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「E8理論」は統一理論になり得るか? 

2013年02月28日 | 素粒子

 統一理論は、新しい物理的効果を予言するだけでなく、私たちの宇宙に対する審美的に満足のいく描像を提供してくれる。
そして、多くの物理学者は、すべての物理現象は深遠なレベルで美しい数学的構造ときれいに一致すると直観している。
重力以外の力、すなわち電磁気力と弱い力、強い力に関して現在最良の理論は、1970年代におおかた完成された「素粒子の標準モデル」と呼ばれる理論だ。
この理論は、数学的にはそれら3つの力と素粒子の力学をリー群やファイバー束と呼ばれる幾何学で記述する。

 今日の物理学者は、さらに困難な重力をも含めた大統一理論に向けて、次なるステップへと進まなくてはならない。
この、究極の統一理論においては、重力や物質も他の力と自然に統合されるべきであり、すべてが1つの数学的構造のパーツになっていなければならない。
そして、それこそが究極の「万物理論」といえよう。
1980年代以降、素粒子理論研究の主流となっている、ひも理論は多次元時空中で振動するひもや膜という基本要素を使って重力と標準モデルを記述しようと試みている。
ひも理論やM理論だけに限ったことではない。
たとえば、ループ量子重力理論は、標準モデルに近く、より小さな枠組みを用いて力の統一に挑んでいる。
そして、このような理論に立脚し、2007年にはフリーの科学者であったA.G.リージが、新たな統一理論を提唱した。
基本的なアイデアは、大統一理論を拡張し、重力を幾何学的枠組みの一部として矛盾なく取り入れることだった。
「E8理論」と呼ばれるその統一理論では、すべての力と物質を、ある1つの幾何学的対象の“巻きつき”として記述する。
E8理論は、電磁気力と弱い力と強い力を記述する「素粒子の標準モデル」とともに、重力までをも単一の大きな幾何学的構造の中に矛盾なく含めようとする新しい試みである。
ヒッグス粒子も、同じ土台でその幾何学の中に含まれている。

 新しいアイデアは決まって厳しい批判にさらされるもので、E8理論も例外ではない。
この理論に対して、論文を発表した時点では、E8理論はまだ不完全であったため、多くの物理学者は懐疑的であった。
しかし、この理論は、その発展の初期段階にある現時点ですら、自然界の深淵に潜む美しい構造を明らかにし、LHCで発見することができるかもしれない新しい粒子を予言している。
数世紀にわたる物理学の統一への探究はまだ成し遂げられてはいないが、E8理論はその旅路における重要な一歩と言える。
そして、LHCでの実験結果が、E8理論の運命を大きく左右するだろう。

 E8理論を説明するには、まず既知の力と粒子のすべてを支配し、広く受け入れられている幾何学の原理を整理しておく必要がある。
幾何学は“形”の学問だが、基礎物理学における幾何学は何の形を扱うのだろうか?
プラトンは、土や空気などの基本要素は小さな正六面体(立方体)や正八面体など正多面体と関連があると考えた。
同様に、現代物理学では、素粒子に関係する幾何学的対象は、完全で、滑らかな形をしており、私たちの空間の外に存在するにもかかわらず私たちの空間と結びついている。
私たちはその形を直接見ることはできないが、それがもたらす効果を観測できる。

 標準モデルの背後に存在する幾何学的概念は、私たちの時空間中のあらゆる点に「ファイバー」と呼ばれる“形”が貼りつけられており、その各々の形が異なる種類の粒子に対応するというものだ。
時空とファイバーを合わせた全体の幾何学的構造は、「ファイバ一束」と呼ばれる。
ファイバーは私たちの空間に存在するのではなく、その外側にある。
ファイバーは時空間中の各点に貼りつけられた、各点ごとに異なる内部空間であり、その形が素粒子の性質を決める。
揺れ動くことができると考えられているひも理論の空間次元とは異なり、これらの内部空間のファイバーは定まった形をしている。
その力学は、それがどのように4次元時空に貼りつけられているかで決まる。

 自然界に対する幾何学的な見方は、私たちの世界がどのように振る舞うかを知ることで自然に導かれる。
最も簡単で身近な例は電磁気の力だ。
放電現象や磁石に働く力、レーザー光は、空間中に広がる電磁場がそれぞれ異なる様相を示したものである。
実際、物理学者はこの世のすべてのもの、つまり自然界のすべての力とあらゆる物質粒子は、異なる種類の「場」に起因すると考えている。
これらの場の振る舞いが、背後に存在する幾何学的構造をほのめかしている。


レーザー光を幾伺学的に解釈すると……
レーザー光(a)は振動する電場と磁場(b)からなるが、これは1つの電磁気的な「接続場」(C)が表に現れたものだ。
接続場は、電磁気の円形の「ファイバー」がどのようにレーザー光に巻きついているのかを記述する。
つまり、円形のフアイバーが時空間中のあらゆる点に貼りつけられており、光の粒子(光子)はこれらの円のうねりに対応している(d)。
電子などの荷電粒子は、円形のファイバーに巻きつく別のファイバーに対応する(e)。



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