拈華微笑 ネンゲ・ミショウ

我が琴線に触れる 森羅万象を
写・文で日記す。

 『人"間"工学』 〜 Zen 脳

2021年02月22日 | 人"間"工学

  三年前、Youtubeでアメリカで有名な啓発講演番組『TED』を日本語字幕付きだったので見たのだが、大いに興奮させられた。

  大まかに内容を話すと、1996年、当時三十代半ばのアメリカ脳科学者だったジル・ボトル・ティラー女史は、自身が左側脳の脳卒中になり、

  正常に回復するまで8年を要したが、その時体験した事柄の講演である。

  左脳が出血により損傷を受け、左脳の働きである、自分自身を他から分離された存在であると認識したり、過去の情報整理して

  未来に備える…というような働きが出来なくなり、右脳の性格が新しく目覚め表に現れてきた。・・・といった内容。

  で、結果的に言うと右脳の働きは仏教でいう『悟り』そのもののようで、彼女自身もニルバーナ(涅槃、悟り)…という表現を使っている。

  私は、彼女のYoutubeを見て感銘を受け、このことを書いた彼女の本『奇跡の脳』日本語版を読んだが、

  まさか禅を意識して書いたわけではあるまいが…と考えるほど『右脳の働き』は『悟り』そのもののようだ。

      

 

  仏典では菩薩の誓願である『四弘誓願』の一番目は『衆生無辺誓願度』で『救済』を『度』と書き『渡す』からきている。

  それはおそらく『般若心経』の正式名が『摩訶般若波羅蜜多心経』で『摩訶般若』が『偉大な智慧』、『波羅蜜多』は『到彼岸』を意味し、

  『偉大な智慧の完成』と訳し、俗なる『此岸』から悟りの境地『彼岸』に衆生を『渡す』ことが仏道の救済であると考えられている。

  日本でも『お彼岸』と親しまれている言葉は『あの世』的ニアンスで捉えられているが、本来は『到彼岸』で『悟り』を意味していた。

  悟りの世界を『彼岸』、俗界を『此岸』と『岸』に見立てたのはお経の成り立ったインドのガンジス川…のイメージからではないかと言われているが

  私は、先人たちが『脳の働き』について直感していたのでは無いかと思っている・・・。

   般若心経の最後のほうは呪文になっていて『ぎゃーてーぎゃーてー』…と、サンスクリット語で『渡ろう、渡ろう』と励ましている。

  しかし、『到彼岸』だからといって、渡ってしまってそれでおしまい…というのではなく、渡ることで、両岸が無くなって『観自在』を得ることが

  大切で、本の中でも、『2つの大脳半球が持っている機能の健全なバランスを見つけるだけでなく、ある瞬間において、どちらの性格(左右脳の)に

  主導権を握らせるべきかコントロールすることが、きわめて重要である』…とティラー女史は言っている。

  近い将来、このように『悟りの境地』と『大脳の働き』の関係も明らかにされる日がくるであろう。

  少なくとも『悟りの境地』が素敵に頭のイカれた変態の境地ではないこと…だけは、西洋の科学者達の間にも浸透しつつあるようだ。

  

         

                                       ジル・ボルト・テイラー氏のパワフルな講演(2008年)*動画下の字幕マークを押せば日本語字幕がでる。