すでにたくさんの人だかりが見えた。
赤坂Blizで西郷輝彦LIVE ACT8を観た。

ランドセルを背負い始めた年の頃。
最近で言えば、先日ここにも書いた
「三丁目の夕日”64”」とトヨタパブリカ
そして父が32歳 母が28歳である。
広島市内を流れる太田川下流沿いのまだ建物があまり立ってないような土地に建った
5軒の建て売りの一つを両親が100万円ちょっとで買って間もない頃か。
母の弟である叔父がまだ独身の頃は、母につれられアパートによく遊びに行った。
大きな家具のようなステレオが自慢で
毎回レコードの埃を丁寧に拭いて静かに針を落とす動作が
幼い自分にはとても魅力的な大人の仕草として憧れた。
その中のレコードにあったのが当時のヒット曲の中の
この一枚だった。

西郷輝彦/君だけを
ちなみにこの時代に流行った歌は数多く
今振り返ってもこの時代はまさに歌の宝箱だった
青春歌年鑑
将来何になりたいと聞かれたら
パイロットかバスの運転手と答えていた時代だが
あれから30年後の1994年に、その西郷さんに作品を
書かせていただくなんて想像出来るはずもない。

<1994 別れの条件>
丁度、西郷さんの30周年と重なっていたこの年、
レコーディングにお邪魔出来なかったが
その翌年にリリースされた「時に抱かれて/名画座」と
レコード2作品に渡って作曲させていただいた。
初めてお会いしたのは
確か30周年のパーティーのような場所で
メーカーディレクターからご紹介いただき
ご挨拶させていただいたと思うが、
その後、TBSの「輝け隣太郎」というドラマの主題歌を
やらせて頂いた関係で参加した打ち上げパーティーの席で
偶然にもそのドラマに出演されてた西郷さんとまたバッタリ。
最近、よく会うねと声をかけて頂いた。
長い歳月が流れ、いろんなご縁もいただき
(長くなるのでその詳細は割愛しますが)
昨年また曲のご依頼をいただきました。
当時の事や楽曲の事などを非常によく覚えてくださっており
感謝の一言に尽きる想いでした。

<2011 オリオン急行>
丁度、舞台を長くやられていた後の時期でもあり
芝居の台詞の発声法で、少し喉の調子もくずされている中
何度も何度も 延べにして何テイク録ったのかわからないほど
ボーカルブースの中で、もう一回 もう一回と唄っておられた。

中々難しい。
曲のパターンとしてはやり尽した感もあるからだ。
そんな手探りの中で、今の時代にどんな歌を唄われていたら
私自身が「いいな」と思えるんだろうと
色々やってみる。
平均点を狙うべきか少し冒険しようか。。
そういう時、テーマの根幹である詩が先にあるほうが
時代の作品としてはわかりやすい場合もあるが、
10数年振りという緊張感の中
書かせて頂いたひとつのメロディーを幸運にも
作詞の田久保真見さんの詩によって
とても素敵でロマンチックな歌へと仕上げて頂いた。
昨夜、19時ぴったしに始まった赤坂BLIZでのライブ。
ラテンバージョンの星のフラメンコで幕を開けた。
相変わらず洋楽の英語の抜けも抜群だ。
余談だが、西郷さん自身が若かりし頃ステージでうたっておられた
トムジョーンズの「Love me tonight」を
作曲の参考にとメールに添付して送って頂いた事がある。
お世辞ではなく、日本人と感じない程
英語の発音と声のトーン、リズム感が素晴らしかった。
ご本人の大好きな洋楽の数々がちりばめられた中
ライブの中盤で今年の4月に発売された新曲
「旅のあかり」を唄われた。

<2012 旅のあかり>
この歌は作詞の喜多條忠さんと初めてご一緒した作品だ。
いつも鼻歌のように唄える曲を作曲の一つの目安としているが
どうも曲が先だとメロディが角張ってしまいがちになるところを
作詞家の方々が筋肉を柔らかくほぐすように
優しく歌に仕上げてくださる。
団塊の世代に限らず、
恋や友情そして家族などへの想いを共有できる
とても心を静かに出来る歌に仕上がった。
昨夜唄われた「旅のあかり」は手前味噌で申し訳ないが
とても自分の心に響いた。
当時からの根強いファンの方も大勢おられる中
その後ろの方で聞いておられる世代の若いファンの方達にも
届くように一生懸命に唄っておられる姿がとても素敵だったな。
言葉の節々に感じる西郷さんの優しさがとっても暖かい。
しかし17歳の頃の曲を60歳過ぎても唄える事の素晴らしさってのは
何だろう。
サンミュージックの重鎮の方が
当時のキーと同じまま唄っていると仰っていた。
年を重ねられてもあの声のトーンは健在だ。
音楽はトーンでロックは時代を突き抜ける心意気なのだ。
その精神が歌や曲をいつまでも輝かせる。

来年は芸能生活50周年を迎えられる。
あのバイタリティーと情熱と、
そしてあの音楽好きな姿を実に見習いたいと思います。
そして、何よりも健康に留意され
是非50周年の節目に大暴れしていただきたいと願うばかりです。
感謝です。