
那須正幹(なすまさもと)広島県
ポプラ社 1000円
1998年初版
『ヨースケくん』 2007.10.8
授業中、トイレにいきたくなったら・・・
つい、カンニングしてしまったら・・・
お父さんがリストラされたら・・・
マラソン大会でびりになったら・・・
小学生が生きていくのは、
けっこうたいへんなんです。
日々、てつがくする小学生、
ヨースケくんの物語。
ヨースケくんは桂町小学校の五年生。組替えがあって、また倉橋くんと同じクラス。そして担任の先生は新しくかわってきた桑原俊子先生。転校生も2人。一人は外山くん、もう一人はヨースケくんのとなりにすわった町田さん。ごくありふれた小学生の生活の中で、小学生なりにヨースケくんが関わり考えてきたこと。流れる川を見ていたら自分が動いていた。夏休み、ヨースケくんの田舎は東京だった。夏休みが終わって、病気になったヨースケくん。なかなか熱が下がらない。お父さんのリストラ、不機嫌なお父さん。家族でハイキングだって。紅茶を飲んで一家心中するんじゃないかと心配。ヨースケくんの秘密は、トイレに行って大便をするとき、ズボンもパンツも全部ぬがなければできないこと。午後の授業まで絶えたのにもうがまんできない。保健室に行くと先生に言ったら、保健委員の熊田さんがついてきた。どうしよう。最近近所で火事が多い。昔ながらの夜回りが始まった。ヨースケくんもお父さんと参加。マラソン大会、走るのは苦手なヨースケくん。ゴール直前、心臓が爆発しそう。そのとき耳にした言葉は、「がんばらなくていいよ」だった。気持ちが楽になったヨースケくんは、手を振ってゴール。 気になっていた本だった。何年も前から読みたかった本。探していた本を目にすることができた。大きな事件があるわけじゃない。特別なことはないのに、なんだかあったかくなる作品だった。自分もそうかな、と思うと、ヨースケくんが自分のとなりにいるような、自分がヨースケくんであるかのような気持ちになれる。時を越えなくても、大事件が起こらなくても、冒険しなくても、毎日の生活の中にドラマがある。だれもが体験する出来事の中に、発見はある。それを見逃すかこともあれば、「そうだよね」って感じて考えることもある。ついつい刺激を求めてしまうけど、心の落ち着きは毎日の当たり前の生活の中にあって、それを拾い上げることで、さわやかなリズムが生まれるんじゃないのかな。
「がんばらなくてもいいんだよ」って、言ってくれたら心が軽くなる。倉田くんや熊田さん、外山くん、なんだかんだと言っても、友達なんだよね。大袈裟な言い方かもしれないけど、助けられているんだよね。あんな時代があった。あんな純粋な気持ちでいられた時代があったんだよね。