さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

長期一党独裁の再来か

2012-12-21 11:13:35 | 世の中のこと

狂い咲きの冬のヒゴスミレ(本文とは関係ありません)。

総選挙の結果は大方の予想通り自民党の圧勝だった。それが自民党が信任を得たというのでなく、ただ相手がこけただけというのも一致した意見だ。だから次期政権もちょっとでもつまずいたら、前2回と同様すぐまた揺り戻しが来ると言われている。しかし私はそれは違うと思う。今度の民主党のこけ方はそんな生易しいものではなく、再び自力で立ち上がることなどまずできそうにない。国民も政治に対する期待感などすっかりなくしてしまって無力感が漂よっている。競い合う相手もなく国民から糾弾されることもないまま、これから自民党の一党独裁政権が長く続くように思う。

私は民主党がもう少し踏みとどまることを期待していたのだがあえなく潰え去った。ここまで国民に見放されるとなかなか再起は難しい。民主党の数々の失政は、政権を担えるような政党を育てるために国民の払った授業料でもあったのだが、結局それをドブに捨ててしまったようだ。それより民主党の内部はもっと酷い。惨敗は予想されたことなのだから、選挙が終わって、さあ再建だ再出発だとすぐにでも走り出さなければおかしい。しかし聞こえてくるのは混乱と恨み節だ。なぜこんな時期に解散したんだとこぼす連中も多いようだが、もっと後ならもっと負けが込んでいたはずだと判らないのだろうか。また次期代表に細野さん待望論が強いそうだ。しかしそんな人気取りで有権者に媚びるようではとても再建など覚束ない。どうせ来年の参院選も勝つ見込みなどまずないのだからばたばたしても仕方ない。ここは野田さんが続けて、自らの決意した党の純化を粛々と遂行していくべきではないか。そしてTPP交渉参加など自民党との違いを強力に訴え続けていかないとどんどん影が薄くなってしまう。

自民党に対抗する第2党として日本維新の会を期待する向きもある。しかしそれはありえないと私は思う。維新はほどほどの議席を取ったが、比例区で伸ばしただけで選挙区では惨敗といえるほどだ。これは虚像だけが一人歩きして実像は拒否されたということだ。既成政党には懲り懲りといった有権者が仕方なく入れただけで根無し草の政党でしかない。そもそも保守自民党と対抗するのは、それなりにリベラル的な層を基盤とする政党でなければおかしいが、維新は自民よりもっと右寄りなのだ。労働組合のような固定的な支援団体を持てる可能性もなく、今後よほどの変身がない限りその他諸派の一つに落ちていくだけだろう。

さて来年に参院選があるが、もう対抗できる野党など一つもない。きっと自民党が過半数を取り、衆参両院を押さえて安定政権が確立するだろう。自民党長期独裁政権時代の再来だ。いやこの環境ではかつての55年体制よりもっとずっと自民党は安泰だろう。かつての社会党はそれでも自民党の半分ほどはあったし国民の支持もそれなりにあったが、もうそんな野党はどこにもない。党を飛び出した人の末路も見せ付けられたから分裂騒ぎも起きそうにない。これではどんな失政があっても自民党の中での首相交代だけだ。そんな状態が続けば政権担当の能力経験のあるところは自民党だけになってしまうから、国民は前の民主党の失政を思い出して怖くて替えることもできない。

ではこれから始まる安倍政権だが、これまたずいぶん長期化するように思う。安倍さんはこの大勝にも浮かれず責任の重さを噛み締めたような硬い表情のままだったそうだ。さすが一度失敗しただけの事はあり、また有権者の苦渋の選択を判っているようで、個人的好き嫌いは別にしてこれには好感が持てた。前回民主党が大勝した時、立場が逆なだけで状況は全く同じだったのだが、彼らはこういう冷静さも謙虚さもなく、はしゃぎすぎてまだ仮免なのにいい気になって高速道路を突っ走ってしまった。事故を起こすのは当然だったのだ。

また安倍さんは煙たい存在の石破さんを、大方の予想を裏切って幹事長に留任させている。自民党の中で安倍さんに対抗できるのは石破さんくらいしかいない。そしてどうみても石破さんの方が優秀だから、安倍さんは石破さんを立ててうまく使いこなすことに心がければよいのだ。そうすれば安倍政権は安泰で、近年まれに見る長期政権になるだろう。そしてそれが国民の望んでいることだと思う。日本の政治は政策など以前に、それを議論し決めていく土俵がすっかり荒廃し疲弊してしまった。しばらくは無用な混乱のない安定した政局が続いて癒される必要があるのだろう。

原発については将来のことはこれから決めるとしても、ともかく再稼動は国民から容認されたと見るべきだろう。憲法改正などはもっとはっきり容認されたということだろう。もちろん自民党に投票したからといってすべての政策に賛成でなければならないということではないが、こうした主要な論点で反対の人が自民党に投票したら選挙の意味がないし民主主義の否定になってしまう。さらにこの2論点では維新もほぼ同じと見ていいが、両者合わせると得票率においてすら50%を越えるのだ。そもそもこれらはいくら議論しても結論の出るものではないのだし、安倍さんは自己の信念に沿って粛々と遂行して行ってよいと思う。ただ野党の話も絶対多数の余裕を持ってよく聞いて慎重に進めて欲しい。野党も国民の意思がはっきり出たことに対してはむやみに反対するのでなく、しっかり監視することを心がけるべきだ。

安倍政権に望むこととして、選挙制度の改革はぜひやってもらいたい。長い目で見たら日本の政治にとってそれが一番重要なことだし、政局が安定していなければできないのだから。そんな中で公明党とは手を切ってもらいたい。今の公明党は穏健で問題はないと思うが、その母体は非課税特権などを持つ宗教団体なのだから、いわば特権政党であってとても公正とはいえない。また政府が特定の宗教団体と緊密であるというのは良識的に見ておかしい。そもそも宗教団体は無税などというおかしな法律を廃棄すべきだ。

さてでは自民党政権に落とし穴はないのだろうか。安倍さんはインフレ化に熱心で目標2%とか言っている。わずかのようだが10年で物価が2割上がるということだ。20年だと1.5倍。これに消費税の引き上げが上乗せされるから生活に響きそうだ。いやこの程度で済めばまだいい。経済など人為でコントロールできるなど思い上がりで、無理にインフレ化を図るとどこまでも進んでいってしまう恐れがある。インフレ率が倍の4%になっただけでも10年で物価は1.5倍だ。まあ現役世代は給料も上がるはずだから良いかもしれないが、たぶん年金は、本来は上がるはずなのだが原資が底をついているので期待できそうになく、年金生活者は生活苦に直面しそうだ。預貯金なども利率の引き上げはとても追いつかないだろうからどんどん目減りする。老年世代で自民党に投票した人は多いだろうが、こうしたことが判っているのだろうか。このあたりから人々の恨みがいつか長期政権へ向かうかもしれない。

そうして自民党内部で経済政策をめぐって抗争が激化するかもしれない。そのうち穏健派が飛び出し野党と組み、やっと政権担当能力のある政党がもう一つできて政権交代が可能になる。その時その受け皿として民主党に期待したい。自力での政権奪還は無理でも、こうした非常時には十分活躍できるほどの力を維持し続けるよう努力して欲しい。