
石田衣良
集英社文庫
2002年初版 1999年作品
『エンジェル』 2007.10.7
「エンジェル」という投資会社を経営する純一は、何者かに殺された。幽霊となってよみがえり、自分の悲しい生い立ちをたどった。しかし、殺される前の2年間の記憶がない。自分はだれに、何のためにころされたのか、真実を求めてさまよう。自分の会社が投資していた映画、なぜか心惹かれる受付の女性。明らかになっていく衝撃の真実とは。 最初は、イメージのわきにくい言葉の羅列で困った。読み進めようかどうしようかと迷ったほど。疲れていることも影響していたかもしれない。しかし、生い立ちをたどり、調査が始まるにつれ、何を求めているのかが見えてきた。つまり、最初の場面や描写が何のためのものなのかわからなかったから、いらいらしていたのだ。読み進めていくうちに、だんだん消化していくページは増え、最後はいつも通り一気に読み終えた。
自分の殺人を自分で調査していくという奇抜な題材に興味を持って読み始めた。幽霊ができること。それは話を聞くこと、見ること。物をさわったり動かしたりはできないんだ。しかも、昼は動けない。夜しか行動できない。これは大きな弱点だ。昼に大きな出来事があれば対処できない。姿を現すなんてものすごいエネルギーのいることで、そう簡単にはできないらしい。驚いたのは、感情があり、身体の変調を感じることだ。生きている人間と同じように心の動きで心臓が高鳴ったり、重苦しさを感じたり・・・死んだら幽霊になるとしたら、もっとたくさんの幽霊と出会ってもいいのにと思う。今、自分のこの部屋に誰かの幽霊が浮いていて見られているとしたらいやだなあ。幽霊と戦うヤクザ、なんて科学的に捕らえたら可能かもしれないけど、やっぱり怖さが一番にきて逃げ出すよ。そう冷静に分析なんてできるものじゃない。幽霊を主人公にしたが故に、幽霊像をきめ細かく作らなければならなくなった。そこが読み手のイメージと合えばいいけど。でも、おもしろく読ませてもらえた。最後に、彼女は意図的に純一を殺そうとしたわけではなく、結果的にそうなったんだよね。彼女を責めるべきかどうか、そこが疑問だ。