3月14日
いつものように夜明けを待ってベッドを抜け出し、ヒマラヤの黎明を楽しみました。
清々しい大気の中に小鳥達の囀りが響き、今日も新しい一日が始まろうとしています。
東屋に腰を下ろした私の周りで、中学生ぐらいの女の子が、丁寧に庭の掃除を始めました。
GH(ゲストハウス)の周囲には雑草も見えず、几帳面な暮らしぶりを感じます。
あれだけの段々畑を積み上げる人々が勤勉でないはずはありません。
私は東屋で、今朝もティーの香と、明け行くアンナプルナ・サウスを堪能しました。
今度こそ本当にアンナプルナ・サウスとはお別れかもしれません。
周囲の木立に響く、小鳥達の声に心が和みます。
リズミカルに石畳みをシュッ、シュッと掃く音が、私の足に歩く活力を蘇らせてくれる気がしました。
今日はヒマラヤトレッキングの最後日となるはずです。
ドイツのフランクフルトから来た大学院生達が、一足先に出発して行きました。
アウフ ヴィーダーゼーン、昨晩は楽しい時間を本当に有難うございました。
朝食を食べ終わる頃、モディ・コーラの谷に陽が届き始めていました。
会計を済ませに事務室へ赴くと、見覚えのある植物がテーブルの上に広げられていました。
一瞬目を疑いましたが、確かにワラビです。
まさかヒマラヤで、このような状況でワラビを目にするとは思ってもいませんでした。
このワラビを見て、数千キロも離れた日本とヒマラヤを繋ぐ何かがあることを確信しました。
Kさんはゆっくりと起きてきました。
彼が帰国する予定日は、私より10日も後なので、旅を急ぐ必要はないのです。
彼はこの旅を終えて故郷へ戻り、デザインの勉強を始めると言っていました。
本当に気持ちの良い青年です。
私は8時を少し過ぎた頃、Kさんに別れを告げ、GHを後にしました。
尾根の斜面に伸びるトレッキングルートを歩きながら、アンナプルナ・サウスを何度も振り返りました。
モディ・コーラに沿った長い尾根に、幾筋もの支流が沢となって食い込み、沢と沢を隔てる小さな尾根がカーテンの襞のように連なっています。
トレッキングルートは、そのカーテンの襞をなぞるように山腹を横切ります。
やがて、トレッキングルートは車道と合流し、幾つかの集落を抜けて、南へと向かいました。
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