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そよかぜノート

読書と詩の記録

エリカ

2007年07月31日 | book 児童書 絵本

ルース・バンダー・ジー  訳/柳田邦男
精興社 1500円
2004年7月 初版

 『エリカ-奇跡のいのち』 2007.7.28

わたしが1944年に生まれたことは確かです。
でも、誕生日がいつであるのかはわかりません。
生まれたときにつけられた名まえもわかりません・・・


「Erika's  Story」

1995年 ドイツのローテンブルグ市、エリカに声をかけられた。私がエルサレムに行ってきたことを話すと、エリカはその町にどんなに行きたかったかを語った。彼女の首には、「ダビデの星」のペンダントがかけられていた。それはユダヤ民族であることの象徴だった。エリカが私に話してくれたこと、それがこの物語だった。

1945年 彼女はまだ1才かまだそこまでなってないかの赤ちゃんだった。両親とともに、収容所に向かう列車に押し込まれた。座ることもできないくらいぎゅうぎゅう詰めだった。何時間も列車は走った。ある村を通過したとき、列車のスピードが遅くなった。両親は、今だとばかりに貨車の天井近くにある小さな窓から、エリカを放り投げた。運良く草むらに転がり、運良く親切な人が見つけて育ててくれた。

お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。

 どんなに極限状態でも「生」に向かって
つい最近、原爆の火をずっと保存していた人の番組を見た。こんなことをした人もいたのだと感動した。あの憎き原爆の火で、いつか敵をアメリカをやっつけてやるという気持ちから、平和を願うシンボルになった。
ユダヤ人虐殺の中にも、生に向けてのさまざまな人間の思いがあった。アンネの日記は有名だ。これもつい最近だが「ハンナのかばん」も知った。そしてこの「エリカ」だ。子どもを生かしたいという親の願いが奇跡を起こした。列車から放り投げること自体、生への可能性は低い。頭を打って死んでしまうかもしれない。でも、このまま収容所に着いてしまえば確実に殺されてしまう。少しでも生き残る可能性に賭けた母親の思いが通じたのだ。その赤ん坊を拾って育てた人もすごい。このお話自体は、残酷で悲惨な物語だけど、人間の強さと優しさもたくさん感じることができるのだ。殺し合うことの悲しさ、生き抜くことと助け合うことの素晴らしさ、人間として生きていくなら後者をたくさん経験したいものだ。



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