けれど(Credo)

I:キリシタン信仰と殉教 II:ファチマと現代世界 III:カトリック典礼、グレゴリオ聖歌 IV:「聖と俗」雑感

ファチマ・クルーセイダー

2012年02月26日 | Weblog

帝国の再生:ソビエト連邦で実際起こっていること

The Fatima Crusader Issue 38, Fall 1991より

Donald S. McAlvany


The McAlvany Intelligence Advisor(MIA) Sept./Oct. 1991 issue

これは私がこれまでに書いた最も重要な(確かに最も議論の余地のあるそして
最も長い)報告であろう。ソビエト連邦における諸々の出来事は目をくらます
速さで動いてきた(すなわち、MIA がしばしば言及する「加速要因」)。世界
は最近ソビエト帝国における諸々の出来事について以前よりも多くの情報(筆
者の意見では--たいていは偽情報)を受けさせられてきた。実際に起こってい
ることに関する混乱は聡明な保守派の人々やソビエト研究者たちそして生涯続
く反共産主義的自由の闘士たちの間でさえ非常に行き渡っている。この混乱は
ソビエトの台本作家たちのもくろみによるものである。

この報告はソビエト連邦における最近の出来事に関して一つのまったく反対の
(contrarian)分析--アメリカ人がテレビで聴き、新聞で読み、合衆国および
ソビエトの指導者たちから聴いている、そして彼らが自分たちは自分自身の眼
で見ていると信じていることとほとんどまったく矛盾対立する分析--を提供す
るであろう。筆者は読者にこの報告を読んでいる間開かれた精神を保ち、それ
を数回読み直すことを、そしてそこで彼らが一つの事柄を言い、そしてそれと
反対のことをした過去のソビエトの諸々の欺瞞を、思い起こすことを勧める。
もし報告があなたにとって意味をなすなら、そしてあなたが一般的に分析と結
論に同意するなら、それをコピーしてできるかぎり広範に--特に軍隊、諜報機
関、NATOにいる人々、他の出版物に、そして自分自身で考えることができる政
治家たち(彼らの大部分を除外するが)に配ることを勧める。

警告:この報告を読む大多数の人はそれに同意しないであろう--ある人々は強
く。筆者は「冷戦から取り残された偏執狂の変わり者」そしてもっと悪いもの
と呼ばれることを覚悟している。この報告を読む何人かの読者は頭脳がロック
された状態になるであろう。なぜなら、それは過去6年間あなたが告げられて
きたすべてのことにまったく反対のことだからである。しかしそれを研究しそ
してそれについて考えなさい。この報告がソビエト連邦において何が真実の事
態であるかについてそしてアメリカがわれわれ自身の軍縮ならびに新しいソビ
エト連邦への援助を加速させるべきかどうかについて何らかの論争を起こせれ
ばよいというのが筆者の希望と祈りである。これを書くにあたっては何ら論争
はない--世界は単純にソビエトの説明を額面通りに受け入れている。

序論

ルディヤード・キプリング(Rudyard Kipling)は1898年にロシア皇帝ニコラ
ス2世による巧妙な欺瞞キャンペーンの後間もなく「人間のように歩く熊」と
いう標題の一つの寓喩を書いた。キプリングは、その男が狩りをした一匹の熊
があたかも哀願するかのように立ち上がったとき、傷を受けそして盲目となっ
た一人の男について書いた。そしてその狩人は「憐れみと驚きで感動させられ
て」彼の射撃を思いとどまった。彼はただ「鋼鉄の靴をはいた足」によって彼
の顔を引き裂かせただけであった。キプリングが書いたように:

「それ[熊]が人間畜生の見せかけで揺れながら嘆願するものとして立ち上がる
とき」

それが憎しみとその豚のような眼の狡猾さを隠すとき、それが祈りの時の両手
のような[前]足で捜し求めている方角として示すとき、それは危険の時である
--熊の休戦の時である」。

われわれは熊の休戦の時のうちにいる。われわれは共産主義は死んだ、冷戦は
終わった、ソビエト連邦の共産党は非常に恐れられたKGBと共に終わったと告
げられている。われわれはソビエト帝国は崩壊した、その場所に自由、民主主
義、統一と自由市場が1千本の花のように咲き誇っていると告げられている。
われわれは平和が来た、そして東と西の共通の利益が--最初にヨーロッパに、
そして次に新世界秩序を通じて世界中に--統合され、合流され得ると告げられ
ている。

しかし筆者はこの筋書きは何か狂っていると思う。ソビエト共産主義のような
悪が、悪の帝国が消え失せたと思われるように急速には消え失せない。特に、
その悪の帝国が世界の歴史において最大の軍事力を支配しているときには消え
失せない。1930年代後半にわれわれは平和が来た--ヒットラーの意図は高潔で
ある、--彼は友情と一致を求めていると告げられた。(この「平和の愛好者」
は非常に信用できるのでタイム・マガジンは1938年に彼を「その年の最もすぐ
れた人物」に指名した。)戦争がその後に続いた!

ソビエトの人々は欺瞞における達人、われわれにあるものをない、ないものを
あると信じさせることができるチェス競技者たちの優勝者である。

ソビエトの人々を理解する際の一つのよい規則は、現実があなたが見ているも
のの反対であると常に考えることである。

われわれは1921年以来グラスノスチ/ペレストロイカの第6期を現在経験して
いる。--先行する5つのグラスノスチのそれぞれは今回のグラスノスチと同様
に、共産主義者たちは本当に変化している、民主主義、多党制、自由選挙等々
へと変わると約束していた--最初の5回のそれぞれで、われわれは欺かれた。
しかしわれわれが目覚めてソビエトの熊の憎しみと狡猾さをもう一度見る前
に、われわれは大きな譲歩をし、大きな援助を与え、あるいは大きな軍縮をし
た。

グラスノスチ/ペレストロイカの現在の時期はミハイル・ゴルバチョフ(ユー
リ・アンドロポフの被後見人)を含む--ソビエト連邦の共産党中央委員会によ
って1981年に書かれた一つのうまくお膳立てされた脚本(それらすべてのうち
の最も壮大なもの)である。このグラスノスチ/ペレストロイカの諸目標は共
産主義は死んだと宣言すると同時にソビエト帝国を再組織し、再構成するこ
と、アメリカとヨーロッパをそそのかしてNATOを徐々に廃止させることそして
「共産主義の脅威が徐々に薄れている」ので大規模な軍縮を行わせること、西
側の援助において数千万ドルを「できたばかりの民主主義の」USSRに投入させ
ること、そして最終的には西ヨーロッパと東ヨーロッパを合併し、新しいソビ
エト連邦を一つの「共通のヨーロッパの家」へと合併することである。

最新のペレストロイカにおいては、ソビエト連邦の全般的な戦略は対決とばら
ばらの陣営への世界の分割から協力、統合、融合、そして吸収合併へと移っ
た。「新しい思考」は言う:われわれはわれわれのイデオロギーの上での諸々
の相違、われわれを分けている諸々の葛藤を忘れなければならない。そして戦
争、核の大惨事、飢餓、テロ、環境悪化等々に対して一緒に戦うためにわれわ
れの努力を結合しなければならない。

しかしUSSRにおける現在の諸展開の背後に一つの大きなもくろみがあるのか?
われわれは一つの自然に起こっている解体を見ているのか、それとも一つのよ
く計画され、画策され、企てられたジェスチャーゲーム--せいぜいロシア劇--
を見ているのか?MIA(McAlvany Intelligence Advisor)のこの号はこれらの
問いに答えるよう試みるであろう。それはゴルバチョフ、エリツィン、シュワ
ルナゼ--すべて徹底的に「改革者/リベラル派」そして共産主義者--のマルク
ス・レーニン主義的な悪い性向を検討するであろう。それはクーデタ/反クー
デタとなぜそれが偽物であるか--1981年に動き始めた長期の戦略的欺瞞におけ
るもう一つのひねり--を分析するであろう。

この報告はソビエトの人々が西側を混乱させ操作するためにどのように偽情報
を用いるかを検討するであろう。それはなぜソビエト帝国が崩壊しているので
はなくて、共産主義体制内部で再編成され、再組織されているのか、その理由
を明らかにするであろう。なぜ共産党とKGBは廃止されているのではなくて、
単に改名され、彼らの能率を改善するために再組織化されているのか、そして
新しいソビエト連邦がどのようにUSSRの大きさ、範囲そして影響力において巨
大な増大であるか--拡大であって--縮小ではない--を明らかにするであろう。

この報告はまた不吉な進行中のソビエト軍事的増強--起こりつつある明白な諸
変化のすべてにもかかわらず--をも分析するであろう。

ソビエトの偽情報はあなたが聴きたいすべてのこと、そしてそれをあなたに信
じさせるすべてのことをあなたに告げるために計画されている。この報告はあ
なたが聴くことを望まないすべてのこと、そしてそれについてあなたに考えさ
せるすべてのことをあなたに告げるために計画されている。

もしあなたが読み続けるならば、あなたは警告されたのだ!

I:欺瞞の大家たち

「すべての闘争は欺瞞に基づいている。」孫子、B.C.500.
「なぜなら、人類の大多数は、あたかもそれらが実在であるかのように、見せ
かけに満足し、...そしてしばしば現にある事柄よりもそう見える事柄によっ
てより影響されているからである。」マキアヴェリ

序論

われわれは欺瞞、混乱、危険そして諸々の世界的出来事の目をくらます加速化
の時代に生きている。われわれは、共産主義は死んだ、冷戦は終わった、ソビ
エト帝国はその終末期にある、そして平和、一致、兄弟愛の新しい時代--一つ
の新世界秩序--の夜明けを迎えつつあると告げられている。そのまったく反対
のことが実際には起こりつつある。しかし西側の1万人のうちの1人しかわれ
われの前に展開されているマキアヴェリ的な欺瞞の戦略を理解していない。

常に明白なものに疑いを抱け!ソビエト連邦は今日解体しているのではない--
それはこの10年間の後半の一つの主要な拡張主義的推進への再編成、再調
整、再組織の準備である。ソビエト連邦の共産党は廃止されているのではない
--それは単にその名前を(おそらく--レーニンの下での最初の名前--社会民主
党に)変えているにすぎない。それは再組織し、再編成しているのであり、そ
の構造(おそらく官僚の何十万人、おそらく数百万人)から官僚的無用の人材
の大部分を取り除き、そのマルクス・レーニン主義の基礎に戻って行ったので
ある。KGBは廃止されているのではない--それは改名されているのであり、
1917年以来すでに6度起こったように再編成されているのである。ソビエト軍
は徐々に廃止されているのではない--それは劇的に拡張されている。ソビエト
帝国はまったく解体されているのではない--それはたぶん古い諸共和国の大部
分を保持し、以前にはソビエト帝国の一部ではなかった他の諸国を結局は吸収
するであろう一つの緩やかに編成された連邦あるいは連合へと再組織されてい
る。ゴルバチョフは3,4年前に、現在の時代遅れの、古めかしい、能率の悪
い帝国は解体され、より柔軟で膨張可能な連邦あるいは連合と置き換えられる
と主張しながら、この[古い帝国の]解消について話し始めた。この新しい連邦
は最終的には拡張され、そしてソビエト軍事力とKGBによって結合されるであ
ろう。

筆者は8月クーデタは最もみごとなソビエト劇--ゴルバチョフとエリツィン、
および共産党の「改革派」の立場を強化するために仕組まれ、ゴルバチョフに
対するソビエト大衆からの支持を引き出すために仕組まれ、そしてソビエト連
邦への合衆国(および西欧)の援助における大量増加ならびにアメリカ(およ
び西欧)の軍縮の急速な加速化を引き起こすために仕組まれた一つの偽クーデ
タ--であったと信じている。

A:ソビエトの欺瞞の戦略

「問題は、共産主義者の目標は固定され、変化がないということです。--それ
は世界支配という彼らの目的をみじんも変えるものでは決してありません。し
かしもし私たちが、彼らが進んでいると見える方向によってのみ判断するなら
ば、私たちは欺かれるでしょう。」エレイナ・ボンナー(Eleina Bonner)、
サハロフ(Sakharov)未亡人

元NATO軍最高司令官であなたの編集者の友人であるサー・ウォルター・ウォー
カー(Sir Walter Walker)将軍は最近こう書いた:「西側はゴルバチョフと
この悪人の諸々の意図について余りにも無知である。過去10年間の真実の物
語は何か次のようなものとして進行している:ゴルバチョフの台頭はレオニー
ド・ブレジネフ(Leonid Brezhnev)の耄碌の間の1980年代初頭に起こったKGB
の「クーデタ」の結果である。」

「このクーデタは--(ソビエト連邦の共産党中央委員会の命令の下で)KGB議
長である--ユーリ・アンドロポフ(Yuri Andropov)によって行われた。ペレ
ストロイカの混乱は国の経済的な弱さを勝利を得させる立場に変えるよう西側
と膝詰め談判をするためにKGB内の頭の良い人間たちによってなされた一つの
試みである。ソビエト連邦の現在の弱さと第三世界の経済状態に集中させられ
たわれわれの注意とともに、われわれはわれわれの警戒を緩め、ロシアの狼を
ヨーロッパの家の中に入らせるであろう。」

1:グラスノスチ/ペレストロイカ#1-6

1989年と1990年に筆者は「熊に催眠術をかけられて:ソビエトの大きな欺瞞」
(第I部および第II部)と題するMIAの2つの号を書いた。それはソビエトの人
々がアメリカおよび西欧に対して1981年に始めた巨大な戦略的欺瞞あるいは偽
情報キャンペーンを分析したものである。(The Fatima Crusader31-2 & 33に
おいて利用可能)これらの報告はグラスノスチ/ペレストロイカの最初の5つ
を分析したものである:

#1はレーニンの下で1921年から1929年まで
#2はスターリンの下で1936年から1937年まで
#3はスターリンの下で1941年から1945年まで
#4はクルシチョフの下で1956年から1959年まで
#5はブレジネフの下で1970年から1975年までであった。
そして最後に#6はゴルバチョフの下で1985年から現在まで

グラスノスチ/ペレストロイカのこれらの時期の各々は共産主義を断念し、資
本主義、民主主義、自由選挙、自由市場、等々へ動いているというソビエトの
見せかけを含んでいた。簡単に言えば、それぞれの時期に、ソビエトの人間た
ちは西側に西側が聴きたいと望んでいることを告げ、そして西側の大量の財政
援助および/あるいは西側の大規模軍縮を引き出すためにその方向への表面的
動きをした。グラスノスチ/ペレストロイカの最初の5つの時期の各々の後に
続いたのは厳重な取締り、残酷な追放そしてソビエトの海外での隠れたそして
革命的な諸活動の再開であった。

グラスノスチのこれらの時期はマルクス・レーニン主義的弁証法:2歩前進1
歩後退という弁証法が活躍した時期であった。各々の後退の間に、西側の援助
が[ソビエトに]流れ込んだ。そして#4,5,6のグラスノスチの間に西側の
軍縮措置が加速した。しかし元NATO連合軍最高司令官バーナード・W. ロジャ
ーズ(Bernard W. Rogers)はこう言った:「ソビエトの目標は世界支配であ
る。」そしてウラディーミル・レーニンが言ったように、「われわれは後退に
よって前進する。」

2:グラスノスチ/ペレストロイカ#6のための戦略的欺瞞の脚本

1981年にソビエトKGB要人アナトーリ・ゴリツィン(Anatoliy Golitsyn)は離
反して西側に逃亡した。そして古い嘘に代わる新しい嘘 New Lies for Old と
いう標題の書物を書いた--これは1984年に出版された(The Fatima Crusader
から入手可能)。その書物の中でゴリツィンは1985年にゴルバチョフが実行し
始めたグラスノスチ/ペレストロイカ#6のためのKGBの脚本を展開した。この
脚本はグラスノスチ/ペレストロイカの脚本の中でも最も入念な脚本であろ
う。そしてソビエトを彼らの世界支配の目標へと、世紀の変わり目に、あるい
はそれ以前に、連れて行くように計画されていた。

ソビエト連邦における最近の激動、クーデタと反クーデタ(筆者はそれをでっ
ち上げだと信じている)、KGBの終り、共産党の死、ソビエト帝国の崩壊、等
々はグラスノスチ/ペレストロイカ#6のための入念なKGBの脚本のすべての部
分--その最善の状態でのソビエトの高等劇--である。ゴルバチョフ、エリツィ
ン、シュワルナゼは皆ソビエト連邦共産党中央委員会とKGBによって雇われた
キャスト--俳優たちの一部である。

ソビエト帝国における最近の展開を分析する前に、1981年にゴリツィンによっ
て書かれ、そして1985年以来ゴルバチョフと彼の仲間の俳優たちによって非常
に忠実に履行されたKGBの脚本を論評しておくことは有益であろう。

a) 申し立てられたソビエトの諸々の譲歩

1.東ヨーロッパの「名目的」支配を明け渡す。

2.東ヨーロッパとソビエト連邦における民主主義諸運動を「表面的に」奨励
する。

3.鉄のカーテン開放/ベルリンの壁の破壊。

4.東西ドイツの再統一を許す。

5.共産主義は死んだ、冷戦は終わった、そしてソビエト連邦および東欧の共
産党は死んだか、あるいは時代遅れのものであるかのいずれかだと宣言する。

ソビエトの人間たちが東ヨーロッパ中で用いてきた欺瞞のパターンそしてその
大部分が今日のソビエト連邦で従われているパターンは:

1)古い警備(強硬路線の)共産党員を追放し、改革者と呼ばれるあまりよく
知られていない共産党員あるいは共産党協力者を持ち込む(KGBはこれらの追
放に責任を持っていた)。

2)その特定の国の共産主義は死ぬはずであると宣言する一方で共産党の名称
を変える。

3)実際には秘密共産主義者たちとKGBによって統制されている新しい「民主
的な反対派諸組織」を産み出す。

4)実際には共産主義者たちによって操作され統制されているいわゆる「自由
選挙」を維持する。

5)実際には秘密工作員を再び移し替え、再任命し、組織を非常に活発にさせ
るが、しかし異なった形で、そして異なった名称(あるいは諸々の名称)でそ
うする一方で、秘密警察の終結と解体を告知する。

6)西側における現在の多幸症、混乱そして混沌の時期を利用して西側の中に
数万人あるいは数十万人の秘密共産党員を潜入させる。

このパターンは東ヨーロッパにおいては国ごとに少しずつ異なっていた。それ
はルーマニアとポーランドにおいて最も念入りに従われた。ルーマニアにおい
ては共産主義者たちは古い共産党を新救国前線(New Salvation Front)で置き
換えた。彼らは強硬路線派のチャウセスク(Ceausescu)を年老いたナンバー
・スリーの共産主義者(比較的知られていない)イオン・イリエスク(Ion
Illiescu)と取り替えた。彼らは秘密警察(The Securitate)を改名し再び移
し替えたが、しかしその5万人の署員の95%を無傷のまま残した。

ポーランドにおいては、彼らは共産党の名前をポーランド統一労働者党から無
害な響きのする社会民主党に変えた。連帯はほぼ間違いなく1980年にソビエト
の人間たちによって始められた。--それは100万人の共産党員を抱えてい
る。1989年における共産主義者たちとポーランド議会の議員の65%は共産党
員である。ポーランド大統領であり連帯の指導者であるレク・ワレサ(Lech
Walesa)--アメリカにいるポーランド亡命者たちによって1980年以来共産主義
協力者であったと広く信じられている--はゴルバチョフとソビエト人たちに対
して非常に友好的である。5万のソビエト軍隊がポーランドの土地に残ってい
る。(アメリカにいるポーランド亡命者たちはその数は30万人以上であり得
ると信じている。)チェコスロヴァキアと東ドイツにおいては秘密警察はソビ
エトKGBの命令構造の下に移された。そしてそこでこっそりと働き続けてい
る。

チャモロ(Chamorro)政府が単純にサンディニスタ戦線であるニカラグアにお
いてもそのパターンは同じである。共産主義的サンディニスタたちは軍隊、秘
密警察そして教育制度を支配し続け、反共産主義的な元コントラの指導者たち
を暗殺し続けている。ヴィオレッタ・チャモロ(Violetta Chamorro)(彼女
自身元サンディニスタ)はそこでは単に名目上の指導者としてのみ機能し続け
ている--実際的な権力はダニエル・オルテガおよびフンベルト・オルテガ
(Daneel and Humberto Ortega)によって指導された共産主義者たたちによっ
て主宰された「非共産主義的、民主的ニカラグア」にある。

共産主義者たちが彼ら自身の反対を創り出し支配することにおける主人公であ
るということは注目されるべきである。--それは表に現れ政権を握ることから
の反対を排除するためである。そのような共産主義者たちが創り出した反対の
いくつかの例は、ルーマニアにおける新救国前線とイリエスク、ポーランドに
おける連帯とワレサ、ニカラグアにおけるヴィオレッタ・チャモロそしてソビ
エト連邦におけるボリス・エリツィンとエドゥアルト・シュワルナゼを含んで
いる。

1981年にゴリツィンによって記述されたように、グラスノスチ/ペレストロイ
カ#6のためのソビエトの脚本に戻ると:

b. 西側の(見返りの=quid pro quo)諸々の譲歩

1.アメリカと西側はUSSRの東ヨーロッパ財政的負担を1年間に400億ドル
から500億ドル引き受けるであろう。

2.再統一されたドイツは中立国となり、経済的にはソビエト連邦の方へ傾く
であろう。

3.アメリカ軍は西ヨーロッパから撤退するであろう。

4.西ヨーロッパは中立へと動き、NATOはつぶれるであろう。

5.アメリカと西側は大規模にソビエト経済を金を出して財政的困難から救い
出し、動かなくなったソビエト経済に融資するであろう。

6.西ヨーロッパと東ヨーロッパ(USSRを含む)は一つの経済ブロックに融合
するであろう。

7.アメリカと西側は「共産主義後/冷戦後の時期」において大規模に軍備を
縮小するであろう。

8.アメリカは世界中の反共産主義諸運動(例えば、コントラ、ムジャヒディ
ン、ウニタ)のための援助を止めるであろう。

9.アメリカ軍は韓国とフィリピンから撤退するであろう。

KGB脚本のこれら9つの要素は完成のさまざまの段階にある(すなわち、30
%から90%)。[MIA編集者注:すなわち、ブッシュ政権はフィリピンにある
クラーク空軍基地を閉鎖した。そして9/10/91に、共産主義は死んだ、そして
冷戦はもはや脅威ではないので、アメリカはまたわれわれのスービック湾海軍
基地をも閉鎖している、そしてフィリピンから完全に撤退するであろうと告知
した。フィリピン人たちは合衆国軍隊撤退の2年以内にソビエトに支援された
共産主義的反乱、新人民軍の手に落ちることになりそうである。]1995年ある
いは1996年までに9つすべての要素は実際に既成事実となるであろう。グラス
ノスチ/ペレストロイカ#6の彼らの脚本を実行するに際してのソビエトの人
間たちの二枚舌、欺瞞そして不誠実の証拠は:

1)アンゴラ、キューバ、アフガニスタン、フィリピン、イラク、シリア、モ
ザンビク、等々への大量の武器発送--総計1年間に250億ドルから300億
ドル。

2)スリランカ、フィリピン、ウルグアイ、エルサルヴァドル、南アフリカの
政府転覆に向けてソビエトに支援されたゲリラが彼らの努力を強化している
(1991年2月にはソビエト/リビアに支援されたゲリラがチャドを乗っ取った
ばかりである)。

3)アメリカとヨーロッパにおけるソビエトスパイはグラスノスチ#6とゴル
バチョフ政権が始まって以来4倍になった。

4)ソビエト軍事力はグラスノスチ#6が始まって以来35%から40%増大
した。そして主要な武器部門において急速に増大しつつある。

5)ソビエト軍とKGBはゴルバチョフの下で大幅に強化された。そそて強硬
派、鷹派/マルクス・レーニン主義者たちがゴルバチョフによってすべての重
要部門に移動させられた。

6)共産主義者たち(あるいは秘密共産主義者たち)はたいていの東ヨーロッ
パの国々において最も重要な地位を保持した。そして、共産主義的軍隊および
秘密警察(改名されているけれども)は無傷のまま残っている。

B. ヨーロッパを支配するソビエトの戦略


現在のソビエトの世界的戦略の鍵になる要素は、ソビエトの人間たちが公然と
「共通のヨーロッパの家」と呼んでいるものにおいてヨーロッパ(東そして
西)を支配することである。ソビエトの人間たちは、彼らの帝国が弱まってい
るように「見える」ちょうどそのときに、ヨーロッパのすべてを支配するため
の一つのマキアヴェリ的な戦略(そして必ずしも、あるいは排他的に軍事的な
征服によってではなく)を持っている。ヨーロッパのこの支配は彼らの世界支
配の長期の戦略への一つの鍵となる踏み石である。
全ヨーロッパ統合(そしてゆくゆくはソビエト支配)はただ西ヨーロッパの政
治体制と東ヨーロッパの政治体制の両方ともにおけるラディカルな変化が起こ
るときに初めて可能である。その変化はヨーロッパ合衆国が出現するとき、
1992年に西ヨーロッパにおいて起こっている。ヨーロッパと英国の人々には一
つの大きな自由市場の冒険として売り出されているけれども、事実は西ヨーロ
ッパの人々がブリュッセルにある、社会主義的左翼世界主義的、そしてユーロ
共産主義的権力志向者たちによって支配された、そしてKGBによって激しく潜
入されたヨーロッパ超国家へと彼らの政治的主権と独立をまさに移そうとして
いるということである。新しいソビエト連邦(計画中の)を西ヨーロッパ合衆
国と合併させることは新しいソビエト連邦を12の分離した国民国家と統合す
ることよりは遙かに容易であろう--それらの国々の多くは個別的にはソビエト
から彼らの主権を守ることを望むことに傾くであろう。

ソビエトの人間たちにとって一つの統合された「共通のヨーロッパの家」を支
配するための6つの主要な前提条件がある。

1.一つの統一された西ヨーロッパ--1992年に既成事実。

2.軍事的にNATOとヨーロッパからのアメリカの排除。

3.東ヨーロッパのソビエト支配。

4.再編され、再組織されたソビエト主権諸共和国連邦のソビエト支配。

5.西ヨーロッパの人々によって「民主的」と見られるソビエト連邦。

6.大西洋からウラルまで(あるいはゴルバチョフが修正したように、大西洋
からウラディオストック(太平洋)まで)の全地域に対するソビエトの軍事的
支配(「大きな杖」)。

これらの前提条件を簡単に検討してみよう。

第1に、一つのヨーロッパ超国家(方向において社会主義的な)はソビエト超
国家(方向において社会主義的な--しかし民主的であるふりをしている)と統
合あるいは融合することは、真に独立した東西ヨーロッパ諸国の10数カ国と
融合或いは統合するよりも遙かに容易であろう。

第2に、ソビエトの人間たちはアメリカをヨーロッパから軍事的に(そしてで
きる限り経済的にも)追い出すために策略を巡らしまた操作している。
INF[intermediate-range nuclear forces=中距離核戦力]条約はアメリカの中
距離弾道核ミサイル(すなわち、巡航[ミサイル]とパーシングIIミサイル)を
ヨーロッパから取り除いた。ヨーロッパ条約および砂漠の嵐作戦における在来
型軍事力はアメリカを在来型地上軍事力(兵員、戦車、飛行機、物資、等々)
の大部分の撤退へと追い込んだ。合衆国は現在西ヨーロッパにおける79の軍
事基地を撤退あるいは閉鎖しつつある。「申し立てられた」共産主義の死、冷
戦の終結そしてソビエト帝国の崩壊のゆえに、ブッシュとアメリカ支配層はア
メリカ軍をここ2,3年でヨーロッパからほとんど完全に引き上げる計画をし
ている。

その間にソビエトの人間たちはドイツ、フランス、イタリア、ギリシャおよび
スペイン(全部で6つの条約)との一連の条約に調印することによってNATOに
対するアメリカの責任を掘り崩そうと努めている。それらの条約は上述の国々
に危機の場合にはNATOへのコミットを妥協させるものである。フランスはヨー
ロッパ共同体、GATT[General Agreement on Tariffs and Trade=関税・貿易に
関する一般協定]、IMF[International Monetary Fund=国際通貨基金]、世界銀
行、そしてNATO内部でのソビエトの利害を代理することに同意した。イタリア
の条約はイタリアのNATOに対する責任に矛盾対立する。ドイツの条約はドイツ
にソビエト連邦内部にバルチック諸国を保持することを助けるよう約束させ
た。

タス通信はこの7月にこう報じた:「ギリシャとの友好協力条約は...共通の
ヨーロッパの家の建設におけるなおもう一つの要素として役立つ。その条約は
ソビエト連邦とイタリア、スペイン、フランス、ドイツとの間に締結された似
たような国際文書と同じカテゴリーの中に置かれ得る。」

ソビエトの人間たちは今やヨーロッパ共同体とNATO内部に足がかりを得た。そ
してアメリカとそのヨーロッパのNATOパートナーたちとの間にくさびを打ち込
む過程にある。筆者は2年から5年の間にアメリカが軍事的にNATOとヨーロッ
パから退くであろう、そしてNATO(あるいは少なくともヨーロッパを防衛する
というその軍事的使命)は崩壊するであろうと予告する。ヨーロッパはそのと
きまでにほとんど全面的に中立的となるであろう。そしてフィンランド化され
たものとなる(第2次世界大戦の終結以来フィンランドがそうであったよう
に、ソビエトの人間たちによって支配される)であろう。

第3に、上で論じたように、ソビエトの人間たちは東ヨーロッパの完全な支配
をこれまで一度も断念したことはなかった。彼らは今なおそこに50万人の
(あるいはそれ以上の)軍隊を駐留させている。東ヨーロッパでは多くの重要
な地位には目立たない共産主義者たち(あるいは共産主義協力者)がいる。そ
して共産主義者の秘密警察や軍事組織は今なお大部分無傷のままである。さら
に、ソビエトの人間たちは最近東ヨーロッパ諸国と一連の条約を締結し、それ
らは彼らにこれらの国での増大する足がかりを与えている。

第4に、そして第5に、西ヨーロッパをそそのかして一つの(東/西)ヨーロ
ッパの家へと統合するためには、ヨーロッパ人たちにUSSRが民主的になった、
そして新しいソビエト連邦(10年間計画中であった)は自由で独立的で同様
にまた民主的であるということを確信させなければならない。現在の帝国の解
体は偶然的あるいは自然に起こったものではない。それは、ソビエト帝国の現
在の形が旧式で非生産的なものであり、帝国の構造の深い再組織化が不可避で
あるということを知っているゴルバチョフとクレムリンの指導者たちによって
数年にわたってよく計画され、考え出されたものである。新しい連邦は自由、
独立そして民主的であると見えなければならない(しかし実際はそれはソビエ
ト軍事力によって支配されるであろう)。ちょうど、フィンランドが自由であ
ると見えるが、しかし実際にはソビエト軍の銃が頭に突きつけられているがゆ
えにソビエトの命令がそうしているのと同じように。

第6に、東ヨーロッパおよび西ヨーロッパに対するソビエトの軍事的優位はす
でに現在の現実である。西側の軍縮の数年間以上とソビエトの軍備増強(以下
の第IV部を見よ)そして全ヨーロッパに対するソビエトの軍事的ヘゲモニー
(すなわち、東西ヨーロッパのフィンランド化)は一つの既成事実であろう。

西ヨーロッパを吸収しようとするソビエトのマキアヴェリ的戦略のもう一つの
局面は「防衛」の概念、「安全保障」の概念に取って代わったペレストロイカ
的宣伝である。「安全保障」はそれが「集団的」である場合のみ現実的なもの
であると提案されてきた。ヨーロッパとアメリカは「集団的安全保障」(すな
わち、東と西の間の警察強制行動の共同事業)がテロリズム、サダム・フセイ
ン、あるいはマヌエル・ノリエガ、環境危機、等々のような「ヒットラー的独
裁者たち」に対して世界を安全にする唯一の方法であると確信させられてき
た。

それゆえに、最近の中東紛争の間に、アメリカは、その歴史において初めて、
戦争を遂行するため--中東の「集団安全保障」の準備をするため--にその許可
をUSSRに求めざるを得ないと感じた。「集団安全保障」から「世界的安全保
障」(すなわち、テロリズム、薬物、環境汚染、危険な第三世界の独裁者たち
に対する)の概念が成長する。そして「世界的安全保障」はただ一つの世界的
警察力、一つの世界的裁判制度、一つの世界的法律、一つの世界的金融制度、
等々によってのみ準備され得る--そのようなものがブッシュとゴルバチョフの
新世界秩序によって構想されたものである。「世界的警察力」は合衆国、ソビ
エト、ヨーロッパおよび第三世界の軍隊から構成された一つの国連警察軍であ
ろう。

ヨーロッパにとっての「集団安全保障」は(クレムリンの伝道師によれば)西
ヨーロッパ、東ヨーロッパそして新しいソビエト連邦の間の一つの安全保障調
整共同事業を意味する。その共同安全保障調整を誰が支配するだろうか?言い
当ててみよ。675万の兵隊、3万発のミサイル弾頭、7万5千台の戦車、そ
して世界の歴史の中でも最大の軍備を持つ国--ソビエト連邦。

ヨーロッパが1930年代後半に狡猾、欺瞞、操作、偽情報そして最後に圧倒的な
軍事的圧力を通じてナチス第三帝国によって呑み込まれたと同じように確実
に、1990年代のヨーロッパはもっと欺瞞的、マキアヴェリ的でさえあるロシア
の熊によって呑み込まれることへと自らを曝しているのである。(続く)


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