辞書引く日々

辞書が好きなのだ。辞書を引くのだ。

巨大トラックに関するぼんやりとした連想

2012年05月27日 | 言葉
「世界一大きいトラック」の写真をはじめて見たのは子どものときだった。そ
のとき、トラック自体の大きさに比べると、荷台に積める分量が少ないのに驚
いた。考えてみれば当たり前で、小さなトラックをそのまま拡大したら自重す
ら支え切れるかどうかわからない。象が蟻に比べてずんぐりしているのと同じ
話である。

これに似たことは、しばしば経験し、また、見聞きする。たとえば、大がかり
なコンピュータ・プログラムなんぞは、複数の部分に分割しておかなければ、
とうてい開発できないだろう。象を一匹にかわりにロバを百匹開発するしかな
いというわけだ。

一方、会社なんぞは合併して大きくすることにより管理部門を統合できるから
効率が良くなるということがあるらしい。だから、こうした比喩をあまり一般
化するのはよろしくなかろう。そもそも比喩は誰かを説得する力は持たずに、
ただ自分の気分を説明するぼんやりとした効果だけを持つものだと、私は考え
ている。それでも、時々この巨大トラックの比喩が頭をかすめる場面というの
は少なくない。

ある種の「人文」的な学問では、たくさんの新概念が出てくるが、ときどきこ
れが荷物の重さではなくて、トラックじたいの重さであるように思うことがあ
る。ソーカルが The clear goal here is to achieve by definition what
one could not achieve by logic. (What the Social Text Affair Does and
Does Not Prove)などというのは、いくらか似た事情が感じられなくもない。

ベーコンが whereas the meaning ought to govern the term, the term in
effect governeth the meaning (Of Unity In Religion)と言っているのを聞
いても、なんとなく巨大なトラックを思い浮かべてしまう。

べつに私はソーカル事件について知っているわけでも、ベーコンの神学につい
て知っているわけでもない。これが的外れな連想であろうことも想像はできる。
ただある種のもどかしさを感じるときに、なんとなく巨大なトラックのことを
思い出してしまうというだけの話である。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 古文・文語文に憧れるわけ | トップ | 胃袋と弁舌 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (つちや)
2012-05-27 21:51:20
動物など物理的な物の場合は体積はn^3で大きくなるけれど、表面積はn^2で、腕などの長さはnの割合で大きくなる。だからゾウのように大きな動物は体を支えるのが大変で、虫などは身軽であるという話を聞いた事があります。組織の場合はコミュニケーションのコストがn^2になりそうな気がしますね。
返信する
Unknown (カビパン男)
2012-05-28 17:45:18
体育会的大宴会(座敷)で、一通り酒をついでまわり、まわってきた人に酒をついでもらうと、総酒量はすごいことになりますね
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

言葉」カテゴリの最新記事