9c写真展を振り返って ~霜倉真二のコメンタリー

2005年10月30日 | 写真作家

霜倉 真二
『シロッコに吹かれて ~Blowin'in the Sirocco, Malta 2005』


前回に続き今回もまたモノクロの作品を出させてもらいました。
カラー作品の中で逆に目立つかな、なんて目論見もあったりして...いやいや、今は自分が自信をもって、送り出せる作品はモノクロしかないかと思っています。

モノクロとは、大学の授業で出会いました。始めはグラフィックデザインを専攻してたんですが、これが見事にコケちゃいました。持って生まれた物がなかったと言うか、なんというか。アタマ硬くて創造とかできなかったんですね。アサトさんやワタナベさんがうらやましい。

大学でモノクロプリントの授業があったんです。先生の指導を受けながら、プリントしてみると結構上手に出来て、感動したのを覚えています。それまでは、モノクロ、白黒写真って古い感じだったり、暗い感じだったり、綺麗なものとは程遠いイメージでした。普段自分の身の周りにあるモノクロ写真って、白と黒だけが強調されたコントラストの高い写真のイメージ強かったんです。

写真展でエドワード・ウエストンやロバート・メープルソープなどのオリジナルプリントと出会いました。鳥肌が立ちました。モノクロの世界ってなんて綺麗なんだと。いいものを見るとヨダレを垂らすクセがあるのですが、その時も垂れちゃいましたね。不覚にも。(笑)それらの作品って、白と黒だけじゃないんです。白にも、黒にも何段階ものトーンがあって、そのグラデーションがやわらかいんだけど立体感もあって・・・。説明じゃ表現できないし、印刷物でもその良さは伝わらない。機会があれば、ぜひ、オリジナルプリントを見てみてください。

こんなモノクロをやって見たい。と思ってから自分なりに研究しました。するとやっぱり、米国の写真家、アンセル・アダムスやマイナー・ホワイトが考案した『ゾーンシステム』に突き当たるんですね。『ゾーンシステム』を語ると長くなっちゃうんで簡単に言うとモノクロ写真を綺麗にプリントする技法のことです。詳しくはインターネットなどで調べて見てください。

私は運が良くて、大学で『ゾーンシステム』を研究されているの中島秀雄先生と出会うことができました。中島先生から直々にご指導を受け、その技法を学びました。学んだことによって、カメラや写真に対する知識がより一層深まった感じがします。

今回『シロッコに~』にもその技法を取り入れています。米国で生まれた『ゾーンシステム』と言う技法でヨーロッパの地中海を写し撮ると言う、なかなかインターナショナルで画期的な作品なんですよ。(笑)

『シロッコに~』に対する皆さんの感想の中に「どうやって撮ったの?」というご質問がありました。三脚にカメラを載せ、一コマ撮って、一コマ分だけカメラの向きを変え、また一コマ撮るという作業をしています。それを一枚ずつプリントして並べているだけで、特に難しいことはしていません。皆さんも試してみてください。ツギハギのパノラマ撮影とでも言うんでしょうかね。実は展示した部分以外にも続きがあって360°撮ってます。

マルタの開けた風景の前に立つと、この風景をファインダーのフォーマットサイズに切り取ってしまうのが勿体無くて、こんなことをしてみました。

もうひとつ、感想の中に「モノクロのイメージが変わった。モノクロもやってみたいと思った。」と言う感想がありました。自分が他人の作品を見てモノクロのイメージを変えたように、自分の作品でモノクロのイメージを変えてくれた人がいる。自分が伝えたかったことが伝わったようで、とてもハッピーに気分になりました。
(霜倉 真二)




個展なび


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