さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

カルガモ

2013-03-01 10:08:45 | 


カルガモのこのおっとりした顔つきはどうだろう。まん丸い目に丸い頭、全部滑らかな曲線からできているようで、ふと徳の高いお坊さんの柔和な顔を思い出す。ずんぐりした体は地味だけどよく見るとなかなかきれいな色彩だ。くちばしの先がちょこんと黄色いのと、赤く異様に太い足が重そうな体を支えているのはちょっとご愛嬌だ。



重なった羽の下にわずかに青が見え隠れしていたのだが、それは広げるとこんなに大きな縞模様だった。色も深みのある群青色だ。きっとこの鳥は飛んでいる時、上から見たら素晴らしい色彩なのだろう。しかし我々はまずそれを楽しむことはできない。



太い足でのっしのっしと歩いている。この2羽は泳ぐときも歩く時もしっかり寄り添っていたから、きっとつがいなのだろう。ほとんど同じ柄で雄雌の区別がつかないが、前方の鳥が少し色合いが濃く体も大きめで、きっとそれが雄なのだろう。



足はかなり付け根が離れているから歩くにはあまり適していないと思う。しかし両足の水掻きが重なるくらいに内側に傾けて、お尻を振って大股で堂々と歩いていく。



新芽の出始めた茂みで何かしきりにつついて食べていた。葉や種子など食べるそうだ。またこういうところには死んだり弱ったりした虫や魚なども転がっていたりするがそれらも食べるそうだ。



じっとうずくまっているものもいる。まるで砂地に丸い石でも転がっているようだ。前から見ると意外なほど白いが、上から見ると黒っぽいだけでまったく砂地に同化して、これでは外敵に見つかりにくいだろう。



我が家のすぐ近くの川ではたいていいつも群れている。平地に一年中いるカモはカルガモくらいだ。夏の間はなんだか茶色っぽいだけだが、冬になると色彩が引き締まって見違えるほどきれいになったと感じる。そして数もずっと増える。本土では留鳥だが北海道では冬はいないそうで、そうした北の方から渡ってくるようだ。



突然喧嘩が始まった。大柄な鳥だからとんでもないくらいの水音で、グェ、グェといった野太い声も迫力がある。たぶん雌をめぐる闘いだと思うが、こんな柔和な感じの鳥のこの豹変ぶりには驚く。なんでもこの鳥は子殺しでも有名なのだそうだ。よくたくさんのひな鳥を付き従えて道路を横断する微笑ましい姿が報道されたりする。しかしどういう理由か、突然ひなの一羽をこんな感じでつつき殺してしまうことがあるそうだ。生きるということのすさまじさを思い知らされる。



ここは山々に囲まれた静寂と神秘のカルデラ湖だ。その湖面にきれいな模様が広がっていた。大自然の中で一時こんな芸術品を作れることに羨望を覚える。といっても彼らは自分がどんな作品を作ったか知る由もないのだが。

カルガモは都会でもしょっちゅう目にするありふれた鳥で、鳥見などしていて「なんだカルガモか」というのは「なんだカラスか」というのと同じくらいの蔑みの言葉だ。しかし目ぼしい被写体が見つからず仕方なくカメラを向けてみたら、これはこれで意外な魅力にあふれていたのだった。

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