粋人のシャンパン

帯留めもコレクションのひとつ
正絹三分帯締の色は鳩羽色(はとばいろ)
チープなアクリル帯留は色合わせの妙で

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マンションの大規模修繕が始まる。
まずは外壁と鉄部塗装にともないベランダに置いてある物を
かたずけるようにお達しが回ってきた。

ベランダの隅に置いてあるコンテナの中に水槽用品と一緒に
シャンパンが入ってる。5Kgソイル２袋の間にかくした。

銀婚式パーティーの乾杯に使われたシャンパンは美味だった。
グラスにきらめく繊細な泡と口元に立つ芳醇な香りは当然ながら、
ゆっくり飲むにつれ喉ごしにただよう濃い味わいが次のグラスを
要求する･･･これは楽に1本あけられる味。

それまではシャンパンなんて「ジュッチュと同じ」と
うそぶいていた俺の無知が恥ずかしい。

乾杯酒をお代わりするなんてどうかしてると思いながら
ウエイター氏に耳打ちしたが、やんわり丁重なNG、
それなら銘柄を教えてと食い下がった。

おかげでネット通販で手に入れることができたが、
その値段を見て驚きつつ感心した。
つつましいご夫妻がこんなところで大盤振る舞いするとは、
渾身一滴のシャンパンとは、なかなかの粋人だ。

あれから3年が経つけど未だ封を切る機会がない。
ソイルの上に置いてあるシャンパンもどきは夜中の楽しみに
泡と消えていくのに。

嬉しい二日酔いがしたくて、
望外の味にふさわしい機会がくるのを待っている。
はよ来い。