、浜田が小泉とともに推したのは、安倍晋三ではなく、石破茂だった。浜田は、かつて石破派の前身「無派閥連絡会」の中心メンバーだったが、石破派には参加していない。

 ある閣僚経験者が言う。

 「浜田さんは、勝負に挑まない石破に愛想を尽かしたと言われてきたが、人望があるため『無派閥浜田派』と言われるほど、無派閥議員に影響力がある。進次郎とともに動けば、局面は変わるだろう」

 3月以降、小泉進次郎の「政権批判」ともいえる発言に対して、安倍は「進次郎は若いから、生意気なんだよな」と余裕のポーズをとっているものの、37歳の男の動きが気になって仕方がない。

 安倍応援団のフジ・産経の世論調査(4月21~22日)ですら、「次期総裁にふさわしい人物」で、1位石破茂(26%)、2位小泉進次郎(24%)、3位安倍晋三(21%)という結果を出している。


 「小泉が最前線に立って石破を応援すれば、国民的な一大ムーブメントを呼ぶ可能性が高まる」と細田派幹部は言う。

 「進次郎に加え、(幹事長の)二階さんが勝ち馬にのり、さらに青木幹雄さんが加わる態勢になれば、確実に安倍政権は崩壊することになるだろう」


 解散、7月8日投開票?

 もはや野党だけではなく、自民党内にも「そろそろ安倍さん以外でよくない?」という空気が充満しはじめているのだ。

 そこで、連休前から安倍周辺がしきりに流しているのが「解散風」だ。

 「内閣不信任案が出されれば、解散も一つの選択肢だろうな」と国対委員長の森山裕が述べたかと思えば、官房長官の菅も「(解散は)やるならいつでもやるよ」と語った。だが、前回の選挙からまだ1年も経っていない。

 もちろん、これは野党への牽制に過ぎないという見方が大方を占めるが、「4月中旬、党が過去の解散の間隔を調査したんだが、'80年の大平内閣不信任のときの『ハプニング解散』だって、前の選挙から7ヵ月で解散になっているから問題ない」と嘯く安倍側近もいる。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は言う。

 「安倍総理にとって最大の政治目標は3選しかない。選挙に勝ってしまえばすべてを帳消しにし、ライバルの石破氏の総裁選での勝ち目も消せる。このままでは3選は厳しいという局面になれば、解散する可能性はある」

 7月8日という投開票日程さえ、語られ始めている所以だ。だが、そうは問屋が卸さない。

 「連休明け以降、佐川前国税庁長官が立件されるにせよ、されないにせよ、支持率は急落する。総理が解散までして延命しようという流れが出てくれば、竹下派、二階派を中心に、安倍おろしが加速する。そのときは内閣不信任案に賛成するというカードもちらつかせるだろう」(前出・閣僚経験者)

 となれば、安倍はもはや手も足も出なくなる。

 中東で昭恵が安倍と行動したのは、合計でわずか2時間足らず。残りの時間は、2度にわたる難民キャンプ訪問や、単独の昼食会と、自由きままに過ごした。日本に戻れば夫への包囲網が狭まっていることなど、もはや眼中にはないようだ。
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大宅賞作家も指摘…国家戦略特区の“権力私物化”“利権構造”

2018-05-18 | いろいろ

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大宅賞作家も指摘…国家戦略特区の“権力私物化”“利権構造”


 “腹心の友”が国家戦略特区で実現した加計学園の獣医学部新設をめぐり、安倍首相のウソやデタラメを裏付ける物証や証言がどんどん集まっている。にもかかわらず、野党は何を攻めあぐねているのか。安倍が出席した、14日の衆参予算委員会の集中審議は先週参考人招致された元首相秘書官の柳瀬唯夫経産審議官の答弁が焦点だったが、歯がゆい展開に終始した。

 柳瀬氏の説明によると、2013年5月に河口湖近くにある安倍の別荘で加計孝太郎理事長や学園事務局長と初顔合わせ。そこで一緒にBBQやゴルフに興じたのは偶然なのか、意図されたものなのか。15年2月から6月ごろにかけて官邸で加計学園幹部らと3回面会したのは、アベ友案件だったからではないのか。疑わしいことばかりだ。この期に及んで愛媛県や今治市職員との面会はスットボケ、愛媛県文書に記載された「本件は、首相案件」との発言をめぐる苦し紛れの釈明には愛媛県の中村時広知事が猛反発。県職員が交換した柳瀬氏の名刺を公開して「すべての真実を語っていない」と批判する事態になった。


 世論の8割が柳瀬答弁に「納得できない」

 こうした流れを受け、週末に実施された報道各社の世論調査で約8割が柳瀬答弁を「納得できない」と答えたのは当然だ。

 不信を強める世論を追い風にできず、野党は似たような質問を投げるばかりで切れ味ナシ。安倍は加計学園の計画を知ったのは「17年1月20日」とした答弁を変えず、論点ズラシの十八番答弁で逃げ回った揚げ句、柳瀬氏を「誠実に答弁した」と評価。「誰ひとり私から何らの指示も受けていないことがすでに明らかになっている」と繰り返し、「すべて私の指示で行っているかのごとく言われるのは承服しがたい。いつどこで指示したか明確に示していただきたい」とイキリ立つ始末だった。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏がこう言う。

 「野党の準備不足は明らかで、ハッキリ言って集中審議の体をなしていませんでした。大半の国民が加計問題の背景に巨悪の存在を嗅ぎ取り、疑念をますます強めている。野党はそれに応え、まとまって論陣を張るべきなのに、こぞって新しいネタに飛びついたので質問はバラバラ。中途半端な追及にしかならず、審議は堂々巡りの平行線をたどってしまった。安倍首相は高笑いでしょう」


 国家戦略特区は1%が99%を支配する政治装置

 数え上げたらキリがないほど加計問題をめぐる疑惑は積み上がっているのに、安倍は平然と居直りを続けている。一体なぜなのか。ドリルで岩盤規制に穴を開けるとうそぶき、規制改革の道具として生み出した国家戦略特区の構造を知り尽くしているからだ。

 〈器さえできれば、ここにいろんなものを入れていけばいい。あらゆる規制改革が強力な権限によって推進されるお膳立てが整ったということです〉

 安倍政権が13年12月に国家戦略特区法をまとめた直後、「月刊日本」(2014年2月号)のインタビューでこう喝破していたのが元日経新聞記者でジャーナリストの佐々木実氏だ。国家戦略特区は合法的な国家私物化を可能にさせる究極のお手盛りシステムとして生まれたのである。

 規制緩和の対象や実施地域は内閣府に設置された特区諮問会議が決定するが、トップの議長を務めるのは首相で、議員の資格を持つのは官房長官、特区担当大臣、首相が指定する国務大臣。構造改革に反対する大臣は外すことができる。さらに、有識者議員も構造改革派しかなれないカラクリになっている。特区法第33条4項でこう定めているからだ。

 〈経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者〉

 諮問会議で加計学園が獣医学部新設事業者に決まった行政プロセスについて、安倍は衆院予算委で「形式上は私が座長」「私が座長をしているのは事実だが、実際は有識者が決めていく。私がいちいち事業者を見て選定することはまったくない。決まったことを覆したことはない」とイケシャアシャアと言っていたが、安倍と諮問会議は一体化しているのだ。安倍の息が掛かったバリバリの構造改革派でメンツを揃えているのだから、俎上にさえのせてしまえば異論が差し挟まる余地なんかない。

 佐々木氏はこうも断じていた。

 〈かつては、企業利益の拡大のために、国会議員に頼んで政策を変えようとしてきました。それがしばしば贈収賄事件を引き起こしたわけですが、いまや構造改革派の面々が議員より上の立場で政策を決めるようになり、贈収賄をしなくても済むようになったとも言えます〉

 〈国家戦略特区は、いわば「1%が99%を支配するための政治装置」なのです〉

 国家戦略特区の悪魔的な利権構造を振り付けしたのが、小泉政権時代から利権屋として暗躍してきたあの竹中平蔵氏だ。推して知るべしである。

■ 規制緩和で出来上がった行政の利権化

 ノンフィクション作家の森功氏も国家戦略特区の正体を看破していた。加計問題を徹底取材した新著「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文芸春秋)で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞したのだが、日刊ゲンダイのインタビュー(4月20日付)でもこう指摘している。

 〈特区という規制緩和によってある意味、行政の「利権化」のパターンが出来上がってしまった。その結果、加計学園のように首相との関係を背景にしたエコヒイキが生まれ、その利権をうまく利用した業者が甘い汁を吸う。それがまさしく「行政の歪み」の構造というわけです〉

 森功氏は言う。

 「小泉政権の構造改革特区は地域がアイデアを出して国に提案するボトムアップ型だったのに対し、国家戦略特区は上からのトップダウン方式。しかも、結論ありきの強烈なトップダウンを実現したので友達優遇、エコヒイキが容易に横行する構造なのです」

 規制改革を是とする大マスコミはこうした実態をてんで報じないし、野党も規制改革そのものには賛同の立場だ。衆院予算委で国民民主党の玉木雄一郎共同代表が「問題は岩盤に穴を開けたことではなく、開いた穴は総理のお友達しか通れないのではないか」と追及する一方、「われわれも規制改革は賛成です」「獣医学部が50年間できなかったのが問題。それは進めればいい」と容認していた。そうした下地があるから、加計問題にとらわれて自縄自縛に陥り、斬り込み不足になる。国家戦略特区で跋扈する恐るべき巨悪による周到な悪事に迫れないのだ。安倍の悪辣な本質を国民は知らないから、こんな状況であっても内閣支持率が下げ止まっているのだ。

 加計問題はある意味、安倍のイカサマを暴く突破口に過ぎない。ここで徹底的に膿を出し切り、国家ぐるみの不正を止めなければ、クビ切り自由の“解雇特区”の復活もあり得る。1%に支配される99%側に置かれた真面目なサラリーマンの奴隷化は歯止めが利かなくなる。
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古賀茂明「注目の新潟県知事選」

2018-05-17 | いろいろ

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古賀茂明「注目の新潟県知事選、紆余曲折の末に決まった野党女性候補の素顔」

 4月中旬、出会い系サイトで知り合った女性に金品を渡して交際したと週刊文春で報じられた米山隆一新潟県知事が辞意を表明し、その後の県議会で辞職が承認された。

 新潟県のみならず、日本中の米山ファン、脱原発派の市民たちにとっては、本当に信じられない出来事で、もう、脱原発の灯が消えてしまうという悲鳴まで聞こえるほどだった。

 その後、新潟県知事選の日程は、5月24日告示、6月10日投開票と決まったが、自民党系の候補が事実上決まったと報じられる中、野党側の候補の選定は難航していると報じられていた。

 その間、4月25日には、立憲民主党の幹部から私に直接携帯に電話があり、立候補要請があった。それは丁重に断ったが、実は、それ以外にもあちこちで候補探しが行われていたようだ。

 講談社のベストセラー『原発ホワイトアウト』の著者である覆面現役官僚、若杉冽氏(ペンネーム)も出馬要請を受けていたようだ。私は、彼に、立候補を勧めたが、おそらく、野党の体制に不安を抱いたのだろう。結局彼は要請を断った。

 さらに、新潟選出の衆議院議員菊田真紀子氏擁立論も最後まで有力だった。私に電話してきた立憲民主党の幹部に、菊田さんがいいのではと聞くと、菊田さんは適任なのだが、菊田さんを出すと、その後衆議院の議席が空く。そうなると、今度は、そこでの戦いとなるのだが、自民党に勝てる候補が見当たらず、貴重な野党の議席が失われるので、なかなかそうも行かないんですよと話していた。

 また、今回は、買春疑惑の後なので、女性候補の方が良いという声が強かったが、新潟に良い候補がいるのか疑問視する声もあった。女性県議などもいるが、どうも線が細いなどという話ばかり入ってきた。私は、新潟県の経済界で一定の発言力のある女性経営者を知っていたので、その方に声がかかるのではないかと思っていたが、結局、それもなかった。

 そのような情勢で候補擁立に時間を取られれば、選挙運動の浸透も遅れ、知名度の低い候補だと、与党候補には勝てないのではないかと私は心配していた。おそらく、多くの人がそうだったのではないだろうか。

 ところが、それから間もなく、野党候補が決まったというメールが入った。発表のあった5月8日未明のことだ。だれですかと聞いてみると、その候補が池田千賀子新潟県議だ。

 私はノーマークだったが、この方の略歴を見ると、ちょっと見ただけで、相当根性のありそうな人だという印象を受ける。線の細い人ばかりという話は、どうやら間違いだったようだ。

 池田氏は、現在は、旧民進、社民両党系の会派「未来にいがた」に所属しているが、多彩な経歴を持ち、柏崎の市職員、市議などを歴任、社会保障のプロで、2児の母。さらに、市議を務めながら通信制で49歳の時に早大人間科学部を卒業という勉強家。一方で、全日本綱引選手権大会ベスト8、フルマラソンを毎年走り、4時間を切ったこともあるなど、文武両道に秀でた方だ。

 出馬会見を取材したフリージャーナリストの横田一さんに聞いたのだが、会見での受け答えが非常にしっかりしていて、この人なら行けると感じたということだった。
  

■えせ「県民党」で「脱原発」の争点化を避ける与党の戦略

 その観点では、池田県議は柏崎刈羽原発がある柏崎市出身で、脱原発派。同原発再稼働に慎重だった米山前知事の後継者としてはぴったりだ。

 また、池田氏に対しては、新潟県の選挙で大きな影響力を持つ市民連合も最初から支持する姿勢を打ち出している。幅広い県民からの支持を集めるため、前回知事選や衆議院選、参議院選などで掲げた文字通りの県民党代表として選挙を戦うことになるだろう。

 一方、与党側の候補者は、まだ、正式に発表されていないが、早くから有力視されてきた海上保安庁次長の花角英世氏(59)が近く出馬を表明すると報じられている。花角氏は国土交通省のキャリア官僚で、新潟県副知事を務めたことがある。出馬表明すれば、事実上自民、公明両党などの支援を受けることになるのは確実だ。

 ただし、花角陣営としては、数々のスキャンダルにまみれて支持率が下がる安倍政権に近いというイメージを持たれると選挙戦に不利ということで、こちらも「県民党」を打ち出そうとしている。

 ところが、花角氏は二階俊博自民党幹事長が運輸相の時の秘書官で、誰がどう見ても二階氏直系。普通の選挙なら、自民党幹部に近いことが売りになるのだが、自民党のイメージが悪い上に、前回の知事選の時に、二階氏が土建業などの既得権グループを使って選挙戦を裏で操ろうとしたという暗いイメージがあり、新潟では選挙戦で不利になるという見方も強い。

 そうした点もあり、花角氏は、おそらく自民色も二階色も消して選挙を戦おうとするのではないかと言われている。

 また、原発についても、自民党の支持を受ける花角氏は、普通に考えれば、原発賛成派と誰もが思う。しかし、新潟県民の多くは保守派も含めて脱原発が主流だ。そこで、当面は、米山前知事が設置した検証委員会の結果までは結論を明言しないという姿勢で逃げるであろう。現に、花角氏は、フリージャーナリストの横田一氏の再稼働を認めるのかという質問に対して、「検証をやっていないのに出来るわけがないじゃないですか」と言って、予想通りの反応をしている。

 しかし、米山前知事は、検証中の今の段階でも、避難計画に不備がある点などを指摘し、今のままでは再稼働には反対であることを明言していた。マスコミがこのあたりの違いをクリアに報道できるかどうかが選挙戦の一つの焦点になりそうだ。

■野党共闘が実現するかどうかがポイント

 この新潟県知事選は今後の与野党対決や日本のエネルギー政策にとって、きわめて大きな意味を持つ選挙だ。

 中央政界では野党は分裂含みで野党共闘の姿を描けずにいるが、新潟県政では、旧民進系や社民系議員が中心となって野党間で一定の連携が維持されている。池田候補が「事実上の」野党統一候補として擁立できたのはそのためだ。

 そこで見ものとなるのが中央政界での野党各党の動きである。実は、まだ、池田氏が正式な野党統一候補として認められたわけではない。ここは、一日も早く、各党の党本部が形式的な推薦・支持などを表明するのはもちろん、実質的な意味でも、「真正野党共闘候補」となるようにして欲しいものだ。

 その意味で踏み絵となるのは、立憲民主党の枝野代表、国民民主党の玉木、大塚両共同代表といった旧民進からの分裂組が、告示直後から新潟入りし、他の野党と一丸となって池田候補を応援するのか? それとも戦況を様子見して、接戦になって初めて、新潟入りするという姑息な行動をとるのか? という点だ。

 告示直後から党首クラスが入って全国の関心を集めれば、前回知事選同様、電話勝手連などの支援も全国に拡大し、勝利の確率はかなり高くなる。そうなれば、来夏の参院選でも安倍自民と互角に戦う展望が開ける。

 逆に、負けた時の責任を回避するために、しばらく様子見をして、いい勝負になった時だけ、アリバイ作りで応援に入ろうなどという姿勢を見せれば、選挙戦は盛り上がりを欠き、自民候補に敗北するだろう。そんないい加減なことをやっていれば、国政でも野党共闘は勢いを得られず、その結果、安倍政権は安泰、原発政策も不変ということになると思われる。

 こう考えれば、新潟県知事選は単なる地方首長選ではないということがわかる。野党共闘の成否も含めて、今後の国政の行方を占う選挙だということ、そして、全国の脱原発運動の盛衰に大きな影響を与える選挙だということ。それを考えて、新潟県民だけでなく、日本全国の有権者は、最後まで野党の動きと選挙戦の動向に注目し続けなければならない。

 池田千賀子氏 プロフィール
   
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官僚による改ざん、隠蔽…不祥事は氷山の一角!

2018-05-17 | いろいろ

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官僚による改ざん、隠蔽…不祥事は氷山の一角! 公文書管理法と情報公開法をセットで改正すべき理由

公文書をめぐる不祥事が相次いでいる。

 『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、公文書をめぐる危機的状況を解決するための提案をする。

* * *


 財務省による決裁文書改竄(かいざん)、防衛省による自衛隊日報の隠蔽など公文書管理をめぐる不祥事が続いている。だが、これらは氷山の一角。同じようなずさんな公文書管理は政府、行政の至る所で起きている。

 例えば、福島第一原発事故による放射能汚染が今も続いていることが、政府ぐるみで隠されていたのをご存じだろうか。

 2013年秋に福島県南相馬市の19ヵ所の水田で収穫されたコメから、基準値(1kg当たり100Bq)ベクレルを超えるセシウムが検出されるという騒ぎがあった。

 このとき、汚染の原因として浮上したのが福島第一原発3号機のがれき撤去作業だった。がれきを運び出す際に、粉塵(ふんじん)と共に大気中に飛散した放射性物質が20km以上離れた南相馬市の水田に降り注ぎ、稲穂を汚染したことが、学者などの調査で後に明らかとなった。

 しかし、当時の政府の結論は「コメ汚染に関連はない」というもの。政府内では、経産省や田中俊一原子力規制委員会委員長(当時)ががれき撤去犯人説を強く否定し、それ以上の原因究明もないまま、コメ汚染騒ぎはうやむやにされてしまったのである。

 政府は極秘検討会議を開いたが、朝日新聞などが議事録の公開を請求すると、返ってきた回答は、なんと「議事録はない」というものだった。

 疑惑が浮上した13年当時、すでに東電は1号機の燃料取り出しを当初の予定から2年遅らせる案を示していた。しかしこれ以上、廃炉スケジュールが遅れれば、安倍政権が最優先課題とする帰還困難区域への住民帰還が遅れる。

 がれき撤去作業とコメ汚染は関係ないとする結論を政府が早々に出した背景には、住民帰還の遅れをいやがる国や県への忖度(そんたく)があったのではないか。だが、そう疑ってみても、議事録なしでは検証できない。規制委も経産省も、財務省や防衛省と同じくずさんな公文書管理で重要な情報を隠蔽しているのだ。

 今、政府の隠蔽体質への批判が高まっているが、心配なのはこうした公文書問題が「安倍政権打倒」や「悪い官僚を懲らしめる」ための材料と化していることだ。

 確かに、ずさんな公文書管理を許してきた政治家や、改竄・隠蔽に手を染めた官僚は厳しい批判と処分を受けなくてはならない。とはいえ、公文書問題は首相が退陣したり、次官が更迭されたりすれば、それで一件落着というものではない。

 公文書は政策決定の妥当性をチェックするなど、民主主義に欠かせない国民の共有財産だ。しかし現状、公文書は政治家や官僚のものであり、国民に知られるとまずい記録は出さなくても済むという形になっている。

 こうした危機的状況を変えるには、公文書管理法と情報公開法をセットで改正すべきだ。文書だけでなく、メールや音声データなどもすべて保存を義務づけ、廃棄前には必ず公開する。

 また、改竄や文書開示拒否をできないよう、これまでになかった刑事罰も新設すべきだろう。公文書をずさんに扱えば、犯罪になるという意識を行政に与えるのである。官僚の抵抗を封じるため、法案作成はマスコミやNPOなどの第三者が担当するなどの工夫も必要かもしれない。

 大荒れが続く国会だが、公文書管理法改正案だけはしっかり仕上げてほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき)
 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中
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世界に取り残される安倍政権…

2018-05-16 | いろいろ

より

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世界に取り残される安倍政権…歴史の節目「6.12」にご臨終

 「加計学園の理事長は総理もいたバーベキュー、ゴルフで見かけましたし、学園関係者には官邸で3回お会いしました。総理には日に5回も10回もお会いしますが、加計の件を報告したことや指示を受けたことは一切、ございません」――。こんなバカげた説得力ゼロ答弁を誰が信じるのか。

 柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致で、ますます「加計ありき」が色濃くなった10日夜。トランプ米大統領が自身のツイッターで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談が6月12日にシンガポールで開かれると明らかにした。

 全世界が注視する米朝トップ同士の史上初めての会談。恐らく世界史にその日付を刻むことになる「6・12」は、史上最悪の無能破廉恥政権が「ご臨終」を迎えた日としても、歴史に記録されることになりそうだ。

 先月の板門店における南北首脳会談以降、北東アジアに広がる融和ムードに置き去りの安倍首相は「蚊帳の外」批判を打ち消すことに躍起だ。

 中韓蔑視外交のツケで宙に浮いていた日中韓首脳会談が今週、2年半ぶりに開かれた際も、情勢急転に取り残されまいと必死。これまで散々敵視してきた両国にすがりつくような格好で、共同宣言の文言に「拉致問題の解決」を差し込むことに血道を上げ、北朝鮮問題に取り組んでいるポーズを示すためだけに中韓両国を振り回した。

 政権に返り咲いてから5年以上、1ミリたりとも拉致問題を進展させてこなかったクセに、いまさら中韓両国に泣きついても後の祭り。これだけ情けない姿をさらけ出しながら、北への強硬姿勢はテコでも曲げない。9日の日中韓、日韓、日中の一連の首脳会談でも、例によって「最大限の圧力をかける」との主張を壊れたレコーダーのように繰り返し、完全に浮きまくっていた。

■ 世界の嘲笑を買う圧力バカ

 「北の非核化を目指し、関係各国が対話に向かう中、安倍首相だけが蚊帳の外から圧力一辺倒で吠えまくる。それでいて拉致解決の成果だけを欲しがるのは、ないものねだりの支離滅裂外交です」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)

 みっともない“圧力バカ”につけるクスリはないが、それでも日朝首脳会談の実現を目指し、拉致解決に淡い期待を抱いているのが、圧力バカのバカたるゆえんだ。

 安倍は10日のトランプとの電話会談でも、米朝首脳会談で「拉致問題を取り上げて」と頼み込む一方で、最近しきりに持ち出すのが、2002年の日朝平壌宣言だ。宣言は「不幸な過去の清算」と「国交正常化後の経済協力」に言及。巨額の戦後補償というニンジンをぶら下げ、金正恩を会談に引きずり出そうとする狙いが透けて見える。

 むろん、こんな卑しい魂胆が成功する兆しは一向に見えず、逆に朝鮮労働党の機関紙・労働新聞には「下心を捨てない限り、1億年経ってもわれわれの神聖な地は踏めないだろう」とコケにされる始末。先日の南北首脳会談で、韓国の文在寅大統領が拉致問題を提起した際、金正恩は「韓国やアメリカなど周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は直接言ってこないのか」と語ったという。

 5年以上も「拉致問題は安倍内閣の最重要課題」と豪語しながら、北との直接のパイプも築けていないとは、今まで安倍は何をしてきたのか。就任1年余りで、北に拘束された米国人3人を奪還したトランプを少しは見習ったらどうだ。

 ポツンと蚊帳の外に置かれたアベ外交をアザ笑っているのは、金正恩だけではあるまい。圧力バカ路線が全世界の嘲笑を買う中、トンチンカン首相は運命の「6・12」を迎えることになる。


 アベ外交が平和と安定に向けた最大の障害

 米朝首脳会談の日程を明かした直後の演説で、トランプは「平和と安定の未来を世界全体にもたらすための会談になる」と抱負を語り、「(金正恩との)関係は良好だ。会談は大成功を収めるだろう」と自信満々。米テレビ各社のインタビューに応じたペンス副大統領によれば、トランプは「金正恩が完全な非核化を受け入れる準備があるとの希望の持てるサインを出している」との認識でいるという。

 実際にトランプと金正恩の関係は今のところ、良好のようだ。北朝鮮国営の朝鮮中央テレビによると、9日に訪朝したポンぺオ米国務長官からトランプのメッセージを伝えられた金正恩は、「大統領が新たな代案を持って、対話を通じた問題解決に深い関心を払い、朝米首脳の会談に積極的な対応を取っていることを高く評価する」と応じた。

 トランプの「新たな代案」をめぐり、韓国聯合ニュースは「北朝鮮が非核化の条件としている敵視政策の撤回や、安全保障上の脅威の除去などに関連した内容の可能性もある」と分析。1カ月後に迫る歴史的会談を控え、北の非核化に向けた米朝両国の条件交渉が水面下で熱を帯びている様子が伝わってくるが、圧力バカ首相は口を開けば「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を達成しない限り、制裁解除はしない」の一点張り。交渉に加えてもらえないのに、この上から目線は何サマのつもりなのか。

 驚くことに6月12日の米朝シンガポール会談には、外交関係者の間で、中国の習近平国家主席が現地入りする可能性が取り沙汰されている。なるほど、金正恩が短期間で習近平との首脳会談を重ねたのも、そのためかと思えてくる。

■ この国の正常化には「障害物」の除去が必要

 前出の五野井郁夫氏はこう言った。

 「習主席の現地入りが実現すれば、朝鮮戦争の休戦協定署名当事国である米中朝首脳がそろい踏み。トランプ大統領は『何かとてもいいことが起きつつある』『日本、韓国、中国、みんなにとってとても重要なことだ』と訴えていましたが、それは朝鮮戦争の終結を意味する可能性が高い。板門店宣言で南北両首脳が言及した休戦協定の平和協定転換に、米中両国が合意すれば北東アジアの緊張は一気に解け、安全保障環境はガラリと変わる。その場合、最大の障害となるのが、安倍首相の存在です。北の脅威をあおり、中韓を蔑視してきた外交がアダとなり、朝鮮半島の平和と安定に貢献しようにも発言権は皆無に等しい。対話の輪に押し入れば、強硬路線を支持してきたコアな支援者を失うことになる。もはや、アベ外交は八方ふさがりです」

 「6・12」は、日本が世界に取り残される日となる一方で、6月20日の国会会期末も近づく。柳瀬氏の参考人招致で「加計ありき」が色濃くなる中、森友疑惑にも新事実が発覚した。財務省側が森友学園側などと面会や交渉をした際の500ページ近い記録が残っていたことが判明し、佐川宣寿・太田充の新旧理財局長コンビが「ない」と強弁した答弁は、またしても大ウソ。記録には昭恵夫人や複数の政治家の名前も記されているという。

 この調子だと、会期末までにモリカケ疑惑をめぐって、驚愕の新事実や証言が次々と飛び出しても、おかしくない。

 「今や、モリカケへの関与を全面否定する安倍首相の居直り答弁のつじつま合わせのため、忖度官僚が嘘やデタラメを重ね、国政の停滞を招いています。得意と自称する外交面も国際社会での孤立化を招き、もはや安倍首相の存在は百害あって一利なし。この国を正常化させるには、最大の障害物である安倍首相を取り除くしかありません。米朝首脳会談や国会会期末を待たずに、一刻も早く退陣を表明して欲しいものです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 もはや存在理由が何一つない安倍政権は、モリカケ疑惑を認めた上で総懺悔し、退陣表明する以外に道は残されていない。百害首相をいつまでも野放しにしておくわけにはいかないのだ。
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鈴木邦男氏が明言 「私は愛国者」と声高に言う人は偽物

2018-05-16 | いろいろ

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鈴木邦男氏が明言 「私は愛国者」と声高に言う人は偽物

 本当に自信があれば謙虚になれるはず

 世の中が右傾化しているといわれる。安倍政権を支持する勢力には、排外主義をあらわにする極右的な思想の持ち主も少なくない。政権側も右翼的な政策を推し進めてきた。安倍政権の5年間で日本はどう変わったのか。今後、どうなるのか。民族派右翼の重鎮、「一水会」元最高顧問の鈴木邦男氏に話を聞いた。

  ――安倍政権や、そのコアな支持層は果たして「右翼」なのでしょうか。保守というより反動のようにも感じますが。

 今の政権には反省がない。歴史を見る目がないというか、直面する勇気がないんでしょう。それは保守的な態度ではないと思います。例えば、東京裁判を見直すという。見直してどうするのか。もう一度、戦争をするとでもいうのでしょうか。

  ――ヘイトスピーチや排外主義的なデモも目立つようになりました。

 僕は日本が好きだけど、そんなに立派な国だとは思っていない。どうしようもない失敗もしてきましたからね。それでもこの国が好きだと思うのが本当の愛国心ではないですか。今は政権中枢が率先して「侵略も虐殺もなかった」と過去から目をそらし、歴史をフィクションで糊塗しようとしている。民族間の憎悪をあおり、韓国や中国をバカにした本が書店に並ぶ。韓国を褒めたり、日本政府を批判すれば、非国民のように叩かれる。そんなものは愛国心でも何でもありません。

  ――安倍政権イコール国ではないのに、ちょっとでも政府を批判すると、国賊扱いですからね。

 しかし、「国のため」とか「私は愛国者」とか声高に言う人は偽物だと思いますよ。そういうのは、心の中で思っていればいい。行動を見て、周りが判断すればいいのです。外に敵をつくって支持を固めるのは、運動家の常套手段。政府や政党がそれをやるべきではない。

  ――この春から、小学校で「道徳」が教科化され、道徳心や愛国心に成績がつけられます。どうやって愛国心の有無を判断するのでしょう。

 愛国心に右翼も左翼もない。周りに迷惑をかけず、人に優しくしている人が一番の愛国者です。無理して「日本は素晴らしい」と言わなくてもいいと思う。物を贈る時も「つまらないものですが」と言ったり、愚妻や愚息という言い方をするのが日本の精神ですよね。本来は謙虚な文化なのに、今は自分で自分を褒めてしまう。自国のことも「愚国」「弊国」くらい言ってもいいのにね。会社だって、弊社と言うでしょ。本当に自信があれば、謙虚になれるはずですよ。

  ――そういうことを言うから、「自虐的だ」と右翼界隈から目の敵にされる?

 僕は母が宗教団体の「生長の家」に出入りしていた関係で、青春時代は生長の家の運動に情熱を燃やし、今の日本会議の連中とも一緒に学生運動をやっていた。対立して追い出されたけど、今はよかったと思っている。あのまま日本会議にいたら、視野狭窄になっていたでしょうね。

  ――日本会議の運動は、左翼に対する敵視が凝縮されたものに見えます。鈴木さんも「サヨクに転向した」と批判されていますね。 

 右でも左でも、同じ考えの人が集まると暴走する。批判は排除され、過激なことを言う人が支持を集めます。アナキストの竹中労の「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱くなるのだ」という言葉を聞いた時、僕は最初、意味が分からなかった。「何言ってるんだ、弱いから群れるのだろう」と思っていた。でも、やはり群れるから無力になるんだということが分かってきた。

  ――日本会議は安倍政権を支える一大勢力基盤だといわれ、集団的自衛権の行使容認も、憲法改正も日本会議の悲願だと聞きます。

 彼らは「三島事件」の絶望を味わっている。三島由紀夫が憲法改正を求めて自衛隊に決起を呼びかけ、後に自決したことがトラウマになっているのです。安倍政権の間にしか憲法改正のチャンスはないから、何としても成し遂げなければならないという強迫観念があるのでしょう。


 自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法

   ――現政権が目指す憲法改正についてはどう考えていますか。

 僕は、安倍首相の憲法改正には反対です。本来、憲法には夢や理想が必要なはずなのに、思想性もなく、ただ戦前に戻ろうとしているように見える。戦争であれだけの犠牲を払ったのに、教訓を生かせず、軍備を増強して国民の人権を抑圧するなんて愚かすぎます。僕は現行憲法は米国による「押し付け憲法」だと思っていて、自主憲法の制定には賛成だけど、自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法の方がずっとマシだ。

  ――改憲派は家父長制の復活を目指しているように感じます。

 夫が働き、妻は家に尽くして、子どもを産み育てるという戦前の構図をつくりたいのでしょう。個人の自由を抑圧するこのシステムは、為政者にとって都合がいい。そのうち選挙権も一家で一票という形にしたいのかもしれない。そういう家の集合体を統治するのが「国家」という大きな家であり、トップの言うことに国民は従うべしという考え方です。

  ――道徳を教科化するなど、愛国心を植え付ける教育方針も、国家への忠誠心を養うためですね。

 実は、三島由紀夫は自死の2年前に朝日新聞で「私は愛国心という言葉が嫌いだ」と書いていました。「愛というなら分け隔てないはずで、《人類愛》というなら分かるが、《愛国心》というのは筋が通らない。愛国心は、国境で区切られてしまう」というのです。三島は徴兵制にも反対していて、「国防は国民の名誉ある権利であり、徴兵制にすると汚れた義務になる」と言っていた。50年前の三島の言葉は、今の我々に向かって言っているように感じます。

  ――愛国心は、上から強制するものではないということですね。

 韓国や中国に敵愾心を抱くとか、ヘイトスピーチの類いなんてのは愛国心とは別物です。1905年、日本が日露戦争に勝利した際、全権代表としてポーツマス条約の締結に臨んだ小村寿太郎外相は、賠償金も取れない勝利で帰国後に批判されることは分かっていた。しかし、「ここで戦争を終結させられるなら、帰国して殺されてもいい」「売国奴と罵られてもいい」という覚悟があった。こういう人が本物の愛国者でしょう。ところが、日本は日露戦争に「勝ったこと」にしてもらい、一等国に仲間入りして舞い上がってしまった。それで、ロシアよりはるかに強い米国に戦いを挑んでいった。愚かですよね。

  ――戦争を知らない世代ばかりになって、「戦争だけはしてはいけない」と言う政治家も減っているように感じます。

 反省がないから、戦前に戻ろうとする。慰霊は当然ですが、歴史を検証してただすのは危うい。天皇陛下は激戦地をめぐる慰霊の旅をなさっています。憲法も守っている。保守を名乗る人々が「憲法改正で天皇陛下を国家元首に」などと主張するのは、陛下のお気持ちをおもんぱかっているとは思えない。むしろ、ないがしろにしているのではないか。

  ――安倍政権が終われば、戦前回帰を望むような妙な空気は消えるのでしょうか。

 仮に安倍首相から次のトップに交代しても、自民党政権の間は“強い明治”への回帰路線は変わらないでしょう。国民もそれを求めているのだと思います。

  ――国民が求めている?

 自信を持てない人たちは、国家が強くなれば自分たちも強くなるような錯覚を抱いている。それで、「中国や韓国は許せない」と拳を振り上げたり、ゲーム感覚で「北朝鮮をやっつけろ」と戦争をあおるようなことまで言い出す。政治家は、そういう国民受けを狙って、強い言葉で隣国や外国人を非難するようなことを言えば愛国者として支持されると思っている。お互いの相乗効果で、憎悪にまみれた偽物の愛国心が幅をきかせているのが現状ではないでしょうか。

(聞き手=本紙・峰田理津子)

▽すずき・くにお 1943年福島県生まれ。早大政経学部卒。学生時代から右翼運動に関わり、72年に民族派右翼の「一水会」を結成。99年まで代表を務めた。著書に「新右翼<最終章>」「失敗の愛国心」「言論の覚悟 脱右翼篇」など。
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米政権の輸入制限措置

2018-05-15 | いろいろ

賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より

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米政権の輸入制限措置

 3月1日、米トランプ政権は輸入制限措置を発動した。韓国やEUは対象外であったが、日本や中国に対しては、鉄鋼には25%、アルミニウムには10%という高い関税を課すと発表したのである。

 トランプ大統領が就任するやいなや安倍首相は訪米してゴルフクラブを贈り、昨秋の訪日時には一緒にゴルフをして信頼を高めたと主流メディアは「安倍外交」の成果を強調した。さらに米国から高額兵器を大量購入し、トランプ氏の長女イバンカ補佐官が関わる女性起業家の支援基金にも気前よく約57億円を拠出するなど、安倍首相は日本国民の税金を米国のためにふんだんに使ってきた。

 それにもかかわらずトランプ氏は、輸入関税の署名式で安倍首相の名前を出しながら、「各国は『米国をうまく利用してきた』とほくそ笑んでいる。そうした日々は終わりだ」(ホワイトハウスのWebページより)と、中国だけでなく日本にも厳しい姿勢をとると表明したのである。

 輸入制限措置は米国から中国への貿易戦争の布告にも等しい。米国が宣戦布告した理由の一つは中国が上海国際エネルギー取引所で人民元建ての原油先物取引を開始したことであろう。中国は世界最大の原油輸入国である。これまで米ドル建てで行われていた原油取引が人民元建てになることは、米国にとって大打撃なのだ。  米国の輸入制限措置に対して、中国は、対話を通じた問題解決を望むとしながらも、対抗措置として特定の米輸入品に関税を課す方針だという。しかし貿易戦争の長期化は米国自身を弱める結果となる。中国からの安価な輸入品が減ることで困るのは一般の米国民であり、また中国は米国債の購入を止めることになるからだ。

 3月末、トランプ大統領は2018年の米国政府の予算を手当てする約136兆円の歳出法案に署名した。そのうち半分以上の約74兆円は軍事費で、米国に次ぐ7カ国分の軍事費合計を上回る。さらに米国の外交・安全保障を取り仕切る大統領補佐官として任命されたのが、ブッシュ政権時代にイラク戦争に向けて米国の世論工作を図り、イランや北朝鮮に対しても強硬の姿勢をとるタカ派のジョン・ボルトン氏だった。ブッシュ政権時代、米国は敵としてイラン、イラク、北朝鮮を悪の枢軸だと名指しした。その悪の枢軸の一つ、北朝鮮の金正恩国務委員長とトランプ氏が会談をするという時に、北朝鮮の核兵器を除去するために予防的先制攻撃を主張するボルトン氏が起用されたのだ。これは再び朝鮮半島に核戦争の可能性が出てきたことを示唆している。

 金正恩朝鮮労働党委員長と中国の習近平国家主席が首脳会談をするなど、朝鮮半島の平和体制構築が進んでいる。その一方で再燃した米国による「北朝鮮の脅威」は、「日本を再び偉大な国にする」ために憲法9条改正と軍隊の合法化という長年の夢をどうしてもかなえたいタカ派の安倍首相にとってはありがたい展開かもしれない。もちろんその前に、安倍首相には森友学園をめぐる問題、加計学園の獣医学部新設計画に関する政権による国家の私物化といった疑惑を晴らすことが先決であるが。
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辺野古ゲート前抗議行動で何が起きているか? 最前線からの動画リポート

2018-05-15 | いろいろ

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辺野古ゲート前抗議行動で何が起きているか? 最前線からの動画リポート


クリックで動画


 今日、この原稿を書いている時点(5月10日)で、1400日を超える辺野古ゲート前の抗議行動がどんなものなのか? を短い文章で伝えるのは不可能に近い。

「ゲート前に行くと日当がもらえる」、「県民よりも内地からの活動家たちの方が多い」といったような単純で悪質なデマでさえ、地元メディアや本土のメディアが否定してるのにも関わらず一向に鎮火させられなく、沖縄県民の中にでさえ、そのデマを信じてしまってる人が少なくないのが現実なのだ。

 そういう人たちにこの映像を観てもらっても一気になにかが氷解するとはとても思えないのだけど、それでもここに映ってる人たちの多くは、1400日の中で一度ならずここを訪れた経験がある人たちだろうし、キャンプシュワブのある名護市の住民では無いとしても、沖縄で生まれて、本土復帰前のことを知ってる人たちに違いないのだ。

 こうやって500人以上、日によっては1400人の人が集まった「辺野古ゲート前500人行動」は普段の10倍以上の人が集まり、機動隊も普段の5倍くらいの人員を割いて、その様子は少なくとも沖縄県内では毎日なんらかの形で報道されたものなのだが、本土に暮らす僕らは、その情景すら思い浮かべられる人は多くはない。


 だから今回ある一部分をまとめたこの映像を観るときには出来るだけ静かに観て欲しい。「基地はつくらないとダメなんじゃないか?」ってボンヤリ思ってる人も最後までポーズボタンを押さずに観て欲しい。

 みんなお金のためにここまで辛いことをするのだろうか?
 正義のためになにか特殊な思想を植え付けられてる人に見えるのだろうか?

 もしそう感じるなら静かに画面を閉じて、この問題に無関心なままの日常を続けてもらえばいいと思う。でも、なにかの疑問を自分の中に見つけてしまった人は、例え抗議者側がおかしいと感じたとしても、誰かにこの映像から感じたことを伝えてもらいたい。

「米軍基地」という非日常な施設が、どれだけ非常識な手続きと手法で作られていくのかは、きっと全然関係ない土地に住んでると考えてる人の頭の上にもぶら下がってる問題だというのは事実なので、この件を見守るだけでもこの国の社会生活、市民生活がどれだけ奇妙なものなのかは、いつか頭の片隅の記憶と照らし合わせる機会がやってくると思う。

 日米地位協定、SACO合意、オスプレイ、CH53、沖縄建白書、オール沖縄、稲嶺進、等々の単語をGoogle先生の小窓に入れてみれば、数限りない両論が画面に並ぶ。それをランダムに読むだけでも、米軍基地がこの国に存在し続ける理由、そして新しい基地を誰が必要としてるのか?それぞれは自分が考えてたのと随分ずれてると知るはずで、両論のどちらが確からしいのか?を理解するのはそれほど複雑ではない。

 まずは映像を最後まで観てください。そこに答えは描かれてません。でもただただ問題が横たわってることは映ってます。

<取材・文・映像撮影・編集/横川圭希 Twitter ID:@keiki22(confess)
 Music byJyoji Sawada 沢田穣治>
「Confess Tokyo」
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衝撃!経産省が環境省の「温室効果ガス削減プラン」を握りつぶした

2018-05-14 | いろいろ

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衝撃!経産省が環境省の「温室効果ガス削減プラン」を握りつぶした

第5次エネルギー基本計画骨子案を読む  経済ジャーナリスト 町田 徹

 取り返しがつかないかも

 経済産業省の頑なな原子力発電の存続策は、日本を地球温暖化対策で世界の異端児にしてしまうのだろうか。

 2年半前のCOP21で採択された「パリ協定」を無視するかのように、4月27日、経済産業省は総合資源エネルギー調査会の分科会に対し、2030年の電源構成目標を見直さない「第5次エネルギー基本計画」の骨子案を提示した。それどころか、10年越しの懸案である2050年までのCO2排出削減計画の具体化策を盛り込まない判断も下したのである。

 筆者の取材で、経済産業省はこの方針を押し通すため、2050年の原発依存度が「9~7%」と2030年目標値(22~20%)の半分以下になる、と指摘する環境省の環境基本計画案を潰した事実も浮かび上がってきた。

 経済産業省の方針は、骨子提示の8日前に、外務省の有識者懇談会が河野外務大臣への提言で「日本の2030年の(CO2排出)削減目標は“Highly Insufficient”(まったく不十分である)との評価を国際的に受けて」いると警鐘を鳴らしたことも黙殺した。

 経済産業省は、今夏にも、この第5次エネルギー基本計画の閣議決定を強行したい考えという。地球温暖化対策を巡って失われつつある日本の国際的信用が、取り返しのつかないほど傷付く恐れが高まっている。


 一切変更なしって…

 「第5次エネルギー基本計画」は、昨年から見直し作業が始まっていた。2014年以来、4年ぶりに改定される予定になっている。

 経済産業省が、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会に提示した骨子案によると、冒頭では、見直しのきっかけが「前回の計画を策定してから3 年が経過するとともに、パリ協定の締結により、2050 年に向けた長期のエネルギー戦略を策定する必要性が生じた」ことにあるとし、「最近の情勢変化を踏まえ、2030 年に向けた施策を深掘りするとともに、2050 年に向けてエネルギー転換・脱炭素化への挑戦に取り組む」との見直し方針を掲げている。

 ところが、立派なのは見直し方針だけで、まったく中身が伴わない「羊頭狗肉の審議会答申」になっている。多くの専門家の意見を無視して、肝心の2030年の電源構成案を、一切変更しないというのだ。

 この結果、2030年に向けて、太陽光や風力など再生可能エネルギーを「主力電源化」するという方針を打ち出したにもかかわらず、その比率は拡大せず従来と同じ「22~24%」に据え置かれた。

 一方、原子力については、前回のエネルギー基本計画と同様、「重要なベースロード電源」と持ち上げながら、原発依存度については「可能な限り低減させる」と、相矛盾する二兎を追う方針を堅持。電源構成でも「22~20%」と、実現性に疑問符が付いている目標をそのまま掲げた。


 出遅れニッポン

 原発は、国内に42基現存するが、電源構成で「22~20%」という目標の達成には30基前後の再稼働が必要。2011年の東京電力・福島第一原発事故以来、再稼働した原発は7基しかない。そのうえ、使用済み核燃料の中間貯蔵地不足や最終処分地が決まらない現実も黙殺した格好となっており、現実味の乏しさを感じずにはいられない。

 こうした姿勢は、福島第一原発事故をきっかけにして、ドイツ、スイス、韓国などが続々と脱原発・縮原発に舵を切ったり、ベトナムに続いてトルコやイギリスでも新規の原発建設の取りやめが取り沙汰される中、仏アレバや米ウェスティングハウスといった原子力メーカーが経営危機に陥っている問題、そして福島第一原発事故の処理費用がかさみ、原発の発電コストが決して安くない事実が浮かび上がったことなどを悉く勘案しない、不誠実な政策対応なのである。

 さらに、国際的な日本批判を勢い付かせかねないのが、骨子案の石炭火力発電に関する記述だ。「重要なベースロード電源の燃料」「老朽火力発電所のリプレースや新増設による利用可能な最新技術の導入を促進する」として、現行の電源構成目標である「26%程度」を維持する方針を掲げた。

 しかし、石炭火力発電をベースロード電源と位置付けていることは、ドイツで昨年11月に開かれたCOP23の関連会合などでも、日本が批判の的になったポイントだ。例えば、ドイツの環境NGO「ジャーマンウオッチ」は、各国の気候変動対策の取り組みをランキング化、この中で日本は50位で、「非常に悪い」という評価を受けた。

 発電のオン・オフに手間取り、使い勝手は悪くても、安定供給が望めない再生可能エネルギーのバックアップとして石炭火力発電の存続の必要性を説明するような戦略転換が必要になっているのに、頑なな姿勢が災いして柔軟さを欠いたのだ。

 さらに深刻なのは、2050年に向けた温暖化対策の具体策を提示しなかったことだろう。

 2008年のG8(主要8カ国)洞爺湖サミットで、当時の福田康夫首相が「低炭素社会・日本を目指して」と題するスピーチで、2050年までに温暖化ガスの排出を60~80%削減すると国際公約して以来、その具体策の策定・公表は10年越しの懸案となっているからだ。

 その後、日本は2050年の目標を「80%削減」に一本化。2016年のG7伊勢志摩サミットでは、その詳細を「2020年よりも十分に先立って提出する」と対外公約した。カナダやフランス、メキシコ、ドイツなどはすでにそれぞれの2050年に向けた対策を策定して国連に提出済みにもかかわらず、日本は出遅れている。

 経済産業省の姿勢は、日本が早期に計画を策定すべき立場にあることをわきまえないものなのだ。


 「原発の最大限の存続」が一番の目的

 そして、今回の取材で判明したのは、環境省が2050年に温暖化ガスの排出を80%削減する具体策のたたき台として詳細なエネルギー供給に関する試算を実施しており、その内容を今年2月に、中央環境審議会・地球環境部会の長期低炭素ビジョン小委員会の報告案として公表しようとしたにもかかわらず、経済産業省が反対して潰したという信じ難い事実だった。

 この試算は、ひと言で言うと「原発低減シナリオ」になっている。廃炉が決まっていない原発がすべて20年の運転期間延長を認められるほか、建設中の原発の運転も認められるものの、実際に稼働に漕ぎ着けるのはそのうちの半分という仮定を置いているからだ。

 試算結果は、2030年目標で「22~20%」となっている原発依存度が2050年には「9~7%」程度に下がるという内容だった。

 福島第一原発事故に伴い原発の安全審査は厳しくなり、対応のためのコストは急騰している。環境省の試算は、難しくなっている原発の再稼働と運転期間延長の実情を反映したものになっている。加えて、エネルギー基本計画の骨子案が示した「(原発依存度を)可能な限り低減させる」という方向性に沿うものと言って良いだろう。

 ところが、経済産業省は難色を示し、環境省がエネルギー基本計画案を固める前に試算を公表することを断念させたという。潰した動機は定かではないが、経済産業省は本音のところでは「原発の最大限の存続」に凝り固まっており、原発依存度提言シナリオを公表させたくないという配慮が働いたとみられている。

 経済産業省が気に入らないからと言って、きちんと前提条件を置いて行った試算の存在隠しをやっているようでは、真っ当な政策が打ち出されるわけがない。これでは、国際社会はもちろん、国内からも、政府と経済産業省への不信感が募るのが当然のことだろう。

 もう数年前になるが、安倍政権は、原発政策の見直しによって選挙における政権支持率が低下することを嫌い、「官邸に、票にもならない(原発)政策をあげて来るな」と指示したことがあり、以来、原発を含むエネルギー政策全般がおざなりになってしまったと関係者は嘆き続けてきた。今回も、経済産業省ははなから「エネルギー基本計画」の電源構成比率の目標見直しを行わない方針を固めていたと聞く。

 しかし、本来ならば、人口減少や生産性の向上を踏まえて必要な電力量の自然減が起きないかをしっかりと精査して将来のエネルギー需要をはじき出し、そのうえで、徹底した省エネの普及、大胆な原発依存度引き下げ、再生可能エネルギーの最大限の増強、石炭火力を含む化石エネルギーの位置づけを再生可能エネルギーのバックアップと変更するなど、必要な措置を勘案して、新たな「エネルギー基本計画」を策定するのが筋のはずだ。

 まだ、閣議決定までは時間的な余裕があるし、間に合わなければ、さらに数カ月かけて検討し直すことも選択肢だ。いま一度、真っ当なエネルギー基本計画作りにチャレンジしてほしいものである。


  
       経済ジャーナリスト。1960年大阪府生まれ。
       少年時代、ウォーターゲート事件や田中角栄元首相の金脈問題などの報道に触発されて、ジャーナリストを志す。日本経済新聞社に入社、金融、通信などを取材し、多くのスクープ記事をものにした後、独立。2007年3月、月刊現代 2006年2月号「日興コーディアル証券『封印されたスキャンダル』」で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」大賞を受賞した。現在、ゆうちょ銀行社外取締役も務める。著書に『日本郵政-解き放たれた「巨人」』(日本経済新聞社刊)、『巨大独占NTTの宿罪』(新潮社刊)など
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膿は誰なのか 安倍首相が居座れば国はどんどん壊れていく

2018-05-13 | いろいろ

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膿は誰なのか 安倍首相が居座れば国はどんどん壊れていく

 ガッチリ固めた隙のない官僚答弁だったことが逆に、いかがわしさを醸し出していた。

 加計問題をめぐる10日の参考人招致で、柳瀬唯夫元首相秘書官は「記憶にない」と突っぱねてきた2015年4月の愛媛県と今治市の職員との面会について、予想通り軌道修正。加計学園関係者との面会を認めたうえで、その随行者の中に県市職員がいたかもしれないと答えた。焦点だった「首相案件」についても、「獣医学部新設は総理が『早急に検討していく』と述べている案件」という国家戦略特区の概要を伝えただけだとして“特別扱い”を否定。「記憶にない」発言により昨年7月以降、10カ月にわたって国会を混乱させたことについて、何度も深々と頭を下げ、陳謝した。手元のノートを見ながら答える姿など、官邸との“調整”が分かるよくできた答弁だった。

 しかし、その他は支離滅裂。「アポが入れば誰とでも会う」と言いながら、スケジュールの管理もせず、メモも残さない。「通常は名刺交換をする」と言いながら、加計学園の誰と会ったのか覚えていない。名刺も残っていない。驚くほど曖昧な話ばかりなのに、面会について首相に報告したかどうかについては、「一切なかった」と断言したのである。

 「柳瀬氏は十分準備して矛盾のない答弁を用意してきましたね。ただ、一つ一つの答弁ではボロが出ないとしても、全体を聞くと明らかにおかしなところがあった。超多忙な秘書官が個別の案件で3回も加計関係者に会うこと自体が異例ですし、総理に一切話していないというのもあり得ないと思います。

 加計理事長は総理の友人で、2人はいつ電話で話すかわかりません。秘書官が総理に無断で動いていると誤解されないためにも、むしろ早めに簡単な概要だけでも伝えておいた方がいいはず。30秒で済む話です」(元経産官僚・古賀茂明氏)

 柳瀬が必死に、安倍首相への報告や安倍の指示を否定するのは、加計学園が国家戦略特区で獣医学部を新設することを知ったのは「2017年1月20日」と安倍本人が答弁しているからだ。主君を守るため、都合よく“まだら模様”の記憶を利用しているのである。

■ 刑事罰でなければ何をしてもいい<

 この光景、森友問題で証人喚問された佐川宣寿前国税庁長官を思い出す。

 国有地を8億円もダンピングしたことや財務省の決裁文書改ざんについて尋問されても、「訴追の恐れ」と50回以上も証言を拒否。その一方で、安倍の指示があったかどうかだけは「ございませんでした」と明確に否定した。佐川の場合も、「私や妻が関わっていたら総理も国会議員も辞める」と口走った愚かな主君に忠義を尽くしたのだった。

 柳瀬にしろ、佐川にしろ、決定的な証拠を突き付けられてもシラを切り、白々しい嘘と言い訳を続ける。それが国民の行政不信を最高潮にまで高めているのに、全体の奉仕者としての良心の呵責はひとかけらもない。国民ではなく安倍しか見ていないからだ。

 官邸に人事権を握られ、恐怖支配されていることで、霞が関には忖度競争が蔓延。安倍を守るために無理筋の答弁を重ね、すべてをケムに巻こうとする。公に仕えるはずの官僚が矜持をなくし、モラルも崩壊。完全に狂ってしまった。

 前出の古賀茂明氏はこう言う。

 「『セクハラ罪はない』という麻生財務相の発言でも分かるように、安倍首相やその周辺は倫理観のハードルが下がっている。牢屋に入ったり、罰金を払わされたりするような刑事罰を受けるのでなければ何をしてもいいと考えているように思います。政権がそんなレベルですから、仕える官僚のモラルが下がるのは当然です。独裁の本当に怖いところは、独裁者が何も言わなくても、現場が勝手に忖度して、悪政を行うこと。日本の行政はそういう段階に入ってしまいました」


 汚れた首相の下、行政を歪める行為が日常化

 古賀茂明氏と対談した村上誠一郎元行革相が新著「断罪」(ビジネス社)でこう言っている。

 村上は自民党議員ながら「安倍即刻退陣」を求めた数少ない反アベ急先鋒だ。

 〈「権力の行使は、抑制的にしなければならない」。今までの政治家が肝に銘じてきたことです。その大切な心構えを失くして行き着いた先が、お友達や忖度する人々への人事や仕事での優遇でした〉

 〈一国のトップに人を得ないと、いかにその国の政治が棄損されていくか。それを鮮やかに示したのが、現政権の五年間でした。今や永田町(政治)と霞が関(行政)は国民の信頼を失いつつあり、国の将来に明るい兆しが見えなくなりつつあります〉

 権力を私物化する首相のクロをシロにするため、どれだけの人と時間が犠牲になったことか。

 国会はもう1年以上、モリカケ疑惑の追及が続いている。安倍政権が嘘に嘘を重ねるからだが、10カ月経ってようやく「面会」の事実を認めた柳瀬だけでなく、森友問題では昨年2月に「廃棄した」と財務省が強弁したはずの交渉記録500ページが存在すると、最近になって報じられてもいる。貴重な審議時間が浪費されただけでなく、偽りの答弁によって、かくも長きにわたって国民が愚弄されたのである。

 「獣医学部が設置され、入学式も終わり、もはやひっくり返せないところまできた今になって、柳瀬氏は『加計関係者と面会していた』と白状した。力ずくで不正を通したようなもので、本当に卑劣です」(政治評論家・森田実氏)

 「膿」を葬らないと「正常化」しない

 昭恵夫人との関わりを隠すため、財務省理財局と近畿財務局が文書改ざんという違法行為に手を染め、自殺者まで出した。国有地のゴミの撤去費用水増しでは、国交省の大阪航空局まで口裏合わせに加担していた。恐るべき空前の規模でのモラル崩壊。汚れた首相を正当化するため、行政を歪める行為が日常になってしまったのだ。

 その間、安倍はのうのうと権力にしがみついている。「徹底的に膿を出し切る」などとカッコをつけるが、安倍こそが膿なのだから、自ら権力者の座を降りない限り、膿はなくならないどころか、むしろ広がる一方だ。こうして国全体が汚染され、壊れていく。

 「モラルもなく、国民のための政治をするという信念もないのが安倍政治の特徴です。安倍首相は全てが自分のためですから、役人についても自分に奉仕する人を積極的に登用する。そして役人は魂を捨てて首相にすり寄る。そのうえ首相官邸に人事権も握られ、役人の堕落が急速に進んでしまったのが今の惨状です。これを元に戻すのは何十年かかるのか。本当に深刻な事態だと思います」(森田実氏=前出)

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合がきのう出した声明には、こうある。

 〈5月8日より国会が「正常化」したとの報道が相次いでいますが、そもそも国権の最高機関である国会において虚偽答弁を繰り返し、また国会に提出する公文書の改ざんを行い、さらには国会のチェックを免れるためにそうした事実を隠蔽し、正常な国会審議の前提を壊してきたのは、ほかならぬ安倍自公政権です。今後、本当の意味で国会が正常化するかは、ひとえに政府が国会に対して誠実に説明責任を果たすかにかかります。言うなれば、政府の「正常化」が未だ求められています〉

 鉄面皮首相を葬り去らない限り、国会も政府もなにもかも「正常」には戻らない。この国は、すでに取り返しのつかない段階に足を踏み入れてしまっている。
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注目の柳瀬招致 「話す中身」が事前に漏れるアホらしさ

2018-05-13 | いろいろ

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注目の柳瀬招致 「話す中身」が事前に漏れるアホらしさ
  

 ある程度、予想されていたとはいえ、予定調和の質疑に釈然としない思いを抱いた国民も多かったに違いない。学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、10日、国会で行われた柳瀬唯夫元首相秘書官(現経産審議官)の参考人招致のことだ。

 とにかく、摩訶不思議の現象だったのは、参考人招致の開催が決まる前から、新聞・テレビで柳瀬の答弁方針や内容がワンサカと報じられていたことだろう。

 〈柳瀬氏は参考人招致で学園関係者との面会は認める一方、県や市の職員は学園関係者の後ろにいて記憶に残らなかったと説明する見通し〉

 〈自民党幹部は「大勢の面会客の中に県や市の職員が交じっていて気付かなかったのなら、柳瀬氏が嘘をついたことにはならない」と指摘した〉

 〈柳瀬氏は参考人招致で、県と市の担当者については「周りにいる関係者の全てを把握しているわけではない」などの表現を検討しているとみられる〉

 〈自民党幹部は「すとんと落ちる話になる」として、野党の追及をかわせると自信を示す〉

 国政調査権に基づく参考人招致で、開かれる前から参考人の予定答弁が細かく報道されたケースは聞いたことがない。柳瀬自身がベラベラと話していたとは思えず、誰がメディアにリークして報道させていたのかといえば容易に想像がつく。政府・与党しかない。つまり、柳瀬は「誠実にしっかりとお話しさせていただきたい」なんて言っていたが、しょせんは安倍政権の操り人形で、参考人招致は単なるガス抜きの舞台回しに過ぎない。そんな状況で、とてもじゃないが真相解明を期待できるハズもない――とのあきらめのような雰囲気が国民にもジワジワと刷り込まれていたため、しらけムードが漂っていたのだろう。

■ 新聞・テレビは柳瀬の虚偽答弁を正当化するアリバイ作りに加担

 今回の問題は、柳瀬が「記憶にない」と否定し続けてきた2015年4月2日の愛媛、今治両県市職員との官邸での面会や、その際に「本件は、首相案件」と発言していたのかどうかの事実の有無に尽きる。

 愛媛県では職員が柳瀬と面会した際に作成した発言内容のメモが見つかり、文科省や農水省でも同様の文書が確認された。冷静に考えれば、「動かぬ証拠」が突き付けられた柳瀬の国会答弁が大ウソだったことは明々白々で、ならば「なぜ虚偽答弁したのか」「なぜ首相案件と発言したのか」という動機の部分が最も重要なポイントだ。

 それなのに、どういうワケか「加計学園関係者と会ったことは認めるけれど、他の人のことは覚えていないから虚偽答弁じゃない」――なんて、論理のスリ替えにもならない陳腐で奇妙な屁理屈がバンバン報じられるようになり、いつの間にか既成事実化してしまったからアングリだ。

 それもこれも新聞・テレビが何ら批判的な視点を持たず、「柳瀬の方針」などと称する政府・与党の言い分をタレ流し、結果的に虚偽答弁を正当化するためのアリバイ作りに加担していたからだろう。

 「野党や国民の地道な活動によって、ようやくこぎ着けた加計問題の参考人招致を、政権側は幕引きのセレモニーに逆利用しようとした。本来であればメディアがきちんと分析して報じるべきなのに、それを怠ったワケです」(元共同通信記者の浅野健一氏)

 貴重な国会審議を台無しにした責任は大マスコミにもあるのだ。

  

 メディアも野党も安倍政権の描いたシナリオに踊らされている

 そもそも、政府・与党は、柳瀬が加計学園関係者との面会を認めても問題ナシ――と考えていたようだが、冗談ではない。国家戦略特区を所管する事務担当の首相秘書官が、よりによって国家戦略特区を活用して獣医学部新設の申請を検討している、いわば“利害関係者”と官邸で面会していたのだ。当時、獣医学部新設を検討していた京産大関係者は選考過程中に官邸に呼ばれたことは一度もない、と朝日新聞の記者に語っていたというから、行政の手続きとしては不公正、不公平極まりないのは明らかだ。

 まさに「加計ありき」で、前川喜平前文科次官が指摘していた通り、「行政のプロセスが歪められた」証左であり、エコヒイキだ。しかも、柳瀬と会っていた加計学園関係者は単なる事務担当じゃない。きのう(9日)の毎日新聞朝刊は、柳瀬が政府関係者に明かした話として、面会した相手は〈当時の加計学園系列の千葉科学大副学長で現岡山理科大獣医学部長の吉川泰弘氏〉だった――と報じていた。ナント! 現獣医学部長が獣医学部新設について直接、首相秘書官に「陳情」していたワケで、自治体の公共事業担当者に猛プッシュするゼネコン営業マンと変わらない。国家公務員であれば、「ヘタをすれば贈収賄を疑われかねない」と考えて、特定業者とは絶対、面会しないだろう。ましてや、首相秘書官であればなおさらだ。

 にもかかわらず、柳瀬がリスクを冒してまで、なぜ、加計学園関係者と接触したのか。フツーの感覚を持ったメディアであれば、毎日新聞のスクープ報道を後追いするはずだが、多くの新聞・テレビはスルーだったから、加計問題を本当に理解しているのかとクビをひねってしまう。

■ 徹底抗戦から審議復帰した野党も意気地がない

 メディアもだらしないが、野党もグダグダ。森友問題を巡る決裁文書改ざんや、福田前財務次官のセクハラなどの問題が財務省で相次いだのを受け、トップである麻生財務相のクビを取るまで徹底抗戦だったはずなのに、一部メディアから、ヤレ16連休だ、ヤレ17連休だ――などと揶揄されると、あっさり19日ぶりに審議復帰だ。柳瀬が参考人招致で加計学園との面会を認める方針を決めたのが理由らしいが、政府・与党が証人喚問ではなく、参考人招致でお茶を濁そうとしているのはアリアリなのに、なぜ簡単に審議復帰を決めたのかサッパリ分からない。

 大体、安倍首相は柳瀬に対してコトの真相を明らかにするよう指示もせず、「信頼している」とトンチンカンなことを言ってケムに巻いていた。いかに加計問題についてテキトーに考えているのかがよく分かるではないか。

 公文書を改ざんしようが、国会に捏造資料を提出しようが平気の平左の官僚と、セクハラ発言が問題になっても「セクハラは罪じゃない」と開き直る大臣……。

 政治家も官僚もどれだけめちゃくちゃをしようが開き直り、居座る。これほど腐り切った政権はかつてなく、もはや政治の体をなしていないと言っていい。

 元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏がこう言う。

 「メディアも野党も全くだらしないの一言に尽きますよ。なぜ、もっと徹底的に報道し、追及しないのか。このままだと、『政治決着』という安倍政権の描いたシナリオの通りに物事が進むだけです。国民を愚弄していますよ」

 腐敗堕落政権が振り付けした茶番劇をグルになって支えているのが大マスコミなのだ。
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アベノミクスの罠…裁量労働制で経済成長はありえない! “壮大な嘘”に国民は「お別れ」を

2018-05-12 | いろいろ

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アベノミクスの罠…裁量労働制で経済成長はありえない! “壮大な嘘”に国民は「お別れ」を

森友・加計問題、自衛隊の日報隠蔽に続き、財務次官“セクハラ”辞任で安倍政権が末期状態だ。

 窮地に立たされている政権の命綱は「アベノミクスによる経済成長」のはずだが、この経済政策の成果も「都合のいいデータ」によって築かれた砂上の楼閣だったとしたら──。

 今、話題の一冊『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)の著者・明石順平氏は「アベノミクスは大失敗だった」と断言。同書では政府や国際機関が発表した公式データを用いながら、アベノミクスの幻想を打ち破っている。

 なぜ、大失敗だったのか? 菅義偉(すが・よしひで)官房長官への厳しい追及で一躍、その名が知られた東京新聞社会部記者・望月衣塑子(いそこ)氏との対談で語る――。

 前回記事では、若い世代が安倍政権を支持する理由として挙げる「雇用の改善」も「アベノミクスとは関係ない」と看破。この第3回では「働き方改革」の“罠”を見破る──。

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望月 アベノミクスの嘘というか、「アベノミクスの罠」という意味では、国会で議論されている「働き方改革」も象徴的です。厚労省が作った資料の「不適切なデータ」が問題になり、関連法案から「裁量労働制の対象拡大」が取り下げられました。

明石 裁量労働制とは、例えばあらかじめ決められた労働時間が8時間であれば、実際に何時間働いたとしても、8時間としかみなされない制度です。さすがに皆さん、この「罠」に気づきましたよね。

望月 その議論の根拠となるデータが、あまりにも杜撰(ずさん)でした。裁量労働制で働く人の1日の労働時間は一般労働者のそれより短いというデータを出してきましたが、1日の労働時間が23時間を超えるというケースもあるなどツッコミどころ満載で、嘘にしても質(たち)が悪過ぎると感じた人も多かったと思います。そもそも裁量労働制の適用範囲を拡大する目的は「労働生産性を上げて経済を成長させる」ことだったわけですよね。

明石 ハッキリ言って、そんなことで経済成長できるはずありません。裁量労働制の拡大は、単に企業が残業代をカットしたいというだけです。経済を成長させようというのに生活者の時間もお金も奪って、消費に回るお金を減らそうとしている。

 例えるならば、体を大きくしようとしているのに「食事を減らします」と言っているわけです。そのようなおかしな法案を無理やり通そうとするから、ああいうヘンテコなデータが出てきたのでしょう。

 裁量労働制の騒動でひとつ強調しておきたいのは、厚労省が出した「平成25年」のデータをずっと使い続けていたということです。法政大学の上西充子先生がデータに問題があることに気づいて、分析していったら「怪しい」ということになった。仮に自分が国会議員で厚労省からそんないい加減なデータが出てきたら、絶対に「それ、あり得ないだろ!」って調べますけどね。

望月 財務省の公文書改ざん問題でもそうですが、大前提として多くの人に「日本の官僚はそこまで酷(ひど)いことはしない」という思い込みがあるんでしょうね。

明石 あの騒動を通じて皆さんにわかってほしいのは、官僚が出したデータだからといって頭から信じないでくださいということ。「まさか、そこまで…」ということを平気でやってくるのが現在の安倍政権です。裁量労働制拡大を取り下げたのなら、当然「高度プロフェッショナル制度」も削除すべきですよね。

望月 私もそう思います。「高度プロフェッショナル制度」とは高度の専門職にある人を、労働基準法によって定められた休日・深夜の割増賃金規制の対象から外そうという制度ですね。金融商品の開発業務や研究開発業務など、年収1075万円以上の人が対象となっています。

明石 でも、取り下げていない。裁量労働制拡大を取り下げたことで騙(だま)せると思っているんでしょう。ハッキリ言って、労働者の健康のことなんか全く考えていない。本当にやるべきことは逆なんですよ。

 これまで払うべき残業代を払っていなかった企業がたくさんあったんだから、労働基準法違反を超厳罰化して、とにかく残業代を支払わせるようにする。払わなかったら会社が傾くくらいの特大のリスクを負わせないとダメなんです。そうしないと労働者の購買力は上がらず、内需は拡大しない。


望月 残業代をきちんと支払えば、可処分所得も増えて内需が拡大する。「食べ物の量が増える」から「体が大きくなる」ということですね。

明石 でも、それをせずに無理やり物価を上げたから実質賃金が落ちてしまった。つまり順序が逆だったんです。賃金を上げれば、その分はコストに転化され自然と物価も上がる。だから「デフレ脱却」と言うのなら、まず賃金を上げなくてはいけないわけです。それでも基本給を上げようとしないのなら、まずは残業代をきっちり支払わせるべきでしょう。

望月 裁量労働制拡大が取り下げられた時、経団連は失望を表明しました。経営者側の論理としては、残業代は支払わないほうがいいのでしょう。しかし、明石さんが今仰ったように長期的な経済成長を考えるならそうではないはずです。

明石 彼らはグローバル企業なので、世界を相手に商売して儲かればいいんです。つまり、彼らの利益と多くの国民の利益はイコールではなく、むしろ乖離(かいり)している。それなのに政治家、特に自民党は明らかに経営者側の視点に立っています。

 本当はもっと俯瞰(ふかん)的に労働者側と経営者側、双方の立場から日本の経済全体にとって何がベストなのかを考えないといけないのですが、その視点が全く欠けています。それはやはり、経団連が自民党のスポンサーだからでしょうけれど。

望月 そうですね。視野がものすごく狭いし、近視眼的ですよね。消費増税を経団連に支持してもらうのとバーターで何か取引してたんじゃないかって疑いたくなります。

明石 経団連は消費税を増税しろと言いますが、だったらなんで法人税も上げないんだよっていう話です。たんまり儲けてあれだけ内部留保がある大企業の法人税を下げて、「法人減税で国際競争力を」みたいな議論になっているのはおかしいですよ。

 野党の戦い方も下手だと思います。経済政策を議論するための戦略も戦術もない。私は、法人増税は絶対に必要だと思っています。そういう経営者側の政党には主張できない要求を本来なら野党が繰り返し訴えていかないとダメなんです。

望月 野党に限らず、私たち新聞記者もアベノミクスがなぜ危険なのかをこの本のようにもっとわかりやすく噛み砕いて読者に伝えていかなければと感じました。記者である私の役割は、「限られた質問時間の中で、簡潔かつ本質的な質問をぶつけること」です。そして多くの人たちに問題意識が波及していけばいいと思っています。

 例えば「株高というけど、それは作られた株価じゃないですか?」といった質問を投げかける。すると、そのニュースを見た人たちが疑問を抱いて詳しく知りたくなり、自分でもいろいろ調べるようになったらいいなと思います。

明石 ただ、記者クラブに所属する政治部の記者には望月さんのような厳しい質問をする人は少ないですよね。

望月 それは、いわゆる「番記者制」の弊害ですね。私は社会部の記者ですが、例えば政治部の「菅番」記者であれば、彼らは菅義偉官房長官からどれだけ重要な情報をもらえるかによって、自分が政治部の中で生きられるか否かが決まってきます。だから「会見や普段のやり取りで厳しい質問をして、人間関係が壊れたら困る」という意識がどうしても働いてしまうのではないかと思います。

明石 嫌われると、情報がもらえなくなるのですか?

望月 情報をもらえないし、場合によっては番記者から外されてしまいます。その上、現在では「政権側がメディアをチョイスして、自分たちに都合のいい情報を流す」という動きすら起き始めている。昔はもっとツッコんだ質問ができる番記者の方もいたと聞きますが、「安部一強」でそれもやりづらくなっていたのかもしれません。

 しかし最近は、森友学園への国有地売却に関する公文書改ざんや加計学園の「首相案件」報道などのスクープが次々と出てくるようになり、官邸会見でも厳しい質問が増えてきているように感じます。政権がある意味、末期状態になりつつあるのを番記者が肌感覚で実感しているからではないか、とも察します。

 中選挙区制の時代は自民党内でも派閥同士の対立や一定の緊張感があったので、各派閥に付いている記者たちは、自分が「番」をしている政治家の威光を利用することで、政権に対していろいろと厳しい質問をすることができました。けれど、最近は派閥の力が弱体化してしまったため、厳しいことは言いづらい空気が流れていました。

 おそらく、保守系新聞の記者の中にも「アベノミクスはおかしい」と思っている人たちがいるはずです。でも、そういった主張は紙面に書けないのでしょうね。

明石 いわゆる「エコノミスト」と称する人たちも、政権寄りの方が多い。そして「アベノミクスは正しい」と言い続けていますね。

望月 実態はめちゃくちゃなのに、うまく擁護して書かないといけないから、どんどん小難しい言葉の羅列になっています(笑)。

 しかし、これは本当に大きな問題だと思うんです。私たちが情報を伝える相手は「普通の国民」です。ファクトを求めてはいますが、保守やリベラルなど「メディアごとに報道のスタンスが異なる」ということを理解している人は、それほど多くありません。だからこそ、誰にでも理解しやすい形で届けることが大事なんだと思います。

明石 届かないと意味がないというのは、私も一番意識しているところです。本書の各章扉ページで佐藤秀峰先生の漫画『ブラックジャックによろしく』を使わせていただきました。書名を『アベノミクスによろしく』としたのも、そういう理由からです。シリアスな話だからこそ、面白くなければ届かないと思います。

望月 私も講演などでお話する時は、シリアスな話題であってもどこかに笑える要素を混ぜています。アベノミクスの話も、現実はすごく先行き不安なんですけど、笑いを交えてそれこそお茶の間で話題になるぐらいに広めていかないと、世の中は変わっていかないのかなと思います。

明石 そうですね。アベノミクスは誰がどうみても完全に失敗しています。それを「うまくいってる」と嘘をついている人たちが、この国では政治を動かしている。その単純な事実に気づく人をもっと増やしていかなくてはなりません。

 『アベノミクスによろしく』というタイトルは、未だにアベノミクスを擁護している人たちに対する皮肉であると同時に、この「壮大な嘘」に皆さんが気づいて、そろそろ「お別れ」をしてほしいという気持ちも込めているんです。







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アメリカ政府は、なぜ遺族への補償を拒否するのか

2018-05-11 | いろいろ

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アメリカ政府は、なぜ遺族への補償を拒否するのか

日米地位協定の「軍属」をめぐる「ボタンの掛け違い」 ジャーナリスト 布施祐仁氏

 4月17、18両日(現地時間)、アメリカのフロリダ州にあるトランプ大統領の「マール・ア・ラーゴ」で日米首脳会談が行われた。会談後の共同記者会見で「トランプ大統領との友情と信頼関係を更に深めることができた2日間であった」と強調したように、安倍晋三首相にとって今回の会談の最大の目的はトランプ氏との蜜月関係の演出だった。

 安倍首相が「100%共にある」と繰り返しアピールする日米関係だが、日米地位協定の運用をめぐって現在、両国の主張が対立し協議が難航している問題がある。



補償金の支払いを巡って対立する日米政府

 2年前の2016年4月28日夜、沖縄県うるま市で20歳の女性がウオーキング中に米軍属のアメリカ人男性に襲われ、殺害される事件があった。この事件で、アメリカ政府が日米地位協定に基づく遺族への補償金支払いを拒否しているのだ。

 日米地位協定は、米軍の兵士や軍属が公務と関係なく起こした事件でも、加害者に支払い能力がない場合は、アメリカ政府が被害者に「慰謝料」を支払うと定めている(第18条6項)。今回の事件では、那覇地方裁判所が今年(2018年)1月、ケネス・フランクリン・シンザト被告(刑事裁判の一審では無期懲役の判決。現在控訴中)に対して、「損害賠償命令制度」に基づく被害者遺族への賠償命令を出した。遺族の代理人によると、請求額のほぼ全額が認められたという(「琉球新報」2018年2月2日)。裁判所の命令が出ているにもかかわらずアメリカ側が支払いを拒んでいるとあって、沖縄では新たな怒りを生んでいる。

 シンザト被告は事件当時、米軍嘉手納基地内のインターネット関連会社に勤めていた。日本政府関係者によると、アメリカ側は日本政府に対し、「被用者と軍属とは異なる概念。被告は事件当時、軍属だったが、米軍が雇用していたわけではなく米軍と契約していた民間会社に雇用されていた。アメリカ政府が補償金を支払う義務はない」と主張しているという(「朝日新聞」2018年3月16日)。

 他方、日本政府は、日米地位協定に基づいてアメリカ側に補償金の支払い義務があると主張している。

 日米地位協定第18条6項は、「合衆国軍隊の構成員又は被用者(members or employees of the United States armed forces)」が公務外で起こした事件について、アメリカ政府が慰謝料を支払うと規定している。日本政府は、この「被用者」にはシンザト被告のように直接米軍に雇用されていない軍属も含まれるという見解を示しているが、アメリカ側は含まれないと180度違う主張をしている。いったいなぜ、こんなことになっているのか。


請負業者まで軍属に含めているのは日本だけ!?

 結論から言うと、世界中に米軍基地を置くアメリカの「国際基準(グローバルスタンダード)」では、シンザト被告のように米軍と雇用関係のない者は賠償の対象外となっている。とはいえ、沖縄の人々が今回のアメリカ側の対応に反発するのも理解できる。なぜなら、シンザト被告には事件当時、軍属として日米地位協定上のさまざまな特権が与えられていたのである。実際、シンザト被告が逮捕された際、在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン中将は「米軍や米政府が雇用しているわけではないが、日米地位協定が適用される人物だ。事件は全て私の責任だ」(「琉球新報」2016年5月20日)と言って謝罪している。日米地位協定が適用され、さまざまな特権が与えられているのに、賠償は「米軍が雇用していないから対象外」というのでは、到底納得できないのも当然である。

 実は、この問題はそもそも、米軍が雇用していない請負業者の従業員まで地位協定上の軍属に含めてしまっているところに「ボタンの掛け違い」がある。
 NATO(北大西洋条約機構)地位協定を始め、日米地位協定以外のほとんどの地位協定では、軍属とは原則として米軍に雇用されている文民(軍人ではない者)と明確に規定されている。アメリカとアフガニスタンが2014年に結んだ地位協定でも「アフガニスタンはアメリカの契約業者およびその従業員に対する裁判権を有する」と明記し、刑事免責特権を与えていない。米軍と雇用関係のない請負業者の従業員は、あくまでその業者の指揮命令下で仕事をしており、米軍には直接の監督権はない。そのような存在に対して、国内法の適用免除などの特権を与えるというのは理に合わない。

 しかし、日米地位協定では、米軍に雇用されている者だけでなく在日米軍基地で「勤務する者」も軍属の定義に含めてしまっている。だから、シンザト被告のように基地内のインターネット関連会社で働く従業員まで軍属になっていたのである。これは、日本以外の国ではありえないことである。


日米地位協定の曖昧な規定が軍属の拡大解釈を許した

 なぜ、日米地位協定だけがこんなおかしな軍属の定義になっているのか。その理由を知るためには、66年前の1952年までさかのぼらなければならない。まだ日本が連合国の占領下にあった1951年9月、日本政府はアメリカのサンフランシスコで二つの国際条約に署名した。一つはサンフランシスコ講和条約で、もう一つは日米安保条約である。前者は連合国との戦争状態を正式に終わらせる条約で、後者は前者が発効し、日本が主権を回復した後も米軍の駐留を認める条約である。これに基づき、日米両政府は1952年の1月から2月にかけて駐留米軍の地位について定める「行政協定」の交渉を行った。

 この中で、アメリカ側は請負業者の従業員も軍属に含めるよう求めたが、日本側は「請負業者は日本社会で不人気者である」「請負業者を軍属とすることは、労働組合の反対なども予想され同意できない」として、NATO地位協定と同じように米軍に雇用された者のみを軍属とするよう要求した。交渉の結果、当初のアメリカ側協定案の軍属の定義に明記されていた「合衆国軍隊の請負業者に雇用され、又はこれと契約関係にある者」というセンテンスは削除され、新たに「特殊契約者」という条項(14条)を設けて、与える特権を軍人や軍属と区別して課税免除などに限定し、日本の国内法適用も明記した。「特殊契約者」とは、「特殊」と付いていることからも、請負業者全般を指すのではなく、一部の専門的技術者に限るというのが当初の日米双方の共通認識であった。

 この行政協定の軍属に関する規定は、1960年に制定された日米地位協定にもそのまま引き継がれた。日米地位協定は一度も改定されていないので、現在もこのままである。それなのに、なぜ、シンザト被告のような請負業者の従業員が「軍属」の地位を与えられていたのだろうか。

 それは、先ほど述べた通り、日米地位協定の軍属の定義の「曖昧さ」に由来する。日米地位協定は、軍属を「合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの」と定義しており、解釈次第では「勤務」「随伴」する者の中に請負業者の従業員も含めることのできる規定となっているのだ。

 つまり、1952年の交渉で日本側担当者の奮闘でせっかく軍属の定義から請負業者を外すことに成功したのに、その後、規定が曖昧なのをいいことに拡大解釈され、64年後の2016年にはシンザト被告のようなインターネット関連会社の従業員まで軍属に含めて、さまざまな特権を認めていたのである。


地位協定前身の交渉官・西村熊雄の気概

 行政協定の交渉に臨んだ当時の政治家や外交官には、日本の主権回復後も占領時代に獲得した米軍の絶対的な権限を維持しようとするアメリカに対し、少しでも独立国にふさわしい協定に近づけようとする気概があった。1952年1月、最初の公式会議で、日本側の代表を務めた岡崎勝男官房長官(吉田茂内閣)は「平等な主権国家としての日米間の関係は、占領時代とは異なることを明らかにしなければならない」と強調した。

 結果的には、「在日合衆国軍隊の地位が平和条約の発効により一夜に激変を受けることを回避するよう」(外務省の交渉記録)求めるアメリカ側の強い態度に押し切られ、全体的にはNATO地位協定に比べて不平等な内容となってしまった。

 これについて、実務者レベルで日本側の責任者を務めた外務省の西村熊雄氏は、交渉の一連の経過をまとめた文書の結語に次のように記している。

 「こうして協定を通読すると、日本ばかりがgive and give することになる印象をつよめることも見逃してはならない。(中略)国会および世論の期待するところを達成すべく根気よく努力を重ねたところであった。が、ついに目的を貫徹しえず(中略)交渉当事者自身はなはだ不満で早晩できるかぎり早めにその改善をはからねばならないと心ひそかに期するところがあった」(外務省日本外交文書「平和条約の締結に関する調書」)

 もし、西村氏が今の日米地位協定の現状を見たら、どう思うだろうか。協定の条文がほとんど変わっていないことにも驚くだろうが、自分たちが努力して勝ち取った成果(軍属の定義から請負業者の従業員を削除)まで実質的に失われてしまっている現実に愕然とするのではないか。


事件後の日米合意は国際標準にすら届かなかった

 沖縄で発生した米軍属による女性暴行殺人事件を契機として、日米両政府は軍属の範囲を明確にする協議に入った。私はてっきり、これでようやく日米地位協定も、軍属は原則として米軍に雇用される者に限るという「国際標準」に合わせられるのだろうと思っていた。だから、最終的に日米が合意した内容を目にしたときは、それこそ愕然とした。

 事件の翌年の2017年1月、日米両政府は「日米地位協定の軍属に関する補足協定」に署名した。日本政府は「これまでの運用改善とは一線を画する画期的なものだ」(岸田文雄外務大臣=当時)と自慢してみせたが、地位協定上の軍属の定義を変えないばかりか、何と、米軍の任務遂行に不可欠な専門的技術者など一部の請負業者の従業員を引き続き軍属に含めるという合意だったのである。私は、行政協定締結から65年が経ってもなお、「国際標準」にすらしてもらえないのかと暗澹たる気持ちになった。

 元防衛大臣で、現在は小野寺五典防衛大臣の政策参与を務めている森本敏氏が共著本の中で、この交渉について「アメリカ国防総省を相手にした強烈な交渉であったようです」と記している。森本氏によれば、外務省の森健良北米局長らがペンタゴン(国防総省)で交渉している最中、アメリカ側は「君らとこれ以上話したくない」などともの凄い剣幕だったという(森本敏・田原総一朗共著『徹底討論 どうする!? どうなる!?「北朝鮮」問題』海竜社)。

 この交渉で日本側がどういう要求をしたのかは不明だが、おそらく、「国際標準」を超えるような無理な要求はしていないだろう。それでも、もの凄い剣幕で怒鳴る(?)のだから、ペンタゴンが日本をどう見ているのかが透けて見えるエピソードである。

 しかも、米軍から日本政府に報告された軍属の数は2017年10月時点で7048人と、補足協定締結前(2016年末)の約7300人からほとんど減っていないのである。いったい、何のための補足協定だったのかと思わざるを得ない。

 この軍属の問題は、日米地位協定における日本の主権放棄ぶりを象徴している。


日米両政府の長年にわたる不作為が招いた混乱

 安倍首相は今回の日米首脳会談で、トランプ大統領に対し、日米地位協定に基づき遺族への補償金を支払うよう求めるべきであった。だが、トランプ氏との蜜月関係を演出することに腐心する安倍首相は、沖縄県が反対する普天間基地の辺野古移設を「唯一の解決策」と再確認することはしても、日米で意見が対立しているこの問題は議題に上げようともしなかった。

 繰り返しになるが、事件当時はシンザト被告は軍属としての特権を享受していたのだから、アメリカ政府は日米地位協定に基づいて慰謝料を支払うべきだ、という主張には正当性がある。

 そもそも、アメリカの国内法では公務と関係のない事件の賠償は、米兵だろうが軍属だろうが加害者の責任で行うべきものとされている。それでも地位協定でアメリカ政府による慰謝料支払いの規定があるのは、軍の性格上、加害者が外国に移動してしまったり、加害者に日本国内で支払い能力がない場合、被害者が救済されない可能性が高いからである。

 慰謝料支払いのアメリカ国内法上の根拠は、「外国人請求法(Foreign Claims Act)」である。これは、米軍関係者が公務と関係なく外国で起こした事件でも、加害者による被害者への賠償がなされないまま放置した場合、住民感情が悪化し、米軍の安定的な駐留が困難になりかねないことから制定された法律である。この法律では、慰謝料を支払う対象の要件に、米軍との雇用関係の有無は入っていない。

 おそらく、世界的には、軍属ではない請負業者の従業員による事件の場合、アメリカ政府が慰謝料を支払うことは原則として行っていないのだろう。その原則を崩して日本で支払えば、米軍が駐留する他国でも支払いを求める声が上がることを懸念しているのかもしれない。

 しかし、シンザト被告は事件当時、まぎれもなく軍属の地位を与えられていたのであり、この「ボタンの掛け違い」は日米両政府の長年にわたる不作為の結果である。であれば、日米両政府の責任で、被害者遺族への補償を行うべきだろう。

 そして、今後このような混乱が生じないよう、日米地位協定を改定し、軍属の定義を「国際標準」に合わせて、原則として米軍に雇用されている者に限定すべきだ。

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安倍首相はなぜ水を差すのか 米朝和解ならば日本も変わる

2018-05-10 | いろいろ

より

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安倍首相はなぜ水を差すのか 米朝和解ならば日本も変わる

 米国のトランプ大統領が、4月に安倍首相と会談した際、在韓米軍の削減や撤退の可能性に言及していたことが分かった。これに対し、東アジアの軍事バランスが崩れることを懸念した安倍は、その場で反対の意向を伝えた――。5日の読売新聞が1面で報じた“スクープ”だ。安倍の危険な正体を端的に伝えている。

 6月までに開催される米朝会談の行方には、世界中の注目が集まる。北の脅威がなくなれば、在韓米軍の存在意義が薄れるのは間違いない。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、複数の米政府当局者も「朝鮮戦争を終結させる平和協定が締結されれば、在韓米軍の必要性は低減する」との認識を示しているという。

 トランプが4月の日米首脳会談で、わざわざ在韓米軍削減に言及したのは、北朝鮮との和平交渉に手ごたえを感じているからだろう。歴史的な和解が実現するかもしれないのに、在韓米軍の削減に異を唱える安倍。なぜ、世界中が期待する東アジア安定の機運に水を差すようなことばかりするのか。

 「これまでトランプ大統領の言うことには何でも賛成してきたのが安倍首相です。在韓米軍の削減や撤退は取引材料のひとつとして言っているだけの可能性もありますが、安倍首相が反対を表明したところでトランプ大統領が聞き入れるわけがないし、米政府の対応が変わるわけでもない。そもそも日本は朝鮮戦争を終結させる枠組みの当事者ではなく、蚊帳の外なのです。事情を正確に把握してもいないのに、しゃしゃり出るべきではなかった。当事者である南北米中によって北朝鮮問題がどう動くのかを見守ることしかできないのだから、余計な口出しはすべきではありません」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)

■ 蚊帳の外なのに首脳外交の当事者ヅラ

 ところが安倍は、北朝鮮問題になんとかコミットしようと必死だ。連休中、外遊先のヨルダンでの記者会見でも、「日朝平壌宣言に基づいて拉致、核・ミサイルの諸懸案を包括的に解決し、北朝鮮との間で不幸な過去を清算して国交を正常化する」と宣言していた。蚊帳の外なのに、一体どうやって解決するつもりなのか。

 平壌宣言は、02年に当時の小泉首相が北朝鮮を電撃訪問した際、金正日総書記と署名した共同文書だ。双方が国交正常化の早期実現を目指して努力することをうたっている。日本は過去の植民地支配について謝罪し、終戦までに生じた財産と請求権を双方が放棄するとともに、「過去の清算」は国交正常化後の無償資金をはじめとする経済協力の形で実施するというものだ。

 国交正常化のための努力なんて何ひとつしてこなかったのに、このところ、しきりに平壌宣言を持ち出しているのは、致命的な外交失策が国民にバレないよう、首脳外交の当事者ヅラして体裁を整えようということか。

 それでいて、圧力を振りかざすことは忘れない。4日に突然、中国の習近平主席と初めての電話会談を行った際も、先日の南北首脳会談を評価し、「平壌宣言にもとづいて国交正常化を目指す考えに変わりはない」と言いながら、北に対して最大限の圧力を維持するよう中国に呼びかけたという。何がしたいのか、支離滅裂なのである。


 北の脅威煽って安保法制定、9条改憲にも利用の魂胆

 9日には日中韓3カ国の首脳会談が東京で開かれるが、安倍はここでも韓国の文在寅大統領や中国の李克強首相に対して、圧力継続の必要性を説く方針とみられる。

 「日中韓が連携し、米国とも協力して北朝鮮の非核化に取り組まなければならないのに、ひとりで圧力と言い続けている姿は滑稽ですらあります。和平を後押しするどころか、水を差すような発言を繰り返しているのは、北の脅威がなくなったら困るからでしょう。

 安倍政権は『日本を取り巻く安全保障環境が悪化している』と国民を脅して、安保法や共謀罪を成立させてきた。Jアラートを鳴らして危機を煽り、総選挙にも利用した。北朝鮮の危険性を理由に防衛費も増やし、軍事大国化を推し進めてきたのです。半島の和平で在韓米軍も撤退ということになれば、これまでの言動がすべて覆されてしまう。北の脅威を利用した憲法9条改正もできなくなってしまいます。沖縄の辺野古新基地も完成まで10年ほどかかるというから、それまでは半島に危機があって欲しいのでしょう」(政治学者・五十嵐仁氏)

 半島の緊張が緩和され、統一に向けた話が進み、非核化が実現されれば、在韓米軍の縮小は当然の流れになる。それは同時に、在日米軍基地の削減、撤退にもつながる。

 トランプはもともと在日米軍を重視していない。16年の大統領選でも在日米軍の撤退を公言していたほどだ。北の脅威が減れば、在韓だけでなく、在日米軍基地の縮小を言い出す可能性は十分ある。

■ 戦後レジームからの脱却なら米軍撤退は歓迎すべき

 「米朝会談で東アジアが歴史的転換点を迎えようとしている今は、日米地位協定や日米安保のあり方などを根底から見直す好機でもあります。戦後レジームからの脱却というのなら、占領体制の象徴である在日米軍の撤退は、真の独立国になるためにも、本来は望ましいことのはず。しかし、残念ながら、そういう議論を現政権が始めることはない。他ならぬ安倍首相が現状維持を望んでいるからです。

 在日米軍にいてもらうことで、軍事力を背景に周辺国に睨みを利かせることができると考えている。対米従属で虎の威を借ることが、国際社会での発言力向上になると勘違いしているのです。米朝和解なら、日本の政治も劇的に変わる可能性があるのに、米国べったりで北を挑発し続けるしか能がない安倍政権では、時代の変化に対応できません」(五十嵐仁氏=前出)

 北の脅威が消えれば、アホみたいなミサイル防衛システムに大金をつぎ込む必要もなくなる。その分を社会保障費に回すこともできる。超高齢化社会の処方箋も変わってくるというものだ。その方が国民もありがたい。役にも立たないイージス・アショアを2基も購入するカネがあれば、もっと国民生活のためにやれることがあるはずだ。

 安倍政権の5年間で防衛費は増大し、過去最高を更新し続けているが、社会保障はどんどん削られている。高齢者の医療費も、窓口負担を1割から2割に引き上げる方針だ。南北和解ムード一色だった4月25日に財務相の諮問機関である財政審議会で提案された。

 世界は激動しているのに、不都合な事実から目をそらし、北の脅威を煽り続ける安倍は、もはや東アジアの平和と安全にとっても、国民生活にとっても障害でしかない。一刻も早く辞めてもらうのが、この国のためだ。
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