宇宙船地球丸

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CO2排出権(量)取引価格の下落要因

2008-10-30 07:41:31 | 環境教育
 「宇宙船地球丸」の管理人スパイラルドラゴンです。今日は、2008年10月30日です。 

 経済産業省、排出量取引の国内統合市場の試行的実施を発表 2008/10/23(by マイコミジャーナル)

 先日政府は、日本独自の仕組みの国内排出量取引市場の試行実施を決定しましたが、日本の政党は与野党問わずにEU型の排出権(量)取引市場を新設すべきだと公言しています。

 さて、今日は「地球温暖化するする詐欺」のメインツールでもある、有効期限付き金融派生商であるCO2排出権(債権)の市場価格が、下落する要因を考察してみようと思います。
排出権取引の参考書:エコロジーという洗脳・副島隆彦著

 例えば、投資家が今後は景気が低迷するので、相対的に国と企業のCO2排出量も減少すると予想すれば、投資家はCO2排出権を購入しませんし、既にCO2排出権を保有していたとしたら売却するので、CO2排出権の市場価格は下落します。

 またCER(Certified Emission Reductions)は、購入者が京都議定書で排出削減義務が課せられている先進諸国に限られるので、現在進行中の金融危機のように先進諸国の国家財政が悪化し、発展途上国向けCDM(グリーン開発プロジェクト)の支援中止を発表すれば、直ちに暴落します。

 また、京都議定書でCO2排出削減量を割り当てられている国から、二酸化炭素排出量が割当量を下回ったという統計データが発表されただけでも、市場取引価格は直ちに暴落します。
 また個々の国のCO2排出量統計データは、当然個々の国の政府機関がデータを管理しているので、政府が恣意的に低いCO2排出量データを発表することによって暴落する可能性もあります。

  基本的には、CO2排出権の市場価格とは景気に敏感に連動する債権なのですが、例え自然変動による地球温暖化が進行していようとも、すでにアメリカで行わ れている地球温暖化CO2悪玉説に対する裁判で、CO2悪玉説反対派側が勝訴すれば、一気に紙くずとなる可能性すらあります。

 さらに、例えCO2悪玉説が誤りであることが学問的に証明されなくても、世界のCO2排出量の約半分を占めているアメリカ・中国・インドの3カ国が「ポスト京都議定書」を締結しないことが確実な情勢になった時点で、現行の「京都議定書体制」が崩壊するので、「ポスト京都議定書」の準備会合が決裂したという報道があった瞬間に、CO2排出権価格は暴落します。

 
ま た、気候が温暖化するということは、夏場の最高気温に大きな変動は無いが、冬場の最低気温が高めになる傾向が表れるということなので、冬場の暖房用に消費 する化石燃・の消費量減少に繋がるので、既に地球は寒冷化サイクルに突入していますが、EU諸国の地域だけは温暖化傾向が続けばEUAとCERの市場価格 は下落します。

 そして最も肝心な点は、CO2排出権価格とは有効期限が切れたら無価値となる債権なので、期限切れが近づくほど価格は下落する性質の債権だということです。


 上記以外の価格下落要因もあると思いますが、CO2排出権価格の変動要因などは、この債権の売買のメインプレーヤーでもある金融ブローカー達は当然熟知しています。

 文頭のグラフは、European Energy Exchange(EEX)に掲載されている欧州排出権先物の一つである「Second Period European Carbon Futures」の、2009年物の月単位価格チャートです。(期間:2005/10~2008/10/29)
 グラフに記入してある矢印の注釈について古い順から説明します。

 
2006年4月に価格が暴落した原因は、CO2排出削減目標を達成できずに 債権を購入するだろうと思われていたEU先進諸国が発表した2005年度のCO2排出量データが、当初の予想よりも小さかった、つまりCO2削減目標をほぼ達成したために、この債権を抱えていたブローカー達が、一気に投げ売りしたためです。
参照:ヨーロッパの二酸化炭素市場・崩壊の危機(by 持続可能なチャンネル)

 2007年2月に価格が上がるきっかけとなったのは、「地球温暖化の原因が人間の活動である可能性が極めて高い(very likely)」という内容の、IPPCの第四次調査報告書第一作業部会報告書の素案が発表されたからです。
参照:NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート2007年2月前半分

 そして2008年7月にEUAとCERの市場価格が下がるきっかけとなったのは、洞爺湖サミット期間中にMENの新興5カ国がG7に突きつけた「政治宣言」です。
参照:新興5か国が政治宣言、先進国により大きなCO2削減求める(2008年7月8日23時03分 読売新聞)

 
洞爺湖サミット後に大きな買い注文が入って一旦上昇しましたが、その後す ぐに下落に転じたということは、ブローカー達は保有しているCERを投げ売りしているからであり、金融危機の嵐が吹き荒れている最中に「お目出度い」買い 手が表れて、ようやく売買が成立したようです。

 もしも日本国内で排出権取引市場を創設し、CO2排出権を販売する際にば、以上のような内容の下落リスク要因を、各金融機関は販売する際に説明する義務が生じます。

 自公政権の悪政に終止符を打つために日々奮闘している社民党と民主党と共産党が、選挙の政権公約に掲げてまでも、早期に日本に新設しようとしているCO2排出権取引市場とは、以上のような価格下落要因がある債権を、自由に企業・個人が売買できるようにする市場なのです。

 野党各政党の環境政策を担当している政治家は、私に言わせれば次の選挙で一人残らず落選してしまった方が喜ばしい存在であり、直接会ってバカ・アホ・マヌケと大声で罵倒したい思いで一杯です。

 寒さが厳しい地域から立候補している社民党と民主党と共産党の政治家達でも、温暖化対策は待ったなしだと考えているはずなので、いざ冬場の選挙となれば、選挙期間中に有権者に対して、「温暖化対策のために少しでも暖房の設定温度を低めにしましょうと」訴えることでしょう。

  また、今回試行実施させる国内排出量取引の効果については、以下に紹介する経済評論家の石井孝明氏の他にも、多くの方々がその効果や実効性について疑問を 呈しているようですが、何が何でも京都議定書は順守すべきだと考えているおつむが硬い政治家には、出来ない言い訳にしか写らないでしょうね。


(以下転載)

排出量取引、効果は期待薄 ~ 「引き返す」英断も必要だ by 石井孝明の「温暖化とケイザイをめぐって」 2008年10月23日

 国内排出量取引制度が10月21日に発表されました。メディアでは温暖化対策の「目玉」との期待が先行していますが、実態を検証するとその効果はなさそうです。

 高まりすぎた期待

 排出量取引の開始は「突然」でした。6月に福田康夫前首相が、「福田ビジョン」を発表し、そのなかで「年内の開始」を表明しました。日本では珍しい「トップダウン」の揃で、関係省庁にその決断が伝わったのはその直前とされます。

 「ビジョン」は低炭素社会をめぐるさまざまな提言を網羅していましたが、メディアの関心はなぜか「排出量取引」に集中しました。産業界がこれに反対の姿勢を示しており、興味を引くニュースの「対立構造」があったためかもしれません。

  「年内開始」という公約を実現するには時間が足りず、新しい法律の制定まで含む制度づくりは難しい状況でした。そして取引を積極的に推し進めたい環境省 と、消極的な経産省の間で、政府部内に温度差があったとされます。そのために、これまで政府が行った試験取引の延長の上で、10月発表の制度が作られまし た。いくつかの試行されている取引制度を集めたため、「国内統合市場」と呼ばれています。

 そのポイントは、参加企業の「自主性」です。内容のポイントは次の通りです。

* 参加は各企業に委ねる。その結果、守れなかった場合の罰則はない。
* 各企業が自主的に温室効果ガスの削減目標を決める。これまで行われた業界ごとの削減行動である「日本経団連自主行動計画」を目標設定の参考にする。
* その目標を内閣官房の「運営事務局」が妥当な水準かどうかを審査する。
* 目標はCO2排出の総量だけではなく、エネルギー効率での設定も認める。
* 京都議定書上で認められた途上国で削減された排出枠(クリーン開発メカニズム(CDM)クレジット)、中小企業などが目標以上の削減をした場合に生じた排出枠の流通を認める。
* 取引開始は来年からで、12年度までに結論を出す。

 一見して分かることですが、排出枠(キャップ)の設定が緩いのです。そのため、排出量取引の推進派からは批判が出ています。一方、反対派の人は「ムダなこと」と冷ややかに見ています。

排出量取引に対する4つの疑問

 ここで私の意見を述べてみたいと思います。私はこの取引に反対です。

  第一に、排出量取引では「キャップを公平に設定できない」という問題があります。この制度が持つ構造的欠陥です。2005年から世界に先駆けて域内の排出 量取引を行ったEUでは、キャップをどうするかという点で、企業と政府、各国政府同士の調整が難航し、今でももめています。その結果、政治力でキャップが 設定され、「抜け道」が多くなりました。EUでは削減効果があったと、観察されていません。

 日本の試行取引でも産業界の参加をうながすため、緩い目標の設定しかできませんでした。有利なキャップを設定しようと企業が動くのは当然です。仮に本格導入となれば、排出枠の設定で産業界の政府へのロビイングが延々と続くことになるでしょう。

  第二に、排出量取引は日本の状況に適合した制度ではないと思われるためです。国内では、「自主行動計画」など、さまざまな削減策が現時点で行われていま す。今回の取引制度では、それとの整合性を考えておらず、「屋上に屋根を重ねる」卒じがします。そして日本企業はエネルギー効率の向上を続けています。 余剰排出権を作り出せる企業は少なく、「売り注文」は取引でなかなか出てこないでしょう。

 緩い目標を設定したEUでは、余剰排出枠を持つ 企業がかなり多く出ています。しかし、それを生産の予備枠として手元に残す企業が多く、取引市場で積極的に売却しませんでした。机の上の事前予想とは異 なったのです。そのため、取引の8割以上は投機目的になりました。「マネーゲーム化」が進行したのです。

 第三に連携する世界の排出量取 引市場に「日本が乗り遅れる」という誤った議論が流布しています。EUの温室効果ガスの排出は世界の3割弱にすぎません。そしてアメリカ、そして中国、イ ンドがEU主導の政策に、自国の制度を積極的に合わせるとは思えません。EU式の排出量取引が世界標準とはならないでしょうし、統一炭素市場はできないで しょう。

 第四に、排出量取引は温暖化問題を解決する一手段にすぎません。「経済成長を損ねないように効率的なエネルギーの需給体制をど のように作り出すのか」が、本筋の解決策です。試行取引にエネルギーを割くことは、その本質から社会の関心をそらさせるという悪い影響を与える可能性もあ るのです。

「引き返す」英断と冷静な議論を

 試行取引で、おそらく温室効果ガスが劇的に減ることも、活発な取引が行われることもないでしょう。効果がなかったら、「やらない」と引き返せればいいのです。

 しかし、政策が走り出すと止められなくなる可能性があります。それを私は懸念しています。

  排出量取引は、日本の「ものづくり」に悪影響を与えかねません。「キャップ」は企業活動、特に大量にCO2を排出する鉄鋼と電力業界の活動を抑制します。 または企業に金を払って排出枠を使うことを強制するために、工業製品のコスト増をもたらします。そして、京都議定書の削減義務を負わない日本の産業界のラ イバルである国々は排出量取引を行っていないため、産業界は負担を負いません。

 日本は製造業の努力と実力によって支えられてきました。 EUの環境政策を過度に賛美し、そこで生まれた排出量取引を無批判に受け入れることは非常に危険です。EUでも、試行錯誤している取引を導入する必要はあ りません。日本は得意技の省エネ、そして技術競争で、温室効果ガスを削減する道を選択すればいいのです。

 雰囲気に流されることなく、この試行取引から適切な教訓を引き出せることを望みたいと思います。

[注・ この問題には、さまざまな考えがあるとおもいます。読者の皆様のご意見をメール、コメント、トラックバックでうかがいたいと切に思います。また、排出量取 引の問題点については、『続・これが正しい温暖化対策~プレッジ・アンド・レビューによる将来的枠組み』(杉山大志編 エネルギーフォーラム)を参考にし ました。]


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