
■新潮文庫 362円

以前から、書店で気になっていた文庫本だった。この本を買って読もうと決めたのは、「感動する文庫」で検索したら上がってきたからだ。今回は生協で注文、5%引き。本来は、図書館で借りたり、中古本を求めたりする方が安上がりなんだけど、読んだ本は自分の本棚に並べたいという気持ちが強い。忘れやすい質なので目に見えるといころに残して置きたいのだ。だから文庫本だ。
感動はこの家族の生き方にある。奇形の猿であろうが何であろうが、大切だと決めたら全エネルギーをつぎ込む。気持ちの中ではさまざまな葛藤はある。でも、その葛藤から逃げ出さす真正面からぶつかっていくところが憧れる。「憧れる」と言ったらおかしいかもしれない。「すごい」では軽すぎる。人のために何かをしたいという気持ちはあるけど、どうしても自分が前に出てきて、その自分を追い越すことができない。でも、大谷さんはそれを実践している。
大五郎が精一杯生きようとしている姿は、くじけそうな私に励ましのエールを送ってくれた。身体じゃない心(気持ち)だよと。その気持ちが難しい。ただ1点。「生きる」ことに傾けたい気持ち。
人間と同じ食べ物を食べて起こる奇形。中国の輸入食品の危険性が叫ばれている。これまでも、食べ物は中身ではなく外形にこだわる私たちのために、中身に何が使われているかわからない不安は言われてきた。本当は中身なんだよね。でも、店頭に並ぶ姿から選ぶとしたら、どうしても外見になってしまう。それは「作る現場、育てる現場」を知らないからなんだと思う。育てる経験、育てている人が身近にいなくなってしまっているのだと思う。
人間としての生き方、気持ちの大切さ、そして生(食)への警鐘をひしひしと感じる。