タキ。(ジョウビタキ ♂ )
父が去年、
畑仕事用といって軽トラを購入した。
軽トラと侮れないカッコよさで
父ときたら
トライアンフ(オートバイ)と一緒に
ピカピカに磨き上げている。
ところが
このところ毎日、
運転席側のドア周りに
鳥のフンが
引っかけられるようになった。
それはもう盛大に。
洗って磨いても
また翌日、フンが飛び散っている。
何者かが
毎朝、
軽トラ(のサイドミラーに映った自分)に
戦いを挑んでいるらしい。
「……ジョウビタキだな」
と父。
いやいやそれなら
シジュウカラやセキレイにも
その習性はあるらしい。
とは言え、
ジョウビタキ(のオス)には
前科があるから
疑われても仕方がない。
かもしれない。
わたしが仕事で
日本にいなかったときだから
3、4年前の冬、
うちの父と
一羽のジョウビタキのオスは
ガレージ周辺で
縄張りを主張し合って
攻防を繰り返し
いちおう父が勝った。
ある日、
わずかに開いた窓から
車のなかに飛び込み
出られなくなっていた彼を
父は捕獲し、
ちょっと離れた林まで
放しに行ったのだそうだ。
そのジョウビタキと
いまうちにいるタキは
別の個体かもしれないけれど
父には
もはや先入観がある。
第一容疑者はジョウビタキ。
姫(ジョウビタキのメス)の
縄張りは
家を挟んで反対側らしく
彼女の仕業ではないと思われ…
目撃情報はなく
プロファイルと状況証拠による
推論に過ぎないものの
タキの容疑は
きわめて濃厚である。
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