右の奥歯にぴりぴり痛みを感じてすぐ首の付け根に
痛みが落ちてきた。触ると右の首筋が少しはれている。
いつもの扁桃腺かな。
これがぷくりと腫れてくると何か食べる度にぴりっ、
水を飲んでもぴりっと電気人間iになる。
子供の頃は扁桃腺が腫れるたびに医者に連れていかれた。
働きづめで忙しい母に手を引かれて神奈中バスに乗る、
町医者の玄関の戸を開けるまで母は決して手を放さない。
痩身の女医さんは白髪まじりの髪を後ろにひっ詰め、
団子みたいなアタマに丸いメガネをかけていた。
前回の診察のとき、
「また来たの、あんまり腫れるようなら切ろうかね...」と
しらっと言った。
先端に綿を巻いた短いスティックをずぼっと薬瓶に漬け
垂れないようにビンのくちでしごいたら
「は~い、口を大きく開けて」と命令口調にうながした。
遠慮なしにぐいぐいぐるりと塗られて「はい、おしまい」
あれは「ぐぐっぐえっ」と吐きそうになるんだよね。
いつもこらえていたけど、
一度くらいは白衣にべちょっと吐いてやればよかった。
帰りの母は手を放したままずんずん先を歩く。
バス停の時刻表を見ながら軽く舌打ちした時は
いつも駄菓子屋でキャラメルを買ってくれる。
ぼくはパブロフの子犬のように母の顔を見た。
壊れかけたベンチにすわりキャラメルを食べる。
上気した頬を風がなでてゆく、
1時間に1本のバスが嬉しい日になったとき。
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