BS NHKの歌番組で
歌手の大江裕くんが
”抱擁”という歌を唄っていたのをたまたま聴いた
彼は基本的には演歌歌手という出立ちだけれども
いろんな歌い方ができる
それもなんと言うのか
テクニックや技術的なことを飛び越えた
表現が滲み出る
’抱擁’は
1987年に和田アキ子さんに書いた作品で
当時の映画『極道の妻たちII』主題歌として
シングルカットされた
先日の番組で
どういう経緯での選曲だったのかは不明だが
この時代にまた聴けるとは
晩酌の酒も進む

今でこそどこも厳しいセキュリティーのもと
人の出入りが管理されているが
当時のレコード会社などは 誰でも自由に行き来ができた
書きたい歌手をみつけては曲を書いて
アポイントが取れない場合は
その担当ディレクターのデスクの上に
手紙と一緒にデモテープを置いて帰ったものだ
誰の顔も見ず
誰の声も聞かず
打ち合わせもなく
まずはメールの発注書だけでやりとりする
今の時代の作家たちのやり方とは大きく違い
必ず打ち合わせがあり
誰と誰に発注もして
形としてはコンペになるが
それでもいいか?と前置きがあった
’抱擁’もそんな時代にできた作品であり
メロディーを先に作って
自信作だというメモを添えて提出した
曲が採用になったと連絡を受けた時
作詞が尊敬する阿久悠さんと知った時には
二重の喜びでとても興奮した
初めて聴く和田アキ子さんの歌は
映画の内容に負けない迫力で
儚さと強さが滲む素晴らしい歌唱だった
28歳当時
作業をしていた赤坂の部屋で
ドキドキしながら送られてきたサンプル版の
封を切ったのを今でもはっきり覚えている
発売から35年が経ったこの時代に
大江くんが唄う’抱擁’もまた
誰の真似でもない 彼の歌だった
ひとつひとつの言葉を丁寧に表現しながら
唄ったフルコーラス
ジンと心に届いたよ
もうこんなドラマチックで情熱的な歌は
流行らない時代なんだろうか
