真実を求めて Go Go

今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

「E8理論」は究極の「万物理論」になるのか?

2013年03月02日 | 素粒子

 ここまでくると後はパズルのピースを組み合わせるだけである。
Spin(1、3)群に基づく重力理論とSpin(10)群に基づく有望な大統一理論を、単一のリー群Spin(11、3)に統合するのは自然な流れであり、これは重力大統一理論をもたらす。
この考え方は、イタリアのトリエステにある国際高等研究大学のベルカッチとフェラーラ大学のネスティにより2009年に提案され、究極の「万物理論」に近いところまで私たちを連れて行ってくれる。

 Spin(11、3)群には64のフェルミ粒子のいくつかのブロックがあり、驚くべきことにそれらのスピンと電荷、弱電荷、強電荷を完全に予言する。
さらにそれはヒッグス粒子の組と重力のスピン接続場を自動的に含んでおり、これらはSpin(11、3)群の「フレーム・ヒッグス」生成子として統合される。
Spin(11、3)群のファイバー束の曲率は、重力やその他の力、ヒッグス粒子の力学を正しく記述する。
それは宇宙の暗黒エネルギーを説明する宇宙定数をも含んでいる。
万事がうまく収まっているのだ。


標準モデルと重力の統合:標準モデルと重力のダイアグラムを統合すると、これまでに発見されたすべての粒子を含む1つのダイアグラムを描くことができる。
ここにはヒッグス粒子と重力の参照フレームを統合した「フレーム・ヒッグス」場が含まれている。
左巻きのフェルミ粒子のみが弱電荷を持つため、このパズルは、2つのピースの特殊な組み合わせで構成されている。

 懐疑的な人はそのような理論は不可能なはずだと反論する。
重力とその他の力を単一のリー群に統合することを禁じる素粒子論の定理「コールマン・マンデューラの定理」を破っているように思われるからだ。
だが、抜け道がある。
その定理は時空が存在する場合にのみ適用可能なのである。

 Spin(11、3)理論(そして、この理論を発展させたE8理論)では、重力とその他の力はSpin(11、3)群の対称性が破れる前には統合されているが、その時点で時空はまだ存在していない。
その対称性が破れたとき、つまりフレーム・ヒッグス場が値を持ち、Spin(11、3)群内の特定の方向を選んだとき、私たちの宇宙は始まる。
この瞬間、重力は独立な力となり、時空が華々しく現れる。
つまり、コールマン・マンデューラの定理はいつでも満たされており、時間は完全な対称性が破れたことにより誕生する。


E8への埋め込み:部分的に解かれた標準モデルと重力のパズルを眺めていると、すべての粒子の各種チャージが、数学の世界で最も複雑な構造として知られている「例外リー群E8」の形に適合することがわかる。
E8群には、ミラー粒子(フェルミ粒子と同じ印で、小さいもの)やこれまで発見されていない力を伝えるボース粒子などの新粒子も含まれる。

 Spin(11、3)理論のウェイトダイアグラムは均衡のとれた見事な図形である。
Spin(10)大統一理論と同様、この対称性は深遠で“例外的な”数学をほのめかしている。
粒子のこのすばらしい配置は、おそらくすべての数学の中で最も美しい構造を持つ、最大の単純例外リー群E8の部分群であることを表している。

 E6群が16のフェルミ粒子を持つSpin(10)大統一理論の構造を含んでいるように、標準モデルの64のフェルミ粒子を持ち、これらのスピンまでも再現するSpin(11、3)重力大統一理論の構造は、E8群にすべて含まれている。
このように、重力とその他の力、ヒッグス粒子、標準モデルのフェルミ粒子の第1世代のすべては、統一されたE8ファイバー束の超接続場の各部分を構成している。
 248の生成子を持つE8群は、複雑ですばらしい構造を持っている。
E8群には、重力と標準モデルの粒子に加え、W’ボソン、Z’ボソン、Ⅹボソン、豊富なヒッグス粒子の組、ミラー粒子と呼ばれるフェルミ粒子、宇宙の暗黒物質の候補であるアクシオンが含まれている。

 さらに興味深いのはE8群の持つ「トライアリティ」と呼ばれる対称性だ。
このトライアリティを用いると、標準モデルのフェルミ粒子の第1世代に対応する64の生成子を、他の2つの64の生成子のブロックと結びつけることができる。
これら3つのブロックは互いに混ざり合い、既知のフェルミ粒子の3世代を再現するかもしれない。

 このように、物理的な宇宙は無類の数学的構造から自然に現れうるのだ。
E8理論は、ヒッグス粒子とは何か、重力などの力が対称性の破れからどのように現れるのか、なぜフェルミ粒子が特定のスピンとチャージを持って存在しているのか、すべての素粒子はなぜ観測されているような相互作用をするのかを教えてくれる。


E8理論:E8への埋め込みにより、すべての力や既知の物質粒子、宇宙の暗黒物質を説明する可能性を秘めた新粒子のそれぞれのファイバーが、この上なく美しい1つの幾何学の構成要素であることが示唆される。
E8はその各部を関係づける「トライアリティ」と呼ばれる特別な対称性を持つ。
この対称性で、なぜフェルミ粒子に世代と呼ばれる質量の異なる3つの種類が存在するのかを説明できるかもしれない。
E8こそが長い間探し求められてきた万物理論かもしれない。

 E8理論は依然有望だが、残された課題も多い。
フェルミ粒子の3世代がどのように現れるのか、それらがどのようにヒッグス粒子と混ざり合って結合し、質量を獲得するのか、E8理論が量子論の枠組みでどのように振る舞うのかを明確に示さなければならない。

 E8理論が正しいなら、それが予言する粒子はLHCで検出されることだろう。
一方、もしE8の構造に合わないような粒子が発見されれば、それはE8理論には不運なことだ。
いずれにしても、実験家が発見するいかなる粒子も、ウェイトダイアグラム上に居場所を得て、私たちを自然界の核心に存在する幾何学的構造へと導いてくれるだろう。

 仮に宇宙の構造が、素粒子の極微のスケールでE8理論によって記述されていることが確認された場合、それは完全な統一が成し遂げられたことになり、私たちは「例外的に」美しい宇宙に住んでいるのだという満足感に浸ることだろう。
そこでは248の円の組がこの上なく美しい方法で互いに巻きつき、可能なすべての仕方で時空間にわたって回転し、躍動しているのである。


 最も高度な対称性をもつものの一つとして数学者に知られ、E8と呼ばれる幾何学的構造に対応するダイアグラム上にまとめられた、驚くべきパターンと相互関係が潜んでいる。
そこには、整然と並ぶ素粒子たちは、決して混沌とはしていない。


 このような最新のE8理論を、私たち一般人の目に留めさせていただいた、「日経サイエンス社」に感謝します。
今まで、ブログ上ではE8理論に関する動画は見ていたのですが、ここまでまとまった記事には感激しました。



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