さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

ノコンギク

2011-12-16 10:16:43 | 花草木


山の畑の土手に淡い青紫の菊が咲いていた。この花を見るといつもつい口ずさんでしまう歌がある。「遠い山から 吹いて来る 小寒い風に ゆれながら」。野菊という題の唱歌で、団塊の世代までなら誰もが知っているはずだ。この出だしの部分は晩秋の山里の雰囲気がとてもよく出ていると思う。それを受けて、歌は続けてうすむらさきの野菊を昔風にかなり大げさに賛美している。しかしそんなに違和感を覚えないほどこの花は純粋にいささか素朴に美しい。



草むらの中で一輪だけ咲いていてもとても目立つ。ふと黄色と紫はほぼ補色関係にあることに気が付いた。それで互いに引き立て合っているのだ。虫たちを呼ぶためにこんな色合いに進化したのか。しかし果たして虫の目にも補色というのは成り立つものなのだろうか。



秋の風情というとまず紅葉が思い浮かぶが、残念ながら指宿ではあまりきれいに色付かない。しかしもう一つの野菊の方はそれこそいたるところに咲いている。南国といえどもやはりここは普通の日本だなと思う。これが屋久島だと白はあるが青はずっと数が減り、しかもだいぶ小型の花だった。



さてこの野菊の名前だが、外見がそっくりなものが何種類もある。昔よく通った東京の高尾山近辺ではだいたいがカントウヨメナだった。こちら西日本ではヨメナ、オオユウガギク、ノコンギクのどれかだそうだ。毛深いかどうかなどいくつか違いはあるがそれぞれ変異も多く、まず外見では決められない。見た目がそっくりならどうでもいいではないかという気もするが、人は何でも好きになるとどうにもこだわってしまうようだ。決定的な違いは花弁の根元の周りに生えている毛、冠毛の長さだ。終わりかけの花を少しむしって調べたところ長い毛がたくさん生えていた。それでノコンギクであることが判った。ヨメナだとこれがごく短い。



ちょうど開きかけの花があった。まだ棒状に丸まっている花びらは濃い目の赤紫ですばらしくきれいだ。それが長い指のようで、まるで両手を合わせて黄色の宝物を抱え込んでいとおしんでいるかのようだ。



花が開くと紫色は薄くなる。黄色の舌状花はまだ蕾だ。これからだんだん外側から開いていく。そうして長い間咲き続ける。この分だと本当に歌にあるよう、霜が降りる頃まで楽しめそうだ。