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「E8理論」におけろ「ウェイトダイアグラム」その2

2013年03月02日 | 素粒子

 標準モデルにおいて、クォークを核子に閉じ込める強い力は、幾何学的にはさらに大きなリー群SU(3)で記述される。
SU(3)群のファイバーは互いに複雑に巻きつく8つの円の組からなる8次元の内部空間で、グルーオンと呼ばれる8種類の光子に似た粒子の間の相互作用を生成する。
グルーオンは、核子を構成するクオークを結びつける“のり(グルー)”の役割を担っているため、このように呼ばれる。
 SU(3)群のファイバーは複雑な形をしているが、わかりやすいように分解してみよう。
このファイバーには巻きついていない2つの円の組で構成されるトーラスが埋め込まれており、それらの円は2つの生成子g3とg8に対応する。
残りの6つのグルーオン生成子はこのトーラスに巻きついており、それらのg3とg8に対するチャージはウェイトダイアグラム上で正六角形をなす。


強い力:強い力を伝える8つのグルーオン(正六角形状に並ぶ6つとその中心に重なる2つ)は、強電荷(g3とg8)に応じて互いに相互作用し、クオークや反クオークと相互作用する。
3つの色に対応する3つのクオークは正三角形をなして並ぶ。
○で囲まれたグルーオンと緑のクオークから赤のクオークが生成される反応のように、強電荷の総和は相互作用の前後で保存される。

 クオークのファイバーはこのSU(3)群のファイバーに巻きついており、その「強電荷」はウェイトダイアグラム上で正三角形を構成する。
これらのクオークは赤、緑、青の3色で分類される。
正三角形上に並んだ3つのクオークなど完全な図形を作り上げている物質粒子のファイバーの集まりは、「リー群の表現」と呼ばれる。
強い力を“カラフル”に記述するこの理論は、「量子色力学」と呼ばれている。

 量子色力学と電弱理論が一緒になって素粒子の標準モデルを構成し、そのリー群はSU(3)群とSU(2)群とU(1)群が組み合わされたものであり、物質粒子は数種の表現として参加する。
この構造は4つのチャージ軸を持つウェイトダイアグラムで記述されるが、それを2次元に射影して描くこともできる。
このダイアグラムは現代物理学の至宝だ。
標準モデルで許される粒子間の相互作用のすべてが、このダイアグラムに示されている。


標準モデル:電弱力と強い力のウェイトダイアグラムを統合すると、自然界を記述する理論として確立している素粒子の標準モデルができる。
このダイアグラムは4次元であるが、それを平面に射影したものが上図だ。
重力以外のすべての相互作用は、このダイアグラムにおける各種チャージの均衡によって決まる。
現代物理学の重要な目標は、このパターンを説明することである。

 標準モデルは大成功を収めたが、いくつかの問題点ももたらした。
なぜ自然界はこのようなリー群の組み合わせを選んだのか?
なぜこのような物質粒子のファイバーが存在するのか?
なぜヒッグス粒子が存在するのか?
なぜ弱混合角は、観測される値になっているのか?
重力はどのように取り込まれるか?

 物質粒子であるクオークと電子、ニュートリノはフェルミ粒子の第1世代と呼ばれているが、それぞれの粒子にはまったく同じチャージを持ち、質量がずっと大きな第2世代と第3世代の“生き写し”が存在する。
それはなぜか?
暗黒物質と暗黒エネルギーの正体は?
統一理論はこれらの疑問に答えなければならない。
統一理論に向けた最初の一歩は、電弱力と強い力の統一である。

 電弱力と強い力はどちらもファイバー束で記述されるが、それらのファイバーは別個のものだ。
物理学者は、1つのファイバーでその両方を含むものはないかと考えてきた。
それぞれの力に対して異なるリー群が存在するのではなく、それらの力を含む1つの大きなリー群が存在しないかと。
 この考えを正当化する1つの根拠がある。電弱力と強い力の強さは、非常に近距離で同程度になる。
このことは、それぞれの力が1つの力の異なる側面を表したものにすぎないことをほのめかしている。
大統一理論はそうした統合された単一の力を記述し、標準モデルを再現し、検証可能な予言を与えるだろう。

 現在の素粒子物理学者は、標準モデルのウェイトダイアグラムがこのような構造になっている理由を探しており、それがわかった暁には、それぞれの素粒子がどのような性質を持っているのか、どのような新粒子が存在するのかを予言できるようになるだろう。
そのような理論の最初の試みは1973年にジョージアイとグラショウによって提案された。
彼らは、標準モデルのリー群の組み合わせがSU(5)群の部分群としてきれいに収まっていることを発見した。

 このSU(5)大統一理論は、他の理論にはできなかった予言を行った。
第1に、フェルミ粒子が、それが実際に持っているのとまったく等しいハイパーチャージを持つということ。
これは自明なことではなく、かなりの成果だと言える。
第2に、弱混合角が38°であること。
これは実験値に比較してまずまずの値を与えている。
最後に、標準モデルの12のボース粒子に加え、「Ⅹボソン」と呼ばれる力の伝達粒子が12種存在することである。


大統一理論(GUT):電弱力と強い力は、上図に示したSU(5)群と呼ばれるファイバーのような、大きな構造の一部かもしれない。
この図形にはXボソンと呼ばれる12の新しい粒子が含まれており、これらは陽子(2つのアップクオークと1つのダウンクオークからなる)を陽電子(電子の反粒子)とパイ中間子(アップクオークとその反粒子のペア)に崩壊させる。

 このⅩボソンこそが、SU(5)理論を苦境に追いやった。
この新粒子は、標準モデルでは起こりえない、陽子がより軽い粒子に崩壊するという現象を引き起こす。
鉱山跡を改造して5万トンの水が入ったタンクを設置したカミオカンデなどで観測実験が行われたが、陽子崩壊は見られず、物理学者はこの理論を排除することとなった。



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