「世界一大きいトラック」の写真をはじめて見たのは子どものときだった。そ
のとき、トラック自体の大きさに比べると、荷台に積める分量が少ないのに驚
いた。考えてみれば当たり前で、小さなトラックをそのまま拡大したら自重す
ら支え切れるかどうかわからない。象が蟻に比べてずんぐりしているのと同じ
話である。
これに似たことは、しばしば経験し、また、見聞きする。たとえば、大がかり
なコンピュータ・プログラムなんぞは、複数の部分に分割しておかなければ、
とうてい開発できないだろう。象を一匹にかわりにロバを百匹開発するしかな
いというわけだ。
一方、会社なんぞは合併して大きくすることにより管理部門を統合できるから
効率が良くなるということがあるらしい。だから、こうした比喩をあまり一般
化するのはよろしくなかろう。そもそも比喩は誰かを説得する力は持たずに、
ただ自分の気分を説明するぼんやりとした効果だけを持つものだと、私は考え
ている。それでも、時々この巨大トラックの比喩が頭をかすめる場面というの
は少なくない。
ある種の「人文」的な学問では、たくさんの新概念が出てくるが、ときどきこ
れが荷物の重さではなくて、トラックじたいの重さであるように思うことがあ
る。ソーカルが The clear goal here is to achieve by definition what
one could not achieve by logic. (What the Social Text Affair Does and
Does Not Prove)などというのは、いくらか似た事情が感じられなくもない。
ベーコンが whereas the meaning ought to govern the term, the term in
effect governeth the meaning (Of Unity In Religion)と言っているのを聞
いても、なんとなく巨大なトラックを思い浮かべてしまう。
べつに私はソーカル事件について知っているわけでも、ベーコンの神学につい
て知っているわけでもない。これが的外れな連想であろうことも想像はできる。
ただある種のもどかしさを感じるときに、なんとなく巨大なトラックのことを
思い出してしまうというだけの話である。
のとき、トラック自体の大きさに比べると、荷台に積める分量が少ないのに驚
いた。考えてみれば当たり前で、小さなトラックをそのまま拡大したら自重す
ら支え切れるかどうかわからない。象が蟻に比べてずんぐりしているのと同じ
話である。
これに似たことは、しばしば経験し、また、見聞きする。たとえば、大がかり
なコンピュータ・プログラムなんぞは、複数の部分に分割しておかなければ、
とうてい開発できないだろう。象を一匹にかわりにロバを百匹開発するしかな
いというわけだ。
一方、会社なんぞは合併して大きくすることにより管理部門を統合できるから
効率が良くなるということがあるらしい。だから、こうした比喩をあまり一般
化するのはよろしくなかろう。そもそも比喩は誰かを説得する力は持たずに、
ただ自分の気分を説明するぼんやりとした効果だけを持つものだと、私は考え
ている。それでも、時々この巨大トラックの比喩が頭をかすめる場面というの
は少なくない。
ある種の「人文」的な学問では、たくさんの新概念が出てくるが、ときどきこ
れが荷物の重さではなくて、トラックじたいの重さであるように思うことがあ
る。ソーカルが The clear goal here is to achieve by definition what
one could not achieve by logic. (What the Social Text Affair Does and
Does Not Prove)などというのは、いくらか似た事情が感じられなくもない。
ベーコンが whereas the meaning ought to govern the term, the term in
effect governeth the meaning (Of Unity In Religion)と言っているのを聞
いても、なんとなく巨大なトラックを思い浮かべてしまう。
べつに私はソーカル事件について知っているわけでも、ベーコンの神学につい
て知っているわけでもない。これが的外れな連想であろうことも想像はできる。
ただある種のもどかしさを感じるときに、なんとなく巨大なトラックのことを
思い出してしまうというだけの話である。